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高等学校におけるウェイト・トレーニング
《都立足立新田高校ウェイト・トレーニング・クラブ》

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月刊ボディビルディング1982年10月号
掲載日:2018.11.03
高橋 実

パワーリフティングにおける学生と社会人の格差

 私は今から10数年前、埼玉大学に在学中、現学連副会長の松尾昌文先生よりパワーリフティングの手ほどきをうけたのが、この道に入るきっかけでした。その後、埼玉大学ウェイト・トレーニング・クラブ設立、学連加盟、学連理事、関東学生パワーリフティング選手権重量級優勝等を経て、社会人となったが、パワーリフティングが私に与えてくれたものは、今でも私の人生を支えてくれている大きな柱の1つになっている。
 そのため、現在でも学連に対する関心は非常に強く、関東学連のパワーリフティング大会にはよほどの事情がない限り会場に足をはこんでいる。そして学生たちの試合を観戦するたび思うのは「このままでは学生パワーリフティング、引いては日本のパワーリフティングは先細りになってしまうのではないか」という危惧の念である。
 学生の強いスポーツは国際的にも強くなるというのが、どのスポーツにも共通して言えることだが、現在の学生パワーリフティング界の実力では、全日本クラスにはとても歯が立たないし、ましてや世界選手権クラスを出すことはほとんど不可能に近いといってもいい。学生と社会人が互いに日本記録あるいは世界記録を競うような状態にならなければ、本当に世界に通じる選手をコンスタントに養成することはできないのではないかと思う。
 では一体、どうして学生パワーリフティングがこのように弱いのか。それは、ほとんどの学生選手が、大学に入ってから初めてパワーリフティングをはじめるという現実が、最大の原因であると思う。

都立足立新田高校における現状

記事画像1
 このような考えから、私は、日本のパワーリフティングのレベル・アップをはかるためには、できるだけ早い時期、具体的には高校生にパワーリフティングを普及することが必要だと考えていた。
 幸い、1年前から高校の教師になったので、さっそくクラブ設立の準備にとりかかり、ようやく今年の6月、都立足立新田高校ウェイト・トレーニング・クラブとして正式に発足した。
 現在クラブ員は名目40名、実質約20名。そのうち約半数が女子生徒であるというのが当校の最大の特徴である。
 当クラブの目的は、①虚弱体質の改善 ②体型の改善 ③パワーリフターの養成 ④スポーツの補助トレーニング ⑤科学的トレーニングの普及、と多岐にわたっており、練習時間は週3回で、1回当たり1時間半程度。
 生徒達のウェイト・トレーニングに対する反応は、多少の誤解はあっても大きな偏見を持っている者はほとんどない。だからクラブ設立に際しての最大の難問「人集め」は楽だった。我々の先輩達がテレビや新聞で正しい知識の普及に努めてくれたことがようやく定着しつつあることを実際の体験から知ることができました。施設さえ整っていれば、100人以上のクラブ員を集めることさえ不可能ではないと思ったほどである。
 やがてクラブ活動が始まると、他のスポーツ・クラブの生徒からもぜひトレーニングに参加させてほしい、との申し込みもあり、とくにラグビー部からは全員で参加したいとの希望があった。そこで、課外クラブ(授業時間以外に行なうもの)としてだけではなく全参クラブ(授業時間に行なうもの)としても活動している。
 ただ残念なのは、非常に立派なトレーニング・ルームがあるにもかかわらず、そこは以前から卓球部が使っていて使えず、また、体育館にもトレーニングをするスペースがあるが、施設が破損するとの理由で、これも使わせてもらえないというのが実状である。工夫すれば施設を破損せずに十分練習できると思うのだが。
 それで現在は、運動場の片隅で練習をしているが、風雨の強い日とか、足場の不安定などからくる不慮の事故などを考えると、ぜひトレーニング・ルームを本来のあるべき姿にもどしてもらいたいと願っている。そのためにも私達のクラブの正しいあり方を一日も早くみんなに知ってもらうことが、これらの問題の解決につながるのではないかと考えている。
 生徒の指導をしながら感じたことは当クラブの部員はもちろん、他のスポーツ・クラブ員も、共にこのウェイト・トレーニングの効果について、あらためて非常に大きな興味を示したことである。特に女子生徒はウェイト・トレーニングの良さを知ると男子生徒よりはるかに熱心に練習することもわかった。指導の仕方によっては、近い将来かなり良い結果が得られるのではないかと思われる。
 また、一般生徒のウェイト・トレーニングに対する理解も、数年前よりはるかに深くなっており、今こそパワーリフティングを含むウェイト・トレーニングを高校生に普及する最良の時ではないかと思う。

将来に向けて

 過日、愛知県で高校パワーリフティング大会が行なわれたことが本誌に載っていたが、近い将来、ぜひ全日本高校選手権大会が開催されることを望んでいるが、具体的な組織がないため、実際には、どこで、誰が、どのような活動をしているのかまったくわかっていない。ぜひ、高校生のための全国組織を結成するためにご連絡をいただきたいと思います。そして、高校パワーリフティング関係者のみならず、全国のパワーリフティング関係者のご協力もいただいて、優秀な高校選手の養成を目標に頑張っていきたいと思う。
月刊ボディビルディング1982年10月号

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