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なんでもQ&Aお答えします 1976年5月号

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月刊ボディビルディング1976年5月号
掲載日:2018.08.17

トレーニング6カ月、その成果と練習法は妥当か?

Q
ボディビル歴は6ヵ月です。現在、下記のスケジュールでトレーニングを行っていますが、それについてご意見をおきかせいただきたいと思います。

<トレーニング・スケジュール>
隔目的、週3日
①ベンチ・ブレス42.5kg 10回×3セット
②スクワット42.5kg 10回×3セット
③ベント・アーム・プルオーバー10kg 10回×3セット
④カーフ・レイズ42.5kg 50回×1セット
⑤デッド・リフト42.5kg 10回×3セット
⑥シット・アップ(傾斜なし、頭の後ろに7.5kg保持) 20回×1セット
⑦スリー・パート・カール17.5kg 21回×3セット
⑧プレス・ビハインド・ネック27.5kg 10回×3セット
⑨ベント・オーバー・ローイング25kg 10回×3セット
⑩ネック・カール10kg 30回×1セット

そのほか、時々、自転車で近くの坂道を登り下りする。
 トレーニング後にはさほど疲れを感じない。

<体位の経過>
開始時 現 在
身長 172cm 172cm
体重 57kg 59kg
胸囲 91cm 94cm
上腕囲 31.5cm 33cm
前腕囲 29cm 29.5cm
腹囲 72cm 71.5cm
大腿囲 51.5cm 52cm

 以上のような経過で、持久力は増したが筋の発達という点では不満を持っています。

質問事項
①上記の体位の経過は、6ヵ月間のトレーニングの成果としては妥当なものでしょうか。
②現行のスケジュールを採用種目の面からみて不足はないでしょうか。
③各運動種目の反復回数、セット数に問題はないでしょうか。
④運動の順序は現行のままでよいでしょうか。
(京都府 S・H 学生18歳)

A 手紙の文面からボディビルに対する熱意のほどがうかがわれます。では順を追って質問にお答えすることにします。
①トレーニングの効果は、実施者の個別性を考慮して、その良し悪しを判断しなければなりません。したがって、あなたの体位の経過が6ヵ月間のトレーニングの成果として妥当であるかないかを論ずることはできません。しかし、強いて意見を述べさせていただくのなら、上腕はともかくとして、全体的にあまりよくないといわざるを得ません。
 半年程度の経験で、上腕囲が33cmもあるという身体的な素質を考えると、他の部分の発達が納得のいくものとはいえないようです。ことに大腿囲の0.5cm増は少なすぎます。とりわけ体脂肪が多いとも思われないのに、そのような結果に終ったのは身体的な素質云々よりも、やはりトレーニングのやり方に原因があったものと考えられます。そのことについては他の質問に対する回答の後に述べるとします。

②現在の体位と経験月数から判断して現行のスケジュールが採用種目の面で不足があるとは考えられません。またさして不備とする点もありません。現段階としては妥当なものと思われます。

③各種目の反復回数については、別段誤りとするところはありません。それどころか、むしろ基本に忠実といえるでしょう。

④各種目のセット数についても、これから先のことはともかくとして、現段階では問題ないと思います。

さて、それではここで、第5番目の質問に対する見解は後にまわして、あなたの質問事項に漏れていて、しかもあなたのトレーニング法において不備と思われる点について述べてみます。
 あなたのスケジュールは、先に申し述べたように、採用種目、反復回数、セット数などについては、とり立てて不足する点、または不備な点は見当たりません。しかし、5番目の質問に該当することがらと、使用重量の面で不備な点があると思われます。
 ボディビルのトレーニングにおいては、もとより無理な重量の使用は慎まなければなりませんが、かといって軽るすぎる重量で運動を行ってもあまり効果がありません。そのような意味で、あなたが現行行っている各種目の使用重量を、あなたの体位との比較において検討すると、中には軽るすぎる重量で行っている種目もあるように思われます。
 最も効果が得られた上腕部の運動であるスリー・パート・カールの使用重量は、上腕のサイズと21回の反復回数から考えて、17.5kgは妥当なものと思われます。しかし、ベント・アーム・プルオーバー、およびスクワットの使用重量は体位との比較からいってどうも納得がいきません。
 ベント・アーム・プルオーバーは上腕と前腕のサイズ、それにベンチ・ブレスにおける使用重量との比較からみても、10kgというのはあまりにも軽るすぎます。運動の動作に慣れれば25~30㎏ぐらいは可能なのではないかと思われます。
 また,スクワットの使用重量は,52㎝の大腿のサイズからして42.5㎏は軽るすぎるようです。背や腰を彎曲したり立ち上がるときに前傾しすぎるようなフォームはいけませんが、その気になれば、もう20kgぐらいは楽にこなせるようになるのではないかと思います。
 スクワットは、単に大腿部の発達を促すだけでなく、胸囲の増大にも効果があります。また、ベント・アーム・プルオーバーは、上半身、とくに大胸筋、広背筋、上腕三頭筋の発達に効果があります。
 したがって、この2種目の使用重量を再検討し、現在のあなたの筋力に適した重量を使用するようにすることによって、トレーニングの効果をいま以上にあげることが可能になるのではないかと思います。運動はすべて正しいフォームとリズミカルな動作で行うことが大切ですが、だからといって、使用重量に対してあまり消極的になるのも考えものです。

⑤運動種目の順序は、どのようにしてもまちがいと決めつけることはできませんが、トレーニングの目的により、それにそった効率のよい順番というものがあります。
 あなたの採用している運動の順序は、それなりに実によくできていると思います。とくに、運動において使用筋が2種目連続して使われることのないように上手に順序立てられています。したがって、各種目とも身体的に、かつ精神的にさほど強い負担を感じずに運動が行えると考えられます。しかし、裏を返せば、そこがまたトレーニング法としての不備な点といえないこともありません。
 あなたの所感に、筋の発達には不満足であるが、持久力が増したとありますが、あなたの現在採用している運動の順序は、どちらかというとそのような結果をもたらす傾向が強いものといえます。
 筋の発達を主目的とする場合は、むしろ使用筋を関連づけて種目の順番を組むほうがよいと考えられています。つまり、充血法の理論に順じた方法で採用種目をならべた方がよいと考えられます。では現在のあなたに適していると思われる運動の順序の1例を記してみます。


◇運動の順序(例)
①シット・アップ
②スクワット
③カーフ・レイズ
④ベンチ・プレス
⑤ベント・アーム・プルオーバー
⑥ベント・オーバー・ローイング
⑦プレス・ビハインド・ネック
⑧スリー・パート・カール
⑨デッド・リフト
⑩ネック・カール
【解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生】
月刊ボディビルディング1976年5月号

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