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★大内外一流選手の食事作戦★
念願のミスター日本優勝の夢を実現した
長宗五十夫選手の食事法

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月刊ボディビルディング1980年2月号
掲載日:2019.08.19
健康体力研究所・野沢 秀雄

1.沖縄の熱帯夜

運の悪いことにミスター・ユニバース選抜大会が開催された前日の昨年7月21日、沖縄市一帯は水道本管の破裂事故があり、全市の水道が一滴も出なくなり、この状態は翌日の夕方まで続いた。断水の結果、顔や手を洗うことはもちろん、水洗トイレの汚物を流すこともできず、シャワーや風呂も使えない。もっとも具合の悪いことに、ホテルのクーラーが使用できず、風ひとつ吹かないモーレツな暑さのため、選手や役員は地獄の苦しみを味わうことになった。

 部屋の割当の関係で、長宗選手と健康体力研究所に入社したばかりの森本君、それに私の3人が同室となり、ほとんど眠れぬ一夜を過ごしたわけである。
「せめて明日、選手として出場する長宗選手だけは風通しの良い場所に」とベッドを決めたものの、ひっきりなしに通過する車の騒音と暑さでとても安眠どころではない。

「このオレンジ食べませんか?」と彼が持ってきた新鮮なフルーツを食べながら、よもやま話がなされたが、コーチをしながらの選手生活は一見、恵まれているようにみえるが、実は大変なこと。体を焼くために毎朝職場に早めに到着して朝の太陽で2~3時間必ず体を焼くこと、アメリカのビルダーたちが使うサプルメントフーヅのことなど、今も印象に残っている。

 結局、不眠状態のまま、長宗選手は午前5時すぎに、強烈で美しい沖縄の太陽を浴びにホテルの屋上へ出かけていった。

2.長宗選手の食事法の変遷

 彼と同室して驚いたことは、バッグの中に入っている数多いサプルメントフーヅである。プロティンやビタミンEだけでなく、各種ビタミンやミネラルの錠剤を持参していて、実にこまめに飲んでいる。これらについては後で詳述するとして、まず長宗選手の食事法の変化について、述べることにしよう。

 17歳でボディビルを開始して15年間長宗選手は息の長い選手であると同時に、「途中休場」がまったくなく、ここ数年、必ずといっていいくらい大きなコンテストに元気な体をみせてくれている。これはなかなか並のビルダーにできることではない。

 長い間、つねにトップ・ビルダーの体を維持することは、並大抵のことではない。トレーニングはもちろん、食事法についても、それなりの研究と実行力がなくては不可能であろう。

 長宗選手の食事法は数年前から何度か、本誌や増刊号に紹介されている。古い号を持たない人のために念のため、再録しておこう。

<表1>今から4年前の食事法

記事画像1

3.最新の食事法

 長宗選手は、ほぼ上記のような内容の食事法により、身長163cm・体重72kg・胸囲112cm・上腕囲41cm・大腿囲61cmの体をつくりあげて、1974年度と75年度に「ミスター日本6位」の成果をあげていたことになる。

 その後、毎年1年ごとにランクをあげ、ついに今年は念願のミスター日本となったが、食事内容は体の成長と比例していっそう高度になっている。では、現在の長宗選手の食事法を紹介してみよう。

<表2>現在の食事法

記事画像2
記事画像3
 使用されているサプルメントフーヅを解説すると、次のとおりである。

(1)ビタミンB複合剤
カプセルの中にビタミンB1(50mg)B2(50mg)、B12(50mg)、ナイアシンアミド(5 0mg)、パントテン酸(50mg)、コリン(50mg)、イノシトール(50mg)、パラアミ ノ安息香酸(30mg)、ピオチン(50mg)、葉酸(100mg)、が含まれており、アメリ カでは180カプセル入のものが12ドルくらいで売られている。

(2)ビタミンB6剤
たんぱく質の分解や合成に関与する重要なビタミン。1錠中に500mg含まれる。

(3)ビタミンC
細胞組織を強固に締結するのに効果があり、しみ・そばかすなどの解消にも使われる。1日に500mgとる。

(4)ビタミンE
液状のものをトレーニングの前後に食べる。3000~8000IUとる。

(5)アルファルファ・ケルプ
たんぱく同化ホルモンではないが、自然物で同じ効果があると言われている牧草がアルファルファである。その根は地中8~20mにも達するといわれ、養分を吸いあげ て葉に送っている。
ケルプは北極海でとれる海藻の粉末で、ヨードが含まれ、甲状腺ホルモンの機能亢進に役立つ。

(6)レバータブレット
各種ビタミンや鉄などを豊富に含むレバーを食べやすいタブレットにした製品。 増血効果がある。

(7)カルシウム食品
ボーンミールという牛の骨髄からとったカルシウム粉末。血液をアルカリ性にする効果があり、骨の発育に良いとされている。

―――以上のほかに、長宗選手はレシチン、肝油、コリン、イノシトール錠、HCL液体プロティンなどを使っているという。

 これらの製品の大部分は、日本国内では薬事法という法律の規制にふれて、輸入・販売することが禁止されている。入手するときは友人に頼んで持ってきてもらったりするほかない。

 トレーニング方法が高度化するにつれて、食事法もベテランはトライアンドエラーで次々と新しい方法を探しだし、他の選手たちと差をつけようとする。長宗選手の場合、マル秘にしておきたい部分もあったろうが、とくに今回は全部公開してもらった。

「これは相当に費用もかかりたいへんだなあ」と私は感じるし、読者のみなさんも驚かれたことだろう。

4.ビルダーにすすめる食事法

 決して長宗選手は「自分と同じ物を食べなさい」とすすめているわけではない。初心者のうちは、100キロのバーベルでベンチプレスやスクワットができないのと同様に、いきなり高度のサプルメントフーヅを食べても体の役に立たない。段階を積むことが必要である。彼がすすめる食事法は次のとおりである。

<表3>ビルダーにすすめる食事法

記事画像4
 この食事内容を分析すると、初心者(体重55kgとして計算)は約3400カロリー、たんぱく質約200g、中~上級者(体重75kgとして計算)は約3400カロリー、たんぱく質約400gとなり、これだけしっかり食べていれば、筋肉の発達はかなりのところまでゆくはずである。
〔トレーニング中の長宗五十夫選手〕

〔トレーニング中の長宗五十夫選手〕

 とくに長宗選手は、間食の重要性を強調し、トレーニングの前と後に、プロティンなどをしっかり飲んでおくと効果が大きいと語っている。また、野菜や果物への配慮も考えるとよい。

 複雑なサプルメントフーヅはほとんど使用しなくてもよい。そうでないと高価な薬づけになることと変わらない。費用もたいへんである。
「高価な金を支払える物が勝つ」というスポーツになってしまっては意味がない。費用はあまりかからず、自分の努力、汗の結晶で、よい体ができるというのが望ましい。

 どの程度まで、栄養補給食品などを使っていいか、私なりの基準を示すと次のようになる。
 たとえばプロティンパウダーなら1kgが5000~6000円前後の製品が多い。この金額でたんぱく質が800~900gはとれる。また同様な予算で肉や魚、牛乳などを買ってたんぱく質をとろうとすると、せいぜい200~500gにすぎない。このような場合なら、プロティン製品を買ったほうが、1ヵ月の収支をみると有利になるので合理的である。

 ジャームオイルやレバー、その他の製品の場合も、「他の食品からとることに比べて、本当にメリットがあるのか?」「それだけの費用を投じて効果がはっきりあるのか?」ということを基準にすればいい。

5.優勝決定の翌日、父の死

 永いキャリアから、長宗選手のエピソードもいろいろある。トレーニング中のケガについて尋ねたことがあるが今までに「腰を痛めた」「ひざを痛めた」「手首を痛めた」「ひじを痛めた」「筋肉のすじをちがえた」と全身、無理な負担がかかり、ケガを経験しているという。まさに「傷だらけの栄光」である。

 彼の背筋の広がりはすばらしく、典型的な逆三角形であるが、「18~19歳のころ、ヨガの先生に肩甲骨をはずすことを教わり、その結果ポーズをとると広がってみえる」という。誰にでもできることではないが、研究熱心さには頭が下がる。

 最後に悲しいことだが、長宗選手のお父さんがコンテストの翌日、亡くなられたことだ。脳卒中で倒れ、半身不随で動けなかった父親が、どれだけ息子の優勝を望み、そして実現したときにどれだけ喜ばれたか、察するにあまりある。

「気がゆるんで、ホッと安心して息をひきとったとお思う」と長宗選手が悲しみを語っているが、親孝行だったのかそれとも親不孝だったのか、複雑な心境にちがいない。喜びと不幸が同時に訪れ、さぞ大変だったろう。
「来年はミスター・ユニバースに必ずゆきますよ」と明るく語って電話を切った長宗選手の今後の活躍と成功を心から期待し、ペンをおこう。

<長宗選手のデータ>

 身長163cm・体重74kg・胸囲120cm・上腕囲44cm・大腿囲61cm・腹囲69cm
<生年月日>昭和22年10月10日、32歳
<星座>てんびん座 
<血液型>O型 2人兄弟の長男
<スポーツ歴>アクアラング・自転車競技・アイススケート
<コンテスト時の減量>
<ペンチプレス>130~160kg
<スクワット>60~200kg
<プレス>67~90kg
<カール>50~75kg
月刊ボディビルディング1980年2月号

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