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JBBAボディビル・テキスト㉑
指導者のためのからだづくりの科学
各論(解剖学的事項)――神経系4

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月刊ボディビルディング1975年4月号
掲載日:2018.03.17
日本ボディビル協会指導委員審査全委員長長 佐野誠之

B 脊 髓

 脊髄は脳と共に中枢神経系を構成しており、機構上からの役割は2つに分けられる。その一つは、末梢神経と脳との間の連絡路をなすこと。第二は脊髄神経に対する反射の中枢をなすことである。
 脊髄は白色を帯びた円柱状の器官で太さ約1cm程度、長さ約40cm~45cmの索条で、上は大後頭孔の下の所で延髄に移行し、下は第12腰椎の高さで脊髄円錐となっており、それから先は神経細胞をもたない終糸となって尾骨の後面についている。
 身体部位によって頸髄・脳髄・腰髄・仙髄・尾髄に分けられ、体肢への神経の出る場所で紡錘状にふくれており、これを頸膨大・腰膨大という。
 脊髄は、前面に前正中裂、後面に後正中溝というそれぞれの溝があり、神経管の外観を保存している。蓋板と底板に比べて両側の翼板と基礎板とがよく発達して、後柱と前柱が形成されH形をなし。前柱と後柱の間に側柱がある。H形の中心に中心管があり。上は脳の第4脳室につらなり、その中に脳脊髄液を満たしている。[参考図D‐29)
[参考図D-29]脊髄・脊椎の横断面

[参考図D-29]脊髄・脊椎の横断面

 前柱は大きい神経細胞(前柱細胞と言う)からなり、その軸索が集って、前外側の方に向って白質を貫き、脊髄神経の前根となり、運動性線維として骨格筋の運動を支配する運動伝導路の最終のニューロンである。
 後柱部は、知覚神経が集って後根となって入って来るが、後根に入る知覚神経は脊髄神経節に細胞体を有する神経線維である。また、後柱には索細胞と言う小形の神経細胞があり、これから出る神経線維は、同側または反対側の白質の中に入り、T字型に分れて上行または下行しており、脊髄の一個の神経元を種々の高さに連絡するものである。[参考図D‐30]
[参考図D-30]脊髄の横断面における主な伝導路(左側だけに記入)

[参考図D-30]脊髄の横断面における主な伝導路(左側だけに記入)

 脊髄の内部構造は、その横断面を見ると、H字形(蝶が羽を拡げた形)の灰白質と、その周囲を取り巻く白質からなり、H字形の前突出部が前柱(前角)、後突出部が後柱(後角)と言われ、左右を連ねる細い部分を白交連と言いその中心に中心管があるのがよく分る。
 灰白質を構成するのは、前根細胞と索細胞である。また、白質は主として種々の太さの神経線維(有髄性)で構成され、上行あるいは下行している。脊髄内に起り脊髄内に終るものもある。これら神経線維の束をその部位により、左右おのおの、①主として知覚性伝導路よりなる後索 ②錐体路をはじめ専ら下行伝導路よりなる前索 ③表層は小脳や視床に行く上行伝導路、深層は錐体路その他の下行伝導路よりなる側索とに分かれている。
 また、脊髄は、軸索反射・脊髄反射(直接反射)自律反射等の中枢である。
 反射には、膝蓋反射、アキレス腿反射、防禦反射等、随意筋が反射の奏効器官であるものを動物性反射ともいい寒冷による血管の収縮反射とか、排尿・排便の反射(すなわち、血管調整反射や、直腸及び膀胱反射)等、内臓を自律的に、つまり不随意的器官が反射の奏効器官である反射を植物性反射とも言う。
 姿勢の維持反射のごとく、反射の原因となる刺激を受ける器官と、反射動作が起こる奏効器官とが同一器官である反射を自家反射と言う。
 しかし、反射一般について言えば、知覚系と運動系の連結において大脳皮質に求心性インパルスが達せずにおこる運動はすべて反射に属し、反射にはいろいろのレベルのものがある。(テキスト⑱⑲の参考図D‐11、D‐12、D‐20参照)
 反射を起こす中枢が、脊髄にある場合は脊髄反射、反射の中枢が大脳皮質を除いた脳幹部(皮質下系)にある場合を条件反射(脳幹反射)といい、またこれ以外に、大脳皮質の活動に依る機能系統である条件反射なるものもある。いずれのレベルの反射においても求心路を構成する脊髄神経節の最初の知覚ニューロンと、遠心路を構成する脊髄前柱の最後の運動性ニューロンの働きがなければ成りたたない。

3 末梢神経
A 脳神経

 脳神経とは、脳から発して頭蓋骨の孔をとおり、主として頭部、頸部(副交感性は内臓)に分布する。
 12対あり、上から順番に番号がついているので、名称と番号を対応させて覚えておくのがよい。
 顔面および頸部の知覚、ならびに眼・耳・鼻・口からの感覚、すなわち視覚・聴覚・嗅覚・味覚に関与している知覚系と、運動系、および内臓諸器官に広く分布する副交感性の自律神経等、1種類の線維のものと、2種類あるいは3種類とまじりあって走っているものとがある。[参考図D‐31]
[参考図D-31]脳神経と脳との関係(脳の下面)

[参考図D-31]脳神経と脳との関係(脳の下面)

 以下各神経の名称をあげ、その大要をのべる。
①嗅神経(第1脳神経)
 嗅覚を司るもので、鼻腔粘膜と大脳皮質前下部嗅脳を結ぶ求心性知覚神経である。
②視神経(第2脳神経)
 視覚を司るもので、綱膜と脳底の視神経交叉を結ぶ求心性知覚神経である。
 この神経の中に副交感神経がふくまれ、瞳孔反射に関与する。
③動眼神経(第3脳神経)
④滑車神経(第4脳神経)
⑥外転神経(第6脳神経)
 これら3対の脳神経は同一系統に属し、眼筋を支配する比較的小さい運動性の神経である。
 動眼神経と滑車神経は中脳から、外転神経は橋と延髄の境の所から各々発して、滑車神経は上斜筋に、外転神経は外側直筋に、動眼神経は残りの眼筋に達している。動眼神経の中には副交感神経が含まれ、虹彩の括約筋に分布し瞳孔反射の時の遠心路をなしている
⑤三叉神経(第5脳神経)
 脳神経の中で最も大きい神経で、橋から出ると半月神経節をなし、直ちに3本に分れている。すなわち第一の枝は眼球神経(知覚性)で、先は枝分れして、眼球・鼻腔粘膜・眼窩上縁の前頭部の皮膚粘膜に分布し、眼球や結膜の知覚を司さどるが、視覚とは関係はない。
 第二の枝の上顎神経は知覚性で、上顎とその附近の皮膚、口腔上半の粘膜、上顎の歯等に分布している。
 第三の枝の下顎神経は運動線維をまじえた混合性で、知覚性の枝は下頸の皮膚、口腔下半の粘膜、下頸の歯に分布しており、運動性の枝は咀嚼筋に行っている。
⑦顔面神経(第7脳神経)
 橋と延髄の境から発して、顔面の筋肉へ行く運動性線維が主体である。また舌の前部の味覚を支配する知覚性線維と、睡液分泌の耳下腺・顎下腺・舌下腺に分布する副交感神経線維を含む混合性神経である。
 顔面の知覚は三叉神経が司どるのに対して、表情筋を支配するのはこの神経である。
⑧内耳神経(第8脳神経)
 蝸牛神経と前庭神経からなり、橋と延髄の境の所から起こり、内耳に入って、蝸牛神経節と前庭神経節を作って、蝸牛のラセン器、前庭の平衡斑に分布し、前者は聴覚を後者は平衡覚を司さどる知覚性神経である。
⑨舌咽神経(第9脳神経)
 延髄から起こり、舌と咽頭に分布する混合神経で、運動性線維は咽頭諸筋に分布し、嚥下運動を司さどり、知覚性線維は舌の後1/3の味覚と知覚を司さどる。
⑩迷走神経(第10脳神経)
 三叉神経に次で2番目に大きな脳神経で、延髄より頸動脈にそって下がり内臓諸器官に分布する副交感性線維が主体である。
 運動性線維は反回神経と呼ばれ、咽頭の筋肉に分布し、発声に深い関係がある。また、内臓諸器官から発する求心性線維も含まれており、これは自律神経系の知覚神経に相当すると考えられている。
 内臓に分布して、その知覚・運動・分泌を司さどる分布範囲の広い事では三叉神経にまさっており、脳神経でありながら、その経過や分布が分りにくいので「迷走」と名づけられている。
 その知覚線維は、舌咽神経・副神経と共に、頸静脈孔の附近で上神経節・下神経節を作っている。
⑪副神経(第11脳神経)
 純運動性線維で、延髄および脊髄上部より迷走神経と共に頭蓋の外に出て、上部の頸神経と合して胸鎖乳突筋・僧帽筋・広脊筋等に分布し、運動を司さどる外枝と、迷走神経に加わる内枝とに分れる。内枝は咽頭・喉頭・軟口蓋の筋に分布すると言われている。
 迷走神経の附属神経と言う意味で副神経と呼ばれている。
⑫舌下神経(第12脳神経)
 延髄から発し、舌筋に分布する純運動線維で、舌の運動を司さどる。

B 脊髄神経

 脊髄神経は脊髄から発する末梢神経で31対あり、脳神経とは異なり各椎がみな同一の構成をなし、同一の原則(ベルマ・ゲンデルの法則)に従って一対宛、左右の椎間孔を通って各々末梢に走っている。その部位により、頸神経(8対)・胸神経(12対)・腰神経(5対)・仙骨神経(5対)・尾骨神経(1対)との5群に分けられ、頸神経と尾骨神経とを除いては、脊柱部の各椎骨の数と一致しており、各椎骨の下から出る神経が、その椎骨と同じ番号をもつように名付けられている。
 脊髄の前根・後根は共に、脊髄の全長にわたってほとんど等間隔に出ているが、これは数本の線維が一束に集って一本の脊髄神経となって椎間孔を出ている。(ただし後根は椎間孔の中で脊髄神経節をつくっており、知覚脳神経に見られた脳神経節に相当するもので、その中には後根細胞、すなわち求心性伝導路の第一神経元の細胞体がある)
 椎間孔を出た脊髄神経は、前根の線維と後根の線維とが密に混り合って一つの束となり、その後、前枝と後枝に分岐して末梢の方へ行っている。(参考図D‐29参照)
 末梢で分布する場合、皮枝(後根からの知覚線維)と筋枝(前根からの運動線維と後根からの知覚線維)とに分れて、それぞれ分布している。
 ここで間違ってはならない事は、前根後根の区別と、前技後枝の区別を同一混同しない事である。前根・後根は運動性(遠心性)、知覚性(求心性)との区別であるが、前枝・後枝は神経線維の性質作用の区分でなく、いずれに分布するかの区分に依るものである
(参考図テキスト⑱D‐6参照)
 すなわち、後枝は体幹の後面正中線の両側に分布し、前枝は体幹の外側から正面(前部)にかけて分布している
(参考図D-32)
[参考図D-32]脊髄神経の分布(模型図)

[参考図D-32]脊髄神経の分布(模型図)

 体肢はほとんど前枝の支配を受けているので、一般に前枝は後枝より強大でその分布も複雑であり、後枝は前枝に比べその分布も単純で整然としている。
 脊髄神経の前枝は、脳神経を除いては、単独に走行する事なく、脊柱の両側で数本のものが吻合しあって神経叢(頸神経叢・腕神経叢・腰神経叢・仙骨神経叢=坐骨神経叢とも言う)をつくっており、その神経叢からの分枝として末梢へ分布している。すなわち、通常〇〇神経と呼ばれる末梢神経名は神経叢の枝の名前である。(参考図テキスト⑱D‐10参照)
 また脊髄神経は、脊髄節と一致して皮膚知覚領域を支配しているが、これを皮膚節と言う。(参考図テキスト⑱D‐8参照)
 後枝は先程のべたように、背部の皮膚と筋に分布して、その知覚と運動を支配しているが、頸神経後枝の一部のものを除いては特別の名称はなく、その分布対象によって筋枝・皮枝の区別が見られるだけである。
 たとえば、第2頸神経の後枝は例外的に前枝より大きく、大後頭神経といい、頭部の皮膚に、第1頸神経の後枝は後頭下神経と言ってウナジの筋にそれぞれ分布している。
 以下各神経叢の構成とその主要な神経枝について簡単にのべる。

①頸神経叢
 第1頸神経~第4頸神経にかけての前枝で構成され、後頭直筋・前頭直筋・頭斜筋等の頸部後頭部の筋を、また副神経と共に胸鎖乳突筋・僧帽筋を支配する。
②腕神経叢(参考図D‐33)
 第5頸神経~第1胸神経にかけての前枝によって構成される非常に大きい神経叢で、上肢帯と自由上肢を支配している。
[参考図D-33]上肢の神経見通し図

[参考図D-33]上肢の神経見通し図

③胸神経
 神経叢はつくらず、助間神経として胸・背の深層筋(内・外肋間筋、助横筋、上下後鋸筋)や腹の上部の筋を支配、後枝は固有背筋を支配している。
(参考図D-34)
[参考図D-34]下肢の神経系の見通し図

[参考図D-34]下肢の神経系の見通し図

④腰神経叢
 第12胸神経~第4腰神経にかけての前枝で構成され、内寛骨筋と大腿前面、内側面の筋を支配する。
⑤仙骨神経叢
 第4腰神経~第3仙骨神経にかけての前枝で構成され、外寛骨筋と大腿下腿の後面の筋を支配する。
 以上脊髄神経は運動線維と知覚線維により、骨格筋の収縮、皮膚の感覚を司どるばかりでなく、自律神経の交感、副交感の両線維が加わって、内臓の運動、汗腺の分泌等にも関係している。
 各神経線維(運動・知覚両線維)がふくまれ出来た束である。

C 自律神経

 自律神経系も末梢部と中枢とに区別され、中枢部は脳では主として視床下部に、脊髄では前柱と後柱の中間部に局在している(テキスト⑳脳の部参照)
 第一次中枢は(第一次ニューロンの細胞が)脊髄・延髄・中脳に存在し、上位中枢が視床下部にあって、密接に関連して円滑な機能を果たしている。
 末梢部は、①交感神経は脳脊髄神経からは別個のものとして扱われ、一応形態学的にも独立した形をとり、交感神経系と言う特別な系統をつくって広く身体のすべてに分布しているが、完全に独立したものでなく、交通枝によって脊髄神経と連絡されている。②副交感神経は独立した形でなく、その線維は脳脊髄神経に同居して、局限した場所に分布している。
 自律神経系では、中枢から出て神経節に入る線維を第一次神経元(節前線維)と呼び、神経節を出て末梢器官に行く線維を第二次神経元(節後線維)という。節前線維は有髄性で、節後線維は無髄性である。
 交感神経と副交感神経は、解剖学的にも中枢からの出かたや神経節の所在においても違っている。すなわち、交感神経は胸髄・腰髄から出て末端(支配臓器)から離れた所でニューロン交代をなすのに対し、副交感神経は脳幹から出て支配臓器のすぐ近くに神経節があり、ニューロン交代をなすと言う違いがある。しかしこの様に中枢を出る時は別々の道を通るが、多くの場合末梢においてほとんど両者とも同一臓器に分布し、合一または神経叢なり神経節なりを作り、拮抗的二重支配をしてる。(神経系機能表参照)
自律神経系の機能(拮抗的二重支配)

自律神経系の機能(拮抗的二重支配)

 自律神経系には求心性の伝導路があるだろうか。どの解剖学の本を見てもはっきりと自律神経求心路として示されているものはない。自律神経系として示されているものはすべて遠心性である。
 しかし機能的な面から考えると、自律神経系の働きが、求心性伝導路と無関係でない。例えば、怒った時、恐怖の時に顔面が蒼白になったり、悲しい時に涙が出たり、緊張した時に顔が赤らんだり、等々は明らかに外部からの情報に対して反応しているものであろう。環境の変化に即応しない運動や分泌は、生物活動としては無意味であろう。この環境の状態や情報を受けとるのが求心性伝導路の機能である。この様に考えると、何かの様式で自律神経が求心性の伝導路と連絡していると考える他はない。しかし形態学的に考えれると、この求心性伝導路は、体神経系と自律神経系と両神経別々のものであるのか、または共通のものであるのかは未だ充分に分っていない。しかし環境や内部状況に左右されている事は確かである所から、求心性伝導路と何かの形式で連絡していると考える外に説明が出来ない。
 また、交感・副交感の拮抗的二重支配(自律神経機能一覧表参照)は両者の区別を画一的に区分する事には若干の無理があり、今後の問題として研究される事であろう。
 以上で神経系について終るが、その形態的構成とその役目について大要をのべたもので詳細に関しては別の機会にゆずる。しかし、神経系は運動面から見ても、精神心理面から見ても、非常に大切で重要なものである。われわれの生活活動を支配している根源が、この神経系の働きであると言う認識をあらためて持っていただきたい。そのためにも確固たる大要をつかむ事が必要であろう。
(次回は感覚器の大要について)
月刊ボディビルディング1975年4月号

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