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■座談会
お帰りなさい!ミスターベスト・レッグ

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月刊ボディビルディング1968年12月号
掲載日:2018.02.27
おめでとう。ありがとう。――2人目のミスター日本はすでに明日を目ざしている。

おめでとう。ありがとう。――2人目のミスター日本はすでに明日を目ざしている。

 司会 どうも武本くんご苦労さまでした。67年度のミスター日本の小笹くんが行けなかったんで,急拠あなたのほうに重荷がまわってきて,9月20日出発,ミスター・ユニバース,ワールドを転戦して帰ってきたんですけれども,たいへんなおみやげをもって帰ててきてくれた。とにかくミスター・ワールドは4位。日本人ではじめて脚の部門において世界第1位。脚の部門とは云え世界一のタイトルをもってきてくれました。どうですか,闘い終って日本に帰ってきた気持は……。
 武本 大ざっばに表現しますと,自分が想像していたように華やかですごい大会ではなかったです。
 司会 なるほどね。
 武本 ただ2,3のビルダーには驚きましたけれどもね。大会全体としては,私はべつに驚きもしませんでした。というのは,日本で行なわれる日比谷谷会堂の大会のほうが,ユニバースまたはワールドの大会にけっしてひけをとらなかったと。
 司会 なるほどね,遠藤選手も一昨年ですか,昨年かな……。
 遠藤 昨年です。
 司会 あなたも帰ってきて大会の運営,構成そのものはひけをとらない。選手のマナーもいい。ただし,やっぱりトップのレベルはそうとう開きがあるといっておりましたけれども,武本選手と同様ですね。
 遠藤 外国のトップビルダーの一部を除けば,日本のトップの人と身体の面ではほとんど開きはないと思います。いままでいった人が上位に入賞してることでそれも証明できると思います。ですから,これからやはり日本人がトップに食い込むためにはあと2,3年の時間は必要じゃないですか。
 武本 そうですね,3,4年ですね。
 司会 その時間があれば,武本君,遠藤君でもやってやるぞという自信がありますか。
 武本 私はぜひそれに挑戦したいんです。
 遠藤 ぼくも3年計画でこれからみっちりいままで以上に練習つんで,もう一度挑戦したいですね。
 武本 とくにぼくの場合には,強烈に思うのは本場を見てしまった。見てしまった以上,一歩でも近ずこうとおもいますね。
 司会 なるほどね。ひとつこんどの闘いのあとを振り返って自身の経過をしゃべっていただけませんか。ミスター・ワールドとミスター・ユニバースですね。
 武本 まずミスター・ワールドですが,ミスター・ワールドはニューヨークのアカデミー・ブルックリン・ホールで開かれまして,参加された人員は30名ぐらいだったと思うんです。
 司会 ミスター・ワールドは身長別ですね。
 武本 そうです。
 司会 それが3クラス。
 武本 トール,ミディアム,ショート。私はショートです。まず,非常に驚きましたのはチャック・サイプス。彼がウォーミング・アップしてるところに会ったんです。これで度肝抜かれました。肩と腕です。腕を私がもった感じでは私の足くらいあったような感じがします。
 遠藤 むこうのビルダーが日本のビルダーと違うのは肩,腕がずば抜けて大きいですね。
 武本 それから,彼がトレーニングしておりましたら,まず力みますと顔角が変わります。われわれであるとまっ赤になる。それで止まります。彼はまっ赤になってそれが紫になるまでがんばりますね。これにはちょっと驚きました。自分が見てみますと25ポンドですか。それのプレートが片一方に約六枚から7枚くらいつけてやっております。ベンチ・プレスを。
 遠藤 12.5キロくらいですね。6枚ではだいたいから160から170キロですね。
 武本 それでトレーニングしております。それにはちょっと驚きました。それで中近東からもきておりまして,その選手たちは非常に手足が細かった。ボディは非常にきれいです。やはりその国によってみなさん違いますね。
 司会 日本の場合でも,関東の選手はバルク,関西はディフィニションという特色があるように。それが国になるともっと……。
 武本 ええ,はっきり出ております。いちばんノーマルなのはイングランド,イギリスの選手がノーマルですね。バランスが非常にいいです。アメリカの選手の場合には背筋とアーム,それからショルダーが見事です。
 司会 背筋がよいのですか。
 武本 ええ,背筋で驚きまたのはロック・ストンオール。彼の背筋はたとえようがないほどりっばな背筋ですね。克明に一つ一つ出ていることと,それからバックから見ますと背筋が余っているんです。広背筋というものが余っている。
 遠藤 後に飛び出てる感じですね。
 武本 それで大会がまずワールドからはじまりまして,よく見てますとジャッジは10名くらい。中には選手も混っておりました。
 司会 ジャッジの中に選手もいるんですね。
 武本 ええ。それから女性の方が2人か3人入っておりました。
 司会 どういう女性ですか。
 武本 よくわからないんですけれども,若い方でした。選手の中で気になったのはコールバートがジャッジをしておりました。それからレイ・シェイファーだったかリン・リーマンだったか,どっちかがやっておりました。それでまずマスキュラー・ポーズとってくれ。いろいろとります。ジャッジの前に10名,後に10名。それでチェンジするんです。遠くで見て近くで見て,20名いっしょにポーズをとります。一ペんにやってしまうんです。そのかわり4回くらい,チェンジして。
 遠藤 だいたいピックアップ方式ですね。
 武本 ええ,それもやりまして,2回ほどやるんです。チェンジして。
 遠藤 同じくらいの実力の人は呼んでマスキュラー・ポーズとらせて……。
 武本 何番,何番と。それだけバックしまして,残った連中はこっちにやられまして,呼ばれた連中がこっちにきてポーズをとりまして……。
 司会 再審査ですね。
 武本 ええ,それが終りますと,次に部分ショーにそのまま入ります。
 司会 それはだれもが出なければいけないんですか。
 武本 それは自由意志です。自信がなかったら下がればいい。
 遠藤 胸,背筋,腹,脚の5つですね。
 武本 最初が胸だったので,ぼくは自信がなかったから下がっておりました。実は大会前にぼくがウォーミング・アップやっておりましたら,盛んにみんな見にくるんですね。レッグのトレーニング教えてくれと。それでもうユアー・ベスト・レッグは決まったと。試合前に選手の中で,そういうことで非常に前評判になった。そこへたまたまジョー・ワイダーさんがおりまして,トレーニングはどうするんだということで,しばらくお話しておりました……。
 司会 世界の権威者たちに武本流の脚のトレーニングを披露したんですね。
 武本 非常に光栄でした。ずっと見渡したところ,脚の部門ではいけるんじゃないかと思ったんです。それで脚の部門が最後でした。そのときはじめてぼくは出ていきまして,脚の部門のポーズとりました。
 司会 脚は何人ぐらい出ておりました。
 武本 15,6人おりました。そしてそれはとれるんじゃないかという気持はありました。それでそれを終りまして,それから次はミスター・アメリカをやります。同じ形式で。それ終りましたらワールドの発表です。その間3時間ぐらい時間がありまして,それで食事して待ってるんです。よる7時から決勝です。そのときは全部集まりまして,一人ずつフリー・ポーズです。
 司会 観客の前で。
 武本 ええ。それで名前呼ばれて出ていきましたら非常に興奮してるんですね,観客が。いい人が出ると口笛吹いたり,たいへんです。
 司会 それは一人ずつですか。
 武本 ええ。スポット・ライトをあてるんですけども,非常に観客が興奮しまして,いいのが出るとうるさいですね。やじとか口笛とか,ムードがアメリカ人の陽気な性格を表わしておりますね。
 遠藤 楽しんでおりますね。
外国の一流ビルダーはとにかく肩と腕が大きいです――と遠藤選手

外国の一流ビルダーはとにかく肩と腕が大きいです――と遠藤選手

 武本 それで私が出まして,そうしたらそのとき客の中から声がかかるんです。〝ベスト・レッグ〟と。これにはびっくりしましたね。気持がリラックスしておりましたので,落着いて見せるポーズをとったんです。
 司会 だいたいあなたは日本のビルダーの中でも見せるポーズが巧者だという評判ですからね。
 武本 それで非常に観客が騒ぎまして,まあ自分自身も楽しかったですね。それでいろいろポーズをとりまして,レッグ,レッグというんです。それでまた終って礼をして,それからまたサービスに1ポーズとったんです。アンコールですね。それで下がっていきました。そして全部終りましてすぐ発表です。
 司会 ということは,すでにはじめに決まってる。
 武本ええ,一次予選で決まっておるんですね。すぐ発表がありまして,いい人だけ10名くらい前に出されまして,それから順番いっていきますね。いちばん先に部分ショーからです,ベスト・チェストとか。そうすると,それをもらう人は,非常に美しい表彰台に上がりまして,美しい娘さんがもってきてくれるわけです。サービスにキッスしてくれるわけです。それで私もその光栄に浴して非常に楽しかったです(笑)。脚の部門の場合,ワールドは私が上がりまして,それからミスター・アメリカの脚の1位はフランク・ゼーンが上がってきまして,そしていっしょに表彰受けたりしました。そういう印象が非常に鮮やかに残っております。
 司会 さぞうれしかったでしょう。それからユニバースは。
 武本 ユニバースはまず前夜祭がありました。その前夜祭でいろいろ紹介があって,いろいろメッセージ読まれたりあまりのパーティーの盛大さに驚きました。
 司会 勝負はもちろん厳しくやるんでしょうけれども,一つのお祭りとして楽しくやるんだということですね。ミス・アメリカとか,きらびやかなお嬢さんがいるんでしょう。
 武本 ええ,そういうお嬢さんがきまして,ぼくなんか英語に弱いんでダメでしたけれども,それでもマイアミにきたときには少し話せるようになりまして,そのパーティでけっこうもててね。(笑)
 司会 そこらはまたゆっくり聞かなければなりませんね。(笑)
 武本 ええ。これはまたの機会に。約5時間くらいのパーティでした。その中には水泳のオリンピック選手のドン・クラークさんとか,たくさんの有名人がきておりましたし。
 司会 何名くらい……。
 武本 200名近い。
 司会 全選手,役員,それから有名人。
 武本 いよいよあくる日になりまして,バスで会場まで乗せていくんですね。そのときシュワルツェネガーがのっそりと現われたんです。その大きさには驚きましたね。
 司会 それは服着てでしょう。
 武本 ええ,服着てても大きいんです。
 司会 上背も大きいんでしょう。
 武本 ええ1メートル80をはるかに越えております。大きな坊やという感じです。性格は温厚で陽気な人なんですね。彼が現われたときには度肝抜かれました。まずアームを見せてくれといったら,彼はすっと見せてくれたんですけれども,その大きいことは,約60センチ近いんじゃないんですか。56,7ですね。
 司会 ちょっと考えられませんね。日本でトップが45越えてきて46,7ですからね。
 武本 とにかく優勝されたフラン・ク・ゼーンとかその他のアメリカのビルダーを見ましてびっくりはしましたけれども,シュワルツェネガーを見て驚いたときほどびっくりしません。すごく太かった。
 遠藤 上半身が大きすぎて,脚が目立たないんではないですか。
 武本 それがものすごく太くなっておりました。彼自身脚をやってるそうです。彼の表現をかりれば少しやってるといいましたね。
 司会 トレーニングの秘策を聞きましたか。
 武本 単調ですね。ただ,非常に熱心で……。
 司会 練習量はどうですか。
 武本 これは多いですね。
 司会 前の号で今年のミスター日本の吉田くんが1日の練習量90セット,100セットといっておりましたけれども,どうですか,外国では。
 武本 どうも100を越えております。ですからやっばり大きな人はよくやっておりますね。ほんとうに自分が驚いたのは,シュワルツェネガーとセルジオ・オリバー。この二人ですね。ぜんぜん彼はウォーミング・アップ,トレーニングをしません。ゆうゆうと映画見たり泳いだり,ぜんぜん問題にしていないんです。
 司会 試合に臨む前にすでに敵を呑む自信があるんでしょうね。
 武本 そうでしょうね。ゆうゆうと2時間ばかり泳いで,それから帰ってきて,いまから寝るんだということをいっておりましたけれどもね。それにはほんとうに驚きましたね。その彼がミスター・ユニバースで優勝できなかった。
ではミスター・ユニバースの東京開催に本腰を入れますかと――司会の玉利理事長。

ではミスター・ユニバースの東京開催に本腰を入れますかと――司会の玉利理事長。

 司会 ワールドのチャンピオンは?
 武本 ワールドはチャック・サイプス。ミスター・オリンピアはセルジオに挑戦する人がいなくて,彼は不戦勝で優勝です。順を追って説明しますと私はシュワルツェネガーの横に並ばされたわけですよ。みじめでしたね。(笑)まるで私なんか初心者みたいでしたね。
 司会 ミスター・ユニバースはクラスはなかったんですね。
 武本 ええ,クジ引きですね。背の順番とか,ぜんぜんないんです。幸か不幸か彼の横に並びましてさんざんでしたね。
 司会 しかし,たいへんないい刺激を受けましたね。
 武本 ええ,いろいろありまして,ぼくは彼がとるであろうと,英国のロイというのも彼がとるだろうといっておりましたけれども。
 司会 勝負はわからないものですね。
 武本 いよいよ発表のときにセルジオがカップとミスター・アメリカのたすきを運んできて,舞台の裏で待ってるんです。彼は沈んでるんです。チラッと見たんですけれども……。
 司会 彼は選手じゃなくて。
 武本 ゲスト・ポーザーです。それが沈んでるんです。ミスター・ユニバース発表のとき,フランク・ゼーン。みなさん意外な顔をしておりました。
 司会 みんなシュワルツェネガーだと思っていたんですね。
 武本 前評判ですね。フランクは泣いて喜んでおりました。そうしたらセルジオがとびあがってキャッキャッ喜んでおりました。
 遠藤 セルジオもシュワルェネガーが勝つと思ったんでしょう。
 武本 それで,声を上げてセルジオがカップとたすきをもって走っていきましたね。それで,二人で抱きあってフランク・ゼーンが泣いておりましたのが非常に印象に残っております。あと,クリスフォードがぶつぶついっておりました。
 司会 ミスター・ユニバースは全員で何人くらいですか。
 武本 30名くらい。
 司会 決勝が10名ですか。
 武本 だいたい12,3名です。その中に私もたまたま,入っておりました。落ちた中にはミスター・カナダのビルダーとか,カリフォルニヤのビルダーとか,写真でよく見る者のビルダーがたくさん出ていました。
 司会 いままであなたは日本の大会へ選手として出場したり,役員としてタッチしたりしてきたわけですけれども,ミスター・ワールド,ユニバースの両コンテストの総評的なことを,
 武本 まず選手の質からいいますと問題にならないほど日本がよいです。
選手のマナーは日本が上です――と語る武本選手

選手のマナーは日本が上です――と語る武本選手

 司会 肉体的なレベル。
 武本 いえマナーとか精神的なものははるかに日本がいいです。ただ一つおもしろいことは,非常に選手自体が大会というものに慣れてるんだろうと思うんです。ショーマン・シップとでもいうんでしょうか。進めていくのに非常に……。
 司会 協力する。
 武本 ええ,自然にすっと進めていく。
 司会 外人というのは見せる意識が強いから,
 武本 選手から楽しんでおります。ベスト・チェストのとき,シュワルツェネガーが大胸筋をブルブル動かす。クリスフォードがそれに負けずにまたプルブルとやるんです。そうすると会場が大笑いで。そういうことは非常におもしろかった。しかし,そういったことは逆にプロ的な匂いを感じさせたりということもあります。だからよしあしはわかりませんけれども,非常に会場を湧かすことはうまいです。選手の中で感心したことは油を塗ったあと,散らかさないです。
 司会 よくわれわれ屋内の公会堂のコンテストをやると,油をギタギタたれるほど塗ったり,そこらのカーテンでふいたりする不心得者がいますけれども,そういうことはないんですか。
 武本 ええ,きれいです。量もあんまり塗りません。若干一部の人は散らかしたりしておりましたけれども,全体においてはいいほうだと思います。
 司会 そういうソーシャル・トレーニングはいいんですね。
 武本 幕合いから並んで出るときになるとダメです。トレーニングしていたり,団体行動になるとダメです。
 司会 演出面で,こういう点は日本のコンテストに取り入れたらいいんじゃないかという点ありますか。
 武本 そうですね。こういうところはおもしろかったですね。ただいまからミスター・ユニバース開幕というと音楽に合わせて,足どり軽く胸はってみな出てくるんですよ,楽しそうです。
 司会 選手入場ですね。
 武本 それがいいですね。楽しそうにしないと怒るんです,足が重いといって。リハーサルを1時間ばかりやりまして,足を軽く出てこなければいかんということです。顔もスマイルで,こう胸をはって出てこい。年のいった人ですけれども,こうして歩くんです。これはノウだと,こうこうして出てこい。それで全部同じシャツを着せてくれるんです。
 司会 どうですか。あなたのあとに続いて,来年は,ことしミスター日本になった吉田選手が挑戦しますけれども,日本のビルダーが外国のコンテストで勝つためにはどうしなければいけないか。それについて……。
 武本 痛切に感じたことは,前年度の遠藤さん,同じことだったと思うんですけれども,まず第一にしなければならないことはバルクであると。これは行った人はだれでも感じたと思います。
 司会 どうですか,遠藤さん。
 遠藤 そうですね。ケタ違いで,見たことのある人でないと感じというものはわからないでしょうね。
 武本 とにかくバルクといったらすごいです。だから次に来年度行かれる吉田さんはバルクを徹底的につけたらいいと思いますね。それから来年度はできましたら,役員の方も行かれまして,運営なり審査なりよく見られたら日本のボディビル界も変れるんじゃなかろうかと思います。
 司会 まあボディビルダーなんですからコンテストを狙うならまず逞しく大きくすることでしょうね。
 武本 ミッド・シティ・へルスクラブの大物ミンディオさんという人がおりまして,いろいろお話してきたんです。バルクがあって,それからそこにディフィニションがつくというんです。いわゆるバルク,ディフィニションといいました。だからまずバルクを作るんだと。それからディフィニションで仕上げるんだ。そういう表現をしておりました。始めからディフィニションを追いかけるから大きくなりにくいんだ。だからバルクを先につけて,それから最後に仕上げにいく。
 司会 どうですかそこらの問題。日本人と外人の体質の問題。たとえば日本でかりにいい選手がいる。これはバルクがもっとつけばよくなっていくと思ってる,ところがバルクがついてくるとどうも筋肉のきれが悪くなったという選手がおりますが,それはどうでしょう。
 武本 セルジオの場合は両方を見事に両立させてますね。彼の大胸筋は下が盛りあがっております。大胸筋見たときそれを感じました。巨大な大胸筋が,筋肉の繊維で出来ているんです。
 司会 筋肉が大きくなると脂肪の層も厚くなるような気がしますが。
 武本 いや。それはどうも練習がおろそかになんじゃないでしょうか。
 司会 それと食事に対する配慮はそうとうなものでしょうね。
 武本 外人のビルダー達といっしよに食事にいきましたけれども,タンパク質をとります。
 遠藤 量をものすごくとりますね,日本人の倍くらいとりますね。
 司会 日本人というのは一般の日本人ですか,日本のビルダーですか。
 遠藤 ビルダーです。日本のビルダーも普通の一般人より食べますけれども,その食べるビルダーの2倍以上軽く食べております。
 武本 それでケロッとしております。
 司会 消化するだけの強じんな胃袋を持ってるということと,トレーニングの量が多いのかな。
 武本 そのへんのところでしょうね。
 司会 生活面の節制についてはどうですか。
 武本 節制については異常なまでに節制しております。フイジカル・フイットネスといってやっております。
 司会 フィジカル・フィツトネスの話が出てきましたけれども,アメリカでボディ・コンテストというものは,短い滞在期間ですから,そういうことまで見られなかったと思いますけれども,どのように大衆から受けとめられていますか。
 武本 少ないことばで表現するんだったらお祭りです。体育の祭りみたいです。
 司会 そうすると日本のボディ・コンテストの観客はボディビルやった人か関係者が多いと思うんです。アメリカではどうですか。
 武本 そういう観衆もおります。一つ驚いたのは,女性が多かったということです。若い女性が。それで私は若い方ばっかり見ておりましたけれども……(笑)それで大会が終りまして選手が下がっていきますと,みなさん待っております。それで,たとえばチャック・サイプスが出てくると,ワァー,チャック・サイプスだといって拍手が起こるんです。
 司会 ワァー,武本というのは……
 武本 なかったです。(笑)
 司会 日本だと,なにかミスター日本というと,大衆から遊離して特殊な人種だというふうに思われておりますねそういう傾向はないんですね。みんなが楽しんで,お祭りとしてスターをたたえる。同時に自分もあそこまでいかなくても,健康管理のために行う。
 武本 兵隊で日本にきたというおっさんとあったんです。非常に日本語が堪能でして,彼も見にきまして,やはり楽しむんだそうです。自分もよくなるんだと,そういうもののいい方をしておりました。
 司会 けっしてショーとしてだけ楽しむんじゃなくて,自分も楽しむ。ただし自分はコンテストを見るだけでなく,自分なりにトレーニングもする。
 武本 チャック・サイプスとかシーフ・クリーバー,非常にみんな尊敬されておりました。彼らも非常にみんなの細かい要求に答えて……。
 司会 自分の筋肉だけを誇るという風潮じゃないんですね。弱い人たち,デブちゃんたちにも懇切丁寧に教える
 武本 小さい子どもにサインをねだられたら常に笑顔を見せてやってあげております。
 司会 日本のボディビルがいかにしてトップのビルダーと大衆の健康管理と一体になって育っていこうかとしているのと同じことですね。
 武本 マイアミのテレビでプロティンの宣伝やっておりました。ここまで伸びてるのかと,これには驚きました。
 遠藤 一般の人も栄養食に気をつけてやっておりますね。
 司会 アメリカ人の食生活そのものがタンパク質,脂肪が多いのだろうが,その上になおとると。
 遠藤 だから食事の面からも,日本人とアメリカ人の体力差は違ってきますね。
 司会 体力作りはトレーニングと節制,栄養,そういう面から行なっていかなければならない。トップだけの問題じャないんですね。
 武本 全体の問題ですね。
 司会 そこらに今後の日本のボディビル界の一つの方向というものがあるわけですね。
 武本 そうですね。
 司会 先ほど前夜祭で水泳のもとのオリンピック選手が出てきたといいますが,他のスポーツとの関連はなにか……。
 武本 誇らしげにクラークさんが語るところによれば,ボディビルダーの中にはいろいろな人がおる。まずフランク・ゼーン。彼は学校の先生だ。それからあとはわからないくらいいろいろ上げておりました。
 司会 というのはいかにボディビルダーというものが,ボディビルだけの世界におさまらないで,ボディビルで鍛えた体をもととして他の社会に伸びていって,それぞれ実力を発揮してるかということをいってるんですね。
 武本 ええ。ホープさんといって,世話役の方がおりました。その方のいわれることを聞いておりましたら,われわれはただこのためにしてるんじゃない。みんながどんな人たちでも,みんなが楽しんで,自分の健康な身体をこしらえるためにやるんだ。
 司会 それは我々の考え方とまったく同じことですね。その一つの象徴としてのコンテストですね。
 武本 ええ。だからそれを非常に彼は強くいっておりましたね。いいことだと思うんです。
 遠藤 アメリカでボディビルが発達したというのは,そういう裏付けがあるからでしょうね。
 司会 そうでしょうね。大衆が要求したものでなければ,あれだけ発達しないでしょう。選手自身も,いまの話を聞くと,自分の力だけ誇ったりいばったりしないで,みんなと共に大いに伸びていくんだという気持ですね。
 武本 それから女性が熱心にやってた。たまたま私懇意になりましたのがスカイ・ダイビングってありますね。あれのチャンピオンの女性といろいろお話したりしたんですが……
 司会 あなたはどこにいっても女性と縁がありますね。(笑)
 武本 それで,その女性は非常に熱心にトレーニングしてるんです。
 司会 なんの?
 武本 いわゆるボディビルです。ウエイトトレーニング。ちょっと驚いたんです。彼女は家が遠いんです。車に乗って亭主といっしょにくるわけです。それから女の方からちっちゃな子
どもまで連れてきて,奥さん方やっております。日本でいう肥満児ですね。そろでビル・パールのジムではいっしょです。遠藤さん見られたと思いますけれども。
 遠藤 女性もいっしょにやっておりましたね。
 司会 なるほどね,そうですか。そうするとボディ・ビルというものが大衆から浮きあがらないで,あらゆる層に定着してるんですね。
 武本 とけこんで,生活の中で健康づくりということがあたりまえのことになってるんですね。
 遠藤 身体を鍛えるということは常識になってるから,ボディビルをやってるといっても,特殊な目で見られないで,やることがあたりまえで……。
 司会 政治家も実業家も労働者も肉みなさん同じだということですね。体のいらない人間はあり得ないんですからね。ところでさ来年はいよいよ万国博を迎える。万国博覧会で,日本でミスター・ユニバースやろうじゃないかという声がポツポツ盛りあがってる。かりに日本が主催国になれる可能性があるかどうか打診してくれということをお願いしたんですが,その報告
をちょっと……。
 武本 はい。その件につきましては,非常にワイダーさんの兄弟が喜んでいたんです。私いろいろ聞かれたんです。たくさんの人がやってるかとか,ジムのスケールの大きさとか,ありのまま答えたんです。それで大会でもミスター・ユニバース・コンテストにけっして負けないといったんです。ミスター・ジャパンは非常に立派な大会だということをいっておきました。
 司会 では一つ協会としても本気で万博でミスター・ユニバース・コンテストをやれるかどうか,大いに研究してぜひ実現の方向にむかって努力しなければなりませんね。どうもありがとうございました。
月刊ボディビルディング1968年12月号

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