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★内外一流選手の食事作戦⑦★
“ジャイアンツ・キラー”ダン・パディラの食事法

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月刊ボディビルディング1979年8月号
掲載日:2019.03.09
健康体力研究所・野沢秀雄

1.パディラは小さな巨人です

“オロナミンCドリンク”のCMには昆ちゃんの他に、豪華な巨人軍選手たちが総出演しており、「費用がかかったコマーシャルだなあ」と評判だ。

読売ジャイアンツ軍は「どういうわけか、このチームのこの選手はどうも苦手で弱い」というジンクスを持っていて、これらの選手が登板するとなかなか勝星があげられない。“ジャイアンツ・キラー”と呼ばれているのは阪神タイガースの小林投手、大洋ホエールズの平松・斎藤両投手やヤクルトの主選投手、松岡であることは一般的によく知られている。

アメリカのコンテスト・ビルダーたちの間にも同様のことがあり、「やつは小さな体なのに、大型選手をバッタバッタ抜いて優勝をさらってしまう」と有名になっている選手がいる。それが今月紹介するダン・パディラなのである。

「身長が低いといっても、アメリカ人のことだから、164cmのコロンブくらいはあるだろう」と誰でも考える。パディラのポージング写真を“マッスルビルダー誌”などでしばしば見かけるが、「彼が背がとても低い」ということはほとんど感じない。

ところが彼は、コロンブよりずっと小さく「身長5フィート2インチ余り」と彼自身がアンケートに記入しているように、わずか157~158cmしかないのだ。日本のコンテストに出場してもおそらく前から1~2番に位置するだろう。それほど背が低いのだ。

にもかかわらず、体重は170ポンド(約77kg)・胸囲50インチ(120cm)・上腕囲19インチ(48cm)・カーフ18インチ(46cm)という数字だから凄い。彼の身長157.5cmに対する標準体重は51.8gだから、現在の77kgまでの差「25.2g」が鍛えあげた筋肉そのものといえよう。筋肉充実度は149、つまりプラス49%の筋肉のボリュームを持った選手であることがわかる。

彼の戦歴の主なものは次のとおりである。

<1977年IFBBミスターUSA>

ロジャー・キャラード、ピーター・グリムコフスキーといった巨大な選手を破って優勝する。

<1977年IFBBミスターワールド>

宿敵であるエジプトのモハメッド・マッカウェイを破り、みごと優勝。

<1978年IFBBワールドカップ>

絶好調のロビー・ロビンソンにいま一歩のところで破れて2位になったがビル・グラント、ボイヤ・コー、ロイ・キャリンダーらの強豪を追い抜き、彼らをくやしがらせた。

以来、彼のことを「ジャイアンツキラー」と名付けて、アメリカ、いや世界のボディビルダーたちは、この突如現われた新人を暖かく祝福している。

2.栄光のかげに名コーチあり

パディラはもともとニューヨークっ子だが、「東海岸にいると、のんべんだらりとしたトレーニングしかできない」と気付き、単身家を出て、サンタモニカのゴールドジムにやってきた。今から3年前のことである。

彼は実に素直な性格で、誰からも愛される雰囲気を持っている。ワイダー氏兄弟をはじめ、多くの人たちにアドバイスを受け、自ら吸収し、忠実に実行していった。(彼がどんなにいい人柄か、大阪のビルダー小山裕史さんが兵庫県の浜田利文さんと共に、今年の3月~4月にかけて約1ヵ月間、ゴールドジムに入門し、パディラとすぐに親しくなり、彼とパートナーを組んで楽しくトレーニングした体験をふまえて、私に語ってくれている)

パディラにアドバイスしてくれた多くの人の中で、とりわけ彼は栄養の専門家であるジョン・バリー氏に感謝している。

ジョン・バリーの名前は、“マッスルビルダー誌”に「栄養と食事のカウンセリング」という記事を毎号連載しているので、英語にくわしい人は知っているかもしれない。

バリー氏はアーノルド・シュワルツェネガーのセミナーで「栄養学」について講演をおこなったり、フランク・ゼーン、マイク・メンツァー、ボイヤー・コーなど一流ボディビルダーの食事分析をおこなったりしており、アメリカのボディビル界でよく知られている人である。

バリー氏はパディラの食事法を徹底的に指導した。「貴君のような小柄なビルダーでも、適切な食事法を採用し練習をおこなえば、必ず筋肉の発達度は飛躍的に増加する」と予言した。

パディラの体質はどちらかというと筋肉質タイプで、トレーニングすればするほど、筋肉のバルクがつきやすい体質であった。このことが幸いして、バリー氏の作ったメニュー通りに食事法を変えてトレーニングすると、短期間に体つきが変わってきた。

パディラはこう語っている。「ボディビルダーにたんぱく質が重要であることはいくら強調しても、しすぎることはない。コンテストに出場しようとするなら、体重1ポンド当り1.5g(体重1キロ当り約3g強)まで増やして摂取するのがいい」と・・・・・・。

バリー氏のアドバイスをきくまではただ漠然と「たんぱく質中心の食事にすればいい」とだけ考えて、はっきりした数字で把握していなかったが、それ以来、パディラは開眼して、「食事法こそ成功へのポイントだ」と自覚するようになった。

現在バリー氏は、よきコーチ、よきマネージャー、あるいはよき写真家として、パディラの活躍を心から喜んでいる。パディラから送られてきたテキストが、バリー氏の理論や考えを大幅にとりいれたものであることはいうまでもない。
記事画像1

3.パディラ自身の食事法

ではさっそくパディラがアンケートに答えてくれた食事内容を紹介し、参考になる点を述べてゆこう。

パディラがふつうのトレーニングのときに食べている内容は下記の通りである。コンテスト直前にどう変わるかをあわせてその後に示す。

◇パディラの普通時の食事法◇

記事画像2

◇コンテスト前の食事法◇

記事画像3
<考察>

①「過食をすることはない。高たんぱく低カロリーが理想的だ」とビルダーに対して言われている。パディラの場合、どう計算してもカロリーは2000を下廻っている。たんぱく質は体重あたり2g強になっている。

②とくにコンテスト直前には、いっそう低カロリー・高たんぱくの内容になっていて、筋肉のカットを出すための努力をしていることがよくわかる。

③炭水化物(糖質)の占める割合は、ふつうの時が約40%、コンテスト前は17%と極端に少なくなる。アメリカの食生活がもともと低炭水化物だが、ボディビルダーの場合は、いっそう徹底して、炭水化物を最少限度にしようとする。

④反面、救われることは、野菜や果物を1日に500g以上、必ず食べている点である。繊維の多い食品は、高たんぱく食にしたときの、体内バランス作用をすることが発表されている。新鮮な野菜や果物をバリバリ食べている点はたいへん好ましい。

⑤甘いケーキや菓子、パンなどをいっさい食べていない。

⑥食べる量は少ないが、いずれも無駄な食品がなく、100%カロリーや栄養になる食品を食べている。いわば高密度に濃縮されたエッセンスを食べているわけだ。

⑦この考えがさらにすすむと、プロティンやジャームオイル、各種ビタミン剤へとゆくわけだが、今回のアンケートには記載されていない。

⑧コーチのバリー氏は有名なプロティンやレバーなどの推奨者なので、パディラにも用いることをすすめており、また実際に彼が使用していることは事実である。

⑨彼から別に送られたテキストブックには「シュワルツェネガーの食事法を指導したバリー氏のプログラムに基づいて、毎食30~40gのプロティンのほか、ビタミンEの入った小麦胚芽油・ビタミンC・コリンとイノシトール剤・ミネラル剤・レバータブレット・メチオニンやアミノ酸のダブレットなどをとっている」と述べられている。

⑩なお補足的に「1日に少量ずつを分けて食べる方法がよい」「サプルメントフード(栄養補給剤)はコンテストの期日を目標に4期にわけ、量をふやしてゆくといい。たとえばレバーはふつうのときに12~18粒とすれば、コンテスト2ヵ月前には30~36粒にふやす方法がいい」というようにくわしく具体的にテキストブックに書かれている。

アンケート用紙が1日3食と間食を記入する形式になっていたので、パディラはサプルメントフーヅについて記載しなかったのであろう。
記事画像4

4.パディラがすすめる食事法

アンケートの後半は例のとおり、日本のビルダーに対して体重55kgの初級者、および体重72kgの上級コンテスト出場者を想定して、パディラならどんな食事法をすすめるか、答えを求めたものである。

◇パディラがすすめる食事法◇

(体重55kgの初級者を対象として)

(体重55kgの初級者を対象として)

<考察>

①日本人の食生活上、牛肉がこれほどとれないことを、パディラがよく知らずに書いているので、もしこの通りの量を毎日食べると、破産してしまうだろう。

②ベークドポテトとは、ポテトを細かくスライスして、フライパンで油いためした料理である。アメリカではよく出てくる。

③総カロリーは約3.300、たんぱく質は体重1キロ当り約4.2gという計算になる。

ロビンソンもそうだったが、「自分は現在、このように少食だが、これから体を大きくしてゆきたいと思っている初級者は、このくらいは食べなさい」と目標を示している点が興味ぶかい。

④炭水化物はトータルして約200g、全体の36%になる。「低カロリー・低炭水化物・高たんぱく質」の方針がよく現われた内容である。

⑤野菜や果物をもう少しふやしても良いと考えられる。

⑥間食のプロティンドリンクは午後の9時ごろ、ベッドタイム・スナックとして食べるといい、と手紙に書かれている。もちろんアイスクリームでなく、牛乳とプロティンパウダーをブレンドしたものを用いると都合がよい。

⑦パディラは「日本ではサプルメントフーヅは手に入りにくい」と考えてか、あまりジャームオイルやレバーなどの製品を書いていないが、テキストブックに、くわしい使い方をのべていることは前述のとおりである。利用できる人は利用するとよい。

⑧「体重が72kgのコンテスト・ビルダー」に関しては、上記と同じメニューに加えて、毎食ごとに「小さじ1杯(約5g)のサンフラワーオイル、つまり紅花油をとること」をすすめている。カロリーが高まるほか、不飽和脂肪酸から構成されているので、成人病の心配がないからである。

――×――×――×――

以上「小さな巨人」あるいは「ジャイアンツ・キラー」と呼ばれる新星、ダン・パディラの食事法と彼の考えを紹介した。彼やシュワルツェネガーをアドバイスしたジョン・バリー氏の食事法や、サプルメントのとり方はたいへん面白い。これらについては別稿を設けて、後日読者のみなさんにご紹介しようと考えている。

「自分は背が小さい」とコンプレックスを持っている人は、パディラのように勇気とやる気を出して、ぜひがんばろう!
月刊ボディビルディング1979年8月号

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