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正しい栄養シリーズ
<1>野菜
食物に含まれる栄養素と調理のポイント

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月刊ボディビルディング1978年4月号
掲載日:2018.07.24
国立競技場トレーニングセンター 木村利美

しいたけ

コレステロールがたまるのを防ぎ,血圧を下げる効果が認められている。しいたけの1種であるサルノコシカケは,抗ガン作用があるとして珍重されている。
 栄養的には,ビタミンB2,およびビタミンDの母体であるエルゴステリンが多く含まれている。日光で乾燥するとビタミンDが生成され、カルシウムとともに骨の形成に働くほか、身体機能の亢進に役立つ健康食品となる。生しいたけは,そのまま焼いて食べたり,天ぷらにするとよい。干しいたけは、水につけてもどし,こまかく切って,鳥肉,ネギ,ショウガなどと一緒に煮込み,塩と酒少々で味つけしたスープにすると,簡単でおいしく食べられる。
 一般に,きのこ類は消化が悪いので,一度にたくさん食べないほうがよい。とくに,疲労気味の人や,食欲のない人は,少量ずつ,何回にも分けて食べるようにする。また、非常に低カロリーであるため,減量したい人にはすすめたい食品である。

れんこん

でんぷんが多く,アスパラギン,アルギニン,レシチン等も含まれている。ビタミン類は少ないが、血液を浄化し、止血,咳止めに卓効がある。蓮は、千年以上もたった種子が、発芽するほど生命力が強いものであり,れんこんはその蓮の地下茎である。その生命力のゆえか、漢方的な薬効が強く、出血性の病気,結核,ぜんそく,心臓病などに効くといわれている。虚弱な人には、生命力を強め、体力を増すのにうってつけの食物である。健康な人でも,からだが冷えて抵抗力がさがる冬には、,ぜひメニューに加えたい1品である。
 食べ方は,特別な薬効を期待する場合は生がよいが,栄養的には熱に対して安定しているので,煮たり,炒めたり,好みに応じて料理すればよい。れんこん自体にうま味があるので,塩かしょう油を少々加えただけでも,けっこう食べられる。うすく切って,サッとゆがき,酢のものにしてもおいしく食べられて,健康にもよい。なお,咳止めには,生をすりおろした汁を,サカズキに一杯ぐらい空腹時に飲むとよい。

はくさい

ごくポピュラーな野菜であるが,我が国で栽培されるようになったのは比較的に新しく,明治・大正のころ,中国より輸入されて広まったようである。はくさいには各種のビタミンがあるが,とくにビタミンCが多い。他の葉菜類に比べて繊維がやわらかいので,消化がよく,スタミナをつけるのによい。利尿作用もあり,下半身を壮健にする作用がある。いろいろな鍋物によく合うので、寒い冬などにはドンドン食べていただきたい。しかし,栄養面を考慮すると,生で食べるのが理想的であり細かくきざんだはくさいに,かつお節,しょう油,ゴマ油をかけてたべると,サクサクとした歯ざわりでおいしく,栄養的にも申しぶんない。

にんにく

食用としての歴史は古く,古代エジプト時代,ピラミッド建設の人夫がこれを常食して,過酷な労働に耐えたと伝えられている。独得の臭気は,アリインと呼ばれる物質で,血液の循環をよくし,胃液の分秘を盛んにして食欲を増す。この臭気成分には,強い殺菌力があり,体内では腸内細菌に作用して,ビタミンB1の吸収率をよくし,腸内でのB1の産生を助ける。全身的な精力増強に効果があることが知られているが,動物実験によれば,にんにくを与えると繁殖力を増す傾向が見られ,ホルモン分泌に関与することが実証されている。昔仏門では,にんにくを食べることが禁じられていたというのも,このような効果が強すぎたためであろう。生で食べたり,焼いて食べたり,いろいろな食べ方があるが,刺激が強いので,食べすぎると,かえって胃腸に負担をかける。1日に1かけらも食べれば充分である。

ぎんなん

ぎんなんは野菜ではなく,イチョウの実の果肉の中にある種子であるが,滋養強壮の効果が強いので,ついでに述べておく。
 イチョウは、ご存知のように非常に長寿の木であり,古代から地球上に存在し,その姿を変えていないところから”生きている化石”と呼ばれている。
 ぎんなんの主成分は,でんぷんとタンパク質で,穀類に近いが,脂質が少なく,ビタミン類は多い。たくさん食べると鼻血が出るといわれるほどであり,それは強い滋養強壮効果に由来している。昔は,肺結核、夜尿症に効くとして,薬としても用いられた。その当時は,ぎんなんをゴマ油につけて,100日くらい置いたものを,毎日少しずつ食べるようにしたという。11月頃とれるので,寒い季節の健康食品である。食べ方は,硬い殻を割り,フライパンで柔かくなるまで炒めるだけでよい。殻を取ってゆで薄皮を除いて串にさし,油であげると,手のこんだ料理となる。

ほうれんそう

漫画のポパイでおなじみだが,ほうれんそうを食べると快力モリモリになるというのも,まんざら根拠のないことではない。
ほうれんそうには,蛋白質や各種のビタミン類が豊富で,胃や膵臓の消化液の分泌を促し,腸の運動を刺激する物質も含まれている。とくに鉄分とビタミンCが多く,増血作用があることはよく知られている。
欠点は,シュウ酸が含まれていることで,このシュウ酸が体内に蓄積すると,カルシウムと結合して膀胱や腎臓などに結石をつくることが認められている。しかし、実際には,毎日何束も食べ続けた場合のことであり,普通に食べていれば心配することはないようである。ゆでると,栄養価は少し低下するが,シュウ酸が流れ出すといわれており,多食する場合は,ゆでたほうが無難かもしれない。
栄養の損失を少なくするためにはグラグラ沸かしたタップリの湯で,短時間でゆでるのがコツである。植物油を多めに熱して,サッと妙め,塩,こしょうで味つけしたソテーはビタミンAの効率を高めるうえ、風味もあって喜ばれる。
 おひたしにする場合は,ゆでてサッと冷水をくぐらせて水をきるが,このとき,力まかせにしぼりすぎると,セッカクの液汁が出てしまって栄養の損失も大きく,味も悪くなるので要注意。

クコ

クコは川原や土手などに野生している高さ2メートルくらいの落葉灌木で,繁殖力,生命力が非常に強い植物である。
葉や実がクコ茶,クコ酒などとして一般によく用いられている。
数年前,クコの強精作用がクローズアップされ、健康食品としてブームを呼んだが、日本でも古くからその効果は認められている。胃腸を丈夫にし,便通をよくする効果があり中国の古い書物には「神経痛等の痛みをとり,長く常用すれば,筋肉が強くなり,老化現象を防ぎ、全身爽快になる」と記されている。
若葉を生で食べたり,ゆでたりして食べられるが、手に入らない人は市販のクコ茶,クコ酒等を常用するとよいだろう。

コンフリー

日本には近年になって入ってきた植物で,タバコの葉に似た大きな葉を食用にする。ミネラル,蛋白質も含まれているが悪性貧血や肝臓病に特効のあるビタミンB12が外く含まれているのが特色である。他のビタミン類も多く,胃腸の疾患,血圧異常を整える作用があるといわれ,青汁にしたり,天ぷら,油いためにして食される。
株分けでふやせるので,温暖な地方では,自宅で栽培すると,春から秋まで絶え間なく成長する葉を次から次へと食べられる。

にら

にらの臭気は,ねぎやにんにくと同じ系統の成分で,この成分が食欲を増進したり,ビタミンB1の吸収をよくして効果を高める作用をもつ。
ビタミンA,B1,B2,Cを外く含み,ビタミンB1を除いては,にんにくよりも多量に含まれている。とくにビタミンCの含有量はすばらしくこの種の野菜の中では最高である。
一番効果的な食べ方は,みじん切りにして生のまま,しょうゆとかつにお節をかけて食べたり,納豆の薬味に入れたりする方法であるが、生のニラは、あまり一度に食べすぎないように注意したい。倍量の水を加えたジュースも,ちょっと飲みにくいが少量で効果がある。
一般的な食べ方は,"ニラ炒め”であるが,タップリの油をよく熱したフライパンで,サッと妙めることが大切である。細かく切ったニラと卵を,あらかじめ混ぜておき,塩こしょうで味つけして炒めた“卵とじ”はおいしく栄養も満点である。

ダイコン

種類が多くほとんど1年中栽培されているが,やはり秋大根が最も多く出まわっている。栄養的にみると,水分が93%くらいあり,ビタミン類ではCが多く,ニラ,ネギ,もやしなどと同じくらい含まれている。ビタミンAはなくB類が少しある。
 大根にはいろいろな種類の酵素が含まれており,とくにアミラーゼが多く,消化を助ける。胃腸の弱い人や,大食いで胃に負担をかける人は大根おろし等にして常食するとよい。
 大根おろしにすると生で食べられるので,ビタミンCの損失は少ないが、おろしてすぐに食べないと栄養価が低下する。また,人参とまぜるとビタミンCが破壊される。大根おろしの汁をしぼってしまうと,せかくの成分がなくなってしまう。ただ,胃腸の弱い人には,汁が辛すぎるのはよくないので注意がいる。
 
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2回にわたり,からだをあたためる作用のある野菜や,体調を整える野菜について述べてきた。
 生きている動物は暖かく,死ぬと冷たくなることでもわかるように,からだをあたためるということは、生命力を高めるということであり,内臓の働きを良くして新代陳謝を盛んにし、スタミナをつけたり精力を強くするということにつながるのである。
 これまでに記した他にも,良質の脂肪やミネラルに富んだゴマ,植物性の蛋白源として最高の大豆,炭水化物やビタミンの多いイモ類などは、栄養的にも優秀な食品であり,生命力を高める効果は大である。
 いろいろな種類のものを食生活にとり入れて,少なすぎず,多すぎず,適宜,適量,自分に合ったバランスのとれた食べ方をしていただきたい。
月刊ボディビルディング1978年4月号

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