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“高タンパク”うどん・そば

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月刊ボディビルディング1974年5月号
掲載日:2018.08.05
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野沢 秀雄

<1>アッと鶩く数字

 「なぜタンパク質が重要か?」ときかれたら,ボディビルをやる人ならすぐに「筋肉はタンパク質でできていて毎日新しいタンパク質を必要とするからだよ」と答えるだろう。確かにそのとおり。

 われわれの身体はモーレツなスピードで変化している。ひげは毎日そらなければどんどん伸びるし,爪は1週間たてば切らねばならない。また髪の毛はロングヘアー派ならがまんできようが,スポーツ・カットなら1ヵ月ぐらいで散髪にゆかねばならない。外からみただけでもこんなに変化があるのだから,身体の内部や筋肉はもっとすごい速さで物質交替のおこなわれていることが恕像される。そこで今回は,アッと驚く数字を紹介しよう。
血清タンパク=約10日
肝臓=約10日
心臓・腎臓・腸管・その他=約20日
骨格筋=約160日
全身タンパク平均=約80日

<2>きのうの自分はきょうの自分ではない

 上の数字は゛半寿命″といって,われわれの身体の組織の50%,すなわち半分が何日で入れかわるかを示した数字だ。これでわかるように血液中に含まれるタンパク質は,約10日でその半分が新しいものと交替する。肝臓は人体の中でひじょうに重要な臓器であるが, 1200g もある大きな肝臓の半分が,わずか10日間で新しいものに生れかわっている。

 平均80日ということは,一見同じままに見える身体は160日でまったく別の新しい身体にかわっていることを意味する。1年のうちに2回以上もわれわれは生れかわっている。この雑誌を読んでいる瞬間にも体は変化しているのだ。人間の平均寿命は75才前後といわれているが,その間つねにリレーがおこなわれて生命が保たれているためであり,個々の組織は何十回となく交替しているOだからこそボディビルを3ヵ月もやればトレーニングの効果が必ず出て,そのうち見ちがえるように逞しくなれるのだ。

<3>人間は向上するもの

 最近の狂乱物価でインフレが進む結果「きのうの100円はきょうの100円でない」などといわれているが,これと同じように,われわれの身体も「きのうの身体はきょうの身体ではない」といえる。単に身体ばかりでなく,頭脳やその人の考えも,1日1日と新しくなると私は考えている。

 「自分は頭が悪いからダメだ」「会社の中でえらくなれない」というように自分であきらめてしまったらその人の人間的な成長はとまってしまう。逆に「向上したい」と願えば人間は必ずできるものである。

 重要なことは,ボディビルをするときと同じように,「なんとかやってみよう」という気迫や気概を持つことだ。やる気ひとつで人生はどうにでもなる。向上しようとする姿は美しく,また尊いものだ。トレーニングでも仕事でも人間としての完成はいきつくところがないように思われる。精進をこころがけたいものだ。

<4>ふつうのうどん・そばは落第

 脳や神経をふくめて,われわれの全身はすべてタンパク質であり,タンパク質が刻々と入れかわることにより新しい自分がつくられる。だから良質のタンパク質が必要であるが,合理的にうまく摂取することはなかなかむずかしい。ステーキや卵ばかりでは経済的にもやってゆけないし,酸性食品の害やコレステロールの害が気になる。毎月の連載で上手な食べ方を述べているが,今回は高タンパクうどん・そばをとりあげたい。

 サラリーマン,とくにオフィスで働く事務系サラリーマンは腹があまりすかないせいもあり,昼食をうどん・そばですませることが多い。だが,もりやかけはもちろん,きつね・えび天・玉子のどれにしろ,カロリーは360~380,純タンパク質は12~13ℊしかない。これでは失格である。

 ところが高タンパクうどん・そばは90%一大豆プロテインが使用されており,従来品の2倍のタンパク質をふくんでいる。したがって,1食分100ℊを食べると,うどんは19ℊ,そばは249の純タンパク質を口にすることができる。卵1個をつけるとさらに7ℊふえることになる。

 ふつうの人なら体重1kℊ当り毎日1ℊのタンパク質をとることが目標になっているので,男性なら70ℊ,女性なら60ℊ食べれば合格となる。うれしいことに1日の必要量の約1/3を,このうどん・そばだけで補える計算になる。

<5>アミノ酸バランスが向上する

 小麦粉やソバ粉だけでつくられた通常品の場合,必須アミノ酸のうちリジンやトリプトファンが少ないため,プロティンスコア(タンパク価)が低く単品としての栄養価がよくない。これに対して,大豆タンパクを用いると,バランスがずっとよくなる。また歯ごたえがシコシコして,高級麺の感じになっている。腹もちがよいことが体験的にわかるが,これはタンパク質の消化時間が長くかかるためである。

 長距離をドライブする運転手の人たちにテストしてもらったら,疲労度が小なく,イライラしないで安全運転できたという結果が出ている。激しい労働にたずさわる人,スポーツマン,成長発育期にある人に最適だ。

<6>脂肪を落したい人にもよい

 さらに良いことは,タンパク質が2倍に増えた分だけ,代りに糖質である小麦粉の使用量が減少している点だ。脂肪太りの原因は,脂肪そのものよりごはん・パン・うどんなどの糖質のとりすぎによる。若い女性などで,食生活を無視しすぎて,貧血でたおれたり献血の際に比重が少なくて断られたり等,かえって不健康になるケースが多いが,高タンパクうどんやそばなら理想的といえよう。そのほか次のような病気の人は,食事中のタンパク質をふやす必要があり,ぜひおすすめしたい。肝臓病・ネフローゼ・結核・肥満・心臓病・低血圧・妊産婦。

 なお価格もうどんで一人前60円,そばで75円なので, 100円当り純タンパク質は31~329もとれる計算になる。かなり安くて良いタンパク質がとれるので,この点からも心配はない。
月刊ボディビルディング1974年5月号

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