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なんでもQ&Aお答えします 1978年11月号

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月刊ボディビルディング1978年11月号
掲載日:2018.07.24

腰に強い負担をかけない大腿部のトレーニング法

Q
 ボディビルを始めてから1年ほどになります。しかし、実際にトレーニングしたのは8ヵ月くらいです。というのは、半年ほど前にギックリ腰になり、しばらくトレーニングを中断したからです。
 ギックリ腰になったのは、仕事中であり、ボディビルの運動によるものではありませんでしたが、トレーニングの疲労がたまっていたことも少なからず原因していたようです。
 幸い、さほど強度なものではありませんでしたが、一応、大事をとって医師の診断を受け、4ヵ月ほどトレーニングを休みました。
 2ヵ月ほど前からトレーニングを再開し、現在では、脚と腰に強度な負担がかかる運動を除いては、中断前の状態に戻し、筋力もほぼ回復しました。しかし、再開後2ヵ月たった今も、腰が気になって、ベント・オーバー・ローイングやスクワットが恐くてできません。
 広背筋の運動に関しては、ベント・オーバー・ローイングができなくてもチンニングやワン・ハンド・ローイングで十分こと足りるので不都合はありませんが、大腿部を鍛えるのにスクワットができないのには困っています。
 自宅でトレーニングしている関係上レッグ・プレス・マシーンやレッグ・イクステンション・マシーンといった器具もありません。試しに軽い重量でスクワットをやってみまくしたが、今だに少し疼痛を感じる次第です。そんなわけで、現在は大腿部のための運動はなにもやっていません。
 トレーニングを中断する前は54cmあった大腿囲も今では50cmそこそこしかありません。それに、日常生活でも、脚力が衰えてきたように思え、なんともやりきれない気持です。
 そこでお伺いします。スクワットのように腰に強い負担をかけないで大腿部を効果的に強化できる運動があったらご紹介ください。前述のように大腿部を鍛練するための特殊な器具がありませんので、その点を考慮してお答えいただきたいと思います。
(成田市 迫田進 商業 37歳)
A
 ギックリ腰は思いもかけないときに、突然なる場合が多いようです。しかし、後で考えてみれば、それなりの原因が思い当るものです。
 したがって、ある年令に達したならば、ギックリ腰の原因になるようなことがらについて平素から注意することが必要です。寝起きの状態で急激に腰を動かしたり、不自然な体勢や、腰の筋肉が伸びた姿勢で重いものを持ち上げたりするのはよくありません。そして、適度なトレーニングと体操によって、腰の筋肉を鍛練し、かつ、柔軟性を維持するための努力も必要です。
 あなたの場合のように、疲労の蓄積が原因になることもありますので、その点についても十分留意することが大切です。
 それでは、重量物や器具を使わず、しかも腰にあまり負担をかけないで大腿部を強化する運動をいくつか紹介しましょう。

◎ヒンズー・スクワット

 すでにご存知かも知れませんが、ヒンズー・スクワットとは、重量物を用いずに空身で行うスクワットのことです。レスリングの選手などが下半身を鍛練するために好んで行う運動でもあります。
 ただ、レスラーの場合は、脚の屈伸に合わせて両腕を前後に振って、調子をとりながら運動を行う方法をよくとりますが、大腿部に正確に負荷を与えるには、頭の後ろか胸の前で両腕を組み、立ち上がるときに上体をできるだけ前傾させないように行うほうが効果的です。そのためには、踵の下に適当な厚さの敷物を当てて行うと上体のゆれが少なくなります。
 反復回数は正しいフォームで可能な回数を1セットとして2セット位、反復回数が100回を越える場合は1セットのみでよいと思います。

◎シングル・レッグ・スクワット

 つまり、片脚のみで行うスクワットです。この運動は、床の上で、どこにもつかまらずに行う場合は、かなり難度の高い運動といえます。しかし、たんに大腿四頭筋を鍛練するという目的でしたら、もっと容易な方法で実施することができます。

<かまえ>
壁または柱などのそばにベンチを横向きに置き、その上に片脚で立つ。この場合、からだの向きは壁(または柱)に対して横向きになり、壁に近い方の脚で立つ。

<動作>
片手で壁(または柱)につかまり、バランスをとりながら脚を屈する。このとき、もう片方の脚は床に触れない範囲で下へさげる。十分に片脚でしゃがんだら、元の姿勢に戻る。1セットずつ左右交互に脚を替えて行う。

◎スクワット・ウイズ・パートナーズ・ウェイト

 この運動は、パートナーの体重を大腿部に負荷して行う運動です。

<かまえ>
壁か柱に面して立ち、両脚の間隔を普通のスクワットの場合より広く(肩幅の1.5~2倍くらい)とる。次に両膝を屈して相撲の四股を踏んだときのような姿勢をとり、背後からパートナーに両ももの付け根に両足をかけて乗ってもらう。このとき、パートナーは運動を行う者の肩に軽く手をかけて、できるだけ腰に負担をかけないように留意する。

<動作>
前面の壁(または柱)につかまってバランスを保ち、パートナーの体重を両ももで支えた状態で両脚の屈伸運動を行う。両脚を伸ばしたとき、膝を完全に伸ばしきらなくてもよい。パートナーがずり落ちない範囲で動作を行うようにする。

 以上が比較的腰に負担をかけないで行える大腿部の運動です。しかし、全く腰に負担がかからないというわけではないので、注意深く動作をやってみた上で、採用するかどうか決めるようにしてください。
 この他には、アイアン・シューズを用いて行う各種のレッグ・イクステンションも有効です。しかし、これらの運動は先に紹介した運動に比べて腰の負担は軽減されますが、大腿部に対する効果が、どちらかといえば局部的になるので、より全体的に大腿部の伸筋を鍛練するという点では先の種目より劣ります。

胸部と上腕部の発達を主目的としたトレーニング法

Q
 ボディビル歴は2年ちょっとです。自宅でトレーニングしていますが、貧弱だった体格も、最近では少しは人よりも目立つほどになりました。
 開始当初は、体力が弱いことを考慮して、シット・アップ、スクワット、ベンチ・プレスの3種目だけでしたがその後ひとつずつ種目を増やして、5ヵ月ほど前から下記のスケジュールでトレーニングしています。
 体位の発達の経過は後に書き添えますが、これからしばらくの間、胸部と上腕部の発達に重点を置いたトレーニングを実施したいと考えています。そのためのトレーニング・スケジュールと、それらの部位の強化種目(中級程度)をご教示ください。
<現在のスケジュール>(トレーニング後の疲労は適度)

<現在のスケジュール>(トレーニング後の疲労は適度)

<体位の発達の経過>

<体位の発達の経過>

(静岡県富士市 森沼栄彦 24歳)
A
 ボディビルというものは地道にトレーニングを続けることが大切です。あなたもすでに2年ちょっと続けられ、全体的にそれなりの効果もあらわれています。あせらずに、これからも長く続けてください。では、あなたのご依頼にお答えすることにします。
 トレーニング・スケジュール例を示す前に、まず、スケジュールを作るに当っての要点と強化種目について述べておきたいと思います。

◎胸囲の増加を促すための要点と、強化種目

 胸囲が増加するための要素としては、次の3つのことがらが考えられます。
①大胸筋の発達
②広背筋の発達
③胸郭の拡大
 したがって、胸囲の増加を促すには、それらの3つの要素をできるだけ効率よく盛り込んだトレーニングを行う必要があります。では、その3つの要素について説明します。

①大胸筋の発達
 大胸筋の発達を促すには、改めていうまでもなく、大胸筋そのものに十分刺激を与えることのできる運動種目を行う必要があります。そして数ある種目の中から、どんな種目を、いくつ選ぶかは、自分自身のビルダーとしての完成度や体力を念頭においた上で決めなければなりません。
 採用種目の数については、あなたの場合、中級者の初期程度と考えられるので、2~3種目が妥当と思われます。しかし、他の部位のための種目がかさむときは2種目にするのが無難でしょう。
  採用する種目については、現段階のあなたの実力を考慮して、次の5つの中から2~3種目を選べばよいでしょう。
  
☆ベンチ・プレス
☆ダンベル・ベンチ・プレス
☆ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング
☆パラレル・バー・ディップ
☆ベント・アーム・プルオーバー

[註]これらのうち、ベンチ・プレスは欠かさずに採用してください。ベント・アーム・プルオーバーとパラレル・バー・ディップは後述の胸郭の拡張にも有効です。

②広背筋の発達
 広背筋のための採用種目数も大胸筋の場合と同様、2~3種目が妥当と思われますが、現段階では2種目が無難であるといえます。
 広背筋の発達を促す運動種目は大別して次の3つに分類できます。
 
Ⓐローイング系統の運動種目
Ⓑチンニング系統の運動種目
Ⓒプーリーによる運動種目

 したがって広背筋のための種目を2~3種目選ぶときには、同じ系統の中だけから選ばないで、異なった系統の中から選ぶ方が、広背筋に与える刺激にも変化が生じるので効果的であると考えられます。
 チンニング系統の運動とプーリー(主としてラット・マシーン)による運動とは筋の作用の面で類似する点が多いといえます。しかし、プーリーによる運動の方がチンニング系統の運動よりも、運動時における負荷の増減に幅があるので、比較的筋力の弱い中級者には適していると思われます。
 
 Ⓐローイング系統の運動種目
  ☆ベント・オーバー・ローイング
  ☆エンド・オブ・バー・ローイング(レバレッジバー・ローイング)
  ☆ベント・オーバー・ダンベル・ローイング
  [註]ベント・オーバー・ダンベル・ローイングは、両手にそれぞれダンベルを持って行う。片方の手にだけダンベルを持って行うワン・ハンド・ローイングは広背筋に的確に刺激を与えるための動作が意外に難しいので、どちらかといえば上級者向きの運動である。

 Ⓑチンニング系統の運動種目
  ☆チンニング
  ☆チンニング・ビハインド・ネック
  ☆クロス・グリップ・チンニング
  
 Ⓒプーリーによる運動種目
  ☆ラット・マシーン・プルダウン
  ☆ラット・マシーン・プルダウン・ビハインド・ネック
  ☆ホリゾンタル・プル(フロア・プリー・ロー)

③胸郭の拡大
 胸郭の発達(拡大)が促される要因についての説明は省略させていただきますが、次にあげる運動種目が胸郭の拡大に比較的有効と考えられます。
 
 ☆スティッフ・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング
 ☆ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング
 ☆スティッフ・アーム・プルオーバー
 ☆ベント・アーム・プルオーバー
 ☆パラレル・バー・ディップ
 ☆フル・スクワット
 [註]ラタラル・レイズ・ライイングおよびプルオーバーは、どちらかといえば、ベント・アームで行うよりもステッフ・アームで行うほうが有効と思われる。
 スクワットは意外と思われるかも知れないが、胸郭を大きくするのに非常に効果があります。
 なお、ベンチ・プレスおよびダンベル・ベンチ・プレスは上の表には入れていないが、これらの種目は大胸筋だけでなく、胸郭の拡大にも少なからず効果があるのはいうまでもありません。

◎上腕部の強化における要点

 上腕を太くするには、上腕二頭筋の運動だけに片寄らずに、上腕三頭筋のための運動も相応に行う必要があります。あなたは現在、上腕三頭筋のための強化種目を採用されていませんが、これからは必ず採用されるようおすすめします。
 現在、上腕のための運動はツー・ハンズ・カールのみですが、とくに上腕部の発達に重点をおくのでしたら、上腕二頭筋、上腕三頭筋とも2種目ずつくらいは行なってもよいのではないかと思います。
 
Ⓐ上腕二頭筋の運動種目
 ☆バーベル・カール
 ☆ダンベル・カール
 ☆シーテッド・カール
 ☆インクライン・カール
 ☆プリーチャーズ・カール
[註]シーテッド・カールは、フラット・ベンチにまたがって座り、ももの上からハーフ・カールの動作で行う。インクライン・カールはインクライン・ベンチに仰臥して行う。

Ⓑ上腕三頭筋の運動
 ☆トライセプス・プレス・ライイング
 ☆トライセプス・プレス・スタンディング
 ☆ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
 ☆ナロウ・グリップ・プッシュ・アップ
 ☆ワン・ハンド・トライセプス・プレス
 ☆リバース・ディップ

◎トレーニング・スケジュール例1
 (1日おき週3日)

①シット・アップ
②ベンチ・プレス(大胸筋)
③パラレルバー・ディップ(大胸筋、胸郭)
④チンニングまたは、ラット・マシーン・プルダウン(広背筋)
⑤ベント・オーバー・ローイング(広背筋)
⑥バック・プレス
⑦バーベル・カール(上腕二頭筋)
⑧インクライン・カール・(上腕二頭筋)
⑨トライセプス・プレス・スタンディング(上腕三頭筋)
⑩トライセプス・プレス・ライイング(上腕三頭筋)
⑪スクワット(胸郭)
⑫スティッフ・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング(胸郭)
[註]⑪⑫はスーパー・セット

◎トレーニング・スケジュール例2
 (分割法。各コース週2回)

<Aコース>
①ベンチ・プレス(大胸筋)
②ダンベル・ベンチ・プレス(大胸筋)
③パラレルバー・ディップ(大胸筋、胸郭)
④バック・プレス
⑤トライセプス・プレス・スタンディングかトライセプス・プレス・ライイング(上腕三頭筋)
⑥ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス(上腕三頭筋)

<Bコース>
①シット・アップ
②スクワット(胸郭)
③スティッフ・アーム・プルオーバー(胸郭)
(註)②③はスーパー・セット
④チンニング(広背筋)
⑤ベント・オーバー・ローイング(広背筋)
⑥シーテッド・カール(上腕二頭筋)
⑦インクライン・ダンベル・カール(上腕二頭筋)
⑧デッド・リフト

 以上、トレーニング・スケジュール例を2つ紹介しましたが、各種目のセット数、反復回数については、オーバー・ワークにならないように適宜きめてください。

ナロウ・グリップ・フロント・プレスのバリエーション

Q
 ナロウ・グリップ・フロント・プレスは肩の発達を促すのに有効な運動であるときいています。友人の話によると、この運動には普通の方法以外に、特殊な運動法があるとのことですが、どんなやり方があるのでしょうか。また、そのような特殊な方法で運動を行なった場合、三角筋にどのような効果がもたらされるのでしょうか?
 ナロウ・グリップ・プロント・プレスにおける特殊なやり方と、その効果についてお答えください。
(岩手県 鈴木圭介 会社員 23歳)
A
 ボディビルの運動種目を大別すれば、基礎的な種目と補強的な種目に分類することができます。ナロウ・グリップ・フロント・プレスは、どちらかといえば補強的な種目であるといえます。
 補強のための種目の中には、基礎的な種目に比べて、からだの部分をさらに局部的に鍛練するという目的をもったものがたくさんあります。ナロウ・グリップ・フロント・プレスも、そのような目的のために用いられる運動種目の1つといってもいいでしょう。
 したがって、この運動を採用する場合には、そのところをよく自覚して、運動の動作をできるだけていねいに行うことが大切です。
 なお、ナロウ・グリップ・フロント・プレスは、三角筋をより局部的に鍛練するということを重視すれば、初級者向きの種目というよりは、中・上級者向きの種目であるということがいえます。では、この運動の変わったやり方を2つほど紹介します。

◎ナロウ・グリップ・フロント・プレス・ウィズ・アームズ・パラレル

<かまえ>
バーベルを1~2こぶしくらいの狭い間隔で持ち、左右の上腕が並行をなすようにして頸の前で保持する。「写真参照]

<動作>
両肘を両横へ開かないように留意して、バーベルを頭上へプレスする。

<効果>
三角筋。とくに前の部分と斜め前の部分に有効。バーベルをアンダー・グリップで持つ場合はさらに前の部分に効くようになる。

<注意事項>
肘を横へ開きすぎると、効果が半減する。
[ナロー・グリップ・フロント・プレス]

[ナロー・グリップ・フロント・プレス]

◎ナロウ・グリップ・フロント・プレス・ウィズ・エルボウズ・ポインティッド・アウトワーズ

<かまえ>
バーベルを1~2こぶしくらいの間隔で握り、アゴのあたりに構え、両肘を肩の高さで左右横へ張る。

<動作>
かまえの姿勢から、バーベルを上方へプレスする。

<効果>
三角筋。前の部分および横の部分の隆起をよくする。

<注意事項>
バーベルをおろしたときに、両肘を肩の高さより下げないように留意する。


 以上、ナロウ・グリップ・フロント・プレスのバリエーションについて述べましたが、いずれの場合も、動作は終始一定の速さで、ていねいに行うように心がけてください。
[解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生]
月刊ボディビルディング1978年11月号

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