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これぐらいは知っておきたい
やさしい健康シリーズ

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月刊ボディビルディング1979年5月号
掲載日:2018.11.22

自然食は若者の体にかえって有害

<金メダルをとった例もあるが・・・・・・>

「われわれの体はうまくできており玄米や生野菜を食べていれば、体内でたんぱく質を合成してくれます。肉や魚は血液を汚し、疲労や病気の原因になるから口にしないでください」――これはある自然食の講演会で聞いた話である。

たしかに仏教の修業僧やキリスト教のある宗派など、厳重な菜食主義を実行して健康を保っているし、かつてオリンピックで金メダルをとったオーストラリアの水泳選手、マレー・ローズの菜食食事法は有名だ。

だが、45歳をすぎた中・高年の人ならともかく、10代、20代の青年が自然食にこりすぎて、とるべき栄養をとらなかったらどうなるだろうか?

過日、私を訪れた浅山英二さんは、「いっさい動物性のものはとらず、肉のかわりにグルテンミート(小麦たんぱくや大豆たんぱくで作った純植物性の代用肉)やグルテンソーセージを食べ、青汁パウダーや葉緑素の粉末、酵素などを飲んでいます」――というように、おいしい食物を食べず、高価な代金をはらって自然食品を食べているが、それにもかかわらず、体格は貧弱で顔色は悪い。

こんな食事法を1年間つづけてみたが、依然とて胃腸の調子が悪く、ときにはキリキリ痛むという。

「ある晩とても苦しくなり、医師にかかると十二指腸潰瘍といわれ、もう少しで手おくれになるところでした。極端な実験食はもうコリゴリです」と私のところに相談にきた。

その後、私の作ったふつうの食事に戻り、5ヵ月で体重4kg、胸囲7cmもふやすことに成功、体調も極めて順調になった。

<自分ができないことを人にすすめるな>

アメリカ・マサチュセッツ州立工科大学のヤング博士が1975年8月に発表したデータによると、われわれの体をつくるたんぱく質のうち、87%までは食物のたんぱく質以外から合成してつくることができるが、残りの13%はどうしても食物中のたんぱく質に依然してつくらなければならない。この作用はとくに若い人ほど影響が大きいといわれている。

現在までの栄養学の知見では、メチオニン、リジン、アルギニンなど、8種類のアミノ酸だけは人間の体内でどうしても合成することができないのでこれらを多く含む魚、肉、卵、大豆などを食べる必要があるとされている。近年、青少年の体位がいちじるしく伸びたが、たんぱく質の摂取量と比例していることはあまりにも有名だ。ローズ選手のメニューをくわしく調べると肉や魚は食べないが、そのかわり、木の実やチーズ、卵、ヤギの乳、バナナなどをたっぷり食べている。

ショックなことに、自然食を唱える先生がた自身、けっこう肉や魚をおいしそうに召しあがる場面に何度か出くわしている。自分ができないことを他人に強要するのはどうかと思われる。

神経疲労をとる妙薬はこの世にない

<サラリーマンの70%は疲れている>

「サラリーマンの70%が仕事で疲れを感じ、26%が薬を常用し、26%が何らかの病気で悩んでいる」

これは以前、厚生省が8万人のサラリーマンを対象として実施した健康調査の結果である。

この調査によると、朝、目をさましても前日の疲れが残っており、休みたいと思うことがあっても、ほとんどのサラリーマンは休まないで出勤しておりいつも仕事に追われて、疲れつつなお働く現代サラーマンの姿が浮き彫りされている。

この調査をさらに細かく検討してみると、興味深いことが3つある。

第一は、30歳未満の若い人たちに疲労感が高いこと。第二は、全身的肉体疲労を感じる人が29%、神経疲労を感じる人が28%で、ほぼ同率。しかも、管理職の約半数、および技術職、研究職、計器などの監視作業、販売・サービス職、運輸職で30%を越える人たちが神経疲労を訴えていることだ。

そして第三は、薬の常用者が24%もおり、しかもそのうちの38%の人たちがビタミン剤や疲労回復剤を常用しているという事実だ。

よく、残業などで疲れたときなど、ビタミン入りドリンク剤を飲む人がいるが、これらは「肉体疲労」にはいくらか効くかも知れないが「神経疲労」には効果がない。「効いた」つもりで飲んでいるのだろうが、そんな暗示作用に高価な代金を払っているのはつまらないことだ。

<神経疲労は根性ではなおせない>

国連のFAO(世界食糧農業機構)とWHO(世界保健機構)の共同研究によると、ストレスを受けた場合、身体のたんぱく質が著しく消耗されるという。

このために、人間が1日に必要とするたんぱく質を算出する際に、ストレスに対する安全率を平均10%見込んでいるが、これは個人差が大きく、とくに神経疲労を感じる人は、よけいにたんぱく質を必要とすると発表されている。この意見は日本でも承認されており、厚生省が5年ごとに発表する栄養所要量にも折りこまれている。

神経疲労を解消するには、良質のたんぱく質を食べ、入浴や睡眠に時間を充分とったり、ときにはアルコールで息抜きしたり、レジャーを楽しんだりマッサージやサウナを利用したりして気分を転換するようにつとめることである。病院で薬をもらったり、勝手に疲労回復剤を飲んで、やたらにムチ打って働くのはまちがった方法といえよう。

トレーニング中に水を飲んでいいか

<バテやすいのは事実だが>

運動部の合宿訓練に参加すると、水を飲めないつらさを訴えられることが多い。

「練習中は水は一滴も飲むな!一時的には渇きが満たされても、またすぐに欲しくなるから同じことだ。からだを慣れさせろ!」

コーチからこう厳命されると従わざるを得ないのだが・・・・・・。

どこの運動部でも夏季合同トレーニングに力を入れているが、毎年、練習中にバッタリと倒れて死亡する選手が何人かいる。昨年の夏も、関東地方だけで4人の有望選手が若い生命を亡くしている。

監督の説明によると、きまって「水の制限」をきびしくおこない、炎天でのトレーニングを課したので、脱水状態になり、熱射病で急死したのだという。これほど痛ましいことがあるだろうか。

水が禁止される理由は、次の3つである。

①水は飲んでもすぐに吸収されず、いつまでも胃の中に滞留しやすい。だから体の要求にすぐ間にあわず、かえって胃袋を重くして活動が不活発になる。

②体内から水分が蒸発するときにカロリーを奪うのでバテやすい。

③水分と同時にナトリウムやカルシウムなどのミネラルが失われるが、これらの微量成分は水とちがって補給が困難である。

だが、高温下で激しく筋肉を使ったら、それにともなって熱を激しく発生するのは当然だ。また、内臓もフルに活動するので、身体内部はモーレツな高温になる。温度が上昇しすぎると、体内の複雑な活動が破壊されて障害がおこる。これを防止するために、水分を蒸発させて全身を冷やさなければならない。だから水分が欲しくなるのは生理的な現象で、これを制限することは「殺人行為」に等しいといってもいいくらいである。

<水分を効率よくとるためには>

最近はスポーツマン用のドリンクが発売されているが、そんなものを用いなくとも、工夫しだいでバテずに体を慣らしていくことは可能である。

ある運動部で、麦茶にレモン汁を絞ったものを用意して、選手たちに自由に飲ませているが、なかなか体調は良いようである。やたらに「しごく」だけでなく、このような栄養的な側面に配慮することがチームを強くする有力な方法ではなかろうか。
〔健康体力研究所・野沢秀雄〕
月刊ボディビルディング1979年5月号

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