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体力づくりの基礎知識 1 骨の生理学

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月刊ボディビルディング1971年4月号
掲載日:2018.07.08
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東京薬科大学教授 坪 井 実
これから数回にわたって、体力づくりの基礎的な知識として、解剖学や生理学、栄養学などの科学を項目別にわかりやすく解説していきたいと思っている。

骨と筋肉

骨は体を支える柱であって、これに筋肉や皮膚などが附着することによって体が構成されるのである。したがって骨が丈夫でなければ、いくら筋肉その他が発達しても、それを支える骨が弱くては、へナへナの体で何の役にもたたない。

たとえば、骨の発育がなく筋肉だけが発達したとしよう。骨は発達しないのだから太くなったり、長くなったりしない。そこに筋肉の発達が起きるのだから、筋肉はただ骨のまわりを取り囲むだけで、体は太るが、背は一向に高くならない。それだけでなく、手とか足の指先や、鼻の先端などでは、発育して行きどころのなくなった筋肉がふくらんで、写真に見られるようなブザマな姿となってしまう。

実際にこのようなことは、脳下垂体の病気のときに見られるのである。この写真の人は、骨の発育がすっかり完了してしまって、それ以後は、どんなことがあっても骨が伸びないという年令に達したときに、脳の下部にある脳下垂体という部分が異常な状態となって、そこから製造される成長ホルモン(骨の発育や筋肉の発育を促進するホルモン)が大量に作られ過ぎたために骨の発育なしに、筋肉だけが異常に発達したために先端肥大症となってしまったのである。

ところで今度は、少年期のように骨の発育がどんどん行なわれ、背がドンドン伸びているようなときに、脳下垂体の成長ホルモンが多量に出すぎた場合を考えてみよう。今度は、前のときと違って、筋肉ばかりでなく、骨もこのホルモンの作用をうけてメキメキと発育するから、アッという間に雲つくばかりの巨人が出現することになる。

このように、筋肉と同時に骨が発育すれば、体はバランスのとれた形で大きくなるが、骨の発育なしに筋肉だけが発育したのでは、不完全な体となってしまうのである。
(第1図 先端肥大症の患者、鼻先などが普通人よりはるかに肥大しているところをみてください)

(第1図 先端肥大症の患者、鼻先などが普通人よりはるかに肥大しているところをみてください)

骨の構造

骨の外側は、骨膜とよばれる薄いビニールのような膜で包まれている。この膜には血管と神経がたくさんきているから、骨を包んで保護するという役割ばかりでなく、骨を養い、骨の成長や発育、再生などの働きをする。

外傷などで骨膜を失うと、骨は栄養不良となり、再生不能となる。また、これと逆に、骨質はなくなっても、骨膜さえ残っていれば再生する。骨を強く打ったようなとき(向うズネを打ったときなど)痛みを強く感ずるのは、骨膜に分布する知覚神経のためである

骨膜の内側は、骨質とよばれるが、これは、さらに緻密質と海綿質とに分けられる。緻密質は骨の表層をしめ、海綿質は内部にみられる。

緻密質は、われわれの身体の中では歯のエナメル質についで硬い組織である。その硬さは、鉄にはおよばないが銅より硬い。その構造をよくみると、骨層板とよばれる3ミクロンくらいの厚さの板が何枚も重なってできている その個々の骨層板を膠状線維が走っているが、この線維の方向が一定でありそのうえ相重なる層板の線維の方向とは一定の角度をなしていて、丁度、ベ二ヤ板の層の数をたくさん増したような状態で、力学的に非常に頑丈になっている。

この緻密質には、神経は分布していないので、痛みなどを感ずることはないが、血管の方は骨膜からハーバース管やフォルクマン管となって、さらに骨質の奥深く入りこんで骨に栄養を与える。

海綿質は海綿様の小腔を多数にもつ薄い骨の板からなり、その小腔の一部には骨髄が入りこんでいる。骨髄には非常にたくさんの血管が分布し、血液のため赤く見えるもの(赤色骨髄)と脂肪のために黄色く見えるもの(黄色骨髄)とがある。この部分で赤血球や白血球、血小板などの血液成分がつくられる。

骨の化学的成分

骨は膠様質と石灰質とからできている。膠様質は、字の通りニカワのように軟かく、弾力に富んでいるが、石灰質は、チョークのように硬くて折れやすい。骨は、はじめ膠様質ばかりで構成されているが、これに石灰質が沈着していって、年毎に硬くなっていくのである。したがって、乳幼児の骨は、石灰質が少ないから、早期に歩行させたりすると下肢は、体重を支えられず下肢湾曲症をきたす。その反面、膠様質に富むために、弾力性があり、骨折を起こしにくい。また、折れる時には、若い木の枝のように、まずたわんでから折れる。これに反し、老人の骨は石灰質に富んでおり硬く、膠様質が少ないから枯れ枝のようにもろいのである。

したがって、骨の発達が不充分で、膠様質の多いような幼年期に、重い物を持ち挙げさせたり、無理な姿勢を強制したりしてはならない。
第2図 巨人症の患者、中央の人が患者で両端の人は普通の体格の人である

第2図 巨人症の患者、中央の人が患者で両端の人は普通の体格の人である

第1表 骨の科学的成分

第1表 骨の科学的成分

骨の発生と成長

骨のはじめは、膠様質ばかりで、それに次第に石灰質が沈着していって、硬い骨になることを前項で述べたが、これをもう少し詳しく説明しよう。

膠様質が軟骨成分である場合と、結合組織に由来するものと2通りのでき方がある。前者は、手や足の骨のような長い骨のでき方で、骨のできる場所にまず軟骨(膠様質)が出現して、軟骨による骨の模型がつくられる。ついでこの軟骨がこわされて、その後に骨をつくる骨芽細胞が現われて、この細胞によって骨がつくられ(これを骨化とよぶ)軟骨と骨が次第次第に置き換えられていくのである。このようなことから、この骨のことを置換骨という。

後者は、頭蓄骨や顔面の骨などの作られる形式で、結合組織の中に骨芽細胞ができ、これが膠様質を構成するとこれに次第に石灰質が沈着してきて硬い骨となるのである。このようにしてできた骨を付加骨とよぶ。

次に骨の成長が如何にして、行なわれるかということであるが、骨が成長するということは、長さが伸びること(増長)と、太さが増すこと(増厚)の2つが含まれている。

まず、増長は、さきに述べた置換の形で行なわれる。長い骨では、まず骨の中央部から骨化が始まり、これが骨の両端に向ってひろがる。骨端の骨化は中央に比べるとずっと遅く、生後に始まる。骨端の骨化が進んでも、先に骨化した中央部との境には軟骨の層(骨端軟骨)が長く見られる。

成長とともに骨端軟骨の層は薄くなり、しだいに線状となる。さらに、成長が進むと、骨端軟骨が完全に骨化して一本の線となる。骨をX線で撮影すれば、この状態がわかるから、それによって骨の発育の程度を知ることができる。

なお、一般には骨の増長は20歳ぐらいになると終わる。したがって、それ以後は背は伸びない。そのようなわけであるから、身長の増加を伴う体力づくりは20歳以前に行なうべきである。

一方骨の増厚は、骨の表面を覆う骨膜から骨細胞が出て、骨膜の内面に新しい骨質をつくり、それが骨のまわりに付加されることによって増厚される この際、同時に骨の内面すなわち、骨髄腔に破骨細胞という特殊な細胞が現われて、まわりの骨質をこわして骨髄腔をひろげていく。骨の成長が止まっている成人でも、骨折をすると折れた部分の骨膜から骨の新生がさかんにおこり骨を修理する。

なお、前述した骨の増長は、20歳以後の身体には望めないが、増厚の方は適当な刺激さえ与えれば、20歳以後でも起りうるわけである。ただし、年毎に骨膜の機能がおとろえるから、やはり骨の増厚も若いうちに行なう方が効果的である。

骨の栄養

骨の成長には、脳下垂体の成長ホルモンが必要であることはすでに述べたが、そのほか、一般に骨の発育には、ビタミンD、カルシウム、リンの摂取が必要である。これが不足すると、骨化が障害されて、骨は石灰質の少ない弱いものとなり、骨折や骨の変形が起りやすい。

ビタミンDは肝油・牛乳・卵黄・椎茸などの食物に含まれている。しかし植物性食品に含まれているのは、ビタミンDの前の形のエルゴステリンという形で存在する。このエルゴステリンはこのままでは役に立たず、体内で日光中の紫外線を受けると、ビタミンDとなり、はじめて役に立つようになる。したがって、ビタミンDを含む食物をとっても、紫外線のない室内ばかりに居住していてはなんにもならない。

食品中のカルシウムの腸からの吸収は、ビタミンDによって促進される。また、吸収されて血液中に入ったカルシウムは、ビタミンD(A,Cも加わる)の助けによって骨に取り込まれる ところがノドボトケのところにある上皮小体という豆粒のような臓器からでるホルモンは、これと逆に、骨のカルシウムを溶かす作用がある。このため上皮小体の機能が亢進するような病気になると、骨は弱くなり骨折をおこやすくなる。

 なお、ビタミンDは、1日400国際単位(略してIUという)くらいとればよい。参考のため食品中のビタミンDの含有量の表を第2表に示す。
第2表 食品中のビタミンDの量

第2表 食品中のビタミンDの量

リンやマグネシウムは、一般食品中に多く含まれており、とくに、日本食品には、むしろ過剰と思われるくらい多く含まれているから、特別にこれを考慮する必要はない。これに反して、カルシウムは日本食品ではかなり不足勝ちである。
(第4図 骨層板における膠様線維の方向)

(第4図 骨層板における膠様線維の方向)

(第3図 骨の断面図) 参考のため、第3表に骨の発育に必要なカルシウム量(ただし男子のみを対象としたもの)をあげておく。

(第3図 骨の断面図) 参考のため、第3表に骨の発育に必要なカルシウム量(ただし男子のみを対象としたもの)をあげておく。

第3表 骨の発育に必要なカルシウムの量(男子)

第3表 骨の発育に必要なカルシウムの量(男子)

 以上のように、立派な骨格を形成するためには、適当な年齢のときに適当量の刺激を与えることと、その材料である膠様質や、石灰質をとる必要があることはもちろんであるが、このほか身体の骨つくりに関与するビタミンD,A,C,などが不足しないよう心掛けなくてはならない。

 また、先に述べたように、植物食品中のエルゴステリンがビタミンDに変わるためには紫外線が必要であるから、室内にばかり引きこもることなく、適当に日光をあびる必要がある。さらに脳下垂体や上皮小体の機能に異常がないよう心掛けなくてはならない。
月刊ボディビルディング1971年4月号

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