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なんでもQ&Aお答えします 1980年3月号

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月刊ボディビルディング1980年3月号
掲載日:2019.09.09

上腕部を重点的に鍛えたいが

Q.ボディビル歴は3年です。といっても、今まではこれといった目標もなく、のんびりとした気持ちでトレーニングを続けてきました。しかし、最近は、からだつきがビルダー的な体形になってきたせいもあって、トレーニングに対する意欲がとみに強くなってきています。

そのようなわけで、これからは本格的にからだを鍛えていきたいと考えています。そして今年の課題として、まず上腕部を重点的に鍛えることから始めたいと思っています。しかし、現在のところ私は、採用種目を必要最少限に押さえたトレーニングをしてゆく方針なので、むやみに運動種目を増やことは好みません。

そこでお願いですが、上腕部を重点的に鍛えるのに最少限必要でありかつ最も効果的と考えられる運動についてご教示いただきたいと思います。なお現在の私の体位は下記のとおりです。
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(名古屋市 福原正二 店員 25歳)
A. これまで気楽な気持ちで、トレーニングをしてきたとはいえ、かなり立派な体格をしておられるようです。是非とも頑張ってそれこそ気楽な気持ちで、コンテストにも出場されたらいかがでしょうか。

すでにご承知のこととは思いますが上腕部には上腕二頭筋と上腕三頭筋、それに上腕筋とがあります。したがって、上腕部を本格的に鍛練するには、それぞれの筋の作用にマッチした運動を、各1種目ずつ、都合3種目は最少限行う必要があると思います。しかし欲をいえば、上腕三頭筋の運動を2種目として、都合4種目はやった方がよいのではないかと思われます。

◇上腕二頭筋の運動◇

上腕二頭筋の運動としては、今さらいうまでもなくカールが最も有効です。使用する器具はあえてバーベルに限定することもなく、ダンベルを用いて行なっても一向にさしつかえありません。いずれか一方だけを行うのでしたら、ある時期にはバーベル・カールを行い、伸び悩んだらダンベル・カールに切り替えるというように行なってみるのもよいでしょう。しかし、いずれの場合も、きちんとした動作で的確に上腕二頭筋を刺激するように行うことが大切です。

◇上腕筋の運動◇

上腕筋は、上腕二頭筋に協応して働くので、普通のカール運動でもその発達を促すことはできます。したがって、場合によっては採用種目から除外するのもよいでしょう。しかし、本格的に上腕部を鍛練するためには、やはり上腕筋を重点的に鍛える運動も必要であるといえます。

上腕筋を強化するのに有効と考えられる運動種目には、次のようなものがあるので、その中から1種目を選んで行うようにしたらいいと思います。

◎ブレキアリス・カール
◎ナロウ・グリップ・チンニング
◎リバース・カール

上記の運動はなじみの薄い種目と思われますので、一応、運動法を説明しておくことにしましょう。

①ブレキアリス・カール

くかまえ>左右のグリップの間隔を、両ももの幅ぐらいにしてバーベルを持ち、立った姿勢で大腿部の前にぶらさげる。アンダー・グリップでもまた、オーバー・グリップでもどちらでもよい。

〈動作〉両肘を斜め外後方へ引くようにして、バーベルを中腹部のあたりまで垂直に引きあげる。

②ナロウ・グリップ・チンニング

〈動作〉左右のグリップの間隔を2こぶし以内にしてチンニング・バーにぶらさがり、両肘を少し開げるようにして体を引きあげる(写真参照)
〔ナロウ・グリップ・チンニング〕

〔ナロウ・グリップ・チンニング〕

バーの握り方は、アンダー・グリップでも、また、オーバー・グリップでもどちらでもよい。実際に行なてみて、上腕筋により効くと思われる握り方を採用すればよい。

③リバース・カール

この運動は前腕のための種目として普及しているが、上腕筋に効かすには下記のような方法で行うのがよい。「写真参照]
〔リバース・カール〕

〔リバース・カール〕

〈かまえ〉普通のリバース・カールの場合と同じように左右のグリップの間隔を両ももの幅ぐらいにして、立った姿勢で、バーベルを大腿部の前にぶらさげる。

〈動作〉普通のリバース・カールとちがい、意識的に両肘を左右横上方へ少し開きあげるようにしてバーベルをカールする。しかし、実際には、バーベルを巻きあげるというよりはほぼ垂直に、胸のあたりまで持ちあげるといった感じになる。なお、持ちあげたときに、手首と腕を返さないように留意して、重量を上から保持するようにする。手首と腕を返して、重量を下から支えるようにすると効果が減ずる。

◇上腕三頭筋の運動◇

上腕三頭筋は3頭から成り、腕を伸ばす運動によってその発達が促されます。しかし、厳密にいえば、腕を伸ばすときの動作のちがいによって、長頭と外側頭に与える効果が変化します。したがって、上腕三頭筋を本格的に鍛練する場合は、長頭を重点的に鍛える運動と、外側頭を重点的に鍛える運動との双方を採用されるのが効果的です。

長頭を重点的に鍛えるための基礎的な運動としては、トライセプス・プレスがありますが、中でも、運動のフォームが安定するという意味で初期においてはライイングによる方法が最も適当ではなかろうかと思います。

なお、外側頭の運動としては、まずナロウ・グリップ・ベンチ・プレスを採用されるのが最も賢明であろうと思います。ただし、胸の運動としてではなく、上腕三頭筋の外側頭の運動として行う場合にはそれなりのコツがあるので、そのやり方について説明しておきます。

◎外側頭のためのナロウ・グリップ・ベンチ・プレス

<左右のグリップの間隔>
0cmから最大限肩幅くらい。実際に行なってみて、外側頭に負荷を与えるのに最もしっくりする間隔を選ぶ。

〈動作〉ベンチ・プレスの動作を行うが、胸の運動として行う場合とちがって、バーベルをおろすときに両肘をなるたけ床の方(下方)へさげないようにする。つまり、両腕を下方へ屈するのではなく、外側へ「く」の字に曲げる感じでシャフトを胸に近づける。両肘が十分に屈すれば、シャフトが胸に触れなくとも一向にさしつかえない。

トレーニング効果をチェックする方法

Q.ボディビルを始めてから約1年経ちます。ときどき、効果があがっているのかどうか、少々心配になることがあります。また、自宅で1人で行なっている関係上、トレーニングを正しい方法で行なっているかどうかについても気がかりになります。

そこで、お願いがあります。

トレーニングによる効果の有無を随時判断できる方法と、トレーニング法の正誤をチェックする方法があれば、ご指導いただきたいと思います。
記事画像4
(三重県 松木武久 会社員 26歳)
あなたが質問された2つのことがらは、互いに密接な関係を有しているといえます。運動の効果をあげるためには、より正しい方法でトレーニングを行うことが大切です。また、トレーニングによる効果の有無をより的確に感じとるには、常に正しい方法で運動を行うようにする必要があります。

そのような意味で、2つの質問を切り離して論じるよりは、ひとつの問題として取りあつかう方が妥当であるかもしれません。しかし、ここでは一応あなたの質問の形式にそってお答えすることにしましょう。

◎トレーニングの効果の有無を判断する方法について

ボディビルを行う者にとって、現在、自分が実施しているトレーニングが、実際に有効であるかどうかということは、確かに最大の関心事ではなかろうかと思います。だが、ボディビルのように筋力の強化と筋の肥大を目的とした運動の場合は、野球や卓球などのように、主として技術の修得を目的とするスポーツとはちがって、トレーニングの成果を短時日に実感として自覚することは難しいといえます。

球を投げる、球を受けとる、球を打ち返すといったような技術の上達は、そのような動作の反復練習中にもストレートに現われてきます。しかし、筋の細胞組織の発達に直接的な関わりを有する筋力の強化・筋の肥大といったような効果は、トレーニングの何日か後、あるいは何十日か後にならなければ現われてきません。このことは,ボディビルにおけるトレーニング効果が、トレーニング後の休養時に超回復というかたちで、筋の組織にもたらされることに原因しています。

しかも、1回のトレーニングと休養とによってもたらされる超回復はごく僅かであるので、比較的長期にわたってトレーニングを続けていかなければ、その効果を実際に感じとれるまでには至りません。

つまり、筋の肥大や筋力の向上を巻尺の目盛の上で、また、使用重量の面で成果として明らかに認識できるようになるには、かなりのトレーニング期間が必要であるということです。

要するに、ボディビルというものは、ある期間の経過をみなければ、その効果の有無が判然としてこないということです。ボディビルの難しさは、正にこの点にあります。事実今現在行なっているトレーニング法が、効果を得るための方法として、内容的に果たして適切なものであるかどうかといったことを、そのときそのときの現状において判断することは、非常に難しいことであるといえます。そして、そのような判断が的確に行えないところに、トレーニング法に関する不安と、成果についての疑心が生じてくるわけです。

ずいぶんと前置きが長くなりましたが、解りきったことをくどくどと述べたのには、それなりの訳があります。つまり、トレーニング効果の有無を必要に応じて随時把握するということが、いかに難しいことであるかを改めて認識していただきたかったからです。

では次に、その方法を会得するための心構えと具体的な方法について述べることにしましょう。

◎まず心構えとして、「筋の肥大」と「筋力の向上」が平行して得られるという観点に立って、トレーニングを行う必要がある。そして、トレーニングの実効性を随時把握するためには、「筋の肥大」よりも「筋力の向上」をよりどころとしてトレーニングを行うようにするほうがよい。「筋の肥大」というものは、1~2週間の短期間では、通常、観察できるまでには至らない。しかし、「筋力の向上」は、「筋の肥大」とちがって感覚的にとらえることが可能なので、短期間におけるごく僅かな変化向上でも、訓練次第では容易に感じとることができるようになる。したがってトレーニングの実効性を1週単位(場合によっては1日単位)で随時把握していくには、その点をよりどころとするほうがより合理的であるといえる。

◎ごく僅かな筋力的変化を随時感じとれるようにするには、常に一定の態度でトレーニングを行うようにしなければならない。そのとき、そのときの気分で内容的にも行き当たりばったりのトレーニングを行うようでは、微小な筋力的変化を必要に応じ随時感じとるのは難しいといえる。では、次いで実際的な方法について述べる。

①運動のフォームを常に一定にすること
ごく僅かな筋力的変化(筋力の向上)を感じとるには、常にフォームを一定にすることが原則である。トレーニングの度ごとにフォームが変わってしまうようでは、ごく僅かな筋力的変化(筋力の向上)を感じとるためのよりどころがなくなる。

②トレーニング量は決めた以上に行わない
ごく僅かな筋力的変化(筋力の向上)を感じとるには、トレーニングの内容も一定させる必要がある。体調がよいからといってセット数を多くしたりすると、後になって反動的に疲れが出たりするので、そのとき、そのときの現状におけるトレーニングによる実効性の有無を感じとれなくなる。

③調子がよいからといって臨時に所定外の運動種目を行わない
前項と同じ理由による。

④反復回数の増加は計画的に行う
たまたま調子がよいからといって無計画に反復回数を増やしたりすると、後で疲れが出て、反動的に筋力が低下することがあるので注意する。反復回数の増加は、トレーニングを続けて行く中で、筋力的なレベルの向上を確認しながら慎重、かつ、計画的に行う。

⑤使用重量の増加は計画的に行う。
反復回数の増加がやがては使用重量の増加につながるという意味で、前項と同様な点に注意する。

以上述べた種々のことがらを参考にして、できるだけ体の調子を一定に保つように留意し、その上で、たとえ僅かな筋力の向上であっても感じとるように努力してください。

◎トレーニング法の正誤をチェックする方法について
トレーニング法の正誤をチェックするには、先の質問の項でお答えしたことがらが、そのまま参考になると思います。

現在行なっているトレーニング法が正しいのか否かということは、端的にいって、そのトレーニング法に実効性があるかどうかということによって判断できると思います。したがって、長期間の経過を待たずにトレーニング法の正誤をチェックするには、なんらかの方法によって、まず、トレーニングにおける実効性の有無をチェックしなければなりません。つまり、先に述べたような方法によって、そのトレーニング法における実効性の有無を確認する必要があるといえます。そして、明らかに実効性が有ると感じられた場合にはそのトレーニング法は正しいと考えてよく、そのまま継続して行うようにしてもよいでしょう。しかし、その反対に、実効性が有るとは感じられなかった場合は、現在行なっているトレーニング法に、なんらかの形で不備な点があるとも考えられるので、一応、その内容でのトレーニングを中止して,不備と思われる点を究明する必要があるでしょう。

◎不備な点を究明する際の要点
①運動フォームの検討
②採用種目は適切か
③セット数は妥当か
④反復回数は適切か
⑤部分的に、また、全体的にトレーニング量は妥当か

(注)きちんとまともにトレーニングを行なっている人の場合、トレーニングによる効果が得られないのは、どちらかといえばトレーニングが軽すぎるというより、強すぎることに原因があるといえる。したがって,そのへんのところをよく留意して点検する。

プローン・ローリングの正しい運動法

ボディビル歴は1年半勤務先のジムでトレーニングしています。現在はメンバーが7人ですが、最も経験ある人でも2年半のキャリアです。

昨年、はじめてボディビル・コンテストを見に行きましたが、その会場で近くに座り合わせた人達が、プローン・ローリングという運動について話しているのを耳にしました。翌日、会社でそのことが話題になったのですが、プローン・ローリングという運動について知っている者は誰も居ませんでした。以来、たびたび話題に出るのですが、いまだに判りません。

そのようなわけで、この際思いきってお伺いすることにした次第です。プローン・ローリングとは、いったいどのような運動なのでしょうか。その運動法と効果についてお答えいただきたいと思います。
(山梨県 佐藤敬二 会社員 27歳)
A.プローン・ローリングという運動には、バーベルを用いるものと、ダンベルを用いるものとの2通りの運動があります。手紙の文面ではどちらの運動か判りませんので、一応、双方の運動について説明しておくことにします。

◎プローン・バーベル・ローリング

〈かまえ〉床に置いてあるバーベルのシャフトに、上から両手をかけて、「腕立て伏せ」の姿勢をとる。〔写真参照〕
〔プローン・バーベル・ローリング〕

〔プローン・バーベル・ローリング〕

<動作>上記の体勢から、両腕をつっぱるようにして体重をバーベルにかけたまま、バーベルを前方へ押しやるようにして転がし、体重が支えられる限界まで腕を差し伸ばしたら、元の位置へ引き戻す(ローリングとは転がすの意)。筋力が弱い場合には両膝を床に付けて負荷を軽減するとよい。

〈効果〉大胸筋、広背筋、上腕三頭筋および腹直筋。

◎フローン・ダンベル・ローリング

<かまえ>1対のダンベルを縦向きにして床に置き、左右の手をそれぞれの側のシャフトにかけて「腕立て伏せ」の姿勢をとる。〔写真参照〕
〔プローン・ダンベル・ローリング〕

〔プローン・ダンベル・ローリング〕

〈動作〉上記の体勢から、双方のダンベルを右左横へ転がしてゆき、体重が支えられる限界まで両腕を拡げたら、両腕をつぼめて元の位置へダンベルを転がして戻す。この場合、肘を少し曲げた状態で行うと動作がやり易くなる。なお、腕を拡げるときに息を吸うようにする。〈効果〉大胸筋、上腕二頭筋。〔回答は1959年度ミスター日本,NE協会指導部長・竹内威先生〕
月刊ボディビルディング1980年3月号

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