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なんでもQ&Aお答えします 1978年5月号

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月刊ボディビルディング1978年5月号
掲載日:2018.07.26

大腿部の発達に有効な練習法は

Q ボディビル歴3ヵ月、自宅でトレーニングしている者です。現在のスケジュールと、トレーニング開始後3カ月間の体位の変化は下記のとおりですが、大腿があまり太くならないのが不満です。何かよい方法はないでしょうか。また全体のスケジュールについて不備な点があれば指摘してください。
(愛知県 北島信夫 高校生 16歳)
トレーニング・スケジュール

トレーニング・スケジュール

 以上の内容で隔日的に週3日のペースでトレーニングしています。なお、トレーニング後の疲労感は、少し疲れを感じるといった程度です。
体位の変化

体位の変化

A あなたが不満を感じておられるほど大腿の発達経過は悪くありません。全身的に発達の経過が良すぎたので、他の部分のサイズの増大に比較して不満を感じるのでしょうが、3カ月間で、大腿部のサイズが2cm増加というのは決して悪いものではありません。しかも、腹囲が2cmしまり、それにともなって体脂肪も減少したであろうことを加味して考えればむしろ大腿部の2cm増加は順調な発達ぶりだといってもいいでしょう。

 したがって大腿部を太くするための何かよい方法はないかという質問については強いてお答えする必要もないと思います。現段階では、今のままスクワットのみを行うだけで十分効果が得られるものと思います。

 それでは次に、スケジュール表を見て気がついた点について述べさせていただきます。

 ベンチ・プレスとスタンディング・フロント・プレスの使用重量が同じというのはうなづけません。つまり、この2つの運動の使用重量を比べた場合ベンチ・プレスの使用重量の方が重いのが普通です。したがって、胸部か腕部に故障でもあればともかく、一応、両者の使用重量と運動のやり方について、その適正のいかんを検討してみる必要があると思います。

 具体的には、ベンチ・プレスの使用重量が軽すぎはしないか、または、スタンディング・フロント・プレスの運動のやり方が不正確ではないか、といったことがらについて再検討してみる必要があるように思います。ことにスタンディング・フロント・プレスのやり方については、次の2つの点について検討してみてください。

 ①無理な重量を使用しているためにバーベルを挙上するとき、反動を使ってはいないか、②上体を後方へそらしすぎていないか、について注意してみてください。その結果、運動中の姿勢および動作に不適確と思われる点が発見されたら、いさぎよく使用重量を減らすようにしてください。〔写真参照〕
スタンディング・フロント・プレス

スタンディング・フロント・プレス

 その他には、これといった問題はないようです。ただスクワットの使用重量が少し軽いような気もします。無理な重量の使用もいけませんが、積極的なからだづくりにおいては、あまり消極的になりすぎるのも考えものです。ベンチ・プレスの使用重量ともども、スクワットの使用重量も再検討してみてください。

 使用重量の適正さを測る目安としては次のことを参考にしてください。

①運動中、常に正しい姿勢と正しい動作ができる重量であること。

②所定の回数(あらかじめ定めた1セットの反復回数、たとえば10回)を反復して、なおかつ頑張ればフォームをくずすことなく、もう2回ぐらいできる重量を選らぶのがよい。つまり、所定の回数を反復するのに、筋力を出しきることなくまだ2回ぐらいの余力がある重量が適しているといえる。

 とくに初・中級者の場合には、反復回数の多い少ないにかかわらず、常に多少の余力を残してセットを終了させるようにするほうが、力を出しきってしまうやり方よりも良い結果が得られるようである。したがって、思い切り頑張って12回できそうなところを10回、また、10回できそうなところは8回ぐらいに止めて、1セットの運動を終了させるように心がけるのがよいようである。そして筋力が向上してきて、使用重量をふやすときも、いま述べたように、常に2回くらいの筋力的な余裕を念頭において決めるようにする。

急に原因不明の腰痛におそわれた

Q ボディビル歴は10カ月ちょっとです。現在、腰を痛めているので思うようにトレーニングができませんが、つい最近までは次のようなスケジュールでトレーニングしていました。

①スクワット 40〜45kg 10回×3セット

②スタンディング・プレス 27.5〜30kg 10回×2セット

③ベンチ・プレス 40〜45kg 10回×3セット

④ベント・オーバー・ローイング 22.5〜25kg 10回×2セット

⑤ツー・ハンズ・カール 22.5〜25kg 10回×2セット

⑥シット・アップ(傾斜なし) 100回×2セット

 以上を1日おきに週3回実施し、トレーニング後の疲労感は中程度といったところでした。腰を痛める1カ月ほど前から、週に1回だけですがシット・アップを100回×10セット、計1,000回行うようにしていました。

 ところが、3週間ほど前から腰に痛みを感じるようになり、今ではトレーニングも思うにまかせません。何が原因で腰が痛くなったのか自分では判りませんが、やはり原因はトレーニングにあるように思われます。

 最初に異常を感じたのは、トレーニング後のことで、腰椎のあたりが少し重いような感じがしました。今になってみれば、そのときにすぐトレーニングを中止すればよかったのですが、それをかまわず続けた結果、トレーニングを重ねる度ごとに痛みが強くなり、とうとうしまいにはトレーニングができなくなってしまいました。

 重量的に無理をしたわけではなく、また、運動のやり方にしても自分なりに正しいフォームでやっていたと信じています。トレーニング量にしても決して多すぎるほどのものではありませんでした。それなのに、いったい何が原因で腰を痛めたのか自分でも納得がいきません。悪化させたことについては、確かに自分自身に落度があったと思いますが、しかし、初期の原因についてはまったく判然としません。このまま原因をうやむやにしておくと、たとえよくなっても、また同じ失敗をくりかえしそうで心配です。

 そこでお願いですが、腰痛の原因について何か思い当ることがあれば教えていただきたいと思います。ちなみに私の現在の体位は次のとおりです。
記事画像4
(秋田県 水野浩司 会社員 19歳)
A ご同情申しあげます。この上は、医師の診断を受けて1日も早く治すように治療に専念してください。手紙の文面だけでは、どれだけあなたのご依頼に添えるかわかりませんが、とにかく、腰を痛めた原因について考えてみましょう。

 腰を痛めたといっても、腰椎を痛めたのか、あるいは筋肉的な痛みなのかその点についても判然としませんが、一応、その原因となるいくつかのことがらを列挙してみましょう。ただし、それらのことがらが、あなたの場合に当てはまるか否かは別問題です。

①自覚症状はなかったが、もともと腰に疾患があったのではないか。

②ウォーム・アップが足りなかったのではないか。

③たまたま疲れていたときに無理なトレーニングをしたのではないか。

④風邪などをひいて熱のあるときにトレーニングをしたのではないか。

⑤使用重量に無理があったのではないか。

⑥運動フォームに誤りがあったのではないか。

⑦たまたま不注意に器具を扱ったときに痛めたのではないか。

⑧運動中にバランスをくずしたりはしないか。

⑨トレーニング量に無理があったのではないか。

⑩腰そのものを過度に使ったのではないか。

 他にもまだ原因となることがらはあるでしょうが、ざっと考えられることは以上です。それでは順を追ってもう少し具体的に説明していきますので、それを参考にして、あなたご自身のことに当てはめて検討して下さい。

①このことについては、事前に診断を受けていないと思われるので何ともいえません。ただし、カリエスなど直接骨に異常をきたす疾患の有無については、今からでも医師の診断を受ける必要があると思います。

②ウォーム・アップ(とくに腰の部分のウォーム・アップ)が足りない状態で、腰の部分に急激に強い負担がかかるような運動を行うと腰を痛めることがあります。

 ウォーム・アップして筋を温めることは、筋の働きをよくするばかりではなく、筋の柔軟性と弾力性が促進されるので、それだけ筋を損傷することの危険性が少なくなります。

③筋に疲労がたまっている状態とは、筋が硬化している状態であり、いいかえれば、筋の柔軟性と弾力性が低下している状態でもあります。したがって、そのような状態のときに無理にトレーニングをすることは、往往にして筋の損傷を招くことになります。また、疲労により筋の収縮力が低下しているときは靭帯を痛めやすいので、その点についても注意する必要があります。

④風邪などを引いてからだに熱があるときは、筋や靭帯の緊張度が低下するので、上肢や下肢の関節、および腰などを痛めやすいのでくれぐれも無理は慎むことです。

⑤無理な重量を用いて運動を行えばからだを損傷する危険性が増すのは当然なことです。とくに、スクワットや立って行なう各種のプレス、ハイ・クリーン、デッド・リフト、ベント・オーバー・ローイング等の運動は腰を痛めやすいので注意してください。

 あなたの場合、体位との比較から判断して、使用重量に無理があるとは思えません。したがって、このことが原因になっているとはちょっと考えられません。

⑥運動時の誤った姿勢、または誤った動作が原因となってからだを損傷することがあります。中でもスクワットやスタンディング・プレス、デッド・リフト、ベント・オーバー・ローイング等の運動種目は腰を痛めやすいので、それらの運動を行うときはとくに正しいフォームで行うように留意する必要があります。

⑦不自然な体勢や慎重さを欠いた状態で器具を扱ったりすると、思わぬ故障を引き起すことがあります。したがって、バーベルやダンベルを移動させたり、また重い重量を用いて運動をしたりするときには、常に慎重な態度で臨むことが大切です。

⑧運動中にバランスをくずして腰を痛める人が意外に多いようです。したがって、運動を行うに当っては、事前に、足元や使用器具をよく点検することが肝心です。ボディビルという運動は、重量物を使用するところから、大げさにいえば常に危険と背中合わせになっている運動といえます。ケガをしてしまってからでは遅いので、くれぐれも注意を怠ることのないようにトレーニングしてください。

⑨全体的にせよ、または局部的にせよトレーニング・スケジュールそのものに運動量の過度と思われる点がある場合は、全身的に、あるいは局部的に疲労が蓄積されて、運動の能力が日を追って低下してゆきます。このような状態では筋力の低下はもちろんのこと筋の柔軟性や弾力性も減退するので、からだが故障しやすくなります。したがって、オーバー・ワークの兆候が見られたなら、トレーニングを無理して続けることなく、速やかに休養(レイ・オフ)することが大切です。しかし、あなたの場合、現在のトレーニング量、および事後の疲労感から考えて、オーバーワークが原因とは考えられません。

⑩腰そのものを過度に使えば、それだけ腰を痛める危険が増すのは自明の理です。このようなことは、運動時の負荷が軽い場合にもいえます。つまり、筋肉的にはたとえ運動負荷が軽いものであっても、腰(腰椎)そのものを過度に圧迫したり、また、過度に使ったりした場合に腰を痛めることがあるということです。

 たとえば、スタンディング・プレスを悪いフォームで行なったり、シット・アップ(とくに平坦な所でのシット・アップ)を極端な多回数で行なったりするときに、そのような危険が生じます。

 以上、10の項目に分けて、腰を損傷する原因について述べましたが、もちろん他にもまだまだ原因はあると思います。したがって、上述のことがらはあくまでも参考として、あなた自身でいろいろと考えてみてください。

 これはあくまでも私の独断ですが、あなたの腰痛の原因として最も強く考えられるのは⑩の項目に該当することがらです。つまり、シット・アップのやりすぎがその原因ではないかと思われます。

 シット・アップという運動(とくに平坦な所で行うシット・アップ)は腰椎を思いのほか強く圧迫します。ともかく、あなたはシット・アップを週に一度、1,000回(100回×10セット)行うようにしたそうですが、おそらくそれが原因で腰を痛めたのではないかと思います。

首をもっと太くしたいが

Q ボディビルを始めて3年になります。腕はかなり太くなったのですが、首がほとんど変わりなく、なんとなくアンバランスに感じられるようになりました。ボディコンテストの出場者を見ても、首の弱い選手の多いのが目につきます。

 私の現在の首回りは33cmで、一応、首の運動もトレーニング・スケジュールに入れております。
 2日おきにヘッド・ストラップを用いて7kgで20回×3セット行うようにしていますが、苦痛でなりません。初心者向きの運動でもよいですから、苦痛をあまり感じない首の運動があったら教えてください。

(東京都 T・S生 24歳)
A 手紙の前の方では、ボディビルダーはもっと首を鍛える必要があるといったことを強調されていますが、後の方ではずいぶん弱気な文面になっていますね。ちょっとがっかりしました。

 はっきりいって、あなたが苦痛でたまらないといっているヘッド・ストラップによる運動は、どちらかといえば首を鍛える運動の中でも楽な方だといえます。3年ものトレーニング経験がある人の言葉としては、いささか心もとない気もします。

 しかし、現実に、あなたが苦痛でたまらないというのであれば、それを無視するわけにはいかないでしょう。ボディビルが保健体育としての一面を有しているかぎり、無理なことは慎しむべきだと思います。そこで、首の運動として最も安全、かつ苦痛がともなわないであろうと思われる運動を紹介することにします。ただし、運動としての難度が低いだけに、効果の面で多くを望むのは無理なようです。

◎ネック・フレクション・ウイズ・マニュアル・レジスタンス

〈動作〉前頭部、またはアゴに両手を当てがい、腕力による負荷を前頸部に与えながら、首をそらした状態から前頸部方向(前方)へ屈曲する。

[写真参照]

〈効果〉主に前から横の部分に効く。
ネック・フレクション・ウイズ・マニュアル・レジスタンス

ネック・フレクション・ウイズ・マニュアル・レジスタンス

◎ネック・フレクション・ツー・サイド・ウイズ・アニュアル・レジスタンス

〈動作〉左右いずれかの側頭部に片手をあてがい、腕力による負荷を側頸部(頸の横の部分)に与えながら、首を側頭部の方向に沿って横へ屈曲させる。1セットごとに手を変えて左右交互に行う。[写真参照]

〈効果〉主に横の部分に効く。
ネック・フレクション・ツー・サイド・ウイズ・マニュアル・レジスタンス

ネック・フレクション・ツー・サイド・ウイズ・マニュアル・レジスタンス

◎ネック・イクステンション・ウイズ・マニュアル・レジスタンス

く動作〉両腕を頭のうしろへまわし、指を組み合わせて後頭部を両手で押え、腕力による負荷を後頸部に与えながら、首を前頸部方向(前方)へ屈した状態から上または後方へそらす。[写真参照]

〈効果〉主にうしろと横の部分に効く。
ネック・イクステンション・ウイズ・マニュアル・レジスタンス

ネック・イクステンション・ウイズ・マニュアル・レジスタンス

解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生
月刊ボディビルディング1978年5月号

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