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★1982年度ミスター東京コンテストを目指しての………
私の食事法とトレーニング法 川上昭雄

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月刊ボディビルディング1982年10月号
掲載日:2018.11.15
1982年度ミスター東京優勝 川上昭雄
生年月日 昭和23年4月13日 34歳
トレーニング経験 6年9ヵ月

≪体位≫

記事画像1

≪パワーの記録≫
ベンチ・プレス 135㎏
スクワット 180㎏
デッド・リフト 180㎏
バック・プレス(チーティング) 110㎏
カール(チーティング) 85㎏
チンニング回数 30回

 私が本格的にボディビルを始めたのは昭和50年の11月25日、家から近い池袋のボディビル・センターに入会したときからです。子供の頃、エキスパンダーや鉄アレイ(4kg)でボディビルのまね事をし、中学生になってすぐ、35kgのバーベル・セットを買って友達と一緒に1年間ぐらい練習したものです。しかしその後は高校受験等のためいつしかやめてしまいました。
 池袋ボディビル・センターでトレーニングを再開した当時、体重が66kg、上腕囲は32cmでした。体力は比較的ありましたが、脂肪太りしていました。その頃は、40kgのベンチ・プレスが出来ず、カールは20kg、プレスは25kg、ローイングは30kgがやっとでした。まだプロティンもジャーム・オイルも国産品がなく、外国製品を少しずつ使っていましたが、間もなく国産品が出まわるようになり、1週間に1缶ぐらい使ったものです。
 ダイエットは、池袋ボディビル・センターに入会した直後から自分なりに考えて、納豆、メンチカツ、牛肉、牛乳、卵などを食べていました。
 コンテストの初舞台は昭和52年のミスター東京コンテストで、この時は予選落ち。昭和53年も同じく予選落ち。昭和52年10月、フジ・トレーニング・センターに入会し、その後、IFBBに移ったわけです。
 当時、フジ・トレーニング・センターのコーチをしていた末光選手の体とハードな練習をまのあたりに見て、びっくりすると同時に、これが本当のボディビルなんだなと、思い知らされたものです。そして、2年後の昭和54年6月、IFBB東日本コンテストでバンタム級3位に初入賞し、表彰台で体がふるえたのを覚えています。
 その後、IFBBでのコンテストには全て出場し、殆んど入賞してきました。昨年はマレーシアで行われたアジア選手権でバンタム級2位、オールジャパンでライト級2位、そしてJBBAとIFBBが1本化し、考えてもみなかったミスター日本コンテスト出場と、私にとっては忘れられない1年でした。
 今年に入って始めてのコンテスト、7月25日のアジア選手権選抜大会では敗れましたが、8月8日のミスター東京コンテストでは、遂に念願の優勝を果たしました。
 では、このミスター東京コンテストを目指しての私のトレーニング法と食事法について書くことにします。
 減量は、毎年5月から始め、3ヵ月かけてゆっくり10kg程度落します。ここ2年ぐらい、ベストが62~63kgなので、身長から考えて、あまり意識せず仕上がった時のカットを重視しています。練習時には夏は冬よりも厚着して、うんと汗を出すようにしています。減量の始めの頃は、2km程度のジョギングを週3~4日行います。この期間中、昼の休みには必ず日光浴か昼寝を欠かしません。
 実家がバッジ、徽章の製造卸業で、私もそれに従事しており、家の理解もあり、時間的にもめぐまれています。
記事画像2

≪トレーニング内容≫

 練習はふだんA(胸・上腕三頭筋)、B(背・上腕二頭筋)、C(肩・その他)、D(脚・その他)の4コースを循環して週6日、1日あたり1時間半ぐらい練習します。特徴としては1種目重点主義で、全てセット法で実施します。
 コンテスト直前はA(胸・上腕三頭筋、その他)、B(肩・脚・その他)、C(背・上腕二頭筋・その他)の3コースを週2日ずつ、計6日実施。1日当りの所要時間は約2時間です。
 では、次にミスター東京コンテスト直前のトレーニング法を書きます。

――Aコース(胸・三頭)――

①ベンチ・プレス(フォーストレプス)
 95~135kg 8~3回×7セット
②インクライン・ベンチ・プレス(最後はフォーストレプス)
 90~110kg 6~3回×5セット
 [註]②のかわりにダンベル・ベンチ・プレスを34kg、42.5kg、52.5kgで8~3回×5セットの日もある。
③ディップス(両足を前にかけて、パートナーにぶらさがってもらい、さらにバーに足をかけて加重してもらう)
 4~6回×3セット
④フライ(またはケーブル・クロス・オーバー)
 25kg 6~8回×3~4セット
⑤プレス・ダウン
 40~70kg 最高回数×10セット
⑥トライセップス・ライイング
 50~60kg 最高回数×4セット
⑦ダンベル・ライイング
 25~34kg最高回数×3セット

――Bコース(肩・脚・カーフ)――

①バック・プレス
 60~110kg 10~4回×8~10セット
 [註]60~70kgはストリクトで、それ以上の重量はチーティングを使う。
②ダンベル・プレス(片手)
 34~42.5kg 4~8回×4セット
③サイド・レイズ(両手)
 20kg 10~12回×5セット
④ベント・オーバー・サイド・レイズ
 20~25kg 8~10回×4セット
⑤シュラッグ(ストラップ使用)
 150~200kg 6~4回×5セット
⑥首(イクステンション・マシンで時々行う)
⑦レッグ・カール
 20~40kg 20~8回×5セット
⑧レッグ・イクステンション
 片脚20~30kg 
 両脚30~50kg }19~20回×6セット
⑨スクワット
 105~165kg 最高×4~5セット
⑩カーフ・レイズ
 100~165kg 最高×5~6セット
⑪ドンキー・カーフ・レイズ
 パートナー60kg 30回×2セット

――Cコース(背・二頭)――

①ベント・オーバー・ローイング(チーティング)
 105~145kg 6~3回×8セット
②ダンベル・ローイング
 52.5~60kg 最高×4セット
 [註]②のかわりにエンド・バー・ローイング(チーティング)100~130kg×5セット実施することもある。
③プルダウン(ネック)――体を床に固定するバーがあり、それを使ってチーティングで
 80~150kg 最高×8セット
④チンニング
 負荷なし 20~30回×3セット
 [註]④のかわりにストレート・アーム・プルオーバーを30kgで8~10回×3セットすることもある。
⑤カール・マシン
 25~40kg 15~3回×10セット
⑥バーベル・カール(ストリクト)
 30~50kg 10~5回×5セット
⑦ワン・ハンド・ダンベル・カール
 20~15kg 10回×3セット
 [註]腹筋のトレーニングは、コンテスト直前はそんなに行なわない。せいぜい毎日、シット・アップを20~30回×2~3セットするぐらいです。この時点では、かなりしぼれておりむしろポーズの時にカットを出せるように鏡の前で行なうポージングに重点を置きます。この頃は、練習中にあまり水分はとらず、夜食後は特にお茶を1~2杯と、夜中に目をさました時にポカリ・スエットを少し飲むようにしています。

≪食事内容≫

――ふだんの食事内容――

<朝食>――8時20分ごろ
 牛乳300cc、プロティン40g、ジャーム・オイル、ビタミンE錠、おにぎり1個、ゆで玉子1個
<昼食>――12時ごろ
 ごはん大盛1杯、さば缶詰1個、玉子入りみそ汁1杯、生野菜、フルーツ(りんご半分)、プロティン20g、ジャーム・オイル、ビタミンE錠
<夕食>――23時ごろ
 ごはん1杯、肉(トリ、ブタ、牛肉の中のいずれか)180~200g(魚なら、まぐろ、さんま等を同量)、玉子入りみそ汁、生野菜、フルーツ、ジャーム・オイル、ビタミンE錠
<間食①>――16時ごろ
 プロティン30gを牛乳にとかして
<間食②>――19時ごろ(外食)
 肉定食かラーメン類、または自分で料理したもの、ビタミンE錠、ジャーム・オイル

――大会前の食事内容――

<朝食>――8時20分ごろ
 ハンバーグ90~100g、ゆで玉子1個、生野菜(レタス、キュウリ、ピーマン)、液体プロティン(スプーン2杯)。なお大会前は料理に油は一切使用せず、上記のハンバーグも自家製のもので、トリ肉にニンニクとプロティンを混ぜてオーブンで焼いたもの。
<昼食>――12時45分ごろ
 さば缶詰1個、玉子入みそ汁1杯、生野菜、フルーツ(りんご、うり、ぶどうなど)、液体プロティン。なお、さば缶はもう4年ぐらい続けて食べていますが、水を捨てて、さらに油分を水で流してから食べます。
<夕食>――11時ごろ
 ささみ(ボイルして)100g(または、まぐろの切身を1切れ)、レバーのカラ揚げ60g、生野菜、フルーツ(オレンジ、りんご、ぶどうの中から1種類)、液体プロティン
<間食>―10時17時、20時ごろ
 プロティン・パウダー25g、液体プロティン、その日の腹の調子によって水を調節して用いる。
 [註]栄養補助食品としては、ローヤルゼリーと総合ビタミン剤を1日に1回、ジャーム・オイルとビタミンEは食事のたびに3~4錠ずつ、そして、朝のみビタミンC、カルシウム、肝油を用いる。しかし、これからは、できるだけ自然食品をとるように心掛けたいと思っている。
1982年度ミスター東京コンテストで念願の優勝をなしとげた川上選手

1982年度ミスター東京コンテストで念願の優勝をなしとげた川上選手

川上選手の食事診断……野沢秀雄

 「努力の人」という言葉は、どのビルダーにもあてはまるが、とりわけ今年度のミスター東京に選ばれた川上選手にふさわしい言葉だと思う。「努力の人」を超えて、「執念の人」のレベルにこの1年間はなっていたのではなかろうか?――名古屋で開かれたミスターユニバース選抜コンテストで、無念にも3位になり、選出されなかったが、川上選手の体は彼の過去最高の仕上りであった。ふつうならガックリくるところ「よし東京ではやるぞ」と、「まさに燃えるような闘志をわかせてトレーニングに、食事に、日光浴にと、最善を尽くしてきた結果がこの栄光につながった。
 この差しせまった者が持つ「気迫」が、舞台でポージングをとる一挙手一投足にありありと現われて、審査員や観客の心を捕えたわけだ。「リラックスポーズでも抜群だった」と評されるように、今夏は川上選手の最高レベルに達していた。
 川上選手が当時IFBB系だったフジトレーニングセンターに入会し、末光選手から指導を受け、その影響が大きいことは誰しも認めるところであろう。そして昨年度はアジア選手権をはじめ海外コンテストにも出場し「ボデイビルというスポーツが世界の各地でプライド高く競われている」ことを身をもって知り、いっそうファイトを湧かせたにちがいない。
 やっと本誌の一流選手シリーズに登場でき、筆者もうれしい限りである。

1.ふつう時の食事内容

 朝8時20分、昼12時、間食16時、19時、夜食11時と、1日5回にわけて、バランスよく食事をとっている。
 週に6日、約1時間半、ヘビーウェイトでみっちり練習しているので、これに応じて食事内容も充実している。
①総カロリー3035(体重1kg当り42カロリー)、たんぱく質210g(体重1kg当り2.9g)、脂肪95g、炭水化物335g(全体の53%)という構成内容になっている。
②総カロリーとして、トレーニング量に見合った適切なレベルであり、多すぎも少なすぎもしない。何をどれだけ食べるかは、毎日の自分の運動量と連動して考えるべきで、川上選手ほどトレーニングしないのに、食事内容だけ同様に真似ると、脂肪のつきすぎになってしまう。
③たんぱく質源として、肉・玉子・魚・さば缶・プロティン・牛乳と、バラエティに富んでいる。ただし体重1㎏当りの数字がやや多いので、2/3くらいにカットしても構わない。
④脂肪は、肉や魚からひとりでに摂られる分のほか、ジャームオイルをとっていることにより、かなり多くなっている。
⑤炭水化物として、ごはんやおにぎりを毎食欠かさず食べ、ラーメンなどもとっている。これはエネルギー源となるのでたいへん好ましいといえる。
⑥野菜や果物も1日に2回、かなり食べているが、生よりも煮て食べると量が多くとれて、好ましい。
⑦サプルメントフーズとしては、プロティンパウダーのほか、ジャームオイル、ビタミンC、ビタミンB1をとっている。
⑧「自然食を考えたい」と書かれているが、とくにビルダーは一つの物を多くとる傾向にあり、自然のものを種類を多く、よくかんで食べるとよい。
加工食品の場合、添加物の数が少なく、加工度がなるべく少ないものが望ましい。

2.減量時の食事内容(-10kg)

 10kgの減量と書かれているが、ふだんの川上選手は結構筋肉質に保たれており、脂肪がそれほど多いとは感じられない。むしろミスターユニバースやミスター東京コンテストで、体重を限界以下に落しすぎていると感じるくらいだ。これだけ絞りこんで、あの筋肉のバルクとディフィニションが共存しているのだから、いかに日頃のトレーニングが厳しいものか想像できる。
①総カロリー1285(体重1kg当り20カロリー)、たんぱく質146g(体重1㎏当り2.4g)、脂肪56g、炭水化物56g(全体の22%)という構成になっている。
②普通時に比べると、カロリーは約1/2、たんぱく質70%、脂肪約1/2、炭水化物約1/6と、炭水化物が大いに減っている。
③特徴は脂肪を徹底して除こうと努力していることだ。ハンバーグは油も使わず、サバ缶も水で洗って油を抜いている。牛乳を必要とするプロテインパウダーは間食の3回のみにとどめ、液体プロティンを採用している。鳥のササミはボイルにして油を除いてから食べるわけで、味はおいしくないだろうが、ここまで自己摂生しているわけだ。
④炭水化物源になる物も徹底してカットしている。ごはんやラーメンも姿を消している。せいぜいりんごや野菜から摂る量くらいで、これでは少なすぎる。100g程度は食べたほうが、神経や脳・赤血球などの栄養分に廻るので必ず食べていただきたい。それによって脂肪太りになる心配は絶対にない。
⑤太るかどうかは、エネルギーの収支バランスで黒字になりすぎたときにおこる。これだけトレーニングしていれば心配はない。むしろ炭水化物はカットしても、たんぱく質や脂肪が多いとカロリー過剰の場合は体内に脂肪が蓄積されることになる。
⑥生野菜を多く食べるように心がけていることはよいことだ。前述のように煮たり、ゆでたりして食べると量が多くなる。
⑦サプルメントフーズとして、ふつう時にとっているもののほかに、カルシウム、スポーツ飲料、総合ビタミン剤、ローヤルゼリー、健康茶、エビオスなどが食べられている。サプルメントフーズは栄養補助食品という名前のとおり、あくまでも脇役で補欠にすぎない。1日3食の主食をきちんと方針を立ててとり、どうしても不足すると思われる成分だけを補助するのが正しい使い方である。そうしないとビルダーの経済的負担がふえるばかりで大変である。

 ――以上、川上選手の食事内容を基に、日ごろ感じていることをアドバイスしたが、川上選手のトレーニングと食事法に対する努力に対して、再度盛大な拍子を贈りたい。
月刊ボディビルディング1982年10月号

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