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体力づくりの基礎知識 4 筋肉の発育と筋力

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月刊ボディビルディング1971年8月号
掲載日:2018.01.18
東京薬科大学教授 坪井 実
 筋肉をくりかえして使用していると次第に太さを増し、その力も強くなる。このようなことは、日常の経験で誰でも知っていることである。学問的にはこれを活動性の筋肥大という。

 これに反して使わないでいると次第に細くなっていき、その力も弱くなる。これを非活動の筋萎縮という。この現象は病気でしばらくの間べッドに臥している患者の誹腹筋(6月号参照)などによく見られる。この筋肉は、健康なときには常に体を支えたり、歩行したりするときに頻繁に利用される筋肉である。したがって、この筋肉は常に活動性筋肥大の状態におかれている。しかし、病気になると急にその使用が止まるので、今度は逆に非活動性筋萎縮がおこる。このように肥大からいきなり萎縮へと移行するので、その変化が著しく観察されるのである。

1 活動性筋肥大はどのようにしておこるか

 筋肉は第1図のように直径0.1~0.01mmの多数の筋線維というものが無数に集まってできている。筋線維の外側は筋線維鞘で包まれていて、その中に筋形質ならびに多数の筋原線維が入っている。

 筋肉が太くなるのは、この1本1本の筋線維が太くなるためである(第2図参照)。実際に筋肉をよく使う人の筋線維の太さは、一般の人よりかなり太いのである。

 それでは、このような場合、筋線維のどの部分が太くなるのかというと、それは、筋形質、筋原線維の部分である。繰り返し筋肉の収縮が行なわれると、その刺激によって筋線維の毛細管が発達し、栄養物や酸素の供給が盛んになる。その結果、筋線維の外側を包んでいる筋線維鞘や、筋線維と筋線維の間にあって、その空間をみたし、線維同志を接着させる役目をしている結合組織が厚くなり、筋線維を構成する筋原線維が太くなり、筋形質が増加するのである。

2 筋の発育と運動

 筋が肥大するのは、筋肉が大きな力を出すような運動、たとえば、一定時間内に強い負荷にうち勝つような運動を行なう場合にのみ生ずるのである。そして長期間の練習では、負荷の強さが同じままでは、その後の発達は生じない。従って、筋の発達につれて、その負荷も増さなければならない。いいかえれば、練習の進行につれて練習の強さを増していかなけばならない。すなわち、筋肉は、一定時間内に大きい力を出したときにはじめて肥大をおこすのである。

 たとえば、瞬間的に大きい力を出す重量挙げや、スプリントや跳躍などによく起こる。これに反して長距離走や水泳・競歩などでは、あまりめだった肥大はおこらない。
第1図 1本の筋線維の模型図

第1図 1本の筋線維の模型図

第2図 筋肉の横断面の顕微鏡写真(丸く囲まれているのが1本の筋線維である)

第2図 筋肉の横断面の顕微鏡写真(丸く囲まれているのが1本の筋線維である)

3 筋肉発達ならびに筋力増大のためのトレーニング

 筋肉を発達させ、筋力を増加させるためには、一定の抵抗に対して、力を出すような運動をくりかえせばよい。一定の重さの物を持ち上げるとか、一定の強さのバネを引き伸ばすなどという運動をくりかえせばよいのである。これを抵抗運動(レジスタンス・エクササイズ)という。

 ドイツのマックス・プランク研究所のシュラー博士は、筋力を増大するためのトレーニング強度と、練習期間との関係を研究して次のような結論を出している。

(1) 全力の2/3程度の力を出すようなトレーニングを行なった場合が一番効果的である。このようなトレーニングによって筋肉は著しく発達し、筋力もまた急激に増加するようになる。しかし、これ以上強さを増しても、筋力発達の程度は同じである。

  すなわち、筋力発達のためには、筋肉の収縮が強ければ強いほど良いというわけではない。筋肉が疲労困憊するほど激しい練習をする必要はないのである。ただし、トレーニングの効果がでて、筋量が増加したらそれに伴って、負荷を増し、常に2/3の力を保つようにしなければならない。

(2) トレーニングの間隔は毎日1回ぐらいがよい。1日1回ぐらい、短時間でよいから全筋力の2/3ぐらいの力を出すトレーニングを行なうのが、筋肉の発育のために一番よいのである。トレーニングを毎日1回、2日に1回、3日に1回というようにして、筋肉の発育状況を比較してみると第3図のように、毎日1回のトレーニングの時が、最も効果があり、3日に1回からは徐々に低下して、トレーニングの間隔が14日以上になると、まったく効果がなくなってしまう。

(3) トレーニング効果はどのくらい長く持続するか。つまりトレーニングによって獲得した筋肉は、どのくらいの期間維持できるかというと、それは第4図の実験結果で判るように短期間のトレーニングによって獲得した筋肉は、短期間に消えてしまうが、これに反して長期のトレーニングによって獲得したものは相当長い間、筋量が維持できる。

  ミュラー博士は、このような結論にもとずいて、荷重訓練法(オーバー・ロード・トレーニング))によって筋を発達させ、筋力を増大させることを提唱している。
第3図 トレーニング間隔およびトレーニング期間と、筋力増加率との関係を示したものである。図において筋力増加率はトレーニング前の筋力に対する増加量の割合で、100%は筋力が2倍になったことを意味している(ミュラー博士による)

第3図 トレーニング間隔およびトレーニング期間と、筋力増加率との関係を示したものである。図において筋力増加率はトレーニング前の筋力に対する増加量の割合で、100%は筋力が2倍になったことを意味している(ミュラー博士による)

第4図 練習間隔と筋力増加量との関係を示したもので、筋力増加率は練習間隔1日のときの筋力増加量を1.0としたときの値であらわしてある(ミュラー博士による)

第4図 練習間隔と筋力増加量との関係を示したもので、筋力増加率は練習間隔1日のときの筋力増加量を1.0としたときの値であらわしてある(ミュラー博士による)

4 トレーニング中の食事

 トレーニング中は、タンパク質を充分に食べることが必要である。これは筋線維を構成している成分が、主としてタンパク質であるからである。ただし、何もしないでタンパク質を食べることだけでは、筋肉は発達しない。適当量のトレーニングを行ない。筋の発育を促しながら、その材量であるタンパク質を補給してやればよいのである。なお、どのようなタンパク質が良いかということも問題と思うので、これに関しては次号で述べることにする。
月刊ボディビルディング1971年8月号

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