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★内外一流選手の食事作戦★

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月刊ボディビルディング1980年5月号
掲載日:2019.09.17
1979年度ミスター日本コンテスト〈クラスⅡ〉2位、総合5位
石井直方選手の食事法

健康体力研究所 野沢 秀雄

1. マスコミの話題もう一度

 石井選手が東大在学中に、全日本学生選手権コンテストのタイトルをとり、同世代の学生選手たちは「立派すぎていくら努力しても石井選手を破れない」とこぼし、マスコミは「東大生がチャンピオンになった」と記事や写真をのせ、結果的にボディビルの普及・発展に大きく貢献してくれたのは、つい3年前のことだ。

 その後、東大の大学院に進み、修士課程・博士課程にて「筋肉と筋力発現の理論」に関するテーマと取組みつつ、東大ボディビル部の監督として後輩の指導にあたっているが、昨秋、久しぶりにミスター東京、ミスター実業団、ミスター日本と相ついで、レベルがいっそう高い一般コンテストに挑戦、めざましい活躍をしたことは周知のとおりである。

 圧倒的な筋肉のバルクは、力強さに満ちあふれ、強豪を次々と打破り、順位を一つずつあげていった。その結果ミスター日本クラスⅡ(身長166.1cm以上)2位、総合5位という異例の成果となり、「予想もにもしなかったダークホース」と佐野匤宣審査員が語っているのをはじめ、観戦した人はいちように驚いている。

 今月はミスター日本タイトルに「王手」をかけるところまで達した石井選手の食事法を 紹介しよう。

2.学歴社会の宿命?

 考えてみれば「東大出身だから面白い」と話題になること自体がおかしいという見方もできる。つまり同じ現代社会に生きる人間だから、東大生であれ、京大生であれ、基本的に運動不足で、筋肉不使用の状況にさらされていることは同じである。いやむしろ、頭脳労働ばかりする人のほうが、筋力づくりの必要性を実感として気づいているのではないろうか?

 実際にアメリカやヨーロッパの先進国では、地位の高いビジネスマンが競ってヘルス・クラブやトレーニング・ジムに通って、筋肉を鍛え、汗を流すことが一般的な風潮になっている。
 
 「筋肉は第二の心臓」といわれるように、運動をおこない、全身の血液循環を高めることが、成人病予防の見地からも有効であることが確認されている。(専門語でミルキングアクションと呼ぶ)

 日本でも大日本印刷の北島義俊社長のように、大会社の社長が体育館に通い、筋肉づくりにはげむ人が出はじめているが、まだきわめてまれである。つまり石井選手はもっとも時代の先端をゆくナウな生き方を示してくれているのだ。これが当り前に感じられる日も近いと思われる。

 皇室に生れ育った浩宮様が成人に達したとき、「なぜ自分が周囲から特別な目でかくも見られなければならないのか」と宿命に思い悩んだことが報道されたが、石井選手自身も「なぜ同じ人間なのに東大生だからといって特別視されるのか?」といぶかしがったことがあるにちがいない。

 人間には与えられた素質とチャンス(運命)・役割(使命)がある。意欲や努力のレベルを超えた高次元の何かである。

 たとえば「自分も練習を狂気のように行なって、立派な筋肉質の体をつくりたい」と願う人は多いが、実際となると、年齢・体質・学業や仕事・家族の事情などがからみあって、思うようなトレーニングを完遂できない場合がほとんどであろう。この状況の中で恵まれた素質とタイミングで、納得のいくトレーニングをできる人は幸福といえよう。「自分がやれるときにベストを尽くしておくがいい」というのは真実である。

 もちろん強い意志を貫くことも大切であり、「暇ができたら練習しよう」というような安易なものでないことは当然である。オーバーかもしれないが「決死的な努力」をおこなって大成しているのが一流選手である。それを顔に現わさず、さわやかに生きている姿はすばらしい。

 ミスター日本に優勝したら、なおいっそう周囲の好奇の目が注がれようが、「これも宿命さ」と淡々と生きる石井選手の顔が今から思い浮ぶようである。
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3.石井選手自身の食事法

 1979年12月のミスター日本コンテスト出場の申込時における石井選手の体のサイズは、身長175cm・体重85kg・胸囲120cm・上腕囲46cm・大腿65cmと発表されている。

 下記の食事内容を知らせてくれた本年1月末は、体重88kg・胸囲121cm・腹囲78cm・皮下脂肪6~8ミリと記入されている。
 この体位を維持し、さらに筋肉を発達させ続ける食事内容はどのようなものであろうか?

<表1>石井選手の現在の食事法

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<表2>減量時の食事法

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<考察>
(1)1日5食にわけて、配分よく栄養をとっていることは好ましい。
(2)ふつうのトレーニング時、および減量時ともに、たんぱく質摂取量は1日約190gで、  体重1kg当り2.1~2.2gをきっちりとれていることはみごとである。
(3)ふつう時はカロリー約4300、減量時はカロリー約3000となっており、1日約1300カロ  リー減っていて、その結果、体重7~8kg減ってくるわけである。
(4)減量の際に、ごはん・パン・フルーツ・牛乳・油などが半分程度まで減っているが  、そうかといって、これら炭水化物をゼロにカットするような極端なことをしていな  いことは好ましい。
(5)たんぱく源として、卵・牛肉・豚肉・牛乳・プロティンパウダーと、種類が多いこ  ともよい傾向である。
  魚・チーズ・納豆・サバ缶詰・落花生・レバー・とり肉なども良いたんぱく源であり  、石井選手も組合せて食べている。
(6)野菜や果物も適量である。
(7)サプルメントフーヅとしては、プロティンパウダーのほかに、コンテスト前の調整  期にジャームオイルを1日20カプセル程度とっている。

――以上の結果を、「食事分析判定表」に記入して計算すると、石井選手の食事内容は100点満点になり、私が広くビルダーはじめみなさんにすすめている内容とピタリ一致する。「理論的にも実に正しい食事法だ」とあらためて感心している。

4.石井選手がすすめる食事法

 完璧な内容の食事法をおこなっている同選手が、もし初心者の人や中・上級者の人から相談をうけたらどうアドバイスするか、アメリカの一流選手に尋ねた同じ形式で答えてもらった。

<表3>体重55kg程度の初心者にすすめる食事法

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<表4>体重75kgくらいの中・上級者にすすめる食事法

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<考察>
(1)初級者の人には、ともかく体重をがっちりふやすことを目的に、高カロリー・高た  んぱく食となっており、たんぱく質は体重1㎏当たり約3gとじゅうぶんになっている
  。
(2)中・上級者の人の場合、体は一応完成域に達していると仮定し、体重あたりたんぱ  く質は約2.5gと少なくなっている。この量で筋肉の維持と発達がはかれるので、必   要以上にたんぱく質をとることはない。
(3)いずれの場合も、1日5食としている点や、バランスよい配分を考えていることは全  くすばらしい。
(4)石井選手は、間食のとり方として、「トレーニング2時間前にとるのがよい。そして  、トレーニング2時間後に夕食をとるのがよい」とすすめている。
(5)また、牛乳が体質に合う人なら、お茶や水の代りに、牛乳をたくさん飲むこともす  すめている。
(6)人によっては間食に多く食べすぎると、かえって昼食や夕食の食欲がなくなること  があり、ケースバイケースで、空腹の状況により、間食を増減して食べることも記さ  れている。
(7)そのほか、補足的に、体に合うなら3食のうち1食をパン食にするといいことや、牛  乳を飲んで脂肪がつくことを心配する人は、スキムミルクとプロティンパウダーを併  用して用いるといいこと、ヤクルトジョアのような液体ヨーグルトが、どこでも自由  に買えるので良いこと、なども参考意見として役立つだろう。

――というわけで、私が加えることはほとんどないくらいである。
 プロティンパウダーの使用量を計算すると、1日に約60gで、1ヵ月に1㎏缶を2缶消費することになる。「経済的に大変だなあ」と思う人があるかもしれないが、外食をすればちょっとした刺身定食などですぐに1回1000円~1500円になってしまう。この点栄養素が濃縮されたサプルメントフーヅなら、かえって割安となり、かつ「自分は栄養補給をまちがいなくしているので安心だ」という保証が得られることも良いところである。

 「昭和1ケタ生まれの人は成長期に充分なたんぱく質をとることができなかったので、体の構造に欠陥があり、その後遺症が中年になって現れてきている」という発表がつい先日あった。このことについては別に機会をつくって解説する予定だが、ボディビルを実行している人なら、栄養全般に関する知識が深く、このような結果になる心配はないだろう。ただいくらいいからといって、やたら多くとるとことはいましめたほうがよい。人それぞれに最適量があるので、トレーニング量、体重・体質を考慮して、目安を決めるのがいいわけだ。
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6.石井選手のトレーニング法

 最後に石井選手の練習内容を紹介しておこう。これからの大きな活躍を祈りたい。

<月・木……約2時間>
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<火・金……1.5~2時間>
(1)シットアップ 5セット
(2)スクワット  6セット
(3)ワンレッグスジャンプ
  レッグエクステンション
  レッグカール
*3種目を順にトライセットで3~5セット
(4)カーフレイズ 3セット
(5)バーベルカール
   47.5~70kg×6セット
(6)シーテッド・カール
   22.5kg×3セット
(7)ダンベルスコットカール
   22.5~27.5kg×3セット
(8)コンセントレーションカール
   22.5~27.5kg×3セット

<水・土……約2時間半>
(1)シットアップ 連続高回数
(2)レッグレイズ 3セット
(3)ベンチプレス
   60~120kg×5セット
(4)インクラインプレス
   60~130kg×5セット
(5)ディップス
  ケーブルプル
*交互にスーパーで3セット
(6)チンビハインドネック 0~40kg
  ホリソンタルプル   60~90kg
*交互にスーパーセットで6セット
(7)バックベントチン
  ワンハンドローイング 35kg
*交互にスーパーセットで3~4セット

 以上、週6日制で、1週間に約250セットをおこなっている。
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*本連載は一時中断して、次号から最新栄養トピックスを連載する予定です。
月刊ボディビルディング1980年5月号

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