第46回 男子大阪
第29回 女子大阪
ボディビル選手権
9/23(日)エルおおさか
観戦レポート
大阪ボディビル連盟相談役 吉川雄士
Photo by Yasuharu Nakajima
[ 月刊ボディビルディング 2013年1月号 ]
掲載日:2017.08.14
収容人員3800人とある――。今では数少ない演歌番組を時々拝聴するが、歌を聴くのと同時に客の入り具合のチェックが目的である。そのホ―ルの満杯の様は真に見事のひと言であり、それは東京渋谷にある『NHKホール』のことである。ボディビル競技の性質上、万は望めずとも3800人は可能である。収容人員八百人の『エル大阪』をボディビルファンで満杯にしたい、それがささやかな私の夢である。そんな熱い思いを誌面を通じて少しでも観客動員に貢献できれば、と、その一心で今回も渾身のレポートを書くつもりである。
彼が見(魅)せるダブルバイセップスは細いウエストラインと相まってこの上もなく美しく、それは文字どおりボディビルの「華」であり、また、マスキュラーポーズでの荒々しいまでの「ド迫力」はまさに垂涎ものである――。
彼が見(魅)せるダブルバイセップスは細いウエストラインと相まってこの上もなく美しく、それは文字どおりボディビルの「華」であり、また、マスキュラーポーズでの荒々しいまでの「ド迫力」はまさに垂涎ものである――。
当然のことながら、先(6月)の大阪クラス別よりさらに精度を上げてきた感のある、そんな井上博樹がほぼ満票を集めて優勝。彼の最大の持ち味であるアウトラインの良さは相変わらず素晴らしく、仕上がりにも手抜かりのない今回、ラインナップ時点ですでに頭ひとつ抜けているかの印象であり、全くといっていいほど他者につけ入る隙を与えなかった。これまで若干弱さを感じさせていた背面からハムストリングスもこの数年次第に充実、彼の課題であった仕上がりと同様に成長の跡が感じられ、2位の佐藤に14ポイント差をつけてこのハイレベルの大阪で、これはもう圧勝といって良いだろう。今後全国区に羽ばたく時、さらなる筋密度の充実はもちろんのこと、観客を魅了できるべくポージングに対する探究心と研究心が深まれば、それはもう鬼に金棒である。
2位 佐藤 弘人(マッスル&ビューティー)
3位 玉井 正宏(イズミトレーニングセンター)
4 位 松岡 啓(スポーツジムB&F)
5位 榊原 貴裕(ナニワトレーニングセンター)
6位 西條 正太郎(スポーツジムB&F)
7位 仲本 智治(スポーツジムFLEX)
8位 田中 良一(スポーツジムB&F)
9位 大原 健吾(マグナムフィットネスセンター)
10 位 杉田 智哉(プラスワン)
11 位 泉 昌弘(スポーツジムB&F)
12 位 川辺 仁(マグナムフィットネスセンター)
井上に完敗ではあったが佐藤弘人は今や関西屈指のビルダーの地位を築きあげている。 それは日本クラシック優勝ですでに実証済みであり、今回も相変わらずの薄い皮膚感がディフニションの素晴らしさを演出すれば、手足の長さを生かしたスケールの大きなポージングはことの他ダイナミックであり、それはボディビルではハンデとも思える長身を全く感じさせず、今後増えてくるであろう長身選手の手本になることは間違いない。今回も「戴冠」を逸した玉井正宏がこの佐藤と大接戦を演じ、2ポイント差の3位でこれに続いている。フロントにもバックにもそのボディには重量感が溢れ、そのレベルはこの数年常に大阪優勝レベルであることに間違いなく、その実力はすでに万人が認めるところ。今回に限り、焼き込み不足なのか色が白く感じられたのは残念である。
完璧な仕上がりで素晴らしいポージングを披露した松岡啓が4位、フロントポーズではややブロッキー気味なのが影響したか、ピックアップでは驚きのロースコア、しかし深いカットでセパレートされた大腿部の迫力はもの凄く、それは胸部から上背にかけての厚味へとつながっている。
大方の期待を裏切った感の榊原貴裕、5位であった。前回(2位)の出来ばえから、165センチほどの身の丈にぎっしりと詰め込まれた“宝物”を期待したのであったが……次に期待したい。
やっと完璧かと思われる仕上がりを披露してくれた西條正太郎は6位、やはり絞りとバルクは「諸刃の剣」なのか、バルクが犠牲になったのはいうまでもない。7位以下には激励の辛口をまじえてひと言ずつ評しておきたい――。
恵まれたビルダー体型を持つ7位の仲本智治、成績にはやや不満が残るも如才のない仕上げには拍手をおくりたい。8位の田中良一、表彰台への「近道」はない。彼にあるのは脚部の充実のみである。九位の大原健吾は私的には多いに不満である。そのフレームの豊かさからもう「ひと皮」剥けると信じたい。10位の杉田智哉、30才である。この先を思う時「ふた皮」剥ける、いや、剥かねばならない将来が楽しみな選手である。11位の泉昌弘、クラス別の安定株もここに入るとやや苦しいか、彼も大原同様「ひと皮」剥かなければならない。
紹介が最後になった川辺仁、12位であった。そのコンディションの良さにはいつもながらに頭が下がる。そして彼は今回もまた、大阪ボディビル連盟の「優等生」であった。
完璧な仕上がりで素晴らしいポージングを披露した松岡啓が4位、フロントポーズではややブロッキー気味なのが影響したか、ピックアップでは驚きのロースコア、しかし深いカットでセパレートされた大腿部の迫力はもの凄く、それは胸部から上背にかけての厚味へとつながっている。
大方の期待を裏切った感の榊原貴裕、5位であった。前回(2位)の出来ばえから、165センチほどの身の丈にぎっしりと詰め込まれた“宝物”を期待したのであったが……次に期待したい。
やっと完璧かと思われる仕上がりを披露してくれた西條正太郎は6位、やはり絞りとバルクは「諸刃の剣」なのか、バルクが犠牲になったのはいうまでもない。7位以下には激励の辛口をまじえてひと言ずつ評しておきたい――。
恵まれたビルダー体型を持つ7位の仲本智治、成績にはやや不満が残るも如才のない仕上げには拍手をおくりたい。8位の田中良一、表彰台への「近道」はない。彼にあるのは脚部の充実のみである。九位の大原健吾は私的には多いに不満である。そのフレームの豊かさからもう「ひと皮」剥けると信じたい。10位の杉田智哉、30才である。この先を思う時「ふた皮」剥ける、いや、剥かねばならない将来が楽しみな選手である。11位の泉昌弘、クラス別の安定株もここに入るとやや苦しいか、彼も大原同様「ひと皮」剥かなければならない。
紹介が最後になった川辺仁、12位であった。そのコンディションの良さにはいつもながらに頭が下がる。そして彼は今回もまた、大阪ボディビル連盟の「優等生」であった。
女子大会 優勝 高橋 佐智代(ジャングルジム)
女子の優勝は高橋佐智代選手、まずまずの仕上がりではあった、が、大舞台(西日本・ジャパンオープンなど)での活躍を願う時、嫌われることを承知で辛口を呈さなければならない。数年前の大阪出場時に比べ、上体には明らかに成長の跡が見られるも、その時同様脚部の筋量不足は否めず、今一層の筋量アップに取り組まなければならない。その当時、パワーに転向するという彼女に激励のひと声をかけていたのを私は忘れていない――。
女子コンテストを振り返れば、二桁の出場選手で賑わった頃が懐かしく、今は競技としてはもはや成り立たない瀕死の状態である。関係者の一人として何もできない自分が悔しく、また恥ずかしくさえもある。フアンにも申し訳ない気持ちでいっぱいではあるが、今のところ「健全」な女子コンテストへの打開策が見当たらず、ただ頭を悩ませるばかりである。昨年に続き出場選手はこの高橋選手一名である。すべてを犠牲にして肉体造りに励み、ストイックな生活に明け暮れる女子選手の努力を無駄にしてはならない。大局的な観点からも、女子コンテストに関しては、大阪、京都、兵庫の三府県統合で協力してやるべき時期が来ているのではないかと思われる。遅きに失してはならない。これは急務である。
サッカーや水泳やゴルフで代表されるように、あらゆる分野での女子選手の活躍は目ざましく、「女子力」が世界を席巻する時代でもある。女子の参加のないスポーツの辿る道は、もはや消滅を待つのみなのである。これは後ろ向きではなく、限りなく前向きに、そして今後の女子のボディビルを憂う、私の素直で素朴で、そして当たり前の意見である。
女子コンテストを振り返れば、二桁の出場選手で賑わった頃が懐かしく、今は競技としてはもはや成り立たない瀕死の状態である。関係者の一人として何もできない自分が悔しく、また恥ずかしくさえもある。フアンにも申し訳ない気持ちでいっぱいではあるが、今のところ「健全」な女子コンテストへの打開策が見当たらず、ただ頭を悩ませるばかりである。昨年に続き出場選手はこの高橋選手一名である。すべてを犠牲にして肉体造りに励み、ストイックな生活に明け暮れる女子選手の努力を無駄にしてはならない。大局的な観点からも、女子コンテストに関しては、大阪、京都、兵庫の三府県統合で協力してやるべき時期が来ているのではないかと思われる。遅きに失してはならない。これは急務である。
サッカーや水泳やゴルフで代表されるように、あらゆる分野での女子選手の活躍は目ざましく、「女子力」が世界を席巻する時代でもある。女子の参加のないスポーツの辿る道は、もはや消滅を待つのみなのである。これは後ろ向きではなく、限りなく前向きに、そして今後の女子のボディビルを憂う、私の素直で素朴で、そして当たり前の意見である。
[ 月刊ボディビルディング 2013年1月号 ]
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