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1977年度ミスター日本5位、サンプレイ・トレーニング・センター会長 宮畑豊選手のトレーニング法

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月刊ボディビルディング1978年9月号
掲載日:2018.07.29
●コンテスト1ヵ月前●

<川股宏>

◇挑戦と反省と努力◇

 ジムを経営することは、宮畑選手がトレーニングを始めたときから心に描いていた永年の夢であった。その夢を実現した宮畑選手が、一選手にたちかえったとき、残る夢はミスター日本の栄光あるタイトルへのチャレンジとその獲得である。

 1976年度ミスター日本では、彼にとって過去最高の第4位入賞を果した。そして1977年、「今年こそ!」の意気に燃えてのトレーニングの結果は第5位。順位においては一歩後退してしまったが、しかし、心の中は晴々しい気持であった。

 というのは、「来年こそはやったるぜ」と心に素直に気負うところなく誓えたからである。

 なぜか?1つの理由は、予想外の体重減という大会直前のミスを除いてコンテスト3カ月前からの調整が、すべて計画どおりに進み、バルク、デフィニションとも一応、自分なりに満足できるものであったからである。そして、大会当日も、ポージングをとおして、それらの筋肉をマキシマムに表現できたことである。

 そしてもう1つの理由は、コンテスト前に自分の当面のライバルが、どんな状態で出場してくるか、そして、彼らがそれをどう表現するかを頭の中で描いていたが、その予想と現実がぴったりと一致したことである。つまり、敵を知り、己れを知ることが勝利の要諦であるからである。

 「もちろん、判定は権威ある審査員によって下されるが、選手自身、審査員以上にライバルの長所・欠点を見抜く目がなけれりゃ、勝つことはできないと思う」と彼はいう。

 そして、このとき、1年後の大会の目標を心に焼きつけるのである。

 宮畑選手の体がトレーニング開始以来、順調に発達し続け、選手生命が長いという理由の1つに、いつも何かの大会にチャレンジしていたことが挙げられる。同じようにトレーニングしていても、つねに目標をかかげ、コンテストの上位入賞を目ざしてトレーニングしている人と、そうでない人では、その成果において大きな差がある。やはり、大会にチャレンジする人は、意識が集中しており、それに比例して筋肉も発達する。

 「ただ漠然と、いい体になりたいと思っていてもダメですね。心にも体にも、目標を決めてやることです。たとえば、昨年5位だったら、今年は絶対に3位以内に入るんだというように。そうすれば当然、ふだんの練習からして違ってきます」と宮畑選手もいっているが、たしかに、体に対して義務感を与えながら追いまくるのが良策といえよう。

 このことは、学生がテストの度ごとに学力が伸びるのに等しい。チャレンジする意欲がいかに効果に結びつくかのよい証明だろう。
[ラット・マシーン・プルダウン]

[ラット・マシーン・プルダウン]

記事画像2

◇コンテスト直前の練習法◇

 以下は宮畑選手が、去る5月3日のユニバース選抜大会の直前に実施したトレーニング法である。

 前にも書いたが、宮畑選手の場合、会員の指導もあり、とくに今年は会員の中に2~3人、コンテストを目指しているものがいて、それらの選手のパートナーもつとめなければならないのでどうしても不規則になってしまう。だから一応コースをつくるが、予定どおり進んだためしがない。

 このユニバース選抜大会直前は、とくに胸・脚、それに広背筋を中心にしてトレーニングをした。1週間6日の頻度で、これら3部分が5日、あとの1日が腕とか腹、肩といった具合である。ポージングはトレーニングのあと必ず10~20分間練習した。
[レッグ・イクステンション]

[レッグ・イクステンション]

 主力にした胸・脚・広背筋の採用種目は次のとおりである。

<胸>

①ベンチ・プレス
②ダンベル・ベンチ・プレス
③ベント・アーム・ラテラル・レイズ・ライイング
④パラレル・バー・ディップ

<脚>

①スクワット
②レッグ・イクステンション
③レッグ・カール
④カーフ・レイズ

<広背筋>

①チンニング各種
②ベント・オーバ・ローイング
③ワン・アーム・ローイング
④ラット・マシン・プルダウン
⑤バー・ローイング

 以上の種目を主として、各種目ともできるところまで繰り返して7~10セット実施する。そして、これらはだいたい午前中にすませ、午後からは会員とパートナーを組んで練習する。

 宮畑選手の経営するサンプレイ・トレーニング・センターには現在、有望選手が数人いる。それらの選手を今年はなんとかしてコンテストで上位の一角に食い込ませようと欠点をみつけては徹底的にしごいている。そのため、必ず宮畑選手自身がパートナーとなってトレーニングをする。

 相手はなんといっても若くて、昇り坂の選手だけに、元気がいい。パワー・アップも早い。午前中は自分のトレーニングをして、午後はそんな選手を相手にして練習するのだからきつい。ときにはバテてしまうこともあるらしいが、バルク型の宮畑選手にとって、コンテスト前の減量期にはちょうどいのいのかも知れない。

◇ポージングの重要さ◇

 まず、ポージングに対する宮畑選手の意見を紹介しよう。

 「ポージングには2つの意味があると思うんです。その1つは、ポージングもトレーニングの1つだということです。ポーズをきめてグッと力を入れた状態は、アイソメトリックス(静的筋力トレーニング)の理にかなっていますし、筋肉に意識を集中するという点でも得がたい効果があります。もう1つは、日頃の成果に対する答案用紙ともいえるものです。いくらバルクがある、デフィニションがあるといっても、本番で審査員の前に出たときにその筋肉の迫力や美しさが表現できなかったらなんにもなりません。また、長所・短所はどんな人にもあると思いますが、長所をより強調し、短所をかくすのもテクニックの1つです」

 たしかに、コンテスト・ビルダーのトレーニングは、ポージングしたときにどう現われるか、というために行われるものであろう。筋量、カット、迫力美しさ、すべてポージングによって表現される。そして、よりよく表現するために、食事やトレーニング法を研究し、努力しているのである。

 だから、宮畑選手は、トレーニングの前後に体重を測定し、そして鏡の前でそのときの状態を綿密に自分の目で確かめる。その結果、トレーニング法や食事法をどんどん直すように心掛けるのである。決して、鏡にうつった自分をながめてただ陶酔しているのではない。
[インクライン・ダンベル・プレス]

[インクライン・ダンベル・プレス]

◇知識の必要性◇

 宮畑選手はいま、知識の必要性を痛感している。その理由は、1つは自分が会員を指導する立場にあること。2つは、総体法という整体術を勉強中のため。3つには、自分自身の体をさらに向上させるためである。

 だから、ジムのあちこちに、いろいろな健康法や生理学の本が置いてあり会員にも提供している。

 「私自身、ビルダーの現役として年令的にも転換期にきていますから、若いときのように、ただガムシャラにトレーニングしても疲れるだけで、効果は期待できません。生理学、解剖学、栄養学といった面を深く勉強していけば、もっと理論的に裏付けされたいい方法があると思います。巨人軍の王選手の心境もきっと同じです。若いときはボールがグングン伸びて外野席へとび込んだのが、最近はいい当りだと思っても外野フライでアウトです。もっとジャスト・ミートさせて遠くへ飛ばす方法を模索中だと思いますね。

 私も最近は、解剖図などを見て、各筋肉を細分して、その鍛練方法を考えるようにしています。たとえば、上腕二頭筋なら短頭と長頭の2つがどんな機能と働きがあるかをしらべ、それに合ったトレーニングを実施するように心掛けています。

 食事法にしても、しぼればデフィニションが出せるというほど単純なものじゃあないと思います。筋量を落さずに迫力を出すためには、どんな食事をして、どれくらいのトレーニングをすればよいか、といったようなことも研究してみたいと思います」

 わが国のトップ・ビルダーとしては最年長に属するといってもいい宮畑選手だが、まだまだこれからもやる気まんまんである。11月1日のミスター日本コンテストを目ざしてのトレーニングと、会員の指導に余念のない忙しい毎日である。
月刊ボディビルディング1978年9月号

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