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ごまの効用

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月刊ボディビルディング1974年7月号
掲載日:2018.07.22
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野沢秀雄

<トレーニングと間食>

「間食としてタンパク質の多い菓子はないだろうか」という質問を読者から受けたので、今回は間食について検討しよう。
一流選手の食事診断からわかるように、間食は重要な意味を持つ。動物はしょっちゅう草や虫を食べているし、子供たちも一日中食べてばかりいる。
じっとしているだけでもエネルギーが消耗されるのだから当然といえば当然であろう。
人間の進歩した点は栄養や調理方法を考え、1日に3度だけで効率よく食べられるように工夫したことである。これにより、自由な時間が生まれ、文化や体育、芸術、科学などを楽しむことができるようになった。
だから、ふつうの人なら3度ずつの濃縮された食事をとれば、必要エネルギーをまかなえるようになっているが、スポーツマンや重労働者、あるいは成長発育期にある人、病気の回復期の人などの場合は、補助的に栄養をとったほうがよい。

<ポーランドの選手たち>

さてそれでは何がもっとも栄養、とくにタンパク質があり、安くて便利かというと、以前に述べたチョコレートは100g当り約7gのタンパク質があり、カロリーも多いので、アメリカのワイダー氏やオフマン氏の会社でもチョコレートやチョコバー(チョコレートの中にキャラメルやナッツ等が入った製品)をかなり扱っている。
またビスケット、あられ、ドーナツは、それぞれ100gあたり7g、9g、12gのタンパク質を含んでいる。またイカやタラ、小魚などのくん製品にも30~40gとかなり多量のタンパク質が含まれる。

ところでポーランドのスポーツ選手の食事を調べていたら、ごまを水飴で固めて、日本のおこし、のようにしたキャンデーを間食に用いている。
ごまはアラビアンナイトの「ひらけーゴマ!」で知られているように、本来の原産地は中近東であるが、その後ヨーロッパや中国、日本にも伝わり各地で栽培されている。
ポーランドでも良質のタンパク質や脂肪・ビタミン・ミネラルに富んだ白ゴマが料理や菓子に使われ、国民体力の強化に役立っているという。

〈古来からの健康食>

日本でも古来ゴマは強壮強精、不老長寿の秘密食として珍重されてきた。
たとえば、古い医学書である「本草綱目」の中に〝ゴマは気を増し、肥筋を長じ、髄脳を填し、筋骨を堅くし、耳目を明らかに、肺気を補い、心驚を止め、大小腸を利し、久しく用いれば老いず〟というように述べられている。

現代になって分析技術が進歩し、次に述べるような利点が解明されてきたが、これらの効果は今もかわっていない。
とくに乾燥した種子全般に共通するが、100g当りのタンパク質が17~19gあり、また脂肪の組成中にリノール酸・リノレン酸の不飽和脂肪酸が多く、これが血管壁へのコレステロール沈着防止に効果のあることはよく知られているところだ。

<ビタミンEについて>

さらに、最近ビタミンEについての研究が進歩し、酸化防止作用が注目されている。ビタミンEもふつうのビタミン同様に食べすぎると排泄されてしまったり、体内で分解されて意味がないのだが、現代の精製されすぎた食事からはだんだん摂取しにくいビタミンの一つとされている。
さてその効果は①血流をさかんにする。②酸素を能率よく燃焼させる。③体内の不要な廃痕組織を溶かす。④血管を拡張させる。等であり、スポーツ選手に与えるとトレーニングのスタミナを増大させることが報告されている。  
このビタミンEの多い食品は、第一に小麦胚芽(小麦の種子のうち、将来芽として発育する部分を集めたもの)次いでゴマ・ピーナッツ・さばの缶詰、さつまいも等である。

つごうのいいことに小麦胚芽は缶詰で真空充填された製品が発売されているし、ゴマを固めたキャンデーも国内の数社から発売されている。いずれも有害な保存料・着色料等が含まれておらず安全食品といえよう。
ゴマそのままなら100gを食べるのは困難であっても、キャンデーになっていると食べやすく、1箱160gを食べると、これだけで約800カロリー、タンパク質 は16gとれることになる。
ポイントはよくかむこと。ゴマの種皮はセルローズなので消化されにくく、うっかりすると、そのまま便に出てしまう。これでは何にもならない。 

<太るかどうかの問題>

最後に別の読者から「チョコレートが高カロリーとあったので、食べているが、あまり太らない」という質問をちょうだいしたので、少しだけ述べさせていただく。
太るかどうかは、その人の遺伝的な体質、年令などに影響されることが多いが、努力次第で相当変化することも事実である。さしあたって次の5点をチェックしていただきたい。

①トータルして1日のカロリーは充分かどうか。

②よくかんでゆっくり食べているか。
  
③体力の使いすぎのほか、神経や気を使いすぎることはないか。

④睡眠時間は充分か

⑤胃や腸の調子はわるくないか。

そして食事の効果は3カ月以上続けてから出てくるので、あせらず継続することが重要である。
月刊ボディビルディング1974年7月号

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