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武本宣雄の初心者用トレーニング・コース 1

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月刊ボディビルディング1969年10月号
掲載日:2018.03.09
武 本 蒼 岳
 今月から3回にわたって、初心者のトレーニング・コースを紹介していきます。私のボディビルディングの経験から得た知識をもとに、体質型の分類から始めて、10月外胚葉型、11月中胚葉型、12月内胚葉型という順序で、できるだけこまかくポイントを解説しながら、稿を進めていくつもりです。

□人間の体型

人間は、まず大きく分類して、3つのタイプに分けることができます。

 人間の体の組織器官は、内・中・外の胚葉から発生、分化しており、内胚葉からは心臓・胃腸・肝臓の臓器、中胚葉からは骨格・筋肉・心臓・血管、外胚葉からは脳神経・感覚器・皮ふ等がそれぞれできています。

 ですから、形態が発達にともなうとすれば、内胚葉型の人は、胃腸・肝臓・心臓の機能がよいので、肥満体が多いのです。

 中胚葉型の人は、骨格・筋肉・血管・心臓の機能がよいので、当然、スポーツマンとしての素質が多分にあるわけで、有名なビルダーはほとんどこれに属するものと思われます。ただし、それがすべてを決定づけるものではないこともつけ加えておきましょう。

 1966年度IFBB“ミスター・ユニバース”のデイブ・ドレイパーは、今でこそ世界的ビルダーではありますが、数年前までは肥満体の青年で、“ファット・ボーイ”(デブ)のニックネームで呼ばれていました。

 さて、外胚葉型の人は、脳・神経・感覚器・皮ふの機能がよく、体力的には虚弱ですが、精神的な活動は活発です。

 以上は、アメリカの心理学者ウィリアム・ハーバート・シェルドン氏の研究になる体質型の分類法で、これは内分泌機能(ホルモン)ともひじょうに関係が深いのです。そして、私が最初に体型の分類にふれたのは、これからボディビルディングをやってみようと思っておられる人たち、そして初心者の方々が、自分の体の長所、短所を知り、その知識を有利に生かしてトレーニングを行なえば、いちだんとすばらしいトレーニング効果をあげることができる、と確信しているからです。

□トレーニング効果

 私たちが筋肉づくりや筋力づくりをするばあい、そのトレーニングには次の3つの条件がある、と思われます。

 ①“強さ”の条件で、一定水準以上の力を出すこと。

 ②“時間”の条件で、一定水準以上の力を維持すること。

 ③“頻度”の条件で、一定の間隔をもってくりかえすこと。

 筋力づくりの第1段階は、筋力を強めることであり、そのばあい、①と②を満たすことが必要条件です。それには、筋肉に適当な刺激をあたえて、筋線維を太くしなければなりません。これは、筋線維の数がふえるのではなく、その1本1本が太くなり、内部のタンパク質の量がふえ、全体としても筋肉が太くなることです。また、ヘティンガーとミュラー両博士のデータによりますと、筋力を高めるばあい、充分なトレーニング効果をあげるには、最大筋力を100kgとすると、その40%の40kg以上は出さなければならず、30kg以下だと現状維持、20%だとトレーニング効果がなく、かえってマイナスになるし、70~80%以上だと、40%以上出したときと効果に差がない、ということです。もちろん、そのばあいの筋力の高低によってトレーニングの必要時間は異なるわけです。
ツー・ハンズ・カール

ツー・ハンズ・カール

スタンディング・プレス

スタンディング・プレス

ベンチ・プレス

ベンチ・プレス

 筋力づくりの第2段階は、最高の努力をして最高の筋力をいかに集中的に出すトレーニングをするかです。私たちの神経はすべての筋線維を支配し、神経が強く興奮すれば、筋肉が強く収縮して強い力を出せます。つまり、これが神経の強さの調整作用です。したがって、トレーニングで筋線維の一致協力体制を望む時期に起こせるようにしておけば、集中的に力づくりができるのです。

 先に述べました③“頻度”の条件については、トレーニングの積み重ねにより、その効果を期待できます。ヘティンガー、ミュラー両博士は、力の刺激により、筋肉内の化学変化が促進され、エネルギーの消耗が起こりはじめ、完全に消耗されないうちに、その回復と補給が行なわれ、積み重ねられて、効果が起こるのである。といっています。その化学変化が起こるには、およそ1日の時間を必要とします。
外胚葉型

外胚葉型

□外胚葉型の人へ

 “人間の体型”のところでふれましたとおり、外胚葉型の人は、いっぱんに筋肉量が少なく、線病質的な体格なので、筋肉の発達に時間がかかるものです。ジムで、外胚葉型の練習生から私はたびたび「私はAさんより練習量が多いのに、筋肉の発達がおそいのはどうしてなのでしょうか?」といった質問を受けます。

 これはしかたのないことなのですが、だからといって、このまま投げ出してしまえば、その人はそれで終わってしまいます。こうこう人たちが忘れてならないことは、自分自身の体質を知り、トレーニング効果に注意する、ということです。自分のがんこな体を発達させるためには、けっきょく自分の体質に必要な運動種目を選び、それを組み合わせて、合理的なむだのないトレーニング・コースをつくらなければなりません。
ベント・オーバー・ロウイング

ベント・オーバー・ロウイング

スクワット

スクワット

シット・アップ

シット・アップ

 今回のテーマは、外胚葉型の人のトレーニング・コースなので、私のジムで採用している低回数システムをとりあげて、種目の選び方、組み合わせ方、そしてトレーニング・コースのつくり方を述べてみましょう。

 最初に、体を大きく腕・肩・胸・背・脚・腹の6部位に分け、次のようにそれぞれの部位の運動種目を決めます。

腕--ツー・ハンズ・カール
肩--スタンディング・プレス
胸--ベンチ・プレス
背--ベントオーバー・ロウイング
脚--スクワット
腹--シット・アップ
中胚葉型

中胚葉型

 次に、運動のくりかえし回数ですがこれは明らかに低回数システムが好ましいので、8回くらいでよいでしょう。セット数については、指導者によって
かなり違いがあると思いますが、私は大筋群(胸・脚)と小筋群(腕・肩・背・腹)とに分け、大筋群は6セット小筋群は4セットにしています。

 1週間におけるトレーニングの実施日数は、ふつう4日ぐらいが望ましいのですが、生活環境により、1週2~3回でもよいし、また、疲労感がなく1週5回くらいできるようでしたら、それでも結構です。トレーニング回数の多い人のほうが早く発達すると思われますが、だからといって、むりしてまで練習するのはまちがいです。体のコンディションがよいときにこそ、トレーニング効果はあらわれるのですから!
ラテラル・レイズ

ラテラル・レイズ

 このシステムでトレーニングをつづけて、2カ月もすれば(早い人は1カ月)、かならず新しい種目の増加が必要となります。そんなときは、信頼できる経験者にどしどし質問をして、スケジュールを進めていきましょう。種目増加の1例として、バーベル使用種目にダンベル種目を加えてみるのもおもしろいと思います。胸部の種目であるベンチ・プレス8回×6セットにダンベル種目のラテラル・レイズ8回×4セット(少しずつふやす)を加えるといったぐあいに。

 また、初期のころは、種目だけでなく、重量の増加も忘れてはいけません。実施回数が楽にこなせるようになったら、ただちに増量することが大切なのです。

□姿勢

 運動の姿勢にはチーティング・スタイルとストリクト・スタイルの2つがあり、初心者のばあいは、かならずといってよいくらい、チーティング(反動)を利用して運動を行なっています。とくに、我流でトレーニングをされている方に多く見られるようですが、これは注意しないといけません。

 ツー・ハンズ・カール(腕の種目)を例にとりますと、この運動の目的とする筋肉は上腕二頭筋なのですが、反動を利用することにより、腰背筋や三角筋を使うことになって、かんじんの上腕二頭筋への効果が少なくなり、むだが多くなるのです。

 ストリクト・スタイル、つまり、反動をつけない姿勢で、リズミカルに正しく行なうことが、効果をより大きくするのに、ぜったいに必要な条件であることをおぼえておいてください。

□種目間とセット間の休息

 セット間の休息は、ふつう1分間にしていますが、呼吸さえととのえば、短縮してもかまいません。筋肉の興奮がさめやらぬうちに、どんどん練習を積み重ねることです。時間の短縮が練習の効率を高めることはたしかで、コンディションのよいときは休息時間を短かくしてよいし、逆に、疲れているときは、充分に休息をとることが必要です。けっきょくは、“何分休め”ということではなく、その日その時の体の状態に応じた時間のとり方をすればよいということになります。

 種目間の休息のばあいも、呼吸をととのえ、気力が充実するのを待って次の種目に移るように心がけてください。やる気のないとき、気力の充実していないときの練習は、とかく事故の原因となります。
内胚葉型

内胚葉型

□ウォームアップとクールダウン

 運動の前には、ウォームアップをかならず行なわなければいけません。呼吸器、循環器、各筋群、関節等に、いまからトレーニングにはいるぞ--いう予告をしておきませんと、体のもとつすべての能力や機能を充分に発揮できないのです。

 終末運動(クールダウン)もかならず実行しましょう。体の各部分、関節等をよくほぐしてやり、呼吸をととのえて、トレーニングを終わります。



 以上、今月は外胚葉型の初心者を対象に書いてみました。今回は、体型分類に紙数をさきましたので、充分に意をつくせなかったところがたくさんあると思いますが、次号では、ちがった角度から初心者のトレーニングを追究していくつもりです。この初心者のトレーニング・コースを読まれて、もっと深く知りたいというご希望があればどしどしお寄せください。それも大いにとりあげて、3カ月にわたり、私のボディビルディングに対する考え方、指導法を述べていきたいと思っています。なお、写真のモデルをお願いした角村良介、井上佳明の両君は、ともに外胚葉型で、経験6カ月の練習生です。

(筆者は大阪武育センター指導主任)
月刊ボディビルディング1969年10月号

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