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★1981年度IFBBオールジャパンを目指しての・
私の食事法とトレーニング法 桜井良次

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月刊ボディビルディング1982年8月号
掲載日:2018.12.22
1981年度IFBBオールジャパン・ミドル級4位 桜井良次
生年月日 昭和25年1月11日 32歳

トレーニング経験 7年

現在の職業 鍼灸師、マッサージ師

《体 位》
身 長 178cm
体 重 普通時 86kg
    減量時 76kg
    大会時 82kg
胸 囲 平 常 115cm
    最 高 119cm
上腕囲 右最高 44cm
    左最高 43.7cm
腹 囲 普 通 78cm
    大会時 74kg
皮下脂肪 3〜4ミリ
大腿用 右 63cm
    左 63cm
首 囲 42cm
手首囲 18cm
足首囲 22cm
カーフ 41cm

《パワーの記録》
ベンチ・プレス 150kg
スクワット 200kg
デッド・リフト 220kg
スタンディング・プレス 80kg
カール 90kg
チンニング回数 20回

《トレーニング内容》
 Aコース(脚・肩・腹)、Bコース(胸・上腕三頭筋・腹)、Cコース(背・上腕二頭筋・腹)の3コースを循環して週5日トレーニングし2日間を休養日とする。1回当りの所要時間は約1時間30分くらいである。コンテストの2ヵ月前から腹筋のトレーニング量をふやすので、この時期は、1回当りの所要時間が2時間〜2時間30分くらいになる。

Aコース

〈脚〉

①スクワット 70〜180kg 15〜3回×8セット

②バーベル・カーフ・レイズ 70〜200kg 15〜5回×6セット

〈肩〉

①バック・プレス(チーティング含) 40〜100kg 15〜5回×4セット

②ダンベル・プレス(チーティング含) 34〜32.5kg 8〜5回×4セット

③ダンベル・サイド・レイズ 15〜24kg 10〜4回×4セット

〈腹〉

①シット・アップ 50回×1セット

Bコース

〈胸〉

①ベンチ・プレス(パートナー補助) 60〜170kg 15〜4回×4セット

②インクライン・ダンベル・プレス 34〜42.5kg 10〜5回×4セット

③ダンベル・プルオーバー 42.5kg 10回×3セット

〈上腕三頭筋〉

①ラット・マシーン・プレス・ダウン 20〜50kg 10〜3回×4セット

②ワンアーム・イクステンション・ライイング 20〜27kg 10〜3回×4セット

〈腹〉

①サイド・ベンド 20〜42.5kg 3セット

Cコース

〈背〉

①デッド・リフト 70〜220kg 15〜1回×4セット

②ダンベル・ローイング 50〜70kg 8回×4セット

③チンニング 0〜15kg 20〜5回×4セット

〈上腕二頭筋〉

①バーベル・カール(チーティング含) 40〜80kg 15〜5回×4セット

②スコット・カール(ダンベル) 20〜34kg 10〜5回×4セット

〈腹〉

①レッグ・レイズ 100回×1セット

[註]コンテスト2ヵ月前から、腹筋のトレーニングは各コースとも次のようになる。

〈コンテス2ヵ月前からの腹筋〉

①シット・アップ 20回×5セット

②サイド・レイズ 20〜42.5kg 10回×5セット

③レッグ・レイズ 100回×1セット

④ツイスト 30kg 100回×1セット

《食事内容》
 ふだんでもあまり脂肪が付かない体質なので、コンテスト前でもそれほど減量しなくても良いのですが、ここ2年間は、私としては先ずはじめに多めに減量して(86→76kg)、最後の2〜3週間で再び5〜6kg増量してコンテストに出場しています。

 以下のメニューの中の補助食品の内容(1回の分量)は、ジャームオイル1カプセル、レバー10粒、アルファルファ10粒、レモンC10粒、カルシウム10粒です。

 また、普通時は朝・昼・夜の3回食事をとるが、コンテスト2ヵ月前から朝・昼・練習前・夕の4回とる。料理の味付けは出来るだけ薄味にして、酢を多くとるようにしている。

-----普通時の食事内容----

〈朝食〉−−8時ごろ
トースト2枚(マーガリン)、コーヒー1杯(砂糖抜き、ミルク付)、ゆで玉子2個、果物、補助食品
〈昼食〉−−12時ごろ
ごはん2杯、みそ汁1杯、焼肉(ブタ肉) 150g、納豆1袋、野菜いため、補助食品
〈夕食〉−−21時ごろ
ごはん2杯、みそ汁1杯、魚200g、生野菜(多めに)、海藻類 ビール1本、補助食品
〈間食〉−−18時ごろ(練習前)
牛乳500cc、プロティン大さじ3杯
〈間食〉−−19時〜20時30分(練習)
牛乳500cc

----減量時の食事内容----

〈朝食〉−−8時ごろ
トースト1枚(マーガリン抜き)、コーヒー1杯、ゆで玉子3個、果物、補助食品
〈昼食〉−−12時ごろ
プロティン大さじ5杯と玉子3個を水に溶かす、カッテージチーズ100g、補助食品
〈夕食〉−−22時ごろ
鳥肉300g、生野菜(多めに)、海藻類、オレンジジュース200cc、補助食品
〈間食〉−−18時ごろ(練習前)
プロティン大さじ3杯を水にとかして、補助食品
〈間食〉−−練習中
プロティン大さじ3杯を水にとかして
大会直前の食事内容
〈朝食〉−−8時ごろ
トースト2枚(マーガリン抜き)、コーヒー1杯、ゆで玉子3個、果物、補助食品
〈昼食〉−−12時ごろ
ごはん1杯、みそ汁1杯、焼肉(牛肉)300g、生野菜(多めに)、オレンジジュース200cc、補助食品
〈夕食〉−−22時ごろ
鳥肉300g、生野菜(多めに)、トーフ1丁、海藻類、オレンジジュース200cc、補助食品
〈間食〉−−18時ごろ(練習前)
オレンジジュース300cc、プロティン大さじ5杯、補助食品
〈間食〉−−練習中
オレンジジュース300cc、プロティン大さじ5杯
記事画像1

桜井選手の食事診断......野沢秀雄

 178cm・82kgという長身で、筋肉質の体に恵まれた桜井選手。「身長が高い選手はよほど筋肉のバルクをつけないと、ビルダーとして大きく見えず不利だ」というハンディを超えて、着々と実績を重ねて、IFBB東日本ミドル級1位、オールジャパン4位にまで到達した。
 桜井選手はもともと筋肉も脂肪も付きにくい体質だったのを、努力につぐ努力と、東北トレーニングセンターの伊藤会長の好リードにより、日本でも有数のトップ選手に成長した。
 現在は、鍼灸師・マッサージ師として、悩んでいる人びとの治療にあたりつつ、トレーニングを週に5回、1時間半ずつはげんでいる。
 ボディビルで得た体と健康に関する知識を活かして、ハリやマッサージ師の資格を取っているビルダーは結構多い。「ミスター日本」の遠藤光男選手は浪越徳治郎氏の学校で指圧を学び、国家試験にパスして治療師の資格を持っている。同じく武本蒼岳選手:鍼灸・マッサージの先生として、東大阪で腰痛を専門に活躍されている。
 さらに、日本ボディビル連盟の温井理事長もジムに併設してハリの治療院を開設。また実業団などで活躍の滝沢新一選手も専門の仕事として、ハリ治療をおこなっている。武蔵野ボディビルセンターの細見会長や門下生の風間さんなど、将来に備えて、修業し、資格を得ている人が多い。

1. ふつう時の食事内容

病気で悩んでいる人たちに聞いてみると、食事法に無関心で、やたら肉類や加工食品を食べており、緑黄色の野菜類が不足しているケースが多い。
桜井選手も治療をしながら、食事が体質に与える影響について、まざまざと感じるところがあるのだろう。
桜井選手自身の内容は、たいへんバランスがよく、野菜・果物・海藻・植物たんぱく・サプルメントフーズが充分にとられている。
また、脂肪が付きにくい体質ということもあり、ごはん・パン・オレンジジュース・ビールなど炭水化物(糖質)もほどよく食べられている。
健康管理をよく考えた、無理のない食事法である。

①総カロリー3380、たんぱく質175g(体重1kg当り2g)、脂肪120g、炭水化物400g(全体の58%)という構成内容になっている。
②体重86kgで、トレーニングをこれだけハードに実行しているビルダーとして、カロリー量が少ないと思う人があるかも知れないが、ふだんから脂肪が付きすぎないように、すなわち、腹部の皮下脂肪を5ミリ以下にコントロールするためには、桜井選手くらいのカロリー量がちょうど適している。
③桜井選手は筋肉のカットがよく、ディフィニションが良い体質であり、腕の大きさ、脚の太さを強調するにも、現在の皮下脂肪厚を維持することが望ましい。そのためにも、現在の食事量をあまりオーバーしないことが大切だ。
④たんぱく質は体重1kg当りジャスト2gで、筋肉の発達および維持に適量である。動物性の肉・魚・卵・牛乳と植物性の納豆・プロティンパウダーの比率もちょうど良い。
⑤脂肪のとり方も適度となっている。野菜いためや豚肉中の脂肪のほか、1日に1ℓ飲む牛乳からも33gの脂肪がとれている計算になる。
⑥野菜・果物・海藻類を多く食べるよう配慮している点も好ましい。「料理の味付けはできるだけ薄味にしています。そして酢を多く摂っています」と書かれているように、塩分を制限し、アルカリ性の酢を多く食べようとしていることもたいへん望ましい方法である。
⑦とくに東北地方の人は塩分を多くしないと「おいしい」と感じず、関西の人が1日6〜7gであるのに対し15g以上食べる人が珍らしくない。その結果、高血圧や脳出血の病気にかかる率が高くなっている。
⑧サプルメントフーズとして、ジャームオイル大粒1カプセル、レバー10粒、アルファルファ10粒、レモンC10粒、カルシウム10粒を、普通時は朝・昼・夕の3回、コンテスト2ヵ月前からは練習前を加えて1日4回欠かさず食べている。この点も体調をベストコンディションに保つのに役立っている。

2. 減量時の食事内容(−10kg)

 一流選手の作戦として、自分の方法を公開しないタイプの人がいるが、大らかな立場で、ボディビルの正しい発展のために、自分の体験を披露してくれるとたいへん役に立つ。
「ふさわしくない薬物や特殊な物質を利用しているので知られたくないのだろう」と、かえって不審がられる場合もあるので、できるだけ読者の方々にも役に立つように、ご協力をお願いしたい。
 さて、桜井選手の場合、「ふだんでも脂肪があまり付かない体質なので、コンテスト前でも減量はそれほどしなくても良いのですが、ここ2年間は、少し多めに減量しておき最後の2〜3週間に5〜6kg増量してコンテストに出場しています」と書かれている。
 その人の体質や、ふだんの管理状態によっても異なるが、この方法はビルダーにとって、ひじょうに有利な方法といえる。
 多くの選手はコンテストの直前日まで炭水化物を極端に制限してしまい、トレーニングを行う必要最少限のエネギーに不足し、体がすっかりバテてしまう。こんな状態でパンプアップをさせようとしてもなかなか無理で、かんじんのコンテスト当日、戦意をなくして、「どうせもうダメだ」とあきらめきっている選手を見かける。
 たとえ入賞するレベルでなくても、自分のベストを尽くして、いちばん良い状態を公開したいと誰でも望んでいる。この意欲がありながら、食事法のミスのために、コンディションを悪くしてファイトを失ってしまっては元も子もない。
 この点、桜井選手の方法だと、2〜3週間の間、体重(とくに筋肉)をふやすために努力が向けられ、しかも力いっぱい練習できるので、やや多く炭水化物をとっても、決して余分な皮下脂肪に変化せずに、トレーニングのエネルギーとして燃焼し尽くされる。
 86kg−→76kg−→82kgと、結果的には、いったん脂肪を徹底的に除き、次いで筋肉でバルクアップをはかる、という過程が、2ヵ月くらいの間に行なわれている。
 やや脂肪太りの初心者がジムに始めて入門して、まず体に付いている余分な脂肪を除去し、次いで徐々に筋肉でバルクアップをはかり、再び体重をもとの数字かそれ以上に増加させる過程と似ている。体重の数字は同じでも、脂肪が主成分か、実質的な筋肉が主成分か、その構成内容により、外観も、パワーも、そして健康上も大きな差になるわけだ。
 桜井選手の場合は、ふだんでも皮下脂肪が薄い体質なので、実際に脂肪がどのように減っているか、皮下脂肪厚をデータで把握しながら、自己調整をおこなってゆくのがよい。本当は10kgも減量しなくてもレベルとしては充分なのかもしれない。ただし、コンテスト前2〜3週間でも、「ある程度はどんどん食べられる!」という心理的な安心感が、大きな支えになっていることはまちがいない。
 桜井選手の減量時の食事内容を分析すると、以下のようになる。
①総カロリー1800(ふつう時より1500カロリー減。ふつう時の55%)、たんぱく質230g(ふつう時より55g増)脂肪60g(ふつう時より60g減。ふつう時の1/2)、炭水化物130g(ふつう時より270g減。ふつう時の1/3)という構成になっている。
②たんぱく質は体重1kg当り約3gと相当に多く摂られており、逆に脂肪と炭水化物は大幅にカットされている。
 ボディビルダーの減量として典型的なパターンで、これにより体重が10kg低下し、腹囲74cm、皮下脂肪3〜4ミリにまで脂肪がとれた、デフィニションとセパレーションが目立つ、迫力ある体型に仕上ってくる。
③この減量法で、筋肉のサイズやパワーをそれほど落とさず、体調もまずまず良好に維持されているわけだが、モーレツなトレーニング(コンテスト前の1日に2〜2.5時間というような)を行うには基本的にカロリーが不足しすぎて無理がある。
④したがって、コンテスト2〜3週間前に、食べる量と種類をふやして、無理のない食べ方をすることは賢明な方法である。
 この場合、ふつう時の食事法と内容は大体似ており、ごはんが茶碗1杯になっていること、牛乳でなくオレンジジュースをプロティン大さじ5杯と共に飲んでいること、納豆の代りにとうふになっていることが、桜井選手のコンテスト直前の食事法である。
サプルメントフーズは1日4回摂られていることは前述のとおりである。
⑤桜井選手の方法で良い点は、野菜類や海藻類を、酢の物として、たっぷり食べていることだ。コンディションを良好に維持できる一つの秘訣である。
⑥減量中の、たんぱく質のとり方、特に、プロティンを大さじ11杯(約80g)とっている点、多すぎると思う人があるかもしれないが、急激に10kg減量する期間、およびコンテスト前の期間のみである。ふだんは大さじ3〜5杯の範囲で、ちょうど良い量と考えられる。
⑦今後の課題として、減量して85kgくらいの体になれば、比較的、大型ビルダーの少ない日本では貴重な存在となろう。そのためには現在の仕事との調整が大変である。年齢と共に仕事量や責任量が増して、なかなか自分自身の練習に時間がとれなくなる。
体をさらに一廻り大きくすることはトップレベルに達している選手ほど大変で、いっそう密度の濃い、高重量のトレーニングを自分に課せなければならない。これは筆舌では表わせない難しいことである。

だが今秋はミスター・アジアが日本で始めて開催される。日本を代表するトップ選手の一人として、がんばっていただきたい。
月刊ボディビルディング1982年8月号

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