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【JBBF審査委員会委員長 中尾尚志の目】第19回日本女子チャレンジカップ/第11回ミス21健康美大会

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中尾尚志(なかお・たかし) 1945年京都市生まれ (社)日本ボディビル連盟一級指導員・一級審査員 IFBB(国際ボディビルダーズ連盟)国際審査員、 日本体育施設協会トレーニング指導士 (社)日本ボディビル連盟専務理事 (社)日本ボディビル連盟審査委員会委員長 京都府ボディビル連盟理事長 アキレストップジム代表写真 本誌編集部[ 月刊ボディビルディング 2011年12月号 ]
掲載日:2017.05.29
記事画像1
関東方面への直撃こそまぬがれたものの、多方面にわたって甚大な被害を与えた台風12号は、ゆったりと、しかも広範囲に影響を及ぼしながら西に進路を変えて北上していた。時々強風が、思い出したように吹く東京は、比較的穏やかだったが、明日になって選手の欠場が出ないようにと祈るばかりの九月三日の夕刻のことである。日本女子チャレンジカップとミス21健康美は、日本社会人ボディビル連盟が主管する社団法人日本ボディビル連盟主催大会であり同時に、日本社会人ボディビル選手権も行われている。社会人選手権が男子一般の部20名、マスターズ40才50才60才65才以上級が合わせて26名、日本女子チャレンジカップが8名、そしてミス21健康美が、160cm級20名、164cm級8名、164cm超級が9名と総勢91名の参加者である。はたして台風の影響がどれくらい出るのか欠場者の数が気になるところであったが、社会人から1名、日本女子チャレンジカップから2名、そしてミス21健康美から1名と、心配するほどでもなかった。ただ、日本女子チャレンジカップから2名の欠場者が出たのは残念である。

日本女子チャレンジカップ

女子チャレンジカップ比較。左より間部、鈴木、深作、平岩

女子チャレンジカップ比較。左より間部、鈴木、深作、平岩

予選審査から始まった日本女子チャレンジカップは、2度の比較審査が行われた。ファーストコールは間部、鈴木、深作、平岩の4名。セカンドコールでは田岡、鈴木そして、常世田が呼ばれた。2度とも呼ばれた鈴木が、どのあたりなのかが興味深いところである。さて、今回は参加人数も少ないので、ポージングを重点的にレポートすることにする。

最初のリラックスポーズを見て、鈴木の姿勢の良さが目についた。ところが、フロントリラックスに入った途端両肩に力が入り過ぎて、せっかくのフレームの良さも半減してしまった。深作の立ち方も、両肩を意識し過ぎて肩甲骨を締めてしまい、上体の広がりを殺してしまっていた。

クォーターターンでは、サイドの時に膝を曲げたり、踵を浮かしたり、足を前後にしたりと間違った取り方が目立った。フロントでは、常世田の仁王立ちも気になった。ミスフィットネスやミスボディフィットネスほどクォーターターンは重要視されてないかもしれないが、同時に同じ動作をする場合は、やはり揃っていることが重要である。どの方向も比較的正確に出来ていたのは鈴木。しかし、水着のアンダー部の前を上げすぎて、臀部が下がって見えたのは今後改善の余地がある。平岩は手指の表情にももっと気を配ってほしい。

予選審査
●フロントダブルバイセブス
間部のポージングは、どれもバランスの良い取り方をしているが、このポーズでは、肘から先が前にたおれているところは直してほしい。深作のフロントダブルバイセプスのスタンスは、決して綺麗とは言えない。女性としては珍しくバスキュラリティに富んだ質感をもっているが、両膝を広げて構えてしまうと、やはり女性らしさは損なわれてしまう。常世田は、力みが両肩に出て脇から上が上がってしまっていた。鈴木は、自然な取り方が表情にま出て、見ている側にもリラックスした気分が伝わってくる。平岩もポーズは上手いが、少し姿勢に被りがある。気持ちを大きくもつことが必要ではないか!田岡もポーズは上手い方だが、どのポーズでも顎を引いているようにみえるところは要改良である。

●サイドチェスト
間部のサイドチェストは、両肩の位置が高く、首が埋まって見える。深作のサイドチェストは完璧である。常世田は、両肩の高さをかなり変えて男性的な取り方になっている。鈴木は全体像では悪くないが、肩の位置が両方とも高い。平岩はサイドチェストでもやはり被っている。もう少し胸部を広げた方が良いだろう。田岡のこのポーズは上手に取っていた。

●バックダブルバイセプス
間部はバランスの良い取り方で、躍動感すら感じる。深作のこのポーズは良くない。一つには両脚の揃っているところが安定感に欠ける。また、腰を反らし過ぎて背中の良さをつぶしてしまっていた。常世田のこのポーズは捻じれているためにどこも上手く見せられていない。仕上がりの良い背中を上手く見せている鈴木だが、スタンスはもう少し安定感のある広さにしてほしい。平岩のバックダブルバイセプスは、多分尻の締めすぎで上体が反り過ぎてしまったようだ。田岡も同様に反り過ぎから肩の位置まで高くなっていた。

●サイドトライセプス
このポーズは、上手に取っている選手が多かった。間部、深作、鈴木の3名である。常世田のこのポーズは、姿勢自体くの字になってアンバランスに見えた。その上肩の位置も高いところにあった。平岩は両肩が前に突き出てやはり被りの姿勢になっていた。田岡は正確に取っているのだが、重心が少し後方に移行していたところは直してほしい。

●アブドミナルアンドサイ
このポーズでは鈴木以外全員が、後ろへ倒れた姿勢になっていた。後ろ脚だけに重心をかけることで尻が自然と締まり、その結果上体が後ろにたおれてしまい、審査員に適格な角度で腹筋を見せることが出来なくなってしまっていた。鈴木は唯一バランスの良い取り方をしていたが、肝心の腹筋が見えていなかった。姿勢は悪かったが、腹筋が良かったのは深作。次いで田岡。常世田は筋量がある分、調整が不十分でも腹筋は見えていた。

規定ポーズの審査を終えて、審査員全員から1位票をもらったのは深作である。厳しい仕上がり、皮膚感も申し分なく、ポーズに対しても懸命さが感じ取れた。ここまでのトップは納得いくものであった。2位・3位はなかなか接近した配点で、ファイナルのフリーポーズ次第では面白くなりそうである。

ファイナル
間部はポーズの上手い選手である。滑らかで、一つ一つのポーズも正確にとれていたが、1分間をとおして晴れやかさが無かったように思えた。表情もその内であるが、気持ちにもう少し派手さがあっても良いと思う。

深作は、間部とは対照的に気持ちを前に出していくタイプである。フリーポーズになって安定感も増し、仕上がりの良さも強調されて比較審査の時とは比べものにならないポージングであった。

常世田のポーズは大半が男性的であり、スタンスの取り方にそれが表れている。男性的なポーズを女性らしくみせるのもポージングのテクニックである。

鈴木のポージングの正確さは評価できるが、ポーズを単調に決めている感じがする。全体の流れを考えてメリハリのあるルーティンを創ってほしい。

平岩は、一つずつのポーズをきっちりとって正確に決めていたが、選曲の激しさとポージングがマッチしていなかった。ポージングにあった曲を探してほしい。

フリーポーズになって体が良く見えだした田岡は、ポージングにメリハリがあり、今の自分を上手くアピールできていた。1分間という限られた中で、それぞれが工夫して臨んだフリーポーズではあるが、上手くいった選手もいれば思うようにいかなかった選手もいたと思う。一回の大会で学習できることはそんなに多くないかも知れないが、その積み重ねこそが大きな結果に結び付いて行くのである。

全ての審査員から満点の評価を得て深作がトップに、また間部も全員2位票で2番手につけた。1位と2位がこんなにはっきりしていることも珍しい。この結果は、2人にとって今後の課題となるだろう。鈴木も3位票が5票と大半の意見の一致を見て3位となった。平岩は選曲が違えばまたちがった見方をされたかも知れないし、鈴木よりもマッスル的に勝っていたところもあったように思う。対照的に、調整こそ今一つであったが、ポーズをとって体が良く見えたのが田岡である。マッスルでは多分一番バルキーであったと思われるが、最下位となった常世田こそ次はもっと調整して臨んでほしい。
女子チャレンジカップ

女子チャレンジカップ

ミス21健康美大会

今年のミス21健康美大会も、昨年同様160cm以下級、164cm以下級そして、164cm超級の3クラスで行われることになった。昨年も参加人数が多かった160cm以下級に、今年は20名の参加申し込みがあり、164cm以下級には8名、164cm超級にも9名と昨年よりかなり多くの出場者を迎えることとなった。

ミス21健康美大会も、本来ならミスボディフィットネス同様各クラス6名のファイナリストを選出するところであるが、160cm以下級の参加者が多く、なるべく多くの選手にチャンスを与えるようにとの配慮から、10名をピックアップすることにした。クラスによって参加者の数にバラつきが出るのはやむを得ないことであり、来年度には新たなクラス分けも選択肢の一つに考えなければならないかもしれない。このレポートでは、従来通り6名のピックアップを優先してお届けする。

ミスフィットネス並びにミス21健康美のピックアップラウンドとは、ピックアップI、ピックアップII共に、比較審査をした上でファイナリストを選出するものである。したがってここで行われる比較審査では、2度ともボーダーライン上の選手が比較されるということになる。

ピックアップI(ビキニ)
●160cm以下級

このクラスでは、比較審査に呼ばれたのは水野、古谷、丹野、谷川の4名だけである。ベスト6に残れそうなのは古谷だけか?丹野は、サイドでバランスのとれた線を出していたが、どこまで伸ばせるか。水野はバックポーズで上体を極端に前傾させてしまい、ピックアップIで残るのは難しそうである。谷川は、厳しい絞りの背中と比較して、調整不足の脚とのギャップがこの先どう評価されるかである。ピックアップされなかった選手では、礒野、築地、長島、土門、衛藤あたりは確実に残っていきそうだ。

●164cm以下級
ファーストコールで呼ばれたのは、石橋、鎗田、稲葉、楢崎の4名。セカンドコールでは、鎗田、中村、石橋そして、稲葉。ウエストのあたりのトレーニング不足のような中村、トレーニングは結構してそうだが、しなやかさに欠ける稲葉。この2選手は苦戦しそうである。無駄はないが少し丸みに欠ける楢崎の体をどう評価するかはかなり難しい。鎗田は若々しく健康そうに見えるが、下半身にトレーニング不足が見える。石橋は、生まれ持ってきれいなプロポーションは素晴らしいのだが、あまりトレーニングしているようには見えない。このクラスで確実に駒を進められそうなのは杉浦、大内そして、城戸の3選手だろう。

●164cm超級
ファーストコールは大島、木村、川島、櫻井。セカンドコールは木村、大島、川島、三宅。2度とも4名の比較となったが、2度とも呼ばれたのが、木村、川島、大島の3名。木村は肌の色さえもう少し何とかなったらと思ってしまうほど白過ぎる。アウトラインの良い川島はあと一歩のところであるが、サイドポーズでは棒立ちになっていた。あと下半身はもっと鍛えてほしい。大島は櫻井と同年齢だが、かえって溌剌としていて元気なのが素晴らしい。この3名では川島だけが3票を獲得。ピックアップ審査に呼ばれている櫻井と三宅は、はたしてこの先どのように評価されるのだろうか?

五井、安藤、丸山、山本は文句なし。五井は全体に厳しい調整ぶりを見せていたが、もう少し丸みがあってもと思う。安藤は自然体で臨んでいるかのようにすべてがスムースにすすんでいたが、サイドポーズのときの後ろの腕の位置に注意してほしい。丸山は特にサイドポーズが良く、表情も明るかった。山本はこの後どんな評価をうけるか想像しにくいが、私の見たところアウトライン、マッスル、調整ぶりにはかなり期待できるものが感じられた。一つ気になったのは表情に少し硬さがあったことである。

ピックアップII(ワンピース)
●160cm以下級

ファーストコールは谷川、大原、冨田の3名。バックポーズはきれいに決めていたのに、フロントポーズで胸を張り過ぎてしまい、おまけにサイドポーズでは反り過ぎていた大原と、サイドポーズで後方の腕が上がり過ぎていた冨田は、ピックアップIでは呼ばれていない。セカンドコールは水野、大原、佐藤、谷川。ピックアップIで呼ばれなかった佐藤は、サイドポーズできれいな線を出していたのに、フロントポーズになると肩を怒らせ過ぎてアウトラインを壊していた。

ここにきて大原のフロントとバックの立ち姿が良くなってきた。水野は柔軟性が感じられない。谷川は、バックポーズでことさらマッスルを強調し過ぎていた。

サードコールでは谷川、大原、冨田の3名が呼ばれた。冨田の可愛らしい雰囲気は良いとして、マッスル不足は否めない。

フォースコールになると水野、大原、佐藤、谷川の4名が呼ばれた。佐藤はフレームの大きな体でアピールはしていたが、健康美にしてももう少し絞った方が良いのではないか。4度の比較審査で、谷川・大原が共に4回。冨田と佐藤が2回コールされている。この回数がこの後どんな展開になっていくのか興味深いところである。

2度のピックアップ審査を勝ち抜いたのは、礒野、築地、古谷、長島、土門、衛藤。

●164cm以下級
比較されたのは楢崎、石橋そして、鎗田。この3名は、ピックアップIでもファーストコールで呼ばれている。しかし、今回この指名をした審査員は、多分に次のラウンドの順位付を意識したようにも思える。というのも、ここまでのところ中村と稲葉が、ファイナリストに食い込むには少々力不足と思われるからで、8名中6名のピックアップとなると、先の3名は、次に進める見込みがあるということになる。

クォーターターンのポーズは、ピックアップIで十分見てきたので、このクラスは規定ポーズについてチェックしてみよう。2つのピックアップをとおしてベスト6に入るには少々厳しいところにいる中村と稲葉。この2人は、規定ポーズでは正反対の評価をされることになる。規定ポーズをあまり正確に出来ない中村にたいして稲葉は、ベスト6の候補者よりかえって上手かったのではないか。ポージングとして無難にとっていたのは鎗田、杉浦、大内、城戸の4名。楢崎はどのポーズも肩の位置が高く、ことさら肩幅を狭く見せていた。石橋は、終始やさしい取り方で女性らしさを表現しょうとしていたのかも知れないが、力強さも少し入れてほしかった。

2回のピックアップ審査をフルマークできたのは杉浦、大内、城戸の3名だけ。このラウンドで比較された楢崎、鎗田、石橋の3名が、次の決勝審査でどんな結果を出すかが興味深いところである。

ピックアップIとピックアップIIで選ばれたのは、楢崎、鎗田、杉浦、大内、石橋、城戸。

●164cm超級
2つのピックアップ審査をとおして五井、安藤、丸山、山本の4名の決勝進出は決定的と見られた。そして、比較審査に指名されたのは三宅、櫻井、川島。となればこの中から1名が落とされることになる。アピールが上手かったのは川島、マッスル的では櫻井が背中で稼いでいたし、プロポーションでは三宅と三者三様である。結果は意外にも川島がワンポイントしか獲れなかったことである。

リラックスポーズを上手くとっていたのは五井、安藤、丸山、山本。規定ポーズの正確さは五井と山本。安藤はリラックスポーズ、規定ポーズ共に自然な取り方で、健康美大会のポージングのお手本のようだった。マッスルでアピールしていたのは五井と山本だが、五井のシャープに仕上げられた体は、はたして健康美大会向きか疑問が残る。安藤もショルダーラインと背中にきれいなマッスルをみせていたが、五井とは対照的に丸みがあった。山本もバランス良くマッスルのついた体だが、尖がった感じではない。丸山のサイドポーズはどちらも脚が伸びきっていたので、もう少し重心を下げるために両膝を曲げた方が良い。

決勝審査に臨むことになったのは、五井、安藤、丸山、山本、櫻井、三宅の6名。

決勝審査(パフォーマンス)
いよいよファイナルとなった。振り返ってみると決勝審査に残るには、やはり大会当日の仕上がり具合、言い換えれば、健康状態が良くなければならない。まして上位になろうとするならば、健康美大会といえども、ショルダーラインと背中にはトレーニングの跡を見せてほしい。それも丸みのある女性らしいものであって、決して絞り過ぎたり過度に発達したものではない。

決勝審査は、フリーパフォーマンスをとおしてベスト6に入賞した選手を見ていくことにする。
健康美160cm以下級

健康美160cm以下級

●160cm以下級
審査員全員が1位票を入れた土門が1位。ダイナミックな体にマッチしたポージングは、存在感を大きくさせていた。昨年優勝した時より十分に鍛えこまれた上での今年の勝利は、本人にとってそんなに重要なものではないと思われる。健康美を卒業しても目指すものはあると思うのだが。

2位礒野は、キビキビしたキレのある動きで、パフォーマンスを明るい雰囲気にしていた。上体に比べて大腿部をもう少し厳しく鍛えれば、全身からシャープさも表現できると思う。

3位衛藤。パフォーマンスの大半がボディビルのポージングであった。あと少しの調整でボディビルでも通用しそうな体は、重厚な感じにも見えたが、健康美大会用のアピールもほしかった。

4位の築地のフリーパフォーマンスは、キュートさのなかにも少しの滑稽さが味付けされて、とても楽しいものになっていた。体も健康美的に仕上げられていた。

5位には長島が選ばれた。躍動感のある大きなポーズが多く、ビルダーが好んで取るようなポージングを見ているようだった。

6位の古谷は、柔軟で広がりのある上体をうまくつかってのびのびとポージングしていたのが印象に残った。
健康美164cm以下級

健康美164cm以下級

●164cm以下級
1位は大内。決勝審査では、1名の審査員を除いてすべて1位をつけた。ボディビルのポーズに工夫をして独特の雰囲気を出しながら激しい動きをも上手くミックスさせていた。

2位は城戸。健康美大会らしいパフォーマンスは、上手く自身を表現していたが、上半身と下半身の仕上げかたに差があるように見えた。下半身にもう少し絞れた感じが出れば全体的なシャープさが出るのだが。

3位杉浦。パフォーマンスの間中笑顔で、ポーズもソフトな取り方が多かったのは悪くはないが、少し単調な感じになっていた。どこかにアピー
ルするポイントがほしかった。

4位には楢崎。体はかなり柔軟性があるように見えるのだが、ポーズは直線的であった。もう少ししなやかさのある動きがほしかった。ポーズとポーズの間の動きに一工夫を!

5位石橋。くにゃくにゃした動きが続くと思えば急に踊り出したり、パフォーマンスのルーティン自体に改良の余地があるようだ。2度のピックアップはあくまでもソフトで来ているので、見ている側が驚いてしまった。

6位には、初々しさの残るポージングの鎗田。ポージングそのものはそんなに悪くないが、どのポーズでも顔が同じ方向に向いていた。工夫すればもっと良くなるはずである。
健康美164cm超級

健康美164cm超級

●164cm超級
1位は安藤。体の線を上手く表現することに成功していたようだ。健康的な色気も感じさせる動きは、健康美大会の審査の基準をアピールしていたと言っても過言ではない。パフォーマンスも立ち居振る舞いも、昨年より自然な感じで良かった。

2位には五井が選ばれた。厳しすぎる仕上がりが、健康美大会には違和感すら感じられた2度のピックアップ審査であったが、パフォーマンスはそれらしく仕上げていた。ポーズも一つ一つしっかりととれていた。欲を言えば、床から離れている足にも気配りしてほしかった。

3位の丸山は、表情豊かなパフォーマンスに健康的な色気も加わって好感度を上げたようだ。体のバランスも良く、あと少しポージングを勉強すればもっと上の結果もついてくるのではないか。

4位になった山本は、バランスのとれた体にシンプルなポージングでアピールしていたが、どこか地味な印象を与えてしまう。表情が少し硬いせいもあるが、気持をもっと前に出していくべきである。体のレベルでいうと、トップになっても不思議でないくらいのものはもっている。

5位には三宅。上位4人と比べると少しレベルダウンと言われてもしょうがないだろう。プロポーションには恵まれているのだからもう少し努力してほしい。パフォーマンスでは、少し色気を出し過ぎかなと思われるような動きが続いた。パフォーマンスでもポージングでも、決めるところは決めなければならない。

6位櫻井。自分の背中がお気に入りのようで、その仕上がりの良さをアピールするかのように背中から入ったポーズのキメは上手かった。ビルダーでもあるから当然ともいえるが、ボディビルの時よりはもう少し表情をつくってみたらもっとアピールできたと思う。

全カテゴリーが終了し、ポーズダウン・表彰とすすみ、いよいよオーバーオールの審査となった。160cm以下級から土門、164cm以下級からは大内、そして164cm超級からは安藤と、各クラスの優勝者による総合優勝を決める時が迫ってきた。そして、栄えあるティアラは、164cm超級の安藤の頭上に収まったのである。
記事画像7
安藤の総合優勝は、健康美大会の結果としては納得のいくものであった。土門は、健康美よりミスボディフィットネスの頂上を目指すのが当然だろうし、大内は、健康美にしてはマッスルがかなりのレベルであり、土門同様ステップアップしてこそ力が発揮できるというものである。

極端に絞り込んでマッスルを強調することよりも、健康的で女性らしい丸みのある体が求められる健康美にあって、今日の安藤は、全てに当てはまる総合優勝であったと言える。しかし、間違ってもらっては困るのは、ミス21健康美大会は、社団法人日本ボディビル連盟によるものであり、単なる水着コンテストではない。

盛んになりつつある健康美大会が、この先ボディビル同様全国で開催され、日本中に大きな輪となって広がっていけば、こんな素晴らしいことはないと思う。
  • 中尾尚志(なかお・たかし)
    1945年京都市生まれ (社)日本ボディビル連盟一級指導員・一級審査員
    IFBB(国際ボディビルダーズ連盟)国際審査員、
    日本体育施設協会トレーニング指導士
    (社)日本ボディビル連盟専務理事
    (社)日本ボディビル連盟審査委員会委員長
    京都府ボディビル連盟理事長
    アキレストップジム代表

写真
本誌編集部
[ 月刊ボディビルディング 2011年12月号 ]

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