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◇私の指導法◇ 目的に合わせて5つのコースに

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月刊ボディビルディング1972年7月号
掲載日:2018.06.07
'60'63ミスター日本 広島トレーニング・センター代表
金沢 利翼

社会体育とボディビル

 指導法といっても別に特別なものがあるわけではない。いや、むしろ私自身がもっと勉強したり、本場アメリカなどで専門的な立場でいろいろ学んでみたいと痛切に感じている次第で、もっか研究中といった状態である。
 世の中の人は、誰でも常に健康でありたいと望んでいるにちがいない。しかし、その反面、運動に関しては無関心であり、積極的にこれにとり組もうとしない。
 最近になって社会体育とか健康管理ということが再認識され、政府や国民の関心度が高まってきたことは、まことに喜ばしいことである。そういった点では、このボディビルディング誌などは、それらの無関心な人たちに対し運動の必要性をPRし、ボディビルディングの普及とともに、社会体育の向上という面で大きな役割を果していると思う。今後とも大いに声援をおくりたい。
 社会体育とか健康管理といっても、その方法は数多くあるが、年令、職業に関係なく、相手もいらず気軽にできるという点においてボディビルディングに勝るものはない。この意味からもこれからは私ども指導者やジムの経営者は、大いに普及に努め底辺を拡大して社会体育の推進力となるよう努力しなければならない。
 しかし問題は、運動に対する関心が高まってきたからといって、すべての人がボディビルダーでありたいとは思うまい。多くの人は何らかの方法で気軽に身体運動の機会を作り、運動不足を解消し、体重の調節をはかりたいと願っているのである。すなわち、ボディビルディングは、ビルダーの養成のためのものであってはならないのである。もっと範囲の広い人たちから愛好されて始めて本当のボディビルディングといえるのではないだろうか。

米軍基地でのトレーニング

 私がいま指導にあたってもっとも学びたいことは、外国での運動に対する関心度すなわち、何人が運動不足を解消しようとし、何人がボディビルダーを目指し、また、何人が体重調節に関心をもってトレーニングを実行しているかという比率であり、さらに、これらに対する指導の仕方である。
 かつて私はミスター日本になった直後、次の目標をたて、それを達成するため、広島からバスで約1時間、山口県岩国市にある米軍岩国基地のジムに通ったことがある。
 このジムのインストラクターは非常に親切で熱意のある人だった。とくにトレーニングの指導には熱心で、よく自ら模範を示しながら教えてくれた。ジムの中はいつもきれいに整頓されており、もう一度練習に行きたいという気持になってしまうような素晴らしいジムだった。このことは、大阪の武本蒼岳選手もしばしば顔を見せていたが私と同じことを感じていたということだった。
 彼の指導法は特別変ったところはなかったが、会員1人1人のトレーニング・カードを作成し、これに必要なデータをきちんと記入して、これを基に会員はトレーニングをするようになっていた。
 いまではどこのジムでも採用している方法であるが、当時は目新しい科学的な指導法だと感じたものである。
 意外だったのは、会員たちがプロティンやビタミン類の栄養剤を常用していることだった。そして、彼等がトレーニングと同じくらいに栄養ということに強い関心を示し、研究していることを知った。

新入会員を5つのコースに

 ボディビルを始めようとする人たちは、それぞれ異った動機がある。そして、会員の希望を満足させるために、次にあげるような5つのコースに選別して指導するようにしている。
①運動不足コース
 これはいわゆるフィジカル・フィットネス・コースである。ここでは主に運動不足を解消し、常に快適な健康を維持し、体調を整えたいという人のために。
②減量コース
 運動不足と過食による太り過ぎをなおすためのコースで、主に運動と食事療法を指導する。
③ボディビルディング・コース
 極度のストレスの蓄積と運動不足から生ずるやせ過ぎの人に、適切なトレーニングを行ない、逞しい筋肉づくりを指導する。ここでは体重増量のための補充食品の指導をすることもある。
④スポーツの補助運動
 これはいわゆるウェイト・トレーニングで、スポーツ競技者の補助運動として機能向上と体調維持を目的としたものである。
⑤美容体操コース
 (イ)運動不足 (ロ)太りたい (パ)やせたい、の3つの部門に分け、食事療法と運動をあわせて指導する。

初心者への指導法

 所定の用紙に年令、職業、運動経験の有無等を記入してもらい、ボディビルを始める動機や目的を聞いていると長年の経験からその会員の体力や運動能力をほぼ正確につかむことができるものである。
 次に体位を測定し、運動種目とかノルマ(仕事の分量)を細かく記入したトレーニング・カードをつくる。このカードはタイプして記録を残すようにする。
 そして、いよいよ実技の指導に入るのであるが、ここでもっとも大切なのは、正確な運動のやり方を習得させることである。これは、事故の防止と、効果をあげるため絶対おろそかにしてはならない。もちろん始めてのトレーニングであるから、重量、回数は各人の能力に応じたもので、しかも、基本姿勢をマスターするという点からも、少し軽めのものを使用するようにしている。
 また、初心者の多くはその効果を急ぐあまり休養をおろそかにすることがあるので、この点についても充分注意しなければならない。
 最初に決めたスケジュールに従ってトレーニングしているうちに、やがてこれらの運動が十二分にこなせるようになったら、次の新しいノルマを決定し、再びタイプして会員に知らせる。
 とくに、太り過ぎ、やせすぎの傾向のある会員に対しては、トレーニングの指導と同時に食事の指導も欠かしてはならない。

中・上級者への指導法

 ある程度の期間、一定のリズムと強度で運動していると、必ずといってよいほどマンネリとスランプにおちいるものである。とくに、中・上級者においてこの傾向が強い。このような場合には運動法の変更(倒えばシングル・セット・システムからスーパー・セット・システムへの移行)やインターバル(セット間休息)の増減等のアドバイスを行なう。
 また、運動量の増加にともなって、栄養、休養にもとくに注意し、プロティン・ドリンク等の補充食品の使用法についても指導する。
 コンテストを目指すような、ある程度長い経験をつみ、筋肉も発達してきた会員に対しては、いまさら細かいことをいう必要はない。各人が、それぞれの目標に向って真剣にトレーニングしているからである。また、私自身も卒先して積極的にトレーニングに励むように心掛けているので、自然によい雰囲気をかもし出しているのかもしれない。
 確か今年の1月号だったと思うが、本誌で窪田先生が次のようなことを書いておられた。――やる気をもって真剣にボディビルに取組んでいる人にとっては、1年間という日時は非常に短く感ずることでしょう――
 確に常に真剣にボディビルに取組んでいれば、かりにコンテストが明日にでも急に開催されたとしてもあわてることはない。コンテストを目指すビルダーにとっては、常日頃が勝負だと思い、精進を怠ってはならない。このことは、いわば大きな精神修養にもつながるのである。
 常に前向きになってバーベルと取組んでこそ、これにこたえて優勝という栄光が約束されるのではないでしょうか。

中・高年者への指導法

 最近、運動不足が体におよぼす悪影響などとマスコミで取りあげられているせいか、中・高年者でトレーニングを希望するケースが多くなってきた。
 これら中高年者がトレーニングを始めるにあたって、必ずしなければならないのが、医師による健康診断である。これはなにも難しいことではなく、簡単に肉体的な疾患の有無と、運動が可能かどうかという診断である。
 中高年者のトレーニングの初期には運動種目の選定、ノルマ等については細心な注意をはらい、とくに過激な疲労はさけなければならない。そして、運動のやり方についても、手取り、足取り、根気強く見守ることが大切だと思う。
 私のセンターには、すでに本誌で紹介されたことのある上野万平(74才)さんを始め、何人かの高年者がトレーニングに励んでいるが、何といっても本人の意欲と努力こそが、金銭によって求め得られない健康という財産を得ているのである。この意欲と努力をいかに維持させるかが、私たち指導者の仕事なのである。

女性のための指導法

 女性がトレーニングを希望する場合その理由の大部分はやせたい、すなわちプロポーションを良くしたいというものである。そして、その原因はほとんど食べ過ぎと運動不足からきているといっても過言ではない。したがってこれをなおすには食事療法と運動を同時に指導する必要がある。
 女性の運動も男性と同じ器具を用いるのであるが、場所はできるだけわけて女性専用の部屋をつくるのが好ましい。私のセンターでも以前は男女兼用でやっていたが、女性の希望で最近は男性とは別に専用の部屋をつくった。
 とくに女性のトレーニングにおいては、心肺機能を高め、カロリーの燃焼を早める目的で、エアロビック的(有酸素性)トレーニングを重点にスケジュールを組むようにしている。そして会員にはその日に実施したトレーニングの回数、時間等を克明に記入させ、これを毎日チェックさせる。これによって会員たちに何か義務感のようなものを与え、途中で断念しないように心掛ける。
 さきに述べた食事療法については綿密な指導をするほか、センターの中にジュース・バーをつくり、純度の高い各種のプロティン・ドリンク(舶来)などをすすめたり、また、家庭においてもこれを摂取するよう指導している
 ジュース・バーはアメリカのジムではよく見受けられるもので、トレーニングのあとで会員たちはよくこれを利用していた。また、外国のジムでは非常に沢山の栄養補充食品を販売しており、普通の食事で不足しているものを補給し、栄養のバランスに大きな配慮をしている。
 外国に比べて、日本ではまだ補充食品に対する研究と、認識が不足しているのではないかと思う。

スポーツの補助運動としての指導

 一般のスポーツの基礎体力づくりとそのスポーツの競技力向上を目指して入会してくる人もいる。ボディビルの基本であるウェイトを用いたトレーニングによって、その弱点を強化するのが目的であるから、これらの人たちに対しては、専門のスポーツとウェイト・トレーニングを並行して練習させる必要がある。いわゆるコーディネイション(協応性)が大切なのである。
 これらの人たちは、一般の人と違って運動不足ではないので、すべての運動を平行して実施する必要はない。それぞれの弱点を見出し、それに必要な運動を重点的に実施させなければならない。そして、過労のために本来のスポーツがおろそかにならないよう、コンディショニング(体調を整える)にはとくに配慮する必要がある。
月刊ボディビルディング1972年7月号

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