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なんでもQ&Aお答えします 1980年4月号

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月刊ボディビルディング1980年4月号
掲載日:2019.09.12

トレーニングスケジュールの診断をしてください

Q.ボディビル歴は4ヵ月です。現在、友人と自宅で後述のスケジュールでトレーニングしていますが、疲れるわりにはあまり効果が得られません。僕のような体格の者でもトレーニングを続けていけば逆三角形の逞しいからだになるものでしょうか。ボディビルというものを長い目でみてじっくり見てトレーニングを積んでいくつもりですが、目立つほどの効果が得られないと時々不安になります。

現在実施しているトレーニング・スケジュールを診断していただきたいと思います。
〈トレーニング・スケジュール〉

〈トレーニング・スケジュール〉

【註】トレーニング後の疲労はかなり強く、翌日に疲れが残る。
<現在の体位>

<現在の体位>

【註】体位はトレーニング開始前とほとんど変わりません。

(札幌市 岡部行雄 会社員 20歳)
A.あなたはお手紙の中で「ボディビルというものを長い目で見て、じっくりトレーニングを積んでいくつもりです......」といいながら、その実、トレーニングの成果についてはかなりせっかちになっているのではないでしょうか。

あなたが現在実行しておられるトレーニング・スケジュールを、ボディビルの基本に照らして考えてみると、その内容が、量的にも強度的にも、あなたの現在の体力に対して多分に度を越したものであると判断されます。そして、トレーニングの内容がそのように適正を欠くことになった原因として効果に関する焦りが少なからずあったのではなかろうかと思われます。

いつもいうように、ボディビルというものは、トレーニングが適正でないと効果が得られないものです。とくに焦って度を越す場合にはそのようなことが強くいえます。

あなたもそのへんのところをよく考えて、トレーニングに対する態度にゆきすぎがなかったかどうかについて反省してみてください。

それではまず、あなたが抱いておられる疑念についてお答えします。

あなたはこのままボディビルを続けていっても、果して逞しい逆三角形のからだになれるかどうか、ということについて疑念を持っておられるようですが、たった4ヵ月のトレニーングしか行なっていない今の段階で、そのような疑心を持つのは不要な心配であるといえます。今の段階では、効果の得られない原因を身体的な素質の有無に求めるよりは、トレーニングや栄養の問題として追究するほうが先ではないかと思われます。

次に、トレーニング・スケジュールの診断ですが、大きく分けて3つの点が目につきます。ではそれを順に説明します。

(1)トレーニング量が多すぎる

あなたのトレーニング・スケジュールにおける最大の問題点は、トレーニング量にあると思います。

ボディビルというものは、ただむやみにトレーニングの量を多くしたからといって効果があがるものではありません。効果をあげるためにはトレーニングによる疲労が正常疲労のかたちで回復できる範囲にトレーニングの量をとどめることが肝要です。

あなたの場合、トレーニングによる疲労が翌日にまで残るということですが、それは多分にトレーニングの量が過度であることに原因があると判断されます。明日といわず今日からでもトレーニング量を軽減されることをおすすめします。具体的な方法としては、現在4セットずつ行なっている運動を3セットずつ、場合によっては2セットにして行うようにするとよいでしょう。

(2)反復回数とセット数との折り合いが適切とはいえない

あなたは現在、どちらかといえば高回数制(ハイ・レピティション・システム)を採用されておりますがそのような高回数制を採用する場合は、筋が著しく消耗すると思われるので、種目当りのセット数をあまり多くするのは考えものです。要は、消耗をできるだけ軽度にして、筋に刺激をより的確に与えることがボディビルの上手なや方といえます。

あなたぐらいの段階の方が、1セットの反復回数を15回前後にして行う場合には、種目当りのセット数は2セット程度が妥当ではないかと思います。

(3)使用重量と運動フォームが不適正

あなたの体位から推測される筋力と比較して、使用重量が重すぎると思われれ運動が2種目あります。その2種目とは、ベント・オーバー・ローイングとツー・ハンズ・カールです。そして、使用重量が重すぎるということは、当然、運動フォームが不正確になってきます。私の判断があたっているとすれば、あなたは誤った姿勢や、まちがった意味でのチーティングによって運動を行なっているものと考えられます。

的確に刺激を筋に与えるためには正しいフォームで運動を行わなければなりません。専門書などを参考にして、もう一度、運動のフォームをチェックしてみる必要があるかと思います。

痔疾のため下腹部に圧力のかからない腹筋運動は?

Q.年令は52歳です。10数年前から健康法としてボディビルを行なっています。おかげで病気らしい病気もせず、体調もすこぶる良好です。今後もジョッギングと併行して続けていくつもりです。

ところでお伺いしたいことがあります。実は、私は若い頃から痔疾の気がありましたが、最近それが高じてきて腹筋運動を行うのにさしさわることが度々あります。しかし、腹筋の運動を行わないでいると、消化器の働きがなんとなく低下したような感じになり、腹もあまり空かなくなります。

そのようなわけで、これからも腹筋の運動をスケジュールから除外せずになんとか続けていきたいと思うのですが、よい方法はないものでしょうか。現在は30度くらいの傾斜でシット・アップを行なっていますが、運動時に比較的に腹圧(とくに下腹部の圧力)があがらない種目があればご紹介ください。
(岩手県 山内俊一 52歳)
A.あなたの要望にお答えするという意味で、一応、下腹部に比較的圧力がかからないと思われる腹筋運動を紹介しますが、くれぐれも無理なさらないように慎重に行うように留意してください。

腹筋の運動を大別すれば、シット・アップ系統のものとレッグ・レイズ系統のものとに分けられます。そして、どちらかといえば、レッグ・レイズ系統の運動の方が下腹部に対する圧迫度が低いといえます。したがって、今後は、腹筋の運動としてはレッグ・レイズ系統の運動を主として行うのがよいかと思います。

では参考までに、レッグ・レイズ系統の運動を2種目紹介しておきますので、いずれか適当な方を選んで行うようにされるとよいでしょう。

レッグ・レイズ系統の運動といっても、インクライン・ベンチによるものや、また、ハンギング・パラレルバーといった体重を両手で保持して行う運動は、年令的にかなり無理がともなうものと考えられるので、比較的、体力的な負担の軽い運動を紹介することにします。

◎ライイング・レッグ・レイズ・オン・ベンチ

<かまえ>ベンチ・プレス用のベンチの上にタテに仰臥し、肩越しに両手でベンチのフチをつかみ、背をしっかり固定する。ラック付きのベンチの場合は、両手でそれぞれラックをつかむか、または、両腕をラックの外側から組むようにして巻きつけると運動時の負担が軽減される。

<動作>両膝を完全に伸ばさずに、いくぶんゆるめた状態で脚をあげ、任意の高さまであげたなら、元の位置におろす。脚をあげたとき、連続した動作で両足が頭越しの位置にくるまで腰を深くまげるようにしてもよい。なお、脚をおろしたときに、腰に圧迫感がともなうようなら、あまり深くおろさないようにする。また両足をぴったりそろえずに少し拡げた状態で運動を行うほうが動作がやりやすい。

◎シーテッド・レッグ・レイズ

<かまえ>床に両脚を伸ばしてすわり上体をうしろヘ少し倒し、うしろ手に体を支える。

<動作>両膝を完全に伸ばさずに、いくぶんゆるめた状態で脚をあげる。両脚をぴったりそろえずに少し拡げた状態で運動を行うと動作がスムーズにできる。(写真参照)
〔シーテッド・レッグ・レイズ〕

〔シーテッド・レッグ・レイズ〕

以上、2種類のレッグ・レイズについて述べましたが、いずれの場合も、できるだけリキまないようにして運動を行うようにしてください。

なお、どうしてもシット・アップを行いたいというのでしたら、両膝を90度くらいにまげた状態、つまりベント・ニーによる方法でインクライン・シット・アップかフロア・シット・アップを試してみてください。

セット・システムとサイクル・トレーニングではどちらが効果的か

Q.ボディビルを始めてからまだ2ヵ月しか経ちません。自宅で1人で行なっていますが、トレーニングの内容はだいたい次のようです。
<トレーニング・スケジュール>

<トレーニング・スケジュール>

以上のように、各種目を2セットずつ行なっていますが、そのことに関してお伺いしたいことがあります。
僕は現在①~⑦の全種目を1セットずつ順に行なっていって、終ったら再び①から2セット目に移るという方法でトレーニングしています。しかし雑誌などに載っている方法は、たいていの場合、1つの種目を2セット終ってから次の種目に移るという方法が多いようです。どちらの方法が正しいのでしょうか。

生意気なようですが、自分なりの判断では、現在、私が実施している方法でも別に不都合なことはないと思うのですが、いかがでしょうか。

鳥島根県 佐藤満夫 店員 19歳)
A.ボディビルを単なる健康法という観点からとらえていえばどちらの方法で行なっても別に不都合なことはありません。しかしある程度トレーニング上の目的を限定した場合には、その目的にできるだけ即した方法でトレーニングを行うほうが正しいといえます。

したがって、あなたの質問に対する回答も、現在のあなたのトレーニング上の目的によって、その正否もちがってくるということがいえます。

手紙の文面ではあなたのトレーニング上の目的がまったくわかりませんので、あなたの質問に対してはっきりした返答はしかねます。一応、これら2つのトレーニング法について、それぞれのトレーニングとしての特徴と、その意図する点を述べることにしますので、どちらの方法がよいかご自分で判断してください。

◎セット・システム

同一の種目を、間に休息をとりながら2セット以上継続して行うトレーニングの方法をセット・システムといいます。この方法は、ボディビルの規範ともいえる方法で、筋力の強化および筋の肥大をトレーニングの目的とする場合に適した方法といえます。

つまり、この方法は、同じ運動種目を2セットあるいは3セットと継続して行うことによって、強化および発達を意図する筋により十分な刺激を与えることを可能にします。

◎サイクル・トレーニング

いくつもの運動種目を1セットずつ順に行い、それを2巡もしくは3巡するといったように、循環的に行うトレーニング法のことです。あなたが現在採用しておられるトレーニング法はこのサイクル・トレーニング法であるといえないこともありません。しかし、厳密にいえば、トレーニング法としての意図するところがいくぶんちがうように思われます。本来、サイクル・トレーニングというものは、

①からだの特定部分のみに多量に血液を滞留させないために、1セットごとに異なった部分の運動を連続して行い、血液の流れを促進させて筋肉部位に老廃物や疲労素が沈殿することを防ぐ。

②休息をできるだけとらないようにして、意図的に循環器の働きを亢進させ、それによって心肺機強化を図る。

などのはっきりした目的意識を持って行うものであり、採用する運動種目と順序はトレーニングのセオリーに則って吟味決定されるものです。したがって①、②などのようなはっきりした目的意識をもたないあなたの場合は、厳密の意味でのサイクル・トレーニングとはいえないかもしれません。

しかし、あなたがもしも、ボディビルを筋力の強化または筋の肥大を主目的として行うのではなく、健康法という意味合いに重きを置いて行うのであれば、今のようなトレー二ングのやり方でもなんら不都合なことはありません。

なお、サイクル・トレーニングのスケジュール作成法については省略させていただきます。必要ならば、専門書のPHAシステム、シークェンス・トレーニング、サーキット・トレーニング等の項を参照してください。

チンニングのやり方と広背筋の発達の傾向

ボディビルを始めてから6年になります。今年の課題は広背筋の強化です。そこでおたずねします。チンニングの場、ナロウ・グリップで行うのと、ワイド・グリップで行うのとでは効果の面でどのようなちがいがあるのでしょうか。

また、広背筋の上部(腕のつけねの部分)に効かすにはどのような点に留意してチンニングを行なったらよいでしょうか。
(群馬県 滝田太一 会社員 21歳)
A.まず握り幅に関する質問からお答えします。チンニングという運動は、からだを引きあげるときの上体の傾きぐあいによっても効果を及ぼす部分が変化するので、握り幅に関する問題だけを単一に論ずるわけにはいきません。しかし、傾向としては、ナロウ・グリップでは広背筋の厚みを増し、ワイド・グリップでは拡がりを増すということがいえるかと思います。そして、握り幅を広くするということは大円筋に対する効果を高めるといえます。

では次に、広背筋の上の部分に効かすためのチンニングのやり方について述べることにします。

チンニングのような運動においては両腕を伸ばしてバーにぶらさがった状態から体を上方へ引きあげるほどに、強度な緊張が広背筋の上部から下部へ及んでいく傾向があります。したがって、その点を考慮して運動を行うようにするとよいでしょう。
つまり、左右のグリップの間隔を肩幅よりも広くしてバーにぶらさがり、せいいっぱい脇を伸ばした状態から体を引きあげるように動作を行うとよいということがいえます。もちろん、動作はていねいに行い、とくに引き始めの範囲が雑にならないように留意することが肝要といえます。(写真参照)
〔回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生〕
〔ワイド・グリップ・チンニング〕

〔ワイド・グリップ・チンニング〕

月刊ボディビルディング1980年4月号

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