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JBBAボディビル・テキスト⑰ 指導者のためのからだづくりの科学
各論(解剖学的事項)-神経系1

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月刊ボディビルディング1975年1月号
掲載日:2018.07.31
日本ボディビル協会 指導員審査会委員長 佐野 誠之

第5節 神経系

1.神経系の大要

 神経という言葉は通俗的にはいろいろな意味を伴って使われている。

「それは神経だよ」とか「少し神経質だ」という場合は、中枢神経に密接に関連した意味で使われており、「神経が切れた」とか「神経痛だ」などというときは、末梢神経についていわれている。また、「運動神経がよい」とか「にぶい」というときには、運動が上手にできるとか、上達するのが早いとか、あるいは運動が下手であるとか呑み込みが悪く上達が遅いとかの意味に使われている。

 しかし、運動神経といわれるものは学問上も実際に存在するもので、医学上、運動神経がだめになると運動ができなくなる。日常用語として使用している意味は、生理学上とは少し違った内容をもっているもので、その表現内容は複雑であるが、学問上の神経も非常に複雑で、難解なものである。

 運動の仕組みについて必要な範囲において、これから神経系について一緒に勉強していきたいと思う。重複したような記述が出てくるが、これは神経系の概要を良く理解してもらうために表現を変えて記したためである。

①神経系の役目

 神経系という器官は、身体のいろいろな部分の働きを、生命を維持するのに最も適した方向へ統制するためにある器官系である。

 身体のおかれている外部環境の状態や、身体の内部の状態を認識し、それらの変化を刺激として受け入れ、この変化をいろいろの器官に伝え、そのときの環境や内部の状況に応じ、適した働きを起こさせるようにし、身体各部を連絡して、各部からその働きについての情報を相互に連絡する。つまり、刺激→反応の要である。

 したがって、筋とか腺とかのようにそれ自身の働きそのものが、身体の一部として最終目的となるものではなく筋や腺などの働きを調整するという間接的な働きがその目的である。

 すなわち、神経系とは①感覚器官と一緒になって体外の情報を集め、②身体の各部を連絡して1つの有機体にまとめる、という2つの役割をもっている。(参考図D-1)

 われわれの身体は、多数の器官系とそれを構成する器官とから組み立てられており、この複雑な構成が、全体として調和を保ち、外界に対して適応していくことができるのは神経系の働きによるものである。それ故に、神経系は、身体が大きく、かつその構造が複雑な動物ほど複雑である。

②ニューロンとシナプス

 神経毛を組み立てているおもな細胞は神経細胞であり、これはどこにでもちらばっているものではなく、ちゃんときまった場所がある。その一番多く集まっているところが脳と脊髄でありこれを中枢神経という。

 神経細胞の種類には、知覚性、運動性、連合性(求心性と遠心性との間をとりもつ役目)があり、大きさも外形も異なるが、それぞれに従って、その性質や働きも違う。

 神経細胞は非常に微妙な働きをするもので、その形態的特徴の1つは長い突起をもっていることである。この突起は、細くて長い糸のようであり、これを神経線維という。このように、1つの細胞と、これから出ている神経突起とを、神経組織を構成する1単位とし、これを神経元(ニューロン)という。(参考図D-2、D-3)

 1つの神経線維が、2つ以上の働きを兼ね営むものでないことは研究の結果明らかにされているが、しかし、それぞれの神経線維の構造が、どのように違っているのかはまだ充分に知られていない。神経元(ニューロン)は形態学的にも生理学的にも、また物質代謝の上からも完全に独立した単位であり、ニューロン間の連絡はシナプスという接合部分である。つまり、ニューロンの活力は、シナプスを通じて次のニューロンに伝えられる。

 このシナプスは、その様態により、活動性に働く場合を興奮性シナプスといい、活動を抑えるように働く場合、これを抑制シナプスという。

 1個のニューロンが他の1個のニューロンとつながるだけでは、たんに中継するにすぎないが、1本の軸索が枝分かれして多数のニューロンと接するときには、一時に多くのニューロンに影響を与える。これを発散という。

 また、1個のニューロンに対して多くの軸索分枝の末端がシナプスを作って、いろいろなニューロンの活動が1ヵ所に集約されることを収剣という。(参考図D-4)

 なお、伝達の方式(これは生理学的な事項)により、電気的シナプスとか化学的シナプスとかに分けられるが、いずれにせよ、神経系の中では興奮性シナプスを作る興奮性ニューロンと、抑制性シナプスを作る抑制性ニューロンとが巧みに組み合わされてニューロン回路をつくり、複雑な伝達と処理を行なっている。

 以上のように、基本的要素としては神経細胞が主体ではあるが、その働きを補助する神経膠細胞とが集まって神経系という複雑な組織器官を構成している。もちろん、神経系も身体の一部である以上、生きていくためには栄養や酸素を必要とする。このため神経系の内部にも血管が分布している。

 要するに、神経系を一言で表現すれば、神経元(ニューロン)の集合体であり、これが雑然と無秩序に集団をつくっているのではなく、整然と一定の方式に従って配列されている。

 このニューロンは、前述のように細胞体と、それから出た突起(神経線維)からなっており、神経細胞が報告を受けるときに使用される線維と、他へ通報するときの線維とは別である。すなわち、神経線維は一方通行であって往復はできない。これらの神経線維の長さはいろいろで、短いものは数ミクロンから、長いものは1メートルにも及ぶものがある。

 神経細胞が報告を受ける方の繊維を樹状突起といい、他へ通報する方の神経線維を神経突起という。すなわち、ある神経細胞は、樹状突起を通じて他から通報を受け、神経突起を通じて他へ報告したり、あるいは命令として伝える。

 この神経突起(軸索突起)の先端は細かく枝分かれして終わっており、その末端が筋細胞とか、腺細胞とか、あるいはまた、他の神経細胞やその樹状突起に接触している。このように、他の細胞に接するところを連接(シナプス)と呼んでいる。神経突起と樹状突起とではその先端にある連接装置の性質が違う。(参考図D-5)

 シナプスというのを簡単にいえば、2つ以上のニューロンを伝わっていくときの、そのツネギ目のことである。
〔参考図D-1〕神経系の役割を示す模型図

〔参考図D-1〕神経系の役割を示す模型図

〔参考図D-2〕ニューロンとシナプスの略図

〔参考図D-2〕ニューロンとシナプスの略図

〔参考図D-3〕神経細胞のいろいろ a、bは最も簡単な形のもの。 eの1は非常に複雑な形の神経細胞。

〔参考図D-3〕神経細胞のいろいろ a、bは最も簡単な形のもの。 eの1は非常に複雑な形の神経細胞。

〔参考図D-4〕神経細胞の突起による分類

〔参考図D-4〕神経細胞の突起による分類

〔参考図D-5〕筋紡鍾の模型図

〔参考図D-5〕筋紡鍾の模型図

〔参考図D-6〕脊髄神経の派出と構成を示す略図

〔参考図D-6〕脊髄神経の派出と構成を示す略図

③中枢神経と末梢神経

 神経の統合の座は、脳と脊髄で、これは末梢からの刺激を受け入れ、これに対応して反応を示す中心である。脳は頭蓋腔の中に、脊髄は脊柱管の中にこれをおさめている。

 受容器から刺激を中枢に伝え、また中枢から興奮(命令)を効果器へ伝える部分を末梢神経という。末梢神経は脳および脊髄から発する紐のようなもので、脳から出るものを脳神経といって12対あり、脊髄から出るものを脊髄神経といって31対ある。

 脊髄神経はいずれも前根と後根をもって脊髄から発しており、脊髄外側溝の前根は運動性の経路であり、脊髄後外側溝の後根は知覚性の経路である。これを「ベル・マ・ゲンデルの法則」という。(参考図D-6)

 末梢神経は中枢から分かれて末梢にいくに従って、次第に枝分かれしていき、また枝と枝の間に連絡吻合が見られることがある。吻合が多く、全体として網状を呈するものを神経叢と呼んでいる。しかしこの場合でも、神経線維そのものが吻合して互いに刺激興奮がまじり合っているのではなく、個々の神経線維は独立している。

 これらの枝分かれした神経線維は、最後には皮膚、筋、腺等の終末器官の中で1本ずつの神経線維となって終わっている。(参考図D-7、D-8)

 末梢神経は機能的にはその伝達の方向によって求今性の知覚神経線維と、遠心性の運動性神経線維、分泌神経線維とに分かれる。

 刺激や興奮を神経の言葉で「インパレス」として伝える。

 神経元の細胞体は、中枢神経においては一定の集団をつくっており、その部分が肉眼的には灰色を呈するので灰白質と呼ばれている。末梢神経では神経節をつくっている。神経節とは、脳および脊髄以外にある神経細胞の集団のことである。

 脳や脊髄にある神経線維は灰白質に比べて白く見えるため白質と呼ばれている。それは、神経線維が有髄性のため、髄鞘という燐脂質の被膜をもっており、この被膜が白く見るからである。(参考図D-2)

 脊髄では、灰白質がその内部でかたまっているという簡単な配置で、その外周を白質がとりまいているのに対し脳では極めて複雑で、表面に移動してきた神経細胞がそこに層をつくって配列しており、ここに1つの灰白質をつっている。これを皮質と呼ぶが、この皮質という表面の灰白質を形成するのは脳全部ではなく、大脳半球と小脳半球といわれるものだけである。これは本来ならば神経管の内腔をかこんで内部にあるべき灰白質がいくつかに分裂し、複雑化したためである。

 すなわち、脳と脊髄の中では、神経細胞は灰白質を形成して一定の位置に存在し、それから発して、また、それに向かう神経線維は白質を形成して、灰白質に隣接しているが、脳と脊髄を比べてみると、その形が違うだけではなく、灰白質と白質の配置が違っている。

 その原因は、構造的な要因によるもので、脊柱を持った動物では、脳と脊髄は身体の中軸を前後に走る神経管という1本の管である。そして、神経管を保護して、同時に体の支えになっているのが脊柱である。この神経管の前端がふくれて大きくなったのが脳であり残りが脊髄である。それ故に脳と脊髄における灰白質の所在はそれぞれ一定しているが、その配置様式については両者に違いがある。(後述⑧「発生について」参照)

 脊髄は①末梢神経と脳との連絡路であり、②脊髄神経に対する反射の中枢である。

 中枢神経以外の一切の神経系を包括して末梢神経といっている。すなわち脳および脊髄と体の各部を結ぶ神経線維、ならびに、これに付着した神経細胞の総称を末梢神経と呼んでいるが、知覚線維、運動線維、分泌線維等、これらの神経線維の機能的性状は、線維を形態学的に調べてもわからない。知覚神経、運動神経、分泌神経と分けてはいても、一般にこのような純粋なものは少なく、大多数の神経は知覚線維と運動線維、ときには分泌線維が混在している。このようなものを混合神経という。

 運動神経は筋に、分泌神経は腺に分布し、知覚神経は中枢神経および毛・爪・歯のエナメル質以外の全器官や組織に分布する。すなわち、脳や脊髄自体は知覚をもっていないが、これらを包む髄膜には知覚神経の分布がある。骨にしても骨質には知覚神経はみられないが、骨膜には鋭い知覚がある。このように知覚神経は身体または器官の表面が鋭敏で、内部では比較的鈍感であるか無感覚である。
〔参考図D-7〕知覚路(上行路)と運道路(下行路)の構成を示す略図

〔参考図D-7〕知覚路(上行路)と運道路(下行路)の構成を示す略図

〔参考図D-8〕脊髄神経の皮膚分布の模式図 C2~C8=頸部神経 T1~T12=胸部神経 L1~L5=腰部神経 S1~S5=仙椎と尾骨神経

〔参考図D-8〕脊髄神経の皮膚分布の模式図 C2~C8=頸部神経 T1~T12=胸部神経 L1~L5=腰部神経 S1~S5=仙椎と尾骨神経

〔参考図D-9〕ある神経の断面でみた神経線維の太さのいろいろ(髄鞘をそめた標本)

〔参考図D-9〕ある神経の断面でみた神経線維の太さのいろいろ(髄鞘をそめた標本)

④伝導路とは

 神経系の仕事は以上に述べたように身体の各部位(いわゆる末梢)からの報告や、末梢への命令を伝えることにあるが、これらの命令や報告の伝わる通路(経路)が伝導路である。すなわち、刺激や興奮が末梢から中枢へ、中枢から抹消へ達するためには、いくつかの神経元(ニューロン)を順次通過する。このようなニューロンの連鎖を伝導路という。

 1つの伝導路は、縦に(伝導の方向に)起点から終点まで、僅か数個のニューロンから成り立っており、その数は伝導路の種類によりいろいろあるが横断面的には極めて多くのニューロンの束からできている。(参考図D-9)この状態は電話線にたとえられる。たとえば、北海道と九州を連絡する電話線系が、途中いくつかの中継局で中継されるとともに、中継局と中継局との間で、多数の電話線でできているものが全部束にまとまって同一経路をとっているのに似ている。

 同一区間内、つまり中継局と各局、あるいは各局と各局では多数の経路でできているが、各局から家庭へは次第に小さな束に分かれ、最後は各家庭や事務所の電話器に終わっている。このように、伝導路も中枢神経の中では比較的よくまとまった束であるが、a末梢神経の中では次第に分かれて、最後に1本ずつの神経線維となって終わっている。

 すなわち、1つの電話線が中継局で他の系統に連絡しているように、伝導路もその神経元(ニューロン)の接続部(シナプス)において、他の伝導路に連絡している。

 以上のことからもわかるように、神経系は大小多数の伝導路の集合体と考えることができる。このような伝導路の数は非常に多いが、その代表的なものを簡単に述べてみよう。(参考図D-10)

イ 上行性伝導路(求心性伝導路)

 これは末梢からの報告(刺激)を中枢に伝える経路で、すべての感覚器官からそれぞれの伝導路が発しており、知覚・味覚・嗅覚・視覚・聴覚・平衡覚等の伝導路が区別され、その経路は多少違っている。

 知覚伝導路についてこれを皮慮の知覚を例として述べるならば、皮膚に加わった刺激(触覚、圧覚、痛覚、温覚冷覚等)が、脊髄神経節の中にある神経細胞から伸びている神経線維(樹状突起)の末端で感受され、この線維によって神経細胞に伝えられ、さらにこの神経細胞から脊髄の中に伸びている神経線維(軸索突起)によって脊髄の中に入る。

 この線維は脊髄の後側白質の中を上行して延髄までたどりつく。そこでここにある神経細胞への連絡により、報告は2番目の神経細胞に伝えられる。この2番目の細胞の線維が間脳まで伸びており、これによって反対側間脳にいたり、ここでさらに第3番目の細胞へ伝えられる。これを伝えられた間脳の細胞の線維が大脳皮質の知覚中枢まで伸びていって、皮膚で受けた刺激がようやく皮質の細胞に伝えられ、われわれの意識にのぼることになる。すなわち、皮膚から大脳皮質までの伝導路は3つの神経元(ニューロン)で構成されているのである。

 以上のように、知覚伝導路は主として触覚、圧覚、痛覚、温覚、冷覚等の皮膚と粘膜からの刺激と、筋、腱、関節等のいわゆる深部感覚とを大脳皮質へ導くものであるが、ここで注意すべきことは、これらの基本的感覚は、それぞれ別の神経線維を通るもので、同一の線維の中を共通に各種の刺激が通るものではないことである。

 以上の経路を言葉で変えて整理してみると、末梢神経の知覚線維は、脊髄神経節の後根細胞の樹状突起であるから、末梢器官から脊髄神経節までは中断されることなく、また脊髄神経節から出る線維は同一後根細胞の神経突起であるから、末梢からの刺激が中断されないことはもちろんである。

 この線維が脊髄神経の後根を通って脊髄の中に入り、そこでT字状に枝分かれして上行するものと、下行するものとに分かれるが、この下行するものは後で述べる反射弓を形成する繊維系群であり、上行する線維は後索の中を上行して延髄に終わっているが、これが第1番目の神経元である。延髄で第2番目の神経元に引きつがれ、その神経元の神経突起は延髄の中で左右交叉して反対側に移り間脳(視床)で終わっている。

 間脳の神経細胞が第3番目の神経元となり、その神経線維が大脳皮質の知覚領に達している。このような経路は触覚と深部知覚とを伝導するもので、この他に痛覚、温覚、冷覚等、原始的な感覚を伝導するのに、脊髄神経の後根を経て脊髄に入った知覚線維の一部は、脊髄後柱で第2番目の神経元と連絡し、第2番目の神経元の線維が直ちに反対側に交叉して脊髄の側索を上行し、間脳で第3番目の神経元に連絡し最後に大脳皮質に行っているものもある。これらが知覚性脊髄神経の伝導路であるが、知覚性脳神経の伝導路も原則的には同様である。

 以上述べたのが上行伝導路(求心性伝導路)の大要であり、運動の受容過程の神経機構で、その主体は受容器と知覚神経である。
〔参考図D-10〕神経系の全景図

〔参考図D-10〕神経系の全景図

〔参考図D-11〕反射弓(半模型図)

〔参考図D-11〕反射弓(半模型図)

ロ 下行伝導路(遠心性伝導路)

 この伝導路には運動性のものと分泌性のものとがあり、運動性のものであっても、横紋筋に行くものと平滑筋に行くものとがある。平滑筋や線にいくものを自律神経という。また、横紋筋にく伝導路はさらに2系統に分かれる。すなわち、錐体路系と錐体外路系とであり、これは運動の表出過程の神経機構である。

 a錘路体-大脳皮質の運動領野から発し、脳神経または脊髄神経を経て骨格筋に達する経路で大脳の運動命令を筋に伝えるものであるが、大脳の運動領にある神経細胞が第1番目の神経元として、その神経線維は脳幹を下って延髄に達し、ここで大部分の線維が左右交叉して反対側の脊髄側索の中を下る。

 このとき、延髄の「錐体」という部分を通るため、錐体路と呼ばれている。一部は交叉せず、同側の脊髄前索の中を下って随時反対側に交叉し、結局、第一神経元の線維はすべて反対側の前柱の中に終わり、ここにある運動性細胞(これを前根細胞という)に連接する。

 第2番目の神経元の神経細胞は前根を通って脊髄神経の中に入り、それぞれの支配する筋に至り、各神経線維は筋線維の上で運動終板をもって終わっている。

 すなわち、以上のような経路で骨格筋に随意運動の命令を伝えるものを皮膚脊髄路(錐体路)という。運動性脳神経の経路も原則的にはこれと同じで、皮膚核路と呼ばれ、ただ脊髄まで下ることなく、脳幹から随所で末梢神経として出ているものである。

 b錐体外路系-錐体路以外の運動性伝導路をいい、この系は不随意的または無意識的運動や筋の緊張に対する衝動が伝えられるもので、骨格筋の運動が全身調和を保ち、適度の強さと大きさで行われるのはこの錐体外路系の働きである。

 いままで述べた伝導路は、いずれも途中のどこかで反対側に交叉しているが、このような交叉がなぜ必要なのかそして、どの様な意味があるのはまだ分かっていない。しかし、脳出血やその他の原因でこれらの経路に損傷を受けた場合、知覚や運動の麻痺が反対の体側に起こるということは臨床的には重要なことである。
〔参考図D-12〕脊髄反射のタイプを示す図

〔参考図D-12〕脊髄反射のタイプを示す図

〔参考図D-13〕自律神経系

〔参考図D-13〕自律神経系

〔参考図D-14〕交換神経性遠心性線維の走路(交感神経幹の一部の拡大図)

〔参考図D-14〕交換神経性遠心性線維の走路(交感神経幹の一部の拡大図)

ハ 反射路

 脊髄神経の中を走っている知覚神経線維は、後根を経て脊髄の中に入り、その本幹は上行して延髄に至るが、その途中で多数の枝分れをして前根線維(運動性伝導路)に連絡している。このようにして、大脳皮質をとおらない知覚→中枢→運動という伝導路が構成される。この経路を反射路、または反射弓という。(参考図D-11)

 後根細胞(知覚細胞)の神経突起の枝分かれが、直接、前根細胞(運動性分泌性)に連絡される2個の神経元からなるものを直接反射弓といい、これに反し、知覚神経元と運動神経元の間に索細胞(1個または2個の神経元、これを介在ニューロンという)が介在して、索細胞(介在ニューロン)の神経突起が上行または下行して高さの違う前根細胞に連絡するものを間接反射という。

 反射運動は原始的な様式で、動物が下等になるほど運動は反射性になっている。

 脊髄反射の代表的なものは、四肢の皮膚を針などでつつくと、四肢を体幹に向って引っ込める屈曲反射や、屈曲に対応する骨格筋が受動的に引き伸ばされたときに、その筋の張力を増す伸展反射などがある。

 その他、単一ニューロンの間で行われる軸索反射、自律反射等、いろいろの反射を起こすが、これらの反射は脊髄の短い部分においても、また、いくつかの長い分節においても、合目的な反射をつくるが、このような反射弓を通って起こる運動を反射運動といい、これには大脳皮質はまったく関与していないが、無意識でも合目的な防衛運動である。(参考図D-12)

 また、一般的にわれわれが日常生活で絶えず反復する運動、たとえば歩行のごときは、次第に反射的に行われるようになる。このようにして、大脳皮質はその負担を軽くされている。

 われわれの意識にのぼる動き以外に日常生活の中で意識にのぼらないで自律的に行われている働きが沢山ある。

 これらの働きのための伝導路は、多くの神経元の連鎖でできている。本を読みながら歩いたり、話をしながら歩くこともできる。このようなときは、一歩一歩の下肢の動きを意識していない。これは、大脳の中のいくつかの核(核については脳のところで述べる)を経由する数個の神経元からなる伝導路があるからで、このような意識にのぼらないで行える伝導路があるためにわれわれはいろいろの動作が行えるのである。

 なお、われわれの神経系には、この他にも実に多くの伝導路があって、脳の各部が互いに複雑に連絡され、こみいった運動や、精神神経作用が営まれている。

 スポーツでも、音楽でも、習字でも知識でも、すべて練習や学習によって上達、熟練するのは、これら神経の協調や反応が発達し、また、反射の路がそれだけ滑かに広くなっていくからである。

⑤随意運動と不随意運動

 われわれの神経の働きにはいろいろとあり、その中にわれわれの意識にのぼるものと、のぼらないものとがある。反射のときに述べた歩行のごときは、下肢や腕の運動は無意識なものであるが、しかし、意識しようと思えば直ぐに意識できることで、手を振らずに歩こうと思えば手の動きを止めることできる。このように、意識によってコントロールできるものを随意運動という。

 しかし、胃や腸の運動はこれとは全く違った性質のもで、止めようとしても止められないし、また、動かそうとしても動かせない。胃や腸はその必要によってみずから動いているものである。暑いときに汗が出るのは、自然に出てくるもので、われわれが出そうと思うだけで出てくるものではない。このように、われわれの身体の中には意思とは無関係に、自然に、しかも至極合目的に行われている自動的な現象である。

 すなわち、心臓の拍動数、血液の拍出量、内分泌腺の分泌等の現象は、やはり神経の統制下にあり、神経によってその働きが強められたリ弱められたリしている。このような内臓の働き、つまり血管や心臓の働きのような、われわれの意志ではどうすることもできない諸器官の働きを自動的に調整する神経があり、これらを総称して自律神経系という。

 この自律神経系には交感神経と副交感神経の2つがあり、お互いに拮抗のもとに、そのときの条件に応じた適度の状態に諸器官を保っている。(参考図D-13)

 身体全体の機能として自律神経系をみると、形態学的な意味と、機能的な意味とは必ずしも一致しないが、交感神経と副交感神経とは、交感神経が促進するものを副交感神経が抑制し、反対に、交感神経が抑制するものを副交感神経が促進するというように、お互いにその作用が相反している。また、交感神経は活動的な面に、副交感神経はエネルギーの貯蓄的な面に働くものである。

 交感神経は形の上では一応、脳脊髄神経系とは別個のものとして扱われているが、脳脊髄神経から完全に独立したものではなく、交通枝というもので連絡されており、その影響を受けている。(参考図D-14、D-15)
〔参考図D-15〕交感神経内の求心性神経線維の走路

〔参考図D-15〕交感神経内の求心性神経線維の走路

交感神経は、交感神経のように一応独立した形をもっているのではなくその線維の全部が脳脊髄神経の中に同居している。
(次号も神経系の大要のつづき)
月刊ボディビルディング1975年1月号

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