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1992 MR & MS東京ボディビル選手権

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月刊ボディビルディング1992年10月号
掲載日:2020.02.03

黒い弾ガン、ピーターキマニ圧倒的バルクで東京を制す!!
ミズ東京は本命橿棒が栄冠を勝ちとる

驚異のバルクに仕上がりも十分。ほぼパーフェクトで優勝を飾ったピーター・キマニ

驚異のバルクに仕上がりも十分。ほぼパーフェクトで優勝を飾ったピーター・キマニ

 今年で27回を数えるミスター東京と10回目の節目を迎えるミス東京、今回は全日本ジュニア、マスターズと共に、東京クラス別と同じ江戸川総合文化センターにて開催された。

■ミズの部

 ミズ東京は全てのクラスの先頭を切ってピックアップが行なわれた。ラインナップでは昨年豊富なバルクで4位に入った白岩、昨年山本と優勝を争った橿棒が目についた。白岩の立体感ある体、橿棒の厳しい仕上がりは、他の出場者と一線を画するものがある。全体を見ても筋量の充実した選手が目につき、今年はハイレベルな戦いが予想された。ピックアップにおいても、最初にいきなり昨年3位の内田が呼ばれる波乱があった。今回は相当な苦戦を強いられそうだ。

 比較的あっさりピックアップが終わり、すぐに比較審査に移る。今大会は非常に進行が手早かった。比較に進んだ選手は10名。そしてトップに呼ばれたのは白岩、橿棒、そして昨年のクラス別の覇者、浜永、さらに加えて、ノーマークの水間という4名の選手だった。

 浜永は伸びやかな体で仕上がりも上々、今年は入賞を狙って来ているのだろう。

 そして水間だが、初めて見る選手だ。ジャッジもノーマークだったようで、ピックアップでも一回呼ばれている。しかしこの比較も含め比較審査では2回呼ばれて共に白岩、橿棒とからんでいる。高い評価を得た様だ。脚が太くて形良く、カーフも非常に大きい。かといってボトムヘビーでは無く、ダブルバイなど非常にバランスが良く、腕も太い。女子は突然こういう選手が出て来るから面白い。

 続く比較が白岩、大村、浜永。大村は昨年10位、決して目立つ選手ではなかったが、腹筋が良かった記憶がある。今回も腹筋が目立っている。他には関谷、石川らのニューフェイスが仕上がり良く、今一つ甘いベテランの福田、内田ら相手に大健闘。それに今年のクラス別2位の中村を加え、大混戦の決勝へと進んだ。

 フリーポーズの先頭は白岩、昨年より仕上がりは数段良く、もちろんバルクも充分。しかし厳しいといえる仕上がりでは無い。ボージングは規定、フリー共に良くなり、持ち前のバルクをアピールする力強いものだった。

 橿棒はすでに完璧と言えるポージングだ。長所である肩もさらに迫力を増した様だ。ただ、やはり下半身の細さはまだ目につく。バックポーズでは特に顕著だ。また、バックのダブルバイで充分に背中の広がりをアピールできていない様に見えたのが気になった。

 続く関谷は仕上がりが良い。充分に絞り込んでのエントリーだ。注目の水間、フリーは少々硬かったがやはりダブルバイが良い。充実した下半身に負けない背中のラインを持っている。石川もフリーでは硬さはあったが、無難にこなした。それよりも、リラックスがもう少し良くなれば、と思った。ポーズに少々難があるようだ。

 大村はとにかく昨年より確実に進歩しているポージングにも自信がうかがえた。福田はアップテンポの曲の多い中、ゆっくり見せてくれた。上半身は美しいラインを持つ福田だが、やはり下半身、特にバックに課題があるようだ。

 浜永は曲調をスローからアップテンポへ変え、ポーズも絞るポーズから広がるポーズへと移っていった。彼女の伸びやかな体には、広がりのあるポーズが似合うようだ。内田はいつものように、彼女独特のフリーを見せてくれた。最後の中村は腰高で美しいプロポーションを持つ。フリーも表現力豊かで良かったが、全体に少々おとなしかった印象がある。

 ポーズダウンではまず中村が呼ばれてしまった。次には内田、昨年の3位から、大きく順位を落とした。苦しくもクラス別の1、2位が9、10位となった。レベルの高さが窺える。

 8位は大村、7位に石川が入った。大村はもう少し上でも…と思えたがそれでも昨年から2つ順位を上げた。石川は内田や大村を破っての価値ある7位だ。6位には福田、5位に仕上がりの良かった関谷が入った。

 そして4位には、水間がコールされた。もしかしたら、と思わせたが、それでも4位は上出来だ。3位には浜永、次に狙うのは優勝か?

 注目の二人の対決は、橿棒に軍配が上がった。バルクでは頭一つ抜けていた白岩だが、万全の仕上がりに持っていけなかったのが敗因だろう。昨年よりは数段良かったのだが。橿棒は念願の東京を制した。仕上がり、ポージング、そしてその表情を見ても正に貫禄の優勝だ。強敵、白岩に勝って初めて見せた笑顔が、非常に印象的であった。
マスターズ40才以上の部優勝・石津永司

マスターズ40才以上の部優勝・石津永司

マスターズ50才以上の部優勝・浦崎凡弘

マスターズ50才以上の部優勝・浦崎凡弘

年々調子を上げている有賀だが、上体のバルクでキマニに一歩引けをとり2位

年々調子を上げている有賀だが、上体のバルクでキマニに一歩引けをとり2位

ミスターの部8位・城戸栄治

ミスターの部8位・城戸栄治

ミスターの部9位・後藤 正

ミスターの部9位・後藤 正

ミスターの部10位・関口 勉

ミスターの部10位・関口 勉

左よりキマニ、有賀、工藤

左よりキマニ、有賀、工藤

左より工藤、佐々木、三浦

左より工藤、佐々木、三浦

■ミスターの部

 プレジャッジから、すでに空席がちらほらしか見当たらない。早くも静かに盛り上がろうとしている会場で、今年もゼッケン49番までの選手が東京のタイトルを争った。

 多少ゼッケンの飛んでいる所も見られたので、実際は45人前後だろうか、ピックアップで、一気に14人まで絞られた。常連陣に混じり、ノーマークの選手も大健闘している様だったが、なんとここで一昨年の2位、宮野が姿を消してしまった。一年おいての出場だけに、期待していたのだが残念だ。

 会場も期待でざわめく中、いよいよ比較審査の最初のコールアウトは工藤、有賀そしてキマニだ。毎年、それなりに良いコンディションで、バルクも全身に充実している工藤、これまで不思議と評価が低かったが、一発目のコールにやる気満々だ。有賀は東京へ籍を移し、そして東京を獲りに来た、という所か。そして昨年に続く出場の"ジャイアント"キマニだ。今年は絞って来るとの事だったが、噂に間違いはなかったようだ。

 そしてそこからキマニが抜け、三浦、谷野が加わったのが二回目。三浦は昨年よりバルクアップした様に見える。谷野はこの中に入っては、ひときわウエストが細くプロポーションが映える。さらにここから有賀が抜け、佐々木が加わって3回目だ。佐々木はクラス別、東日本と3位、今回はどうだろうか。さらに残る8名がからみ、計9回の比較が行なわれた。

 フリーポーズへ移れたのは12名、脚の良かった野池、スケールの大きい三和が残念ながら残れなかった。

 トップはゼッケンも一番の後藤。クラス別を制しての出場だ。バランスが良く、しっかり見ると段々良くなる選手だ。

 内藤は今回、危なげ無くここまでやってきた。去年はなんとか残ったという感じだったが、それだけ今年は仕上がりが良い。

 安定した実力を持つ城戸だが、そろそろ飛躍したい所だろう。ポーズもあまり変わらない印象がある。

 東日本では明らかに甘かった三浦は、ここでは仕上げて来た。一際重量感が出て来た様だ。佐々木は下半身にあと一絞りあれば、と思わせた。リラックスの肩幅等、スケールが大きく、これから注目の選手だ。

 決勝のオレンジのトランクスはどうもぼやけて見えたが今回は自身満々の工藤、ポーズはある程度完成された感があるが、もう一つ地味な印象を持った。

 谷野は正にバリバリといった感じがし、殿部にもストリエージョンが走る。スプレッドをとると胸のカットが深く、乳首がどこにあるかわからない位だ。

 関口は予選では目立たなかったが、かなりウエストが細くなり仕上がりも良く、力の入ったポージングを見せてくれた。ノーマークだった中野は脚が太く、カットも良かった。あとは上半身が良くなれば、上位に食い込む存在となりそうだ。

 今年は決勝へ残った渋谷。仕上がりは悪くないのだが腹筋が見えない。誰もが欲しい背広のラインを持っているのだが、優勝にからむにはもう一つ武器が欲しい。

 そして有賀。今大会日本人選手中断トツの大きさを持ち、仕上がりも安定してきて欠点もあまり見当たらなくなった。大器と言われる彼も、勝負所に来たようだ。

 一方、今大会中断トツのバルクの持ち主ピーター・キマニは、太い腕、大きな肩に加え、昨年甘かった下半身、ミッドセクションも仕上げて来た。弱点が無いわけでは無いのだが、それをおぎなって余りある腕の太さだ。ポーズも自信たっぷりだ。
  激戦の最後を飾るポーズダウン。12位からまず中野、11位に渋谷が入った。関口は10位。仕上がりは良かったが、もう一つアピールに欠けたか。後藤が9位。昨年の予選落ちのうさは晴らせただろう。8位に城戸。結果的には一昨年から6、7、8位と順位を下げている。内藤は7位、ポーズダウンにも気合いが入っていた。

 混戦の上位は6位に佐々木。今回はいつもの元気が影をひそめた。5位に三浦。大躍進の昨年から一つ順位を下げた。迫力のある体だが、少々ガチャガチャした印象も受けた。4位は工藤だった。台へ登れるか、と思われたが今一歩、届かなかった。

 そして3位には、工藤とはゼッケンで隣りの谷野が入った。谷野は線が細く、大きさからは4、5、6位の3人に負けているのだが、ただ細いというのとは異なる美しさを持っている。それに加えてのスーパーカットだ。仕上がり、焼き込みと、しっかり"コンテストの準備"をして来た、という感じだ。

 続く準優勝は、やはり有賀だ。有賀の充実度は、渡辺、大河原、高西ら過去の東京の優勝者を彷彿させるものがあった。

 この人さえいなければ、のピーター・キマニが大声援の中優勝を手にした。昨年は「仕上げて来れば面白い」で済んだが、いざ仕上げたらこれはシャレにならなかった。有賀も健闘し下半身では勝っていたようだが、肩と腕で取り返せない差をつけられた。これは世界の舞台で戦う日本選手に共通する課題と言える。これから世界と戦う事もあろう有賀にとっても、克服しなければならない難問だ。

 キマニは昨年の初出場程のインパクトは無かったが、今年は確実に勝ちに来たといった所か。笑顔を見ればどちらかと言うとかわいらしい位のキマニだが、そのバルクはとてもかわいらしいものではなかった。

 国際都市と呼ばれる東京、これからも海外からの選手の挑戦を受けることもあるだろう。どこまでレベルが上がるのか選手は大変だが、非常に楽しみな所である。
全身にスーパー・カット&デフィニションを見せた谷野義弘は3位に入った

全身にスーパー・カット&デフィニションを見せた谷野義弘は3位に入った

ミスターの部4位・工藤郁夫

ミスターの部4位・工藤郁夫

ミスターの部5位・三浦厳一

ミスターの部5位・三浦厳一

ミスターの部6位・佐々木孝二

ミスターの部6位・佐々木孝二

ミスターの部7位・内藤 格

ミスターの部7位・内藤 格

クラス別東京大会に続いて2連勝を飾った橿棒幸子。脚部の細さを克服すれば、ミズ日本でも充分上位を狙える

クラス別東京大会に続いて2連勝を飾った橿棒幸子。脚部の細さを克服すれば、ミズ日本でも充分上位を狙える

胸に目一杯ストリエージョンを走らせていた3位の浜永祐子

胸に目一杯ストリエージョンを走らせていた3位の浜永祐子

ミズの部6位・福田たまみ

ミズの部6位・福田たまみ

ミズの部7位・石川祐子

ミズの部7位・石川祐子

ミズの部8位・大村育子

ミズの部8位・大村育子

バルクでは断トツに目立っていた白岩喜子。今後の動行に目を離せない選手だ

バルクでは断トツに目立っていた白岩喜子。今後の動行に目を離せない選手だ

ミズの部4位・水間詠子

ミズの部4位・水間詠子

ミズの部5位・関谷友加里

ミズの部5位・関谷友加里

ミズの部9位・内田美紀子

ミズの部9位・内田美紀子

ミスの部10位・中村静恵

ミスの部10位・中村静恵

■マスターズの部

 今年は進行を考えてか、マスターズ40歳以上は6名が決勝へ進む、狭き門となった。

 ラインナップから昨年優勝を逃がした石津が頭一つ出て、そのまま優勝を飾った。全体に筋量も充実し、仕上がりも良かった。ポーズも力強く、自信がうかがえた。2位には岩崎、アップテンポの曲で力強い実に若いポージングが印象的だった。3位の内田は脚が太く、少々上半身が負けた感じはあったが、良い仕上がりでカバーした。4位には美しいバックを持つ羽金、以下5位山岸、6位ベテランの浜中となった。

 50歳以上も決勝へは3名が進んだ。良く似たタイプの浦崎と荒川だが、わずかな仕上がりの差で浦崎が優勝、荒川は2位となった。3位の斉藤は、1、2位の二人より背も高く、筋量も豊かだったが、仕上がりが甘かったようだ。

■ジュニアの部

 ジュニアも決勝へ進めるのは6名。東京のジュニアらしく、ハイレベルな戦いとなった。優勝は一番背の高い井上。脚が太くしっかりしていて体全体に伸びやかさがある。基本、フリーを通してポージングの良さが目についた。スケールの大きい選手だ。

 2位にはバランスの良かった金子、3位糸賀、以下加勢田、上野、書間の順であった。
ジュニアの部1位・井上貴幸

ジュニアの部1位・井上貴幸

月刊ボディビルディング1992年10月号

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