フィジーク・オンライン

なんでもQ&Aお答えします 1976年2月号

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1976年2月号
掲載日:2018.08.09

下半身に比べて上半身が見劣りするが

 Q ボディビル歴は5ヵ月。体位は身長176cm、体重69kg、胸囲98cm、上腕囲31cm、腹囲76cm、大腿囲54cmです。

 僕は元来、上半身が細く下半身が太いからだをしています。そのようなわけで、現在は上半身を下半身に釣合ったものにするために、上半身の運動しか行なっていません。

 そこで、次の2つのことについておたずねします。

 下半身に脂肪が多くついているのでこれからはランニングをしようと考えています。脚の脂肪はランニングでとれると思うのですが、殿部についてはどうなのでしょうか。殿部の脂肪をおとすにはランニング以外の、もっと大殿筋を使う運動をしなければならないものでしょうか。

 また、体位を見ればわかると思いますが、上腕囲が他の部位のサイズに比べて小さいので、上腕の運動を一生懸命行なっています。ある本によると、上腕囲を2.5cm太くするには体重を4.5kg増やさなくてはならないとのことですが、僕の場合、体重が4kg増えたのに上腕囲は1cmしか増えません。

 一生懸命トレーニングした上腕が1cmしか大きくならないのに、なにもしない大腿が2cmも大きくなってしまいました。バランスをとるためにはこれからどのようなトレーニングをすればよいでしょうか。(M.Y 17才)
 A まず、ランニングで下半身の脂肪をおとすことができるかどうかについてお答えしますが、答えは「イエス」とも「ノー」ともいえます。

 というのは、下半身の脂肪をおとすための運動として、ランニングは非常に有効とはいえますが、それだけで十分とはいえない場合もあるからです。つまり、いくらランニングをしても、カロリーのあるものを摂りすぎてはなんにもならないということです。したがって、下半身にかぎらず、からだの脂肪をおとすには、運動を行うことに加えて、食事の内容がカロリー過多にならないように注意する必要があります。

 次に、ランニングをしても殿部の筋はあまり作用しないのではないかということについて述べますが、あなたの考えは誤りといえます。

 ランニングと殿部の筋の働きは、走り方によって異なりますが、ランニングが殿部を含めた下半身全体の働きを強く必要とする運動であることにはまちがいはありません。歩幅を狭くしてゆっくり走るときは、あなたのいわれるように殿部の筋の働きをあまり強く必要としないということもいえます。しかしこのことは、あくまでも運動としての強度と走り方に原因があるのであって、ランニングそのものが殿部の筋の働きをあまり必要としない運動であるということではありません。

 ゆっくり走るよりも、速く走るほうが殿部に強く効くのはゆうまでもありませんが、ゆっくり走っても、走り方によっては比較的強く効かせることもできます。つまり、腰を少し落しぎみにし、歩幅を広くして走るようにすればよいでしょう。このように歩幅を広くすると、比較的殿部によく効くようになりますが、このことは、なにもランニングにかぎったことではありません。歩く場合でも、姿勢を正しくして後ろ足でからだを前方へ押しやるような感じで、歩幅を広くして歩けば同様のことがいえます。したがって、殿部の脂肪をおとすために、また、かたちをよくするために、そのような歩行の仕方を努めて日常生活にとり入れてみるのもよいでしょう。

 さて、次に上腕部についての質問にお答えするとします。

 ある本に、上腕囲を2.5cm大きくするには体重を4.5kg増やさなければならないと書いてあったとのことですが、それはあくまでもトレーニングの結果を予測するための目安であって、誰の場合にもその数値が当てはまるといったものではありません。したがって、体重の増加と上腕囲の増大をあまり強く関連づけて考えないほうがよいと思います。

 あなたの場合、上腕がほとんど発達しなかったのは、トレーニングのやり方に原因があるのではないかと思います。上腕を発達させるために、上腕のトレーニングを一生懸命に行なったとのことですが、そのこともかえってウラ目に出たのではないでしょうか。つまりトレーニングのやりすぎではないかと考えられます。

 なにもしなかったという大腿部が2cmも大きくなったのは、上半身の運動の際に、使用重量と体重を支えるために適度に大腿部の筋が使われたからでしょう。それにひきかえ、一生懸命にトレーニングした上腕がたいして発達しなかったのは、上腕部の筋を使いすぎたことが原因していると考えられます。筋の使いすぎは著しい筋の消耗をまねき、過度に筋を消耗させることは努力に反して期待するほどの効果をもたらしません。

 あなたの場合、効果をあせるあまりに、トレーニングをやりすぎていることはおそらく間違いないと考えられますので、ただちにトレーニング量を減らす必要があると思います。そして、上腕囲の増加を体位の増加と関連づけて考えないで、カールなど腕そのものを鍛練するための運動の使用重量と関連して考えるようーするほうがよいでしょう。つまり、動作的に、または感覚的にいって、つねに同じ方法と感じでカールならカールの使用重量が増加していくということが、上腕二頭筋の実質的(皮下脂肪を含めない)な発達に比例すると考えることです。

 現在、あなたが実行している腕のトレーニング法が手紙に記述されていないので、具体的なトレーにング法についてはアドバイスしかねますが、あなたの上腕のサイズからすれば、いまのところ上腕二頭筋と上腕三頭筋の運動を各1種目、3セットずつも行えば十分ではないかと思います。

バック・プレスの記録が伸びないのは

 Q ボディビル歴は1年1ヵ月。ひとりでトレーニングを行なっている者ですが、バック・プレスの使用重量が6ヵ月間まったく変わりません。肩の運動の記録が伸びにくいのはわかりますが、それにしても6ヵ月も変わらないのはどうしてでしょうか。よきアドバイスをお願いします。運動の動作は1回1回正確に行なっています。なお、開始時と現在の体位、現行のスケジュールは下記のとおりです。
記事画像1

<現在のスケジュール>

トレーニング後の疲労感はやや強です。しかし翌日はほとんど疲れが残りません。(徳島県M・S 30才)

トレーニング後の疲労感はやや強です。しかし翌日はほとんど疲れが残りません。(徳島県M・S 30才)

 A 努力しているにもかかわらず効果があがらないくらいさびしいことはないでしょう。心中お察しします。

 ボディビルとは得てしてそのようなもので、努力することが必ずしも良い結果に結びつくとは限りません。そして、ただ頑張ってトレーニングを続行したからといって、スランプや伸びなやみの状態を打破できるといったものでもありません。ボディビルとはやさしい運動のようであって、その反面非常に難しい運動であるといえます。

 あなたの場合、6ヵ月もの間、バック・プレスの使用重量が増加できなかったのは、おそらくトレーニングの仕方に原因があると考えられます。というのは、現在のあなたは体力的にいってまだまだ向上の余地が十分あるものと考えられ、重量が増加できなかった原因を素質の有無に問うよりは、トレーニングの仕方に問題があると判断するのが妥当と思われるからです。そのようなわけで、現在の状態を克服するには、原因をトレーニング上の問題にしぼって考えてもよいのではないかと思います。

 トレーニングの効果をあげるには、意欲的なトレーニングを行うことも大切ですが、なによりもその人の体力、年令、経験、筋肉の発達状態等を考慮した適切な運動法を実施しなければなりません。

 あなたの場合、手紙を一読したかぎりでは、トレーニング法は何ら誤りがないように見うけられますが、現実にバック・プレスにおける筋力的な向上が得られなかったからには、やはりトレーニング法のどこかに不備があると考えてよいでしょう。

 では、そのような観点からあなたの現在のトレーニング法を検討し、適切さに欠けていると考えられることについて述べることにします。それについては、あくまでもあなたの手紙から推察されることがらを、初・中級者の一般的なトレーニング法に照らして述べるわけですから、あらかじめそのことをお断わりしておきます。

 あなたの場合、バック・プレスの運動のやり方そのものに問題があるようです。動作は正確のようですが、運動として、内容的にあまり余裕がないように思われます。

 ボディビルのような抵抗運動は、いくら動作が正確であっても、筋運動として内容的に適切さを越えると、筋が著しく消耗し効果が得られなくなることがあります。ようするに、力を極度に出し切るような反復の仕方は感心しないということです。ときには筋的能力を試す意味で、使用重量や反復回数の面で筋力の限界をテストしてみるのもよいですが、ふだんのトレーニングでは著しい筋の消耗がともなうような運動の仕方は慎しむほうがよいでしょう。つまり、筋を過度に消耗させないために、運動を多少余裕をもった動作で反復できる範囲に、意識的にセーブして行うことです。

 このことは、より重い重量を使用して低回数制でトレーニングを行う場合でも同じです。たとえ1回の反復しか行わない場合でも、ふだんのトレーニングとしては強度な頑張りを必要とするような運動の仕方は慎しむほうがよいということです。

 以上述べたことは、もとより一般的なトレーニングのやり方としていえることですから、多くの人の中には、あるいは頑張れば頑張るほど効果が得られるという人もいるかも知れません。
解答は '59ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生
月刊ボディビルディング1976年2月号

Recommend