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勝者の特性や傾向とは~オリンピアンに備わっている4つの傾向~

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掲載日:2016.08.31
ピラミッドの頂点にいるミスターオリンピアは成功や失敗を恐れたりはしない。なぜなら彼は自分自身が同期の原動力であることを学んでいるからだ。(マイク・メンツァー)

成功者たちの体験談を聞くことや、彼らの伝記を読んだり、多くのクライアントを見ていく中で、成功する人たちと失敗する人たちの特性や傾向を見出すことはできる。目標が高く大きなものとなり、達成が困難になればなるほどに、決意や志は強く大きくなるだろう。頂点に向かえば向かうほどに周りの選手たちのフィジカルやメンタルのレベルは必然的に高いものとなってゆく。そんな中で頂点を目指していくのであれば、成功者たちの特性や傾向について学ぶことは、あなたが道に迷ったり前に進めなくならないためにも、知っておいたほうが良いとは思わないだろうか?

マイク・メンツァーの著書の中で「これらがオリンピアン」というタイトルで、その特性や傾向を紹介した章がある。僕の見解を含めてそれらを紹介してみよう。

オリンピアンは上限を超越する

私たちの多くは、過去の記録(先人たちの使用重量や身体的なサイズなど)や自分の能力(自分自身が認識している素質など)と照らし合わせることで、頑張ってもこれぐらいが自分の限界だろうという感覚を、意識的にも無意識的にも持っている。しかし成功者たちは、上限を超越することが得意であった。彼らは上限というものは単に現在の自分が目標とするレベルに過ぎず、それは一時的なものであり、到達すればさらに上限は高いレベルに上がっていくことを知っているのだ。

つまり上限とは常に変化していくものであり、その先の限界というものは個人が認識しているよりもさらに高いレベルであり、常に上限を乗り越えようと努力し続け達成し、さらなる上限を目指すことで人間が潜在的に持つ無限の可能性を開発することが可能になる。成功者たちは現状で良しとせず、常に進化を求めさらなる向上を目指すのである。彼らにはこのような志向性があるので、より目的を深めていく能力を持つのである。

オリンピアンは(積極的思考・プラス思考)に焦点をあてる

普段私たちは、自分のミスや欠点、ボディビルで例えるならば身体的弱点などは悪いものとして捉えるのではないだろうか?しかし成功者たちはそれらを避けられない挑戦として捉える。現時点での弱点を克服するために努力を費やすことにより改善され、より完璧なフィジークへと近づいてゆけると考えるのだ。しかし多くのビルダー達はどうだろうか?彼らは素質や遺伝や運命という言葉を持ち出し、努力を放棄し進化を諦める。

僕のクライアントのコンテストビルダーAさんは、トレーニングが数か月間は満足にできないほどの大きな怪我を脚に負ってしまった。今期のコンテスト出場は絶望的。さぞかし落ち込んでいるのではと思ったが、そんな心配は必要なかった。


僕:脚の怪我はどんな状態?
Aさん:思ったよりも完治するまでに時間がかかるみたいですね。脚のトレーニングはしばらくできません。
僕:そうなんだ、怪我については自分はどう受け止めているの?
Aさん:怪我は後悔しても治りませんから(笑)それよりも今しか出来ないことを試せないかなと。
僕:どんなこと?
Aさん:上半身しかトレーニングができないので、回復のサイクルが全身トレーニングしているときよりももしかしたら早められるかもしれませんよね。
だから身体の回復の様子を見ながらトレーニングの頻度を上げてみることも出来るかなと思うんですよ。
それから、時間にも余裕ができるんで、普段できないフォーム練習なんかもやろうと思っています。


彼は状況を受け入れ、今だからこそ出来ることに焦点をあて、更にプラスの面も見出した。同じ状況でも次のように考える人もいるのではないだろうか?架空の人物Bさんに登場してもらおう。


僕:脚の怪我はどんな状態?
Bさん:思ったよりも完治するまでに時間がかかるみたいですね。脚のトレーニングはしばらくできません。
僕:そうなんだ、怪我については自分ではどう受け止めているの?
Bさん:本当についてない…今期は絶望的だし、そう思うと何もかもやる気が出なくて、上半身はできるけど、コンテストにも出場できないのならと思うと、なんだか気が乗らなくって…


同じ状況にあっても彼の様にネガティブな思考(消極的思考・悲観的思考・マイナス思考)が支配すると、やる気は失われ、悲観的な感情が支配してしまう。

マイクは次のように言っている。「自分の考えや姿勢をポジティブに持っていく能力は、生まれついてのものではない、オリンピアの選手たちが訓練して得るものなのだ。トップチャンピオンは実際、自分を成功に導く態度を作り上げるのだ。自分自身、考えや態度を見直すことを学び、そして何かネガティブなものと思えたときには、それを一度自分の心の中に沈めてしまい、ポジティブなものを作り上げようとするのだ。研究ではネガティブな考えは、さらにネガティブな考えを増長させるという事がわかっている。当然ポジティブな考えはポジティブな考えを増長させる。ポジティブを司るニューロン(神経細胞)は、もっともっとポジティブなニューロンを作り出す力を持っている。このポジティブな考えが続けば、その連鎖が起こり、身体を作るうえではポジティブな考えは重要な道具となるだろう。」

個人の性格や気質は、遺伝や環境によるものも大きいとも思うが、マイクはポジティブシンキングは訓練によっても開発されると言っている。この部分は僕も賛成だ。そしてポジティブシンキングの有用性が述べられてもいるが、僕はこうも考える。なにがなんでもポジティブに物事を考えようとする必要はない。もしも無理に感情を抑圧しネガティブな思考をポジティブな思考へ変換したとしても、あなたの無意識の領域ではネガティブな思考が影のように付きまとうだろう。

怪我をしたというマイナスの部分(ネガティブな部分)も受け入れながら、今だから出来ること(ポジティブな部分)を考えるAさんのような思考の傾向こそが、頂点を目指す競技者には求められるものではないだろうか?

オリンピアンはゴールを設定する

もしも何かを成し遂げたいと思うのなら、そしてあなたがボディビルダーならば、コンテストの優勝のような具体的な目標の設定が必要だ。そしてそれが自分自身の情熱を全て注ぐに値するものであり、目標達成を明確にイメージできるものであれば、チャンピオンになるために必要な強度でトレーニングをするためのメンタル面での準備が成されるだろう。

ゴールの設定に加え、ゴールに到達するまでのいくつかの中期や短期目標を設けることにより、あなたのやるべき事は明確化され、それらを達成することで、着実にゴールへ近づいている感覚を強く感じることができるだろう。具体的な目標設定の方法に関しては前回を参考にして欲しい。

オリンピアンは成功を受け入れる

勝者になるという事は、とても魅力的なことである。だからこそボディビルダーたちは目の前に立ちはだかる、どんな困難や障害にも打ち勝つことができるのだ。コンテストのレベルが上がるほどに、その戦いは激しさを増し、周りを見ればあなたと同様、もしくは更に逞しい肉体を持った猛者たちに取り囲まれる。

そんな中であなたが生き抜き、さらに前進して行くためには、「絶対に勝つんだ」という強い信念が不可欠となるだろう。そしてそれと同様に、客観的にあなた自身を評価する能力が重要となってくる。
ボディビルの世界をピラミッドで表すのなら、底辺の部分(あなたがボディビルを始めた頃)には、たくさんのビルダーがおり、あなたは段階をひとつずつクリアしてゆき、今の段階にいるわけだ。(頂点に近づけば近づくほどに人数は少なくなる)あなたは自分が今戦っているステージの敵を見て、もしかしたら「自分には彼らのような才能がないのかも…」と思うかもしれないが、あなたが既に戦い、勝ち抜いてきた段階に、多くのビルダーが存在しているのもまた事実なのだ(あなたよりも優れたビルダーが存在するように、あなたよりも低いステージのビルダーも存在する)
自分が今いるステージ(段階)を客観的に見ることで、あなた自身が成し遂げてきた成果を確認し受け入れることが出来るだろう。そういった自分自身の能力の正当な評価こそが、更にレベルの高いピラミッドの頂点での戦いに、あなたの気持ちを向かわせるのだ。

ボディビルのコンテストでは優勝を目指し、毎年たくさんの選手が1年間あるいはもっと長い年月をかけて造り上げた肉体を競い合う。だけども勝者は一人しか存在しない。2位以下は記録上敗者となるわけだ。もしもあなたが他者の評価をよりどころとし、優勝すること以外は意味が無いとするタイプの人ならば、あなたは努力に対する結果は得られなかったという事になる。

別のタイプの人達はどうだろうか?彼らは他者の評価は関係なく、自分自身がどのように進化できたかを評価の中心に置くので、順位や対外的な結果は二次的なものである。彼らは事故の成長を的確に分析し、自己の成長部分を肯定的に受け取り、次のチャレンジに向けての課題を明確化するだろう。同じ経験をしたとしても、物事の捉え方に違いがあれば、前述のように全く違った個人の経験として体験されるわけだ。

優勝という結果が得られなかったとしても、何も進歩がえられなかったという訳ではないのである。言うまでもなく、多くのチャンピオンたちは後者のタイプの人達なのだ。

マイクは次のように述べている。
「ピラミッドの頂点にいるミスターオリンピアは成功や失敗を恐れたりしない。なぜなら彼は、自分自身が動機の原動力であることを学んでいるからだ。自分自身と戦う事や、何か歴史といった抽象的なことと戦う術を身に付けているのだ。オリンピアンにとっての成功は勝ち負けなどによるものではなく、ましてコンテストに勝つことでの名声やトロフィーやお金ではない。

自分自身の自己評価を支えるためには、オリンピアンは自己実現者でなければならない。自己実現者とは内部のモチベーションに支えられているのだ。自分自身の内部を支配する欲求は、自己の能力や優勢な力をあらわす事で、成功に付きまとう日常の不安や、プレッシャーに対する免疫となるのだ」

オリンピアンは心の中で視覚化を行う

人間の脳は、詳細に視覚イメージされたものは、実際に体験されたものと区別することができないようだ。多くのオリンピックレベルのスポーツ選手たちはこの視覚イメージを使ったメンタルトレーニングを行っている。例えばフォーム練習などは、この視覚イメージを活用すれば、場所や時間を問わずいつでも行うことができ、実際に効果も上げることができるだろう。

マイクも現役時代に視覚イメージをよく行っていたようだ。夜ベッドに横たわった際に、天井をスクリーンに見立て、翌日のトレーニングをイメージ化し映し出す。それは本当に詳細な部分までも行っていたようで、各セット、各レップで如何に高重量を乗り越えていくのかまでもイメージしたようだ。(マイクのように寝る前にこれをやってしまうと、神経が昂り眠れなくなるかもしれないので、集中できる別の時間を取った方が良いだろう)

マイクは続けて、コンテストの前には自分が会場へ入場し優勝者としてコールされる瞬間までも詳細にイメージしたという。このようなイメージ化も効果的だという事がメンタルトレーニングの世界でも様々な分野のアスリートたちが行った結果として実証されているが、よりリアルな優勝のイメージを視覚化することにより、意識と無意識の両方の領域で、『打ち勝つ力』をより強固なものにすることは間違いないであろう。

多くの成功者たちは、このような作業をほぼ直感的に行っているというが、こういった能力は努力次第で引き出すことがいくらでもできるのだ。1日数分から数十分で、あなたの可能性が大きく広がるならば、やってみない手はないだろう。

以上、マイクの考えをもとに僕の見解を含め、勝者の特性や傾向について述べた。あなたの中にすでにある勝者の特性と傾向、そして欠けているものを見出すことはできただろうか?それらを改善することができたなら、あなたにもチャンピオンマインドが備わった事となる。

  • 肉体と精神究極のトレーニングバイブル ヘビーデューティーマインド
    2013年8月30日初版発行
    著者:小川淳
    監修:日本ハイインテンシティトレーニング協会(JHITA)
    発行人:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社
    編集:株式会社M.B.B.