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JBBAボディビル・テキスト⑪
指導者のためのからだづくりの科学
各論(解剖学的事項)―筋系2

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月刊ボディビルディング1974年6月号
掲載日:2018.08.26
日本ボディビル協会 指導員審查会委員長 佐野誠之

<4>頭筋

頭筋は顔面筋と咀嚼筋の2群からなるが、この両筋群は位置関係からだけでなく、機能上からも神経支配の面からも本質的に違うものである。
顔面筋は顔面神経(第7脳神経)で咀嚼筋は三叉神経(第5脳神経)でコントロールされている。
顔面筋は頭蓋から起こって皮膚に付くもので皮筋といわれ、顔面の皮膚を動かすものであり、顔面における皮膚の窓(口、鼻、耳、眼)の周囲に集まって窓の開閉や変形を行うものである。

また、顔面筋は、人間にあっては、感情の動きに従って運動するから表情筋ともいわれる。しかし、表情運動は顔面筋本来の役目ではなく、二次的なものである。
顔面筋は皮膚を動かすだけであり、いずれも小さく弱い筋であり微妙な動きを行うことができるようにその数は多い。
すなわち、額に横じわをつくる前頭筋、目を閉じる眼輪筋、口を側方に引く頬筋、口を閉じる口輪筋等や、また、舌を動かす顎舌骨筋、基突舌筋、舌骨筋等がある。

咀嚼筋はすべて下顎についていて、その運動を行う。顔面筋に比べ、大きく強い筋であり、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4対であり、下顎を上顎に引き寄せる作用がある。
頭筋については、この程度を知っておれば良いと考え詳細は略す。

<5>頸筋

頸筋は解剖学上、理論的には5筋群に分けられ、神経支配面等より説明されているが、いずれも頭頸部の運動に関与する筋群である。これらのうち最も重要と考えられるものについて記す。(参考図B-21)
(参考図B-21)頸筋

(参考図B-21)頸筋

広頸筋

古い書物では闊頸筋と記されているもので、第2肋骨前端から肩峰を結ぶ線から広く上方に出て、下顎骨を被い下部に着く頸の側面を広く被う皮筋で、顔面神経支配を受け顔面筋と同系の筋で、頸部と鎖骨下部の皮膚を上に引っぱり筋膜をはっている。
胸鎖乳突筋の補助的な働きをしており、両側が働くと下顎を下げ、片方が働くとその方に顎が傾く。

胸鎖乳突筋

側頸部にあり、広頸筋におおわれているが、きわめて重要な筋で、頸部の主要な前屈作動筋である。二頭筋で胸骨上端と鎖骨の内側から起こり斜めに上後方に走り、乳様突起とその付近(後頭骨の外側)に着いている。
神経支配は僧帽筋と同じく副神経と頸神経叢の枝である。
両側の筋が同時に働くと後頭部を前下方に引き顔面を上にあげる。片方だけ働くとその反対側に傾むけながら回す。たとえば、右側だけ働くと顔面を左上方に向ける。

後屈作動筋である僧帽筋とは発生的に同一原基に由来するものとされており、両者の後頭骨での停止も相接しており、その兄弟関係がうかがえる。
頭および頸の重心は、頸の支点である環軸椎関節や頭関節に対し、かなり前方にあるので、頭は自然に前に垂れ、水平に保つには、後側を引き下げることによって環椎上にようやく平衝を得るものである。
この意味で、頭頸部の運動に関与する後頸筋群や後頭下筋群は大切である。

A―後頭下筋群

後頭下筋群は頸部の最上部で頭蓋のすぐ下にあり、他の背筋でかくされて存在するいくつかの小筋群の総称で、頭蓋と環椎、または軸椎を結ぶものである。
これらを神経支配の面より区別して脊髄神経の第1頸神経の後枝(後頭下神経)の支配をうける後部のもの(大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)と、
前枝(頸神経叢)の支配をうける前部と外側部のもの(外側頭直筋、前頭直筋)とに分けることができる。これらは頭の後屈と回旋運動の補助筋として働く。

前頭直筋

頭長筋の補助的働きをなすもので、頸長筋、頭長筋におおわれているが、環椎の外側の前から上方に向って大後頭孔の前についている。
頸長筋、頭長筋、前頭直筋の3つを椎前筋と呼ぶこともある。(参考図B-22、B-23)
(参考図B-22)後頭下筋を示す略図

(参考図B-22)後頭下筋を示す略図

(参考図B-23)後頸筋群を示す略図

(参考図B-23)後頸筋群を示す略図

B―後頸筋群

後頸筋群はおもに頸椎にはじまって頭蓋底、上位肋骨、頸椎に終わるもので、これには頸椎体の前面のものと、外側部のものとに区別される。神経支配はいずれも頸神経前枝の支配をうけるもので、固有背筋ではない。

ⓐ頸椎体前面にあるもの

①頸長筋――頸椎、上部胸椎前面の両側を垂直に走る筋群で、垂直部、上斜部、下斜部の3つに分かれる。これらは左右同時に働けば頸椎を前に屈げ、片方のみが働けば頸椎をその方にまげる。

②頭長筋――頸長筋の上部外側にあり後頭骨下面咽頭結節の外側と、第3~第6頸椎肋膜突起の間についており、左右が同時に働けば頭部を前に屈げ、片方だけが働けばその方へ頭をまげる。

ⓑ錐体の外側にあり、頸の屈筋、回旋筋として働く斜角筋群と称されるものがある。

①前斜角筋――第3~第6頸椎の肋横突起の前結節から起こり、斜め外前下方にのび、第1肋骨につく。深呼吸のとき、第1肋骨を引きあげ、胸郭をひろげる働きをするほか、
胸骨を固定したときは頸を前に引く(左右同時に働く場合)。また片方だけ働くとその方に頸をまわす働きをする。

②中斜角筋――前斜角筋と同様の働きをするもので、環椎以外の全部の頸椎の肋横突起前結節から出て、斜め外前下方にのび、節1肋骨についている。

③後斜角筋――第4~第7頸椎の肋横突起後結節から出て斜め外前下方にのび、第2肋骨についており、前・中斜角筋と同様の働きをする。以上の前・中・後斜角筋を合わせて椎後筋と呼ぶこともある。
 頸部の筋のうち、とくに頭頸部の運動に関係深いと考えられるもののみについて記した。この他に舌骨筋群や筋膜、腱膜等があるが、身体運動上それほど重要と思われないので省略する。(参考図B-24)
(参考図B-24)頸部の水平断面

(参考図B-24)頸部の水平断面

<6>背筋

後頭部から尾骨まで、頸・胸・腹の後面にひろがってついている筋群で、浅背筋群と深背筋群とに分けられている。
浅背筋群は上肢に属する筋群であり、深背筋群は脊柱の運動に際して直接働くもので、脊柱を直立させるのに必要な筋である。この意味で固有背筋と呼ばれており、上肢とは直接関係はない。(参考図B-25)
(参考図B-25)背部の浅筋

(参考図B-25)背部の浅筋

A―浅背筋群

4対の筋からなり、いずれも上肢の骨格についている。だいたいにおいて浅胸筋群と拮抗して肩や上腕を後方に引く働きをなし、神経は主として頸腕神経叢の枝で支配されている。(参考図B-26)
(参考図B-26)肩甲骨の運動にあずかる胸背部の筋(右の図は僧帽筋の大半を除去して示す)

(参考図B-26)肩甲骨の運動にあずかる胸背部の筋(右の図は僧帽筋の大半を除去して示す)

①僧帽筋――後頭部、頸部、胸部の背部の正中線から長い起始をもって起こり、外側方に集まって上肢帯についている。頸部および肩甲骨の運動にあずかる筋で、僧帽筋上部が働けば肩甲骨を上内方に引き上げる。
また、肩甲骨を固定した場合は頸部の後屈作動筋である。僧帽筋中部が働けば肩甲骨を内転させる。すなわち、後内方に引く。僧帽筋下部が働けば肩甲骨を下方に引く。

②広背筋――胸腹部の骨格から起こり上外側の方に向って集まり、上腕骨についている。肩関節の運動にあずかる筋で、上腕内旋の主働筋の1つのである。すなわち、上腕を後内側の方に引く働きをする。

③肩甲挙筋④菱形筋(大菱形筋、小菱形筋)――ともに頸部および胸部の脊柱から起こり、斜め下外側の方に走り、肩甲骨の内側縁についている。ともに肩甲骨の運動にあずかる筋で、肩甲骨を引きあげ、また、後内側に引き寄せる働きをする。(参考図B-27)
(参考図B-27)背部の深筋(僧帽筋、広背筋をとり除いたところ)

(参考図B-27)背部の深筋(僧帽筋、広背筋をとり除いたところ)

B――深背筋(固有背筋)

浅背筋の下層にあり、主として脊柱の両側の深層を埋めている20種近くの筋を数えるが、みな体幹の骨格についており、脊柱の運動を行うものであるが、機能的には全筋が協同して脊柱や頭を支え、その運動をする働きをもっている。
深背筋は棘突起から起こって肋骨に終わる筋群(棘突肋骨筋)と、椎骨から起こって椎骨に終わる筋群(棘突背筋)の2者に分けられるが、前者は浅背筋とともに脊髄神経の前枝によって支配されているが、後者はすべて脊髄神経の後枝で支配される。
ゆえに固有背筋は脊髄神経の後枝の支配を受ける筋群ともいうことができる。(参考図B-28)
(参考図B-28)棘突肋骨筋を中心に背筋を示す

(参考図B-28)棘突肋骨筋を中心に背筋を示す

はじめに前者についていえば、上後鋸筋(第4、第5頸椎~第1胸椎の棘突起から起こり、第2~第5肋骨に停止する薄い筋)は、僧帽筋と菱形筋の下にあり、
また、下後鋸筋(第11胸椎~第2腰椎の棘突起から起こり、第9~第12肋骨につく薄い筋)は、広背筋の下層にあり、ともに肋間神経(胸神経の前枝)の支配をうけ、肋骨の運動に関係する筋である。
次に固有背筋であるが、頭頸部は、頭を正常位に保ち、また頭を回転させる働きのある頭板状筋、頸板状筋、頭半棘筋、頸半棘筋等がある。(参考図B-29)
(参考図B-29)固有背筋を中心に背筋を示す

(参考図B-29)固有背筋を中心に背筋を示す

脊柱起立筋として、最外側を占める腸肋筋、その内側の最長筋、一番内側で脊椎に沿う棘筋の3つに分けられる固有背筋のうち、深層のものほど短く、浅層のものほど長い。
また、深層のものは内側(おもに棘突起)に、浅層のものほど外側(横突起、肋骨等)に停止する。
さらに、棘突起から起こって肋骨に終わるもの(上後鋸筋―肋骨を引きあげる。下後鋸筋―肋骨を引き下げる)や、椎骨から起こって椎骨に終わるものとに分けられる。(参考図B-30、B-31)
(参考図B-30)背筋の深層部

(参考図B-30)背筋の深層部

(参考図B-31)脊柱起立筋と半棘筋を示す模型図

(参考図B-31)脊柱起立筋と半棘筋を示す模型図

固有背筋の筋膜は、固有背筋を包んで浅背筋の下にあって、上方は項筋膜に、下方は仙骨後面についている。
胸部では頸板状筋、最長筋の起始・停止部となり、腰部では広背筋の腱膜とともに腰背腱膜ともいわれ、側腹筋の付着部となっている。項膜筋は頸筋膜の椎前葉につづいている。
先にも述べたように、長いものほど浅いところに、短いものほど深いところにあるというように、極めて立体的に構成され、長短深浅さまざまな筋線維の構成の複雑なゆえに、デリケートな運動が可能なようになっている。

<7>腹部の筋

腹壁をつくる筋群で、この筋群は2つの役割をもっている。第1は弾性あるコルセットとして腹部内臓の保持であり、第2は体幹の運動に屈曲・回旋をなさしめる作動筋となることである。
腹筋群は、これを前腹筋群、側腹筋群、および腰方形筋(後腹筋)に分けられ、脊柱の運動に関与するとともにまた腹圧を加える働きをする。(参考図B-32)
(参考図B-32)腹壁の水平断面

(参考図B-32)腹壁の水平断面

A―腹直筋

前腹壁の中を縦に走るもので、剣状突起部とその両側の肋軟骨から起こり細長い帯状の筋で一対をなし、正中線の両側に位置し、恥骨に付く筋で、途中3~4個の中間腱画によって腹筋が分けられている。腱画のある部分は皮膚が凹んで横溝をつくっているのでよくわかる。

B―錐体筋

恥骨結合の上方にあり、腹直筋の浅側につく三角形の小筋で、退化性の筋であるため、中には欠けている者もある。(参考図B-33)
(参考図B-33)腹の筋(正面)

(参考図B-33)腹の筋(正面)

以上の両者は、側腹筋の腱膜の続きである腹直筋鞘という丈夫な結合組織で包まれており、左右の腹直筋鞘は身体の正中線で線維束が相交織して白線という縫目状の線状をつくっている。
白線は臍のところで臍輪という孔で貫かれ、胎生期に臍帯の内容をなしていたものの残りが結合組織の索状体となって通っている。
前部腹筋は前胸郭を引き下げ、あるいは恥骨を引き上げ、または脊柱の前屈に関与したりする。また、側腹筋とともに腹圧を加える働きをする。(参考図B-34)
(参考図B-34)腹の筋(浅層、横より)

(参考図B-34)腹の筋(浅層、横より)

C―側腹筋

固有胸筋(深胸筋)と同系の筋群で3層の構成からなっている。第1層の外腹斜筋、第2層の内腹斜筋、第3層の腹横筋からなる。
いずれも広い板状筋で、固有胸筋と同じ状態で胸腹部の付着部で互いに移行しあい、線維の走行も相対応している。これらの筋が収縮すると肋骨を下げ、脊柱を曲げるとともに腹圧を加える。

①外腹斜筋――第5~第12肋骨の外側面から起こり、腹壁外側部の中を後上方から前下方に向って走り、腱膜となって腹直筋鞘の前葉の中にとけこみ、その主構成分をなす。
また、腱膜の下縁部は鼠径靭帯となっている。鼠経靭帯は、上は外腹斜筋の腱膜と続いているが、下ははっきりとした境界線をもって大腿腱膜と連結している。


②内腹斜筋――外腹斜筋の下で交叉するように走り、腱膜は腹直筋鞘につく。外腹斜筋と同様に肋間神経の支配をうけ、協同して同側性に働けば肋骨を引き下げて脊柱を前に屈げ、片方のみ働けば体幹を回転させる。(参考図B-35)
(参考図B-35)腹の筋

(参考図B-35)腹の筋

③腹横筋――腹壁の最内層を水平に走る筋で、腱膜は腹直筋鞘につく。この筋の収縮は、内・外腹斜筋とともに腹部内臓に対する圧力を高め、横隔膜と協同して胸部を固定し、呼気を助ける。

④腰方形筋――腸骨稜から第12肋骨にかけて縦に走るものと、腸骨稜から第3、第4腰椎、肋骨突起および第12肋骨にとそれぞれ斜めに走るものとからなる。
背面腸骨稜の上で、広背筋と外腹斜筋とでかこまれた腰三角形は、腰方形筋のみが後腹壁をなすものである。
この筋は腰椎の両側にあり、両側性(左右同等に)に働けば腰椎を後ろにそらし、片方だけ働けばその側にまげる脊柱の外側屈筋である。また、第12肋骨を引き下げる働きもある。

D――腹筋全体としての働き

個々の腹筋の働きについては、それぞれのところで記したが、各筋が協同、あるいは拮抗しての作用についてこれから述べる。
腹直筋と側腹筋および腰方形筋(後腹筋)は、胸郭と骨盤を連絡して、前後腹壁を構成し、正常の位置を保ち、また側腹筋は胴体の形を整え、これを前後屈および回転させるが、とくに外腹斜筋はその両側のものが同時に働くことによって、腹直筋を助けて胴体を前方に屈する。
また、胴体を回転さすには、片側の外腹斜筋と反対側の内腹斜筋とが協同して働く。すなわち、腹筋は脊柱運動の動作筋としては屈筋ならびに回旋筋であるとともに、内臓に腹圧を加える。また、肋間筋その他の筋と協力して呼吸運動を完成していることも忘れてはならない。

(次回は胸部の筋、体肢の部の筋について述べる)
月刊ボディビルディング1974年6月号

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