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体力づくりの基礎知識 
2 骨格の構成

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月刊ボディビルディング1971年5月号
掲載日:2018.07.26
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東京薬科大学教授 坪井 実
 われわれの体を構成している骨を分解すると、大小色とりどりの骨になる。これらの骨が、お互に連絡し合って柱になったり、あるいは、籠のように組み合って腔洞を作ったりしている。

 学校の理科室などでよく見受ける骨格標本などでは、骨と骨を連絡するのに、針金やスプリングなどを使っているが、実際の生きた体では、針金やスプリングなどではなく、主として靭帯とか軟骨などが、その役目を果している。

 骨と骨の連結部は関節と呼ばれ、ある程度自由に動くことができるようになっている。しかし、尾骨の関節のようにピッタリ溶接されていて、全く動くことのできないものもある。

1 頭蓋骨

 頭部を構成する骨を全部ひっくるめて頭蓋骨という。一見すると、この骨は頭部の骨と、下顎の骨の2つの骨から作られているように見えるが、本当はそうではない。大小24個の骨と骨がクシの歯を合わせたようにギッシリと噛み合って、あなたかも一個の骨のようにみえるのである。

 頭蓋骨を裏がえすと、そこに大後頭孔という大きな穴があいている。その穴を通して、大豆のような豆をギッシリと積め込み、これに水を人れてやると豆は膨化して、頭蓋の内側から外側に向って圧が加わるから、連結部分がはずれてバラバラの骨片に分解する。

2 脊柱

 背中の骨、俗に背骨といっているものは、円盤状の32~34個の脊椎骨(セキツイと呼ぶ、背ではない点に注意)が重なり合って一本の柱となり、脊柱を構成している。上下の脊椎骨と脊椎骨の間には、椎間板というスポンジ様の軟骨が座布団のような形で入ってるそのため、脊椎は、僅かではあるが、屈伸したり、ヒネられたりすることができる。
第1図 骨格

第1図 骨格

第2図 脊柱(横面)

第2図 脊柱(横面)

 脊柱全体を横から眺めると、S字を2つ縦に連ねた形をしている。すなわち。頸部と腰部が前方に弯曲し、胸部と仙骨部(腰部の下部)が後方に弯曲する。このS字状の弯曲の程度が変わることによって脊柱の長さが変わる。仰臥の状態では、腰部と弯が扁平となるから、脊柱は伸びる。

 これとは逆に、長い時間立ち続けたり、重い物を持ったりすると、S字の弯曲が強くなり脊柱は短かくなる。したがって、朝起きたばかりの時は、極めて僅かであるが身長が高いが、一日中立ち続けていると次第に身長が短かくなるわけである。しかし、若いうちは体の柔軟性が強いから、すぐ元通りになるのであまり目立った変化は見られない。

 この脊柱の弯曲は、生まれる前にはなくて、生後に作られるものなのである。その弯曲のできる経過は次のようである。

 生後50~60日になると、頭を持ち上げようと努力するため、頸部の筋肉が次第に発達する。そのため、頭を支えることができるようになり、頸部の弯曲が始まる。さらに、生後7カ月ごろになって座ることができるようになると、頭、腕および内臓の重量が脊柱を前下方に引くので、全脊柱の後弯ができる。

 この際背中の筋肉がまだ充分発達していないため、第3図(A)のように頭は前下方に沈む。このため、前上方を見ようとして頭を挙げる結果、頸部の筋が強くなり第3図(B)のように頸部の前弯ができる。
第3図 脊柱弯曲の生成

第3図 脊柱弯曲の生成

 生後10カ月ぐらいで直立できるようになる。この頃になると、立ち上ろうと努する。そのため体が前に倒れることを防ごうとし、腰部の前弯を生ずる。それと同時に、骨盤が傾斜する。このときの腰部の前弯には腰の筋肉が力添えをする。

 このように、脊柱の弯曲が永久的になるのは、およそ生後7カ年である。5~6歳頃は、臥位になると、これらの弯曲は消えてしまうが、8歳ぐらいでは、胸部後弯は、胸部後弯は臥位でも消えない。また8~11歳では、頸部前弯が消失しないようになり、思春期発動期には、腰部前弯は永久的となる。脊柱の生理的弯曲の生じるのは、このように主として身体後面の筋肉の作用によるものである。したがって、脊柱の形を正しく保持するためには、背中の筋肉群の鍛錬を怠ってはならない。

 とくに弯曲が固定されるのは、思春期発動期であるから、それ以前に努めて正しい姿勢を保持するように心掛けることと、背筋のトレーニングを忘れてはならない。また、必要以上に重い物を持ったり、背負わせたりするような習慣はさけた方がよい。

3 胸部

 胸部は、12個の胸椎(胸部の脊椎骨)と12対の肋骨、および1個の胸骨から構成される籠状の骨格で、この籠の中に肺や心臓などの臓器がおさめられ保護されている。そして、上にせばまり、下にひろがっている。

 小児では、前後径と左右径は、ほぼ等しいが成長するにつれて左右の径が増して、成人では楕円形となる。しかしなかには、扁平胸、鳩胸、漏斗胸などといって扁平なものや、胸骨の左右が陥没して、胸骨が鳥の胸のように突出しているものや、これと逆に、胸骨が内側に漏斗状に凹んでいるものなどがある。

 これらの原因は、骨の疾患および遺伝的なものであるから矯正しにくいが骨化の終了しないうち、すなわち、骨の発育が行なわれている時期なら、適度の胸の体操を行なうことによって、ある程度矯正することができるのである。

 つまり、胸の体操を行なうことによって、肋骨外縁の骨膜が外筋間筋によって引張られたりして刺激をつけるので、その部の骨膜に血液が充分供給され、また、肋骨の長軸の発育を行なう骨端部が、肺の膨張によって、胸骨や胸椎から僅かに離れるから、骨と骨との重なりによる圧迫が少なくなり、血液の流れが盛んになるということなどが原因となって、肋力骨の発育が促進されるからである。

4 上肢骨および下肢骨

 上肢骨は第4図に示すように、64個の骨から構成される。
 下肢骨も第5図に示すように、下肢帯の骨以外は上肢とほぼ同じ構成である。
第4図 上肢骨の構成 第5図 下肢骨の構成

第4図 上肢骨の構成 第5図 下肢骨の構成

5 運動と骨格について

 骨格を長大するためには、カルシウム、リン、ビタミンなどの栄養を充分にとることと同時に、まだ骨化の終らないうちに、その成長を促進するような方法、すなわち、骨化部の血液の流れをよくしたり、骨端部を圧迫することのないように注意しながら、適度の刺激を与えることが必で要ある。

 これと逆に、骨に圧迫などの外力を加えると、骨端軟骨の血液の流れが悪くなるため、栄養不足となり、骨の膠質の発育がおくれると同時に、いままで出来ていた膠質にカルシウムが沈着して、早期に骨化が起ってしまう。したがって、発育期の青少年に極端な荷重運動や、マラソンのような長距離競走を行なわせたり、また座禅などを強制したりして、脊椎骨や下肢骨などに圧迫を加えたり、器械的刺激を加えたりすると骨化が早まったり、血行障害によって成長をさまたげることもあるので、注意しなければならない。

 また、深呼吸は肋骨の骨端部の圧迫を取り除き、その部分の血行をよくするから、肋骨を長大にすることができる。これに反して、帯などで胸をしめつけると、肋骨の骨端が圧迫されるため、肋骨の発育がおくれてしまう。

 現代の若者は、中年以上の人々に比べて、はるかに背が高いが、これは、食生活が改善されて、骨の発育に必要なカルシウム、リン、ビタミン等が豊富にとれるようになったことも原因であるが、このほか、畳の上に正座するというような習慣が少なくなったためと考えられる。
月刊ボディビルディング1971年5月号

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