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誌上コーチ 記録向上のポイント
パワーリフティング

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月刊ボディビルディング1979年4月号
掲載日:2018.10.21
日本パワーリフティング協会理事長
アスレティック・せき会長
関二三男
パワーリフティングが純然たるカのスポーツとして我が国で始められてから約15年になる。その間、競技人口の増加、記録の向上など、目覚ましい発展を見せ、現在では全国津々浦々までこのパワーリフティングが実施されるようになった。そして、1974年から連続して世界選手権大会に日本代表チームを送り、因幡英昭選手のように、5年連続世界選手権フライ級優勝という偉業を達成する名選手を生み出すまでになった。

私も過去3回、世界選手権大会に出場し、世界のパワーリフティング界の現状をつぶさに見てきたが、我が国におけるパワーリフティングの普及度、あるいは一般社会の評価、認識度という面においては、まだまだ欧米諸国に遠く及ばないことを痛感した。この男らしい、人間の真の力を競うパワーリフティングが、近い将来、我が国においても高く評価され、国民的スポーツとして飛躍的に発展するものと信じてやまない。
日本パワーリフティング界か世界に誇る“小さな巨人”因幡英昭選手。彼は、1974年に始めて世界選手権大会に出場して以来、連続5年、世界フライ級の記録を次々とぬりかえて優勝をつづけ、ついに昨年度は“チャンピオン・オブ・チャンピオン”と“ベスト・リフター”の栄誉に輝やいた。

日本パワーリフティング界か世界に誇る“小さな巨人”因幡英昭選手。彼は、1974年に始めて世界選手権大会に出場して以来、連続5年、世界フライ級の記録を次々とぬりかえて優勝をつづけ、ついに昨年度は“チャンピオン・オブ・チャンピオン”と“ベスト・リフター”の栄誉に輝やいた。

* * *

パワーリフティングはご存知のように、スクワット、ベンチ・プレス、デッド・リフトの3種目のトータル記録によって競われるが、個々の種目の説明をする前に、まず、世界パワーリフティング連盟の競技規則にのっとって全般的なことについて述べておく。

パワーリフティングの3種目は、筋肉の逞しさ、美しさを競うボディ・コンテストのための運動としても、最も基本的な種目である。しかし、あくまでも競技として、少しでも記録を伸ばし、極限までの重い重量に挑戦しようとするパワーリフティングの場合は、同じ運動種目であっても、当然そこには大きな違いがある。

まず、日常の練習では、もちろん競技3種目を中心にやるが、運動に関与する他の筋肉も鍛えておかなければならない。たとえば、三角筋、固有背筋、僧帽筋、上腕三頭筋、腹筋、カーフ、握力などである。そして、これらの筋肉を強くするための運動種目としては、バック・プレス、フロント・プレス、ハイパー・バック・イクステンション、シット・アップ、ベント・オーバー・ローイング、カーフ・レイズ、レッグ・カール、レッグ・イクステンションなどが有効である。

まず、ルールで使用することが許されているもので、使用する方が有利と思われるものをあげておく。

くつ―かかとの高さが4cm以内のもの
ベルト―最大幅10cm以下の1枚皮。従来のベルトは、背部と腹部の幅が違うものが多いが、なるべく10cm以内のギリギリの幅で腹囲を一周するものがいい。
バンデージ―各種目のところで説明する。

次に試合に際して注意しなければならないのが試技を開始する時間である。選手は自分の名前が呼ばれてから1分以内に試技を開始しなければならないと規定されているが、これまで日本国内の大会では比較的ルーズであったが、世界選手権大会などでは非常にきびしくチェックされるので十分注意しなければならない。

では、競技順序にしたがって各種目について具体的に説明していく。写真を参照しながら読んでいただきたい。

スクワット

八の字型に力を入れる

八の字型に力を入れる

バーベルを垂直に移動させる

バーベルを垂直に移動させる

まず、ラックからバーベルを両肩にのせ、水平に保持する。このとき、バーを三角筋上面より1インチ以上下げてはならない。高いのは反則にならないが、あまり高い位置でかつぐと、バーが頸骨にあたって不安定になったり、重心が前にかかりすぎて不利である。

バーをかついだら、少しバックして足の位置をきめる。足幅は自由であるが、一般的には狭いより広い方が有利と思われる。日ごろの練習のときから、最も安定した自分のスタンスをしっかりきめておくことが大切である。

また、ひざにバンデージを巻くことは、力のロスを防ぐことになるので、使用することが望ましい。私の経験では、バンデージを巻くのと巻かないのとでは、約10kgくらいの差があるように思われる。

バンデージは幅8cm以下、長さ2m以下(ライト・ヘビー級以上は3m以下)の医療用のもので、巻幅は25cm以内と規定されている。ゴム及びゴム類似品の伸縮性のあるものは禁止されている。

足幅がきまったら、前方やや高めに目線をきめ、呼吸をととのえる。息はいっぱいに吸い込まないで、約80%程度に吸い込んだところで止め、しゃがみの動作に入る。

スクワットは、1でしゃがんで、2で立ち上がるのではなく、「イーチ」でしゃがんで立ち上がるという、1つの連続した動作であることを忘れてはならない。途中で運動動作が中断するのはよくない。

しゃがむときは、固有背筋にカを入れ、スピードを押えるようにして静かに腰をおろしていき、両大腿部の上面が床面に対して平行以下になるまでしゃがんだら、連続した動作で立ち上がる。このしゃがみ終る最後の動作は、大腿部の付け根に力を入れて止めるようにする。

しゃがむときも、立ち上がるときも、バーが垂直の軌道をとおって上下することが大切である。つまり、バーが前後にぶれながら上下するのはよくない。このため、重心を土ふまずのやや前に置くようにする。

立ち上がるときは、ひざを少し内側にしぼるようにして、両脚にかける力を、股間の中心から両足にかけて八の字型の放射状に発揮するようにする。

ベンチ・プレス

矢印の方向に逆八の字型に力を入れる

矢印の方向に逆八の字型に力を入れる

記事画像5
IPFの規定では、ラックからバーベルをはずして胸上におろすまでの動作は試技の対象ではない。したがって、ここまでは補助者の力を借りてやってもいいし、補助者の力を借りずに自分一人でやっても、どちらでもいい。つまり、胸上に保持したバーベルをプレスすることだけがベンチ・プレスの試技ということになる。

また胸上にバーベルを保持する際、バーを胸の筋肉に沈ませることは許されているので、深く沈めておいて、プレスの動作と大胸筋の反発力のタイミングをうまく合わせればかなり有利となる。ただこのとき、肩や殿部、脚などが動けば反則となるので、あくまでも大胸筋自体の反発力だけである。

次に、従来から日本では背をそらして殿部を浮かせるブリッジという反則があったが、IPFのルールではこれが非常にゆるやかで、殿部の大腿部に近い部分がベンチに触れていればいいとなっている。したがって、両足をしっかりとふんばって、背部を目いっぱいそらせることができるので、規定ギリギリの姿勢を研究して練習すれば、かなり有利となろう。

バーの握り幅は81cm以内なら自由だが、5本の指でガッチリとバーを握ると、押し上げの力が指先の方に分散してしまって不利である。掌の中央にバーをのせ、指でこれをささえるというくらいの感じで握るのがいい。バーベルをプレスするときは、押し上げるというよりも、一気に突き上げるようにする。ふだんからスピードをつけて突き上げる練習をしておくことが大切である。また、この突き上げ動作のとき、胸を中心にして、逆八の字型の放射状に力を発揮するようにするのが理想的である。このためには、挙上動作中、肘が開かないようにすることが肝心である。

手首に負担のかかる場合は、幅5cm以下、長さ1m以下のバンデージを巻くことが許されている。ただし、スクワットやデッド・リフトのとき、ひざに巻くバンデージほど強い影響力はないように思える。

デッド・リフト

足幅を狭くとったスタイル

足幅を狭くとったスタイル

記事画像7
デッド・リフトには足幅の制限がないため、写真のように、足幅を狭くとる方法と、広くとる方法の2つのやり方がある。そして、この2つは当然、引き上げの動作や、使用する筋肉にも大きな違いが生じる。

手・脚が長く、背筋の強い外国選手には足幅の狭いスタイルが有利と思われる。事実、世界選手権大会でも、上位に入賞する外国選手の多くはこのスタイルである。

逆に、手・脚が短く、背筋の比較的弱い日本人では、脚・腰のカを使って引き上げる足幅の広いスタイルを用いる選手が多い。

まず、足幅の狭いスタイルでは、少し腰をおとしてバーを握り、背筋、とくに上部背筋の力を使って引き上げる。バーを握って試技の態勢に入った時点での目線は、床面前方3~5m先にやり、バーが引き上げられていくにしたがって目線も上がっていく。最初の姿勢で目線を高くすると、上部背筋を十分に使うことができなくなってしまう。

次に足幅の広いスタイルでは、腰を充分におろし、脚・腰の力を使ってバーベルを引き上げる。このときの目線は後方やや上方がいい。バーは体に密着するような軌道で引き上げられていくが、引き上げて直立姿勢になったとき、足幅の広いスタイルは往々にして前後のバランスをくずすことがあるから注意すること。
足幅を広くとったスタイル

足幅を広くとったスタイル

スタンスの広いスタイルは、前後のバランスに注意

スタンスの広いスタイルは、前後のバランスに注意

両スタイルの共通点として、まず呼吸法であるが、これはスクワットの場合と同様に、80%くらい吸い込んだところで止める。

デッド・リフトの場合、脚・腰・背筋などの筋力と同じように影響するのが握力である。日頃からグリッパーとかゴムマリなどを使って握力強化の鍛練をしておくことも必要である。

最も強い握り方はフック・グリップ(バーを握った親指の頭を人差指と中指で押えるようにして握る)であるが、手が小さくてそれができない人はリバース・グリップ(一方の手をアンダー・グリップ、他方の手をオーバー・グリップで握る)を用い、充分にしぼり込むようにして握る。指にひっかけるような握り方が最も悪い。これではいくら脚・腰や背筋が強く、引っぱる力があっても、途中ではずれてしまうことになる。

まだ握力が弱いために、重い重量を引っぱることが出来ない場合は、バーを握ったこぶしを柔道の帯などでゆわえて練習するのも1つの方法である。また、試技の際は、すべりどめのタンサン・マグネシウムを必ず使用すること。

バンデージはスクワットのところで述べたように、やはり使った方が有利である。
月刊ボディビルディング1979年4月号

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