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第1回ミスター西日本コンテスト観戦記

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月刊ボディビルディング1974年7月号
掲載日:2018.06.29
堺ボディビル・センター会長
JBBA指導員審査会委員長
佐野誠之
第1回ミスター西日本コンテストが去る4月28日、九州協会主催、福岡県協会主管のもとに、福岡市中州の明治生命ホールにおいて実施された。
参加選手はフリー参加ではなく、中国・四国・九州の各県協会加盟ジム、または団体より3名以内の推薦者に限定されていたので、昨年度各県大会やブロック大会における上位入賞者の中より49名が参加して行われた。

それだけに本年度コンテストの劈頭を飾るにふさわしい真に見ごたえのある大会であった。
毎年、ミスター日本コンテスト以後はシーズン・オフの形で、各選手とも翌年4月頃までは練習も比較的低調になりがちであるが、
この期間の練習に活を入れる意味も含めて、年度最初のビッグ・タイトル戦として計画され、太田福岡県協会々長の並々ならぬ努力と、九州協会役員各位の協力によって実現したものである。

4月28日といえば、ちょうどゴールデン・ウイークの初日で、レジャーに行楽にと浮きたつときなので観客の集まりが心配された。それに当日の朝になって五月雨のしぐれる天候となったが、500名を越す熱心なファンが明生ホールにつめかけた。
いまさらながら九州協会の力強さと、ボディビルが九州地区においても着々とその根をはり理解を深めていることを感じ、非常にうれしかった。

地域社会のスポーツ活動

世にスポーツ自慢、健康自慢は数々あるが、本当に身体に有効な運動をしている者はいかほどか?
このように考えるとき、われわれ協会活動の普及徹底にその力のいまだ至らざるを痛感する次第であるが、地域社会における活動として、西日本大会をまのあたりに見て力強く感じた次第である。

地域社会のスポーツ活動がどのような状況であるかを、経企庁が岩手、千葉、熊本の3モデル地区で調査した結果を、5月2日、「スポーツ白書」の形で発表しているが、その結果は非常にショッキングである。
これによると、住民のアンケート調査では「自分の健康はすぐれている」が67%、「適当な運動をしている」が29%あったが、
科学的追跡調査の結果健康保持に有効な運動をしていると判断されるものは、男では14%、女では4%、全体を通じて本当に身体に有効適切な運動をしているとみられる者はわずか8%程度であるという惨たんたるデータが出ている。

そして、血圧異常、肺機能、コレステロール等の検査では、半数以上が欠陥人間であり、とくに40代では約半分が肥満体だという。これらの原因の1つとして、同庁では、住民が利用できるスポーツ施設がほとんどないためと指摘している。
週休2日制を定着化しようとする半面、爆発的に伸びる余暇エネルギー対策として、われわれジムや協会の伸び道が示されているようである。

調査によると、わが国のスポーツ施設は約15万。そのうち、学校体育施設が約11万で全体の73%を占め、ついで企業の施設が2万4千で16%、国民が利用しようと思えばできるのが約1万でわずか7%しかなく、その中でも専任の指導者がいて、いつでも使用できるのとなるとその1/3である。
こう考えると、市民が実際に使える施設はほとんどないといってよいようである。
このような現状から、われわれ協会傘下のジムの存在価値がいかに重要であり、地域体育活動の中心としてジムおよびビルダー(とくに指導者)の活動の及ぼす影響が大であるかを認識していただきたい。

本大会と相前後して、以上のような「スポーツ白書」が発表されたことも 意味深いものであろう。
本大会に参画された関係者や選手諸氏も、今後の地域体育の推進力として、文明病対策、余暇対策としての構想とをもって、その持てる力を充分に発揮するようにしていただきたい。 

接戦のすえ知名がチャンピオンに

(舞台に勢揃いした選手たち。挨拶するは吉村泰輔審査委員長)

(舞台に勢揃いした選手たち。挨拶するは吉村泰輔審査委員長)

さて話をコンテストに戻そう。午後1時から2時間にわたって慎重な裏審査が行われ、部門別ならびに第一次予選、第二次予選の選考に関する各種審査データが審査員の手許でチェックされ、第一次予選を通過したもの18名、
さらに第二次予選で10名の決勝進出者が選ばれた。

第一次予選を通過した選手は、竹尾止、足立実、森田茂、小野幸利、知名定勝、長久征二郎、高橋進、牧島進一郎、奥田孝美、寺川和昭、村本功、外純也、津曲鉄広、高橋威、香月末光、平井照義、木村秀俊、賀川上の18選手であった。
結局、決勝進出者10名は、ほとんど昨年、1昨年のミスター日本出場者、もしくは出場有資格者であった。

全体的にいって、いままでは各選手とも各県協会大会またはブロック大会に焦点を合わせ、最終的にはミスター日本コンテストを目指してスケジュールをたてていたため、4月下旬開催という本大会では調整が充分でなかったように見受けられた。
しかし、前記選手たちはいずれも各県各地区におけるトップ・ビルダーであり、その地区での推進力ともなる人たちであるのだから、もう少しの調整をしたうえで出場してもらいたかった。
本大会の開催要項が発表されてから大会当日まで3ヵ月は充分あったはずである。

結局、優勝は知名、2位・寺川、3位・高橋、4位・牧島、5位・奥田、6位・香月、7位に足立、津曲、長久小野の4選手となった。
知名選手と寺川選手は接戦の末、僅少差で知名選手が勝ったが、この両選手はいずれが優勝しても不思議ではないほど甲乙つけがたかった。
今回は惜しくも敗れたが、寺川選手の今後の健闘を望みたい。

高橋、牧島、奥田の3選手も僅少差で3、4、5位と分かれたが、非常に伯仲しておりまったく予断を許さない接戦であった。
とくに、高橋選手は善戦よく知名、寺川両選手に肉薄したことは立派であった。

6位香月選手はややデフィニション不足で、迫力に欠けていた。
永年のキャリアを生かし、いま少し練習法を変えてキレを出すように工夫すれば、当然上位に入れる実力をもっていると思う。
年齢を超越したファイトには、知名選手とともに敬意を表したい。今後も後進の手本としてまだまだ活躍してほしいものである。

知名選手は部分賞で腕と背の部門を獲得したが、今後はもうひとまわりのバルクと脚、腹に重点を置いて練習すれば今年度のミスター日本では一段の飛躍が期待できよう。

寺川選手は腹、脚の部分賞とベスト・ポーザーの3つを獲得したが、非常にキレの良いからだで、3年というボディビル歴からみて、精進次第では今後大いに楽しみな選手である。

高橋選手はどこといって欠点がなく、しかも非常にプロポーションが良いのが目についた。
部分賞で胸を獲得したが、他の部分が上位2選手に及ばなかったことが3位という結果に表われている。

牧島選手は胸、腕は良かったが、前記選手に比べ脚、腹、背が悪かった。脚は太いのだがキレが足りなかった。

奥田選手は腕の部で知名選手に肉薄したのは見事であったが、胸、腹、とくに側腹が弱かったのが惜しまれる。

ポージング如何ではもっと迫力が出たと思う。4位の牧島選手とは良く似た体型で、今後お互いに良きライバルとなろう。
2人ともまだ若いのだから、あせらず大成を期してもらいたい。

7位の4選手であるが、残念ながら上記選手と比べ多少の差を感じる。 
足立選手、小野選手ともにデフィニション不足で、迫力にとぼしく、またポージングの練習不足も目についた。

長久選手は均斉のとれた欠点のないまとまったからだをしていたが、それだけに迫力にとぼしく、いま一歩の弱さを感じる。
とくに、ポージング時の下半身が弱く見えた。

津曲選手は非常に良い脚をしており、部門別で僅差で寺川選手に敗れたのは残念であろう。
ただ胸と三頭筋に弱さを感じた。いまひとまわりのバルク・アップができれば上位入賞は間違いあるまい。

以上、入賞選手に対する寸評であるが、今後の参考として努力され、本年度のミスター・アポロ、さらにはミスター日本コンテストを目指して活躍されんことを望んで筆を置く。
月刊ボディビルディング1974年7月号

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