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脚のバルクをつけよう(つづき)

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.12.08

下半身は練習不足

 本誌8月号の海外ビルダー紹介のところで、スティーブ・リーブスが脚のトレーニングについて、次のように語っていたのを読者の皆様はまだ覚えていますか?

「大成しようとするビルダーは、練習プログラムの少なくとも半分を脚の運動にあてるべきだ。上半身を重視して脚の鍛錬に時間を惜しむビルダーがあまりに多い。たしかに脚の運動はむずかしいし、使用重量と反復回数を多くしなければならないが、これで誇るに足るりっぱな下半身がつくられるのだから、報われるところは大きい。」

 たしかに上半身にくらべて下半身を軽視して、その練習量があまりに少なすぎるビルダーが多いようです。私は、スティーブ・リーブスのいうように、一日の練習プログラムの半分を脚のトレーニングにあてろ、とまでは申しませんから、全体のバランスを考えて下半身をもっと重視して、それの鍛錬にあてる時間と労力を惜しまないようにしてください。

 下半身とは読んで字の如く、体の半分を占めるものです。体の半分を軽んじて、上半身のみにいくら努力を傾注しても、立派な体がつくられる道理はありません。

 大腿部から臀にかけての筋肉は、人間の体のなかで、もっとも大きな筋肉ですから、体重を増加させようとするならば、この下半身のトレーニングを多く行なうと効果的です。上腕囲が5〜6センチ太くなったところで、筋肉量としてはたいしたことがないので、それほど体重は増えませんが、大腿囲から腰囲がそれぞれ5〜6センチ太くなれば、その全体的な筋肉量が多いために体重は顕著な増加を示します。

 上半身は、大小の、多く筋肉が複雑に組み合わされていて、多様な動きができるようになっていますので、それぞれの筋肉を鍛えるためには、いろいろな運動種目であらゆる角度から鍛えることが必要とされ、必然的に練習の量と時間が多くなります。

 下半身は上半身にくらべて、関節、筋肉の構造が単純で、複雑多様な動きができません。一つ一つの筋肉が大きく、その種類は上半身とは比較にならないほど少ないのです。したがって、この下半身を鍛えるのには、上半身ほど多角的に多種目での練習は要求されません。

バルクにはロー・レピティション

 筋肉の種類が少なく、大きな筋肉で構成されている大腿部のバルクを獲得しようとするトレーニングでは、軽いものを使ってハイ・レピティション(12〜16回)で行なうよりも、重量を使用してロー・レピティション(4〜8回)で行なう方が効果的といえます。

 バルクをつけるのにはロー・レピティション、ディフィニションを出すにはハイ・レピティションでの練習といわれていきますが何故でしょうか?

 バルクとは筋肉量のことです。バルクをつけるということは筋肉量を増やすことをいうのですが、筋腺維の数が増えるわけではありません。運動などによって刺戟を受けることによって一本一本の筋腺維が肥大して、筋肉が大きくなることなのです。

 軽量での練習では、比較的表層の少しの筋肉のみで運動を処理することができますので、全筋肉が動員される必要はありませんが、より大きな負荷をかければ、表層の一部の筋肉の収縮によるエネルギーだけでは不足となり、より深部の筋肉も動員せざるを得なくなり、それだけ多くの筋腺維に刺激を与えることができるのです。一部分の筋腺維が肥大するよりも、より多くの筋腺維が肥大した方が、全体的な筋肉量が大きくなるのはいうまでもありません。

 軽量で行なうハイ・レピティションでの練習では、運動回数こそ多いが、上下運動中に筋肉に与える刺激はあまり強いものではなく、また、発達さそうとする狙いの筋肉に本当に強く作用している時間は案外短かいものです。

 これに反し、重量を使用するロー・レピティションでは、挙上回数は少ないが、一回一回の上下運動中筋肉に与える刺激は、軽量を使用したときよりもはるかに強く、その作用時間も長いのです。

 だからといって、むやみに重量を使用すればよいというものではありません。正しい運動方法を身につけていない人が重量で練習すると、いらぬ反動を使ってただバーベルを上げ下げすることに終始して、狙いとする筋肉に効果をあらわしにくいものです。

 また大腿筋は非常に力の強い筋肉なので、下半身の練習は、他の部分の運動種目にくらべて極めて重いものを使用しますので、無理をすると腰などを痛めますから、特に注意しなければなりません。

筋肉発達の公式

 腕の集中的トレーニング法のところで、「刺激の強度×作用時間=刺激の大きさ」であると述べましたので、それに仮りの数字をあてはめて説明することにしましょう。

 強度×作用時間=刺激の大きさ
  9×3(秒)= 27(6回繰り返せる重量として)
  7×2(秒)= 14(12回繰り返せる重量として)

 上記の数式で疑問とおもうことが三つあります。第一に、筋肉に与える刺激の強さをはっきりと数字であらわすことができるかどうか?第二に、一口に作用時間といっても筋肉に強く作用している時間もあれば、弱くしか作用しないときもあり、また、その中間のときもありましょう。それぞれの時間を正しく計測することが可能であるかどうか?さいごに、これが一番大きな疑問点ですが、かりにそれぞれの数値を計測する電子機械などがあったとして答えが出たとしても、その刺激の大きさという数値に比例して、筋肉が発達するものなのでしょうか?

 このように、いろいろの疑問があってみると、この数式を筋肉発達の公式とするには、少なからず無理があるような気がいたします。

 実をいいますと、この筋肉発達という学問分野においては、公式があるどころか、① 筋肉がどのような過程で発達していくものなのか、② 筋肉を発達させるのにはどの程度の刺激の強さと作用時間を筋肉に与えるのが最適なのか、③ それ以上に強い刺激と作用時間をかけても無駄なのか、④ 強い刺激を長い時間与えればそれに比例して筋肉は発達するものなのか、などの問題がどれ一つとして、はっきりと学問的には解明されていないのです。

 しかし、ユーゼン・サンドーの鉄亜鈴術から始まったといわれる近代ボディビル界も、ここにおよそ100年を経た今日では、学問的な裏付けはなくとも、弱い刺激を短い時間与えるよりも、強い刺激を長い時間与えた方が、筋肉は、より大きく発達するのだということを、経験的に知ったのです。

 ただし、刺激の大きさが大きいほど、それに比例して、筋肉が発達していくものなのかどうかは、現在のところ、はっきり判っておりません。

 そうしてみると、私の提唱した(刺激の強度×作用時間=刺激の大きさ)という式は、刺激の大きさとは何かを考えるためのものであって、数字をあてはめて答えを出す性質のものではなく、また刺激の大きさがそのまま筋肉発達の大きさに結びつくかどうかが、はっきり解明されていない現在では、それを筋肉発達の公式とはとても呼べるしろものでは無いといえましょう。

ディフィニションにはハイ・レピティション?

 ディフィニションとは、皮膚を通して一つ一つの筋肉が、他の筋肉と明確に識別できる“筋肉の鮮確さ”のことです。

 そのディフィニションを獲得するためには、薄い皮膚で、皮下脂肪が少なく、すみずみのこまかい筋肉までよく発達していることが大切な要素となりますので、ハイ・レピティションでの練習が効果的とされています。

 しかしこれはハイ・レピティションで練習をすれば、必ずディフィニションが出るということを意味しません。

 ロー・レピティションよりもハイ・レピティションで行なった方がディフィニションが出やすいことはたしかですが、はじめから体質的にディフィニション型の人はともかくとして、一般には、ただ繰り返しの回数を増やすという単純なことによって、簡単にそれを得られるものではありません。

 世界のトップ・ビルダーの多くは、ディフィニションあるいはバルクを獲得するのに、使用重量、回数、練習のスピード、種目の選択などの、練習方法によることもさることながら、むしろ食事による調整に重きをおいているように見受けられます。

 つまり、バルクをつけるためには、炭水化物、脂肪、糖類などの高カロリー食品と蛋白質を、ディフィニションを出すためには、炭水化物、糖類を避けて、蛋白質、野菜、果物などを中心に摂取しているようです。

 いずれにしても、バルクあるいはディフィニションの獲得は食事、練習方法、体質、日常生活など、いくつもの要素が総合的にかみ合って、はじめて達成されるものといえるのでしょう。
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おわりに

 皆様、このページを長いあいだご愛読いただきまして、まことに有難とうございました。中・上級者のための集中的トレーニング法は、今月をもちまして一応終わらせていただきます。タイトルは「中・上級者のための集中的トレーニング法」ですが、私の執筆方針が、部分部分の筋肉を発達させる方法よりも、むしろボディビル練習上の基本的な考え方解説をするのに重きをおいたものでしたので、皆様にご満足いただけたものかと、心配いたしております。

 掲載中は、全国の読者のみなさまから、励ましのお手紙を沢山いただきまして、本当に有難とうございました。紙面をかりてお礼を申し上げます。

 なお、来年からは新らしい企画で、お目にかかる予定でございますので、どうぞご期待ください。

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