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-均整美健康法- シェイピング・レクレーションの実際③
トロッティングとオリヱンテーリング -走歩の科学-

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月刊ボディビルディング1975年2月号
掲載日:2018.06.06
高山 勝一郎

歩く走る・・・・・・走歩の種類

 人間が二本足で歩けるようになったのは、第三世紀新世の頃というから、今からざっと1000万年も前のことである。そして、われわれは、今も、依然として歩いている。

 この「歩く」という行動には、1000万年という年月が何ら進歩をもたらしていない。

 二本足を交互に前へ出して、体を移動させる・・・・・・ただそれだけだ。

 強いて違っているものといえば、その歩き方、足の運び方に多少の研究がなされはじめた、というだけであろう。

 歩くことと走ることには、おのずから全身筋肉と心肺機能の使用度に違いがあるが、「足を送る行為」に共通性を見るならば、同じジャンルとしてとらえ、考察を進めてみてよい、と思うのである。

 先ず、その走歩の種類からとらえてみると次のとおりだ。

1.Jogging(ジョッギング)

 緩歩(かんぽ)、ブラブラ歩き、ボツボツ歩く、ゆっくり歩くという歩行法。法というよりそういう歩き方だ。

2.Walking(ウォーキング)

 ふつうの歩行速度、いわゆる「歩く」という行為。

3.Trotting(トロッティング)

 速歩、急ぎ足、むしろ小走りになるような歩き方だ。

 元来、馬の速歩から出た言葉で、そのように早く歩く歩行法。

4.Race-walking(レース・ウォーキング)

 ”競歩”というスポーツをご存じだろう。両方の足のどちらかは、常に、必ず地面に着いていて、それで歩く速度を競うため、いきおい足の送りと手の振りが早くなる。Walking-race用の歩行法を指す。

5.Running(ランニング)

 文字どおり”走る”こと。これも、そのスピードによって、いろんな種類がある。歩行に対する走行。

6.Orienteering(オリヱンティアリング、一般にオリヱンテーリングといっている)

 徒歩を主体し、それに目的性をもたせたラリーともいうべき新しいスポーツである。山野跋渉とも解してよい。

 詳しくはあとで述べる。
記事画像1

ジョッギングとトロッティング

 「ジョッギング」というのは元来が”ゆっくりした歩き方”を指すわけだが、日本では、トロッティングと同義で用いられることもあり、また、そのジョッグとトロットの混合形式に当てはめて、総称することもあるようである。

 いずれにしても、「歩く」こと、すなわちウォーキングの亜流であることは間違いない。

 「老いは脚からくる」ともいい、また、「健康は脚から」ともいう。違うことを云っているようだが、内容は同じである。

 ”足を使うことが健康にいい”ということだ。毎朝、ランニングをやるのもいいし、ジャンプ運動をやってもよい。

 速歩であれ緩歩であれ、大いに歩くことがよい。要は、これを楽しく行い息ながく続けることである。

 私がとなえる”シェイピング・レクレーション”の真髄はその辺にある。

 楽しみながら、自分に適したスポーツやレクレーションをやって、均整のとれた体と真の健康を得るようにするのだから、先ず「歩く」ことからはじめるのも立派な均整美健康法なのだ。

 効果的に歩くことは、体のバランスづくりに非常に役立つ。

 さらに肥満防止や心肺機能の向上をねらうムキには、もう一工夫だけすればよい。

 前記のジョッギングとトロッティング、それに若干のランニングを組み合わせるやり方だ。

 それも日常の生活の中に、抵抗感のないように入れていく。

 たとえば朝夕の通勤。これを車を使わず最寄りの駅まで歩く。勤め先が4~5kg以内なら、電車やバスを使わずに歩く。

 その時、意識的にジョッグ--トロット--ラン--トロット--ジョッグという風に組み合わせる。

 ジョッグからすぐにランに移ったり、ランからいきなりジョッグに落としたりしないことが大切。この間に、ウォークとトロットをはさむのである。

 できれば、その時間を計りたい。

 そして、ジョッグよりウォーク、ウォークよりトロット、そしてトロットからランへと強度を高め、その時間を延長していく。

 時間ではなく、一定の距離を目安にして、その間での歩行強度を強めていくのもよい。

 たとえば、あるポスト(目印し)から次のポストまでを、ウォークで一週間やったら、次はトロット、そして何ヵ月か後にはランへ移行させる、という方法だ。
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ジョッグ、トロット、ランの目的意識と定着

 このような健康法は、日常生活の日課として定着化をはかることが大切である。

 1週間に1回か2回、やってみたからといってそれがすぐ健康に結びつくか、というとそんなものではない。

 ごく自然に、しかも興味をもって、定着化するようにするのである。

 そのためには、その走歩行に、一定の目的をもたせた方がよい。”健康”という目的は、附随的に達成させるのだ。

 通勤、帰宅もその目的の一つには違いない。

 朝の”散歩”もよい。主婦の方なら毎日の買物もよい。愛犬の訓練を兼ねるのもよい。子供と近くの公園へかけっこするのもよい。

 この”別の目的”の歩行の中に、意識的にジョッグ、ウォーク、トロットそしてランを組み入れる。

 その時の姿勢にも気をつけよう。

 胸を張り、背すじを伸ばし、足をまっすぐ前へ出し、歩巾を大きく、元気よく走歩することである。

 だらだら歩くことは、何のプラスにもならない。

 結果的には”健康”と”シェイピング”とに意識的となって、それにマッチしたシステマタイズ(組織・定着化)が行われてこそ、この走歩は効果を発揮する、といえよう。

オリヱンテーリングとは何か

 以上の考え方をさらに一歩すすめたところから、オリヱンテーリングが派生している。

 オリヱンテーリングには、目的物が存在し、それを見つけるために走歩を主体とした健康的な行動がともなう。

 オリヱンテーリングとは何か。

 不思議なことに、わが国でこれについての知識を持っている人はまだまだ希少である。

 「宝さがしの一種だろう」とでもいう人がいたら、その人はまだましな方で、たいていの人が首をひねる。

 オリヱンテーリングの定義については、日本オリヱンテーリング委員会の発表しているものがあり、最も端的にあらわしていると思うので、ここに紹介することにしよう。

 「オリヱンテーリングとは、常に自然をゲレンデとして行い、地図上に示されたいくつかの地点を、地図とコンパス(方向磁石)を使用して、できるだけ早く発見、通過、ゴールし、判断力、推理力、記憶力、行動力、方向決定技術、等を身につけると同時に、体力を養うスポーツである」となっている。

 この定義からもお判りのように、オリヱンテーリングには、先ず三つの特徴がある。

 一つは、自然と密接に結びついたレクレーションだということだ。

 山あり野あり川あり、林あり岩がある。それらが、オリヱンテーリングの際の目標ともなり目印しともなる。

 新鮮な空気を満喫しながら、走歩するわけだから、これは健康にいいにきまっている。二番目は、相当に頭も使わなければいけない頭脳レクレーションだということだ。

 地図とコンパスは必須要具だし、それを常時使って現在位置を確認し、目標とするポストがどこにあるか、その方向決定をしなければならない。

 判断力や推理力が必要なのも確かだ。

 ここに本当の面白さがある。

 三番目には、体力の増強にプラスになる点を狙っている効果的なレクレーション方法だということだ。

 オリヱンテーリングには”競争”の一面がある。参加者の競争心にうったえて、走歩に励みを持たせ、体力が自然と向上するように考えられている。

 走歩に科学性と娯楽性をもたせた、最高のシェイピング・レクレーションの一つであるといえよう。
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オリヱンテーリングの背景

 オリヱンテーリングは北欧から始まった、と云ってよい。

 もともと軍事教練の一つとして、地図を頼りに目的地へたどりつく訓練が行われていたのだが、これが、スポーツ視されて、競技化したのは1900年代の初頭であった。

 最初の頃は、走歩よりもむしろスキーによるオリヱンテーリングで、数ヵ所のチェック・ポイントを、地図と磁石で探していくスキー・ラリーの形式であった。

 北欧にこのスキー・オリヱンテーリングが発達したのは、雪の多い地方のこととて容易にうなずけることである。

 これに走歩によるオリヱンテーリングをとりいれたのは1910年代で、1930年頃になると、この新しい”スポーツ”が東欧や西欧の諸国へ大きくひろまっていったのであった。

 ヨーロッパには至る所に緑があり山野がある。人々にも自然を大切にする心がその国民性として存在する。

 1950年代には、もう各所でオリヱンテーリング大会が開かれ、各種の団体や協議会が生まれるに至っている。

 日本に入ってきたのは昭和40年頃で翌41年、すなわち、1966年には第1回の徒歩ラリー大会と称するオリヱンテーリングが高尾山を中心に開催されている。

 その後、「歩け歩け運動」などと相まって、日本のオリヱンテーリングは徐々に国民の間に浸透した。

 国際大会にも参加するようになったし、オリヱンテーリング委員会も発足した。

 日本におけるこの分野の発展はこれからだが、国民の体力づくり、健康づくりの意味からも、私はその発展を大いに期待している。

オリヱンテーリングの楽しみ方

 オリヱンテーリングは誰でも楽しむことのできるスポーツであり、一般むきの体力づくりレクレーションである。

 団体ででも楽しめるし、またほとんどの場合が団体による形式だが、自分一人ででも楽しむことが可能だ。

 一人で行う場合は、目的地の地図を手に入れ、目標とすべき地形なり、神社仏閣のような目印しとなるものをマークして、コンパスを使って方向を決定しつつ、効率よく廻るように考えていく。

 できたら、一定の所要時間を決定し、「何時までにどの地点に達し、何時までに帰着する」といったプランニングのもとに行うとよい。

 家族とハイキングを兼ねるのもいいし、友達とサイクリングを兼ねてやるのも有意義だろう。

 これが団体ということになれば、そこにおのずから速さや正確さをも競う「競争性」または「ゲーム性」が加味され得る。それがまた、オリヱンテーリングの特長の一つでもある。

 この場合は、参加者が老若男女の別によって、当然その歩走力に差が出るから、男女別・年令別にパーティを分ける必要がある。

 これに使用する地図はなるべく詳しいものがよく、オリヱンテーリングの性格からすれば25,000分の1が適当と思われる。また地形上のいろんな特徴がなるべく詳しく掲載されていて、どの参加者にも判り易いものを選ばなければならない。

 コンパスは、磁石と分度器が一緒になった「プロトラクター・タイプ・コンパス」が便利のいい武器となる。

 あとは、主催者の方で、現地へ行って判りのいい場所に、あらかじめポストを用意すればよい。ポストは旗であっても、ポールであってもよいが、参加者がそのポストを発見し、通過した証拠になるものを用意しておいてやらなければならない。

 その証拠とは、一定の記号なり、スタンプ印なり、数字や言葉なり、記録し易いものを考えよう。

 さあ、これでスタートOKだ。

 オリヱンテーリングの具体的なやり方は次の二通りに分かれる。

1.ライン型オリヱンテーリング

 あらかじめ地図上に、ポストの位置とコース(ポストに至る道順)を明示してあり、それをたどって指定のポスト(複数)を発見・通過して、なるべく早くゴールすることを競う。

 これは初心者でも、さほど困難を感ずることなくでき、コンパスの使い方や方向決定の技術などの基礎が容易に身につくやり方である。

 ポストの位置を明示せず、コースだけを記して、それをたどらせるやり方もある。

2.ポイント型オリヱンテーリング

 地図上に、ポストの位置のみを記しておき、コースは指定しない。

 参加者は、そのいくつかのポストに至るどのようなコースを選んでもかまわない。そして、できるだけ早くゴールすうことを競う。

 このやり方が、オリヱンテーリングの中核をなし、国際大会はみなこの形式を採用している。

 ほかに、一定に時間を定め。その時間内にできるだけ多くのポストを廻り点数を集めることを競うやり方もある。
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つけ加えたい上体の運動

 さて、ジョッギングからオリヱンテーリングまで、興味を以て楽しく行える走歩の方法を述べてきたが、ここで脚の運動だけでは不足する一面のあることに気づかねばならない。

 それは、上半身のトレーニングについてである。

 走歩が脚腰の運動になっていることは当然だが、腕や肩、あるいは大胸筋や広背は、この運動にあまり参加していない。均整美健康法の考え方からすれば、走歩を補なう意味での上体のトレーニングをこれに加えることが実に効果的なのである。

 走歩のウォーム・アップ、またはクール・ダウンを兼ねて、次のような、軽いトレーニングを附加したい。

1.プッシュ・アップまたはベンチ・プレス

 その場にダンベルなりバーベルなりのウェイトがあれば、ベンチまたはグラウンドにあおむけに寝て、ウェイトを胸上にさし上げおろす運動をする。

 無い時は、プッシュ・アップ(腕立て伏せ)で代用せしめる。

2.シーティット・プレス

 ベンチか大きな石にでも腰をかけ、ダンベル(これが無い時は手頃な石でもよい)を両手で肩の位置から垂直に上げ下げさせる。肩と腕の運動。

3.トライセプス・ヱクステンション

 木の枝でもベンチでもよいが、この端に手をかけて体をまっすぐ前傾、または地面と平行になる手前まで体を倒し、両肘を屈伸させることによって体を起こしまた倒す運動。

 上腕と腹筋に刺激が得られる。

4.ネックチニング

 鉄棒または木の枝を利用し、これにぶら下がって、けんすい運動を行う。

 広背筋に効果的。

5.シット・アップ

 グランドにあおむけに寝て、足先をパートナーに押さえてもらって固定し上半身を起こし、またゆっくり倒す。回数を多く行い、腹筋をきたえる運動である。

 以上の運動は、適当な回数を1セットにして、順に1セットずつ行い、一巡すればまた1に戻って行う、というふうに2クールか3クール行うといい。上級者は4~5クール行なっても大丈夫だ。シークェンス・トレーニングの簡便な応用法である。

均整美健康法の効果

 以上のシステマタイズされた走歩法で、余剰脂肪がとれてスラリとした均整体が得られ、体がバランスのとれた発達を示すことは言を持たない。

 また、脚腰が丈夫な人は長生きするなどと一般的にいわれるが、これは、腰脚筋の動きが大脳にまでつたわって、細胞を若く保つためであって、とくにオリヱンテーリングにみられるような足と頭を一緒に使うレクレーションは最高の健康法ともいえるであろう。

 しかも、心肺機能も向上し、また、精神的な充足感も同時に得られるのだから、これは理想的なシェイピング・レクレーションである。

 さらに、前述の上体トレーニングを随時、附加することによって、全体のバランスのとれた体形美も得られるようになる。

 現代のストレス、運動不足、栄養過多・・・・・・等々の解消のためにも、ぜひおすすめしたい健康法なのである。
月刊ボディビルディング1975年2月号

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