フィジーク・オンライン

Ad by SUPLINX

Weekly Monthly Shopping

’69ミスター東日本 ~ 小沢幸夫選手のトレーニング ~

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1969年10月号
掲載日:2018.02.11
吉 田 実
記事画像1
①インクライン・カール 約45度に傾斜したベンチを使用する。

①インクライン・カール 約45度に傾斜したベンチを使用する。

②スタンディング・プレス 力強い肩をつくるこの種目も、うしろにそって運動すると腰を痛める。

②スタンディング・プレス 力強い肩をつくるこの種目も、うしろにそって運動すると腰を痛める。

③ナローグリップ・ベンチ・プレス 握り幅を極端に狭くしたベンチ・プレス。上腕三頭筋の運動。

③ナローグリップ・ベンチ・プレス 握り幅を極端に狭くしたベンチ・プレス。上腕三頭筋の運動。

記事画像5
 日本ボディビル界の2大行事は、いうまでもなく、ミスター日本コンテストと全日本ボディビルダー記録挑戦会である。

 そのどちらか一方の大会で活躍できても他方では活躍できない。両立は非常に難しい、というのが大かたの意見である。

 ところが、難しいはずのこの両者をおのおの見事に成功させているビルダーがいる。皆様すでによくご存知の本年度ミスター東日本小沢幸夫選手その人である。

 --コンテスト・ビルダーとパワー・リフターを両立させる難しさは私達の想像以上のものであると思うが、その秘訣は?

 --自分では、さほど難しいとは思っていません。ボディビルのトレーニングでも、パワー・リフトの練習でもその一番重要なことは、精神を集中してトレーニングすることです。だから常にそれを心がけていれば両立させていけると思います。

 実に簡単に答える。

 --では、記録会を目指したときのトレーニング法とコンテストを狙ったときの練習は同じですか?

 --いいえ、それはやはり根本的に違います。記録会の前には非常に重いものを使い、セット数を多くして、インターバルは長くとります。それに反してコンテスト前の練習は、同じ重いものを使うのでもセット間の休憩は短かく、せいぜい1分くらいです。

 --1分くらいの休憩で疲労が回復するのですか?

 --練習中に疲れを感じることはありません。それから私のトレーニング方法でちょっと変わっているのは、ひとつの種目のセット数が増えてくると逆にペースが早くなることです。

 --普通はセット数を多くすればペースは遅くなるものですが……?
④レッグ・カール 大腿二頭筋を鍛えるのには最も効果的な種目です。

④レッグ・カール 大腿二頭筋を鍛えるのには最も効果的な種目です。

⑤シット・アップ 1セット30回で行ない腹筋をシャープに。

⑤シット・アップ 1セット30回で行ない腹筋をシャープに。

⑥アイソレーテッド・カール スコット・カールの別名がある。

⑥アイソレーテッド・カール スコット・カールの別名がある。

 --私は、ひとつの種目の練習にも常にヤマをもたせています。始めは緩やかで次第に調子を出していくので、終りの方は切りつめてセットを重ねるのです。

 --なるほど、調子の波に乗る方法ですね。種目の選択はどうなりますか?

 --記録会の前には肩の運動をほとんどしません。

 --どういう理由からですか?

 --胃をあまり疲労させるとベンチ・プレスが上がらないのです。

 なるほど。私だったら逆に肩の力を強化して記録向上を図ろうと考えるが、ベンチ・プレス中量級の日本記録(157.5kg)保持者ともなると、われわれとはちょっと違う。

小沢選手はランニング愛好者

 --失礼かもしれないが、スクワットの記録が152.5kgで、ベンチ・プレスよりも弱いのは下半身の練習不足ではないか?

 --ボディビルダーは、重量あげ選手のような乗馬ズボン型の脚ではいけないと思う。力強さと共にきれいさがぜひとも必要だから、私の下半身の練習はスクワットだけに頼らないで、むしろバーベル運動よりもランニングを重視しています。

 --ランニングは長い距離を走るのですか?

 --いいえ、ダッシュが主です。

 スクワットの記録からは考えられないほどの素晴しい脚をしている秘密はこれらしい。

 --ランニングは単に筋肉発達のみでなく、心肺機能の向上にも非常に効果的なので、ボブ・ガイダも愛用しているそうです。それにダッシュをすると瞬発力がつくので、その翌日は重いバーベルが上がります。

 ランニング効果の礼賛がまだ続く。

 --ランニングを続けていると、全体的に非常にまとまった美しいプロポーションが作れます。ディフィニション獲得にも効果的ですし、それからまた……

 いや、もう結構。小沢選手がこれほどランニングの効果を強調するのは、陸上競技からボディビルに転向した前歴からくるのだろうか。

 小沢選手は、新潟県糸魚川高校に在学中は100メートルと棒高跳びの選手だった。インター・ハイの新潟県予選の競技会の最中に、棒高跳びの棒の突っ込みに失敗したのか、足を骨折してしまった。これが、そのときまでは陸上競技の補助運動に行なっていたボディビルを、専門的に行なうようになっ
たキッカケである。
⑦ラット・マシン・プルダウン ラット・マシンを使用して真下に引き降ろす。

⑦ラット・マシン・プルダウン ラット・マシンを使用して真下に引き降ろす。

⑧インクライン・ベンチ・プレス 大胸筋上部から三角筋を中心に鍛える。

⑧インクライン・ベンチ・プレス 大胸筋上部から三角筋を中心に鍛える。

⑨カーフ・レイズ 最近のコンテストでは、このフクラハギの発達も重視される。

⑨カーフ・レイズ 最近のコンテストでは、このフクラハギの発達も重視される。

バルク獲得にはロー・レピティション

 --自分の体の長所はどこだと思いますか?

 --脚のディフィニションと大胸筋のバルクです。

 --脚のディフィニションについては散々ランニングの話を聞かされたので、次はバルクをつける方法を教えてください。

 --結局、ロー・レピティションでトレーニングすること、それに栄養と休養の3つが大事でしょう。

 --ロー・レピティションは全種目にわたっていますか?

 --いいえ、大きな筋肉を使用するベンチ・プレス、スクワット、スタンディング・プレスなどの種目に限定して、それ以外のものは特別に重いものを使用しません。

 --栄養面ではどんなところに気を使っていますか?

 --食事には、あまり神経質になりません。種々な食べ物を好き嫌いなく食べることが大切で、プロティン錠や栄養剤のたぐいは一切用いません。

 --献立を簡単に説明してください。

 --朝は、サンドイッチを中心に牛乳とトマトジュースを合わせて3本。そのほかにチーズや鮭とミカンの缶詰です。昼と夜は、肉か魚類を必らず摂るほかは決まっていません。夜食はビールと各種のハム、それからギョーザとラーメンです。

 --食事は自宅でするのですか?
 
 --いいえ、1日4回の食事はすべて外食です。

 --外食でこれだけのものを毎日食べると、フトコロの方が大分涼しくなるでしょう……。
⑩バック・プレス 大きな肩を作るのには 欠くべからざる種目。

⑩バック・プレス 大きな肩を作るのには 欠くべからざる種目。

⑪スクワット 小沢選手は、スクワットとランニングで下半身のディフィニションを出す。

⑪スクワット 小沢選手は、スクワットとランニングで下半身のディフィニションを出す。

⑫シーテッド・ラタラル・レイズ ベンチに腰かけて反動を使わずに運動する。三角筋側頭に効果がある。

⑫シーテッド・ラタラル・レイズ ベンチに腰かけて反動を使わずに運動する。三角筋側頭に効果がある。

⑬ハック・リフトこの種目で大腿部の形を整える。

⑬ハック・リフトこの種目で大腿部の形を整える。

 --ですから収入の全部を食費にまわしています。

 給料のすべてを食費にするほどの熱烈なビルダーは、どんなときに練習の喜びを感じるものなのだろうか?

 --常に楽しく練習していますが…特に感じるのは、自分の目標にしているウェイトが上がってセット数をこなしたときです。

 --重量にこだわりますか?

 --あまりこだわりませんが、やはり常にパワー・リフトを意識しているので……。それに筋力増強が筋肉発達に最適というビル・パールの言葉もありますし。

 --筋力が強くならないと筋肉が発達しないということですか?

 --その人の体質に合ったトレーニングをしなければ発達しないと思うが、自分の体質には筋力を増強していきながらの重量練習が適していると思います。

 体質的にも、コンテスト・ビルダーとパワー・リフターの両立が容易なようだ。

 --それに私はオーバー・ロードの原理を信じているので、漸進的に負荷を増やしていかなければだめだと思います。これは、世界で初めて陸上競技で1マイル4分の壁を破ったロジャー・バニスターもいっていますね。

 むやみに重いバーベルを使いたがる人達とは違って、小沢選手は科学的な信念をもった重量練習をしている。

ボディビル界に望むもの

 --今年は念願のミスター東日本のタイトルをみごとに獲得しましたが、そのときの心境を語ってください。

 --ミスター東京コンテストのときには、末光さんに敗れて4位と振るわなかったが、その末光さんに勝ったという気持が、何ともいえずうれしかった。練習場のライバルとして常に意識していただけに、一層のよろこびがありました。

 本年度ミスター東京の末光健一選手とは、現在同じ東京・中野ボディビル・センターでトレーニングに励んでいるが、その前もやはり代々木トレーニング・センターで一緒に汗を流していた仲である。コンテストでは宿命のライバルであるが、勝負を離れれば、お互いの心を言わず語らずのうちに理解する親友同士である。

 --コンテストのポーズでは、何を一番アッピールしたいですか?

 --筋肉的には胸と僧帽筋です。だから、モースト・マスキュラー・ポーズが最も好きです。それ以上に訴えたいものは、荘厳さと華麗さです。これが現代人にとって一番必要なものであると思います。現代は見せかけの格好にとらわれ過ぎて、内面がうとんじられている感があります。

 --あなたは日頃から、健康管理のボディビルをほそぼそとやっていると言われるが、その人が東日本コンテストで優勝したのでは、他のビルダーの立つ瀬がないと思うが。

 --ボディビルを育てるのに最も必要なことは、健康管理としてのボディビルをPRすることだと思います。だから日頃からそれを強調する意味で、コンテストに出場するのです。とにかく社会体育としては、ボディビルが最もうってつけのものだと思います。

 --今後のビルダーに望むことは?

 --ボディビルダーの中で最も嫌いなのは筋肉屋といわれる人達です。筋肉のみというのはイヤですね。それから、ボディビルダーは非常に穏健な性質をもっていますが、ボディビルの世界だけに留まらないで、もっと積極的に日本の社会を大きく飛躍させる原動力となって欲しい。

 --ボディビル界に望むことは?

 --社会体育の一翼となって、老若男女の健康管理のために、全国のジムを開放してほしい。欧米にくらべると日本にはこの種の施設が少な過ぎる。この点に関して、協会の活躍を期待しますね。

 数年前には、パトカーに乗務し、現在は警視庁第一機動隊に所属。幅広くしかも奥行きのある見識を備えているこの好青年の意見には、ひとつの道を長年かかって歩み、しかもそれを征服したものの持つ真摯な輝きがある。

 ボディビルとともにグラフィック・デザインの勉強に熱中している小沢選手の今後の社会雄飛を期待しよう。

(筆者は第一ボディビル・センター・コーチ)

小沢選手のトレーニング・スケジュール表

記事画像16
記事画像17
月刊ボディビルディング1969年10月号

Recommend