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● パワーリフティング誌上コーチ(3) ●
デッド・リフトのポイント

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月刊ボディビルディング1971年6月号
掲載日:2018.03.04
国分寺ボディビル・クラブ代表 関 二三男

まえがき

デッド・リフトは、すでに欧米においては正式種目として競技が行なわれており、記録的にもかなり高いものが 出ております。日本でも来年度から正式種目として取り入れられることに決定しました。また、東京協会では本年度の東京パワーリフティング大会において自由参加種目として実施することになりました。
このデッド・リフトは、とくに、背面の諸筋肉と大腿筋、それに大臀筋を使って行なう種目ですから、スクワットの補助種目としても有効であり、コンテスト・ビルダーにとっても欠かすことのできない種目です。

デッド・リフトの基本姿勢

デッド・リフトの基本姿勢は、写真左のように、バーベルに両足を最も近づけて立ち、両膝をかなり深く曲げて腰を落し、背筋をまっすぐ伸ばしたまま、両肘を曲げないでバーベルを握り体の重心に沿うようにして引き上げます。この際、顔は起こして、目は正面を見るようにします。
これに対して、写真右のような姿勢で行なっている人をよく見受けますがこれは、膝を充分曲げていないため、 どうしても背筋が丸くなり、いわゆる腰高のために、背筋にかかる負担が非常に多くなり、力のバランスという面からみても不利といえましょう。とくに、この姿勢では、バーベルが膝の上まできて、最後に上体を垂直にする動作が困難になります。
記事画像1
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シャフトの握り方

デッド・リフトの場合は、とくに重い重量を引き上げますので、シャフトの握り方が非常に大切です。パワーを 目指している人は、ほとんどリバース ・グリップで握っておりますが、普通のリバース・グリップでなく、フック・グリップで握るリバース・グリップが最も強く、しかも、はずれにくいのでよいと思います。
フック・グリップとは、シャフトを握った場合、親指の第1関節の上に 人指指と中指をのせて握る方法ですが最初のうちは親指の爪が非常に痛いものです。これを慣らすには、電車に乗ったときなど、つり皮の輪をフック・ グリップで握るとか、カバンを持つときにフック・グリップで握るなどして 普段から心掛けていれば痛みもなくなり、同時に握力も強くなってきます。

デッド・リフトの補助運動

①ハイ・プル・アップ
 これは、とくに上背部、僧帽筋を強化するのに有効です。運動方法は、バーベルをオーバー・グリップで握り、身体に最も近いコースを通って、両肘が伸びきるまでバーベルを頭上へまっすぐ引き上げたら、また元の姿勢に戻る運動です。
②グッド・モーニング・エクササイズ
③バック・シット・アップ
④ハーフ・スクワット
この3種目については本誌5月号のパワーリフティング誌上コーチを参照してください。
⑤シット・アップ
シット・アップについては説明するまでもありませんが、デッド・リフト を相当重い重量で行なう場合は、ベルトを強めに締めて行なった方が有利です。このときにおこる諸腹筋の損傷を防ぐという意味で、シット・アップが必要になってくるわけです。

 先に述べたように、来年度からは3種目1回挙上方式が実施されることになり、スポーツとしての要素も完成され、また、見る側にとっても一段と興味あるものになると思います。そして世界記録との比較という点からも、ボディビルが国際的に一歩前進したといえるでしよう。
 最後にデッド・リフトの一流選手としての目安は、各クラス制限体重の3倍以上におきたいものです。
 なお各編で一流選手としての目標重量を、私なりの主観で書きましたが、これをまとめて右記の表を作ってみましたので参考にしてください。
記事画像3

海の向こうの話

記事画像4

史上3番目の600㌔リフター

 さきごろソ連のロフトフ市で開催されたフレンド・シップ・トーナメントで、スーパー・へビー級のリフター、S・バチセフ(ソ連、30歳) は、トータル600㌔(プレス212.5、スナッチ170.0、ジャーク217.5) をマークし、V・アレクセーエフ(ソ連)、S・レディング (ベルギー)に続き、史上3番目の600㌔リフターとなった。

リーブスの映画出演

スティーブ・リーブスが死んでしまった・・・・・・ という根も葉もないウワサがたったことがあるが、彼の主演する映画が封切られてこのウワサも消え、リーブス・ファンを喜ばせた
題名は、A Long Rood from Hell (地獄からの長い道)。
これは彼の映画では最初の西部劇である。しかも、この映画の脚本もリーブスとベルトナレーターで書き上げたものである。彼の映画界における脚本技能があらたな注目をあびている。
この映画では、彼は終始ウェスターンの衣装で身を包み、裸体はあらわさず、ミスター・ユニバースの肉体そのものを売り物にしていた往年の彼から大きく脱皮した演技をみせている。
アイダホに大きな牧場を持つ彼は 馬と牛と西部の空気に完全にとけこむバックがあり、今や西部劇にピッタリの主演俳優となったのである。

デッド・リフト世界チャンピオン、トーケル・ラブンダル

昨年、デッド・リフトで372.9kgの世界新記録を樹立して、パワーリフト界の新チャンピオンとなったトーケル・ラプンダル。
急激に頭角を表わしたラブンダルとは、一体どんな人なのだろう。
実は彼、かつて、21歳の頃からウェイトリフティングを愛好したという前歴の持ち主で最高記録は、スーパー・ へビー級で、トータル460kg、種目別では、プレス162.5kg、スナッチ132.5kgジヤーク182.5kgと、それほど目立つリフターではなかった。
ところが、パワーリフティングを始めてから2年で、ベンチ・プレス215kg、スクワット255kg、デッド・リフトでは、何と 372.9kgという大記録を成し遂げたのだ。
そんな彼も若かりし頃サッカーをしていた当時は身長192.1cmの割に,体重77.5kgとやせていたが、現在は、身長198.1cmと、かのジャボチンスキーよりも8cm高く、体重では、同じく、ウェイトリフティングの英雄アレクセーエフより8kg重い145.1kgの偉丈夫。
体の各部位の寸法は、首囲49.9cm 普通胸囲146.1cm,拡大胸囲157.5cm 上腕囲57.8cm,前腕囲49.9cm,腹囲116. 8cm, 大腿囲 76. 6cm, 下腿囲47cmと、超ド級。
食欲の方もすさまじく、1日の食費は5470円かかり、特大のビーフ・ ステーキを2時間かけて食べ、牛乳を毎日9〜10本は飲み、体重を増やす時などは17本も飲むということだ。 また、タマゴとハチミツを好み、睡眠に至っては、毎晩8〜10時間とるそうだ。
ラブンダルによって、近い将来、デッド・リフトは400kgの壁を越えるであろうというのは”通”の一致した意見である。
(満身の力をこめて、デッド・リフトの世界新記録に挑むトーケル・ラブンダル)

(満身の力をこめて、デッド・リフトの世界新記録に挑むトーケル・ラブンダル)

月刊ボディビルディング1971年6月号

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