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【屈強インタビュー】#4 ジャック梶田 “自分の答えをオーダーメイドせよ”

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掲載日:2020.12.24
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AJAFオールジャパンアームレスリング80kg級A2レフト優勝、NPCJダイアモンドカップ優勝の経験を持ちプロカードの取得を目指し日々鍛錬に励む“ジャック”梶田氏に、トレーニングにおいて成長していくための考え方や日々の取り組みを伺った。
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“ジャック”は愛犬の名前で、一年くらい前からジャック梶田と名乗っています。
“ジュラシック”木澤さんとか、“ポパイ”関根さんのように、みんな特徴的なボディビルネームというか愛称みたいなものがあって、印象付けのために仲間内で相談して決めました。

トレーニングメニュー

あまり固定したメニューを続けずに大体1〜2ヶ月でメニューを変更します。ルーティーンや分割法もわりと頻繁に変わります。

今年の初めは下記の4分割でした。
①胸と二頭
②背中
③肩と三頭
④足

今ではまた分割が変わって、上記のメニューから上半身は変わらずに足を前面と後面に分けて5分割にしています。トレーニングには正解がないので自分なりの正解を未だ探している状態です。

あまりにメニューの変更が早すぎても重量の伸びがわかりにくくなってしまうので1ヶ月単位で変えるようにはしています。筋肉を破壊する以外にも、様々なストレスを与えていろいろな角度からのアプローチをやっていかないと頭打ちになってしまうかと思います。

自分の答えをオーダーメイドせよ

種目の「効く効かない」に関してネット界隈でもよく目にしますが、そもそも効くとは何でしょうか。
筋肉が収縮していれば効いている感じがあるという人もいるくらい“効く“ということは主観的な部分が多くあります。もし仮に”効く“ことを「筋肥大を目的として効果的な種目」という意味で扱うのであれば、自分の場合はフラットのベンチプレスが効きにくい。
僕は胸の筋肉が高い位置についているので、それに合わせてバーベルを下ろすと肩に刺激が入ったり、肘が上がりやすくなったりしてしまいます。うまく工夫すればしっかりと刺激を入れられますが、強いて言えばそんなところです。

答えは人によって全然違うので、あの人が良いと言ったから自分にとっても良いものとは限らない。ネットだと「これさえやっておけばいい」という安直な情報もありますが、実際はそんなに単純なものではありません。ネットは個人に情報を合わせていないので、自分の答えをオーダーメイドしないといけない。特に、若かったり歴が浅い人はパーソナルトレーニング等を受けて自分にあったメニューや弱点を見つけていかないと壁に当たってしまうかと思います。
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デカくするための工夫

解剖学的に正しい動きをすることと、自分に合ったものを探していくこと。あとは基本的な部分で言えばやはり重量を伸ばしていくこと。一言で「重量を伸ばす」と言っても闇雲に重量だけを追い求めるのではなく、適切な動作を行なった上で伸ばしていくことも重要です。

例えばフラットのベンチプレスでブリッジが強すぎると、フラットのベンチプレスではなくデクラインプレスに近くなります。これでは別の種目になってしまう。
ダンベルフライにしても、肘が曲がりすぎて腕で上げてしまっている人も見かけます。ダンベルプレスに近いような形で。そうではなく、しっかりと「ダンベルフライ」で重量を伸ばすべきではないかと思います。全身を使うことも大事ですが、目的を逸脱しないように種目として成り立たせることも大切です。

トレーニング中の意識

目的をはっきりさせるようにしています。
例えば背中の日であれば、今やっている種目は僧帽筋の中部なのか、広背筋の下部なのか。

あとは先ほど重量を伸ばしていくことが大事と言いましたが「バーン(burn)」と呼ばれる筋肉が焼けるような感じのストレスを与えたりなど、重量を伸ばしていく以外にも筋肥大の方法はあります。なので、どんな刺激を与えてアプローチをしているかという点も意識するようにしています。

食事に関して

増量期に関してはオーバーカロリーを意識して、基礎代謝+運動量で使ったエネルギー量を越すようには心がけています。増量期では最低4000〜5000kcalを目安にしています。サプリを活用したり飲み物にマルトデキストリンを入れたりもしますが、僕はほとんど食事から摂ります。増量期も減量期もタンパク質の摂取量はあまり変わらず、体重×2〜3g程度です。

カロリーの調整は炭水化物の量で変化させています。
減量期の序盤はなるべく筋肉量を残して進めて、最終的にはローカロリーになってしまいますがとにかくいきなり削らないことを留意しています。

増量期は牛肉、パスタ、米を摂ることが多いです。
自分はけっこう料理をするので、あんかけ等をご飯にかけて流し込みやすくして食べることもあります。咀嚼が多いと疲れてしまうので、挽き肉を片栗粉であんかけにして丼に乗せて食べるのがおすすめです。楽に作れて栄養価も高く、量も取れます。なにより、食事は美味しく食べたいので。

サプリの活用

昔はもっと多くの種類を摂っていましたが、最近はしっかり効果のあるものに絞って摂っています。

EAA パープルラース


自分はトレーニングの2時間くらい前から食事を摂らないようにしています。消化不良を起こしたり、血液が内臓に行くことでパンプしにくい等のいろんな理由があります。
さらにトレーニング前の2時間とトレーニング中の2時間程食事をしないことで4時間食事を摂れないことになります。そのため、栄養摂取の意味でトレーニング中にEAAやマルトデキストリンを摂っています。マルトデキストリンは特に減量期に体感が高いです。
足のトレーニング等だと筋肉に血が行ってしまって胃が動きにくい感じがある。トレーニング後の食事が摂りにくいためプロテインを飲んでいます。

プロテインはマイプロテインを飲んでいます。単純に安いので。
今はナチュラルチョコレート味を飲んでいますが、マイプロは味に当たり外れがある気がします。いろいろ試しましたがチョコレート系やイチゴ系は美味しいです。


個人的にあまり好きでなかったのはマジパン味。名前もよくわからない感じです。調べてみたら、ケーキに乗ってるサンタさんとかの形に加工されたお菓子のことを言うらしいです。
当時マイプロテインのチームメイトだったのでどんな味か知っておかないと紹介できないと思って買って飲んでみたところ、良く言えば杏仁豆腐、悪く言えばシンナーみたいな味がしました。
※補足:マジパン(マルチパンとも言う)は砂糖とアーモンドを挽いて練りあわせた、餡のような食感と独特の風味がある洋菓子、とのこと。


その後、マイプロテインは自分の方から離れました。マジパンが口に合わなかったからではないです。サロン等でいろいろな情報を発信していく中で一つのメーカーさんだけに肩入れをしてしまって、他のメーカーさんの情報に偏りが出てしまうのが良くないと思って。「中立的な立場になりたいので」とお伝えして抜けさせて頂きました。

あとはクレアチンモノハイドレード、マルトデキストリン、マルチビタミンを摂っています。

初期から方向性の転換

自分がトレーニングを始めたのは高校生の時でした。
その時は何もわからなかったのでとりあえずジムにあるマシンを動かして、分割もわからないので筋肉痛がなければやる感じでした。その後、ボディビル雑誌を見て段々と知識を身につけていきました。

食事に関しても知識が全くありませんでした。
アメリカ人はマッチョなイメージがあって、アメリカ人と同じ食事をすればマッチョになれると思っていたので、トレーニングが終わったらジムの近くのマックでハンバーガーを食べていました。結果としてカロリーは稼げたので良いと思っています。10年くらい前はそんな感じでした。そこからは書籍を読んだり他の人の意見を聞いたりパーソナルトレーニングを受けたりして徐々に知識を増やしていきました。

最近の発見

ここ数年ですが、サロン等で使うために自分の動画を撮るようになりました。
動画を見ると、1セットあたり20秒ほどで終わってしまっていることに気づきました。筋肉の緊張時間が20秒というのは短すぎて良くないと思って、1セットあたりの緊張時間を30〜40秒程かけるようにしました。回数や速さを調整して、止めるところは止めて、緊張させた状態での時間を伸ばすように。

あとは昔からの怪我により体の歪みがあります。スクワットにしても、最初は良いのですが疲労してくると捻りながら上げてしまって、それで余計に腰にストレスをかけてしまう。
これらは長い目で見ていかないと改善しにくいものだと思いますが、そこに気付くことができたのでこれからの課題にしていきます。

今後の方向性

ボディビルで結果を出していくにあたって、まずは体のサイズをデカくすること。さらにはカットや密度も、皮膚の薄さも出す。まだ10kg以上も増やさないといけませんが、最終的にはコンテストに出れるくらいまで絞った状態で96kgまで持っていきたいです。

成績としての目標はまずプロカードを取ること、次にプロコンテストで勝つこと。世界各地の大会も出ていきたいですし、将来的な目標はニューヨークプロという大きな大会で勝つこと。
ボディビルの試合にでてもう8年目くらいになって、減量のやり方にも慣れてきました。未だにステージでは緊張しますが楽しくやっています。

ファンにひとこと

よくボディビルはいろいろ犠牲にすると言いますが、犠牲にするよりはボディビルで人生を豊かにできるようにしたほうが良い。失うものばかりでなく得るものも多くあるので、そういった部分で希望を持ってもらえればと思います。
あとは体を鍛えてデカくなってくると気が大きくなります。力の強さをアピールしたいというのもあってか、粗暴な振る舞いやマナーが良くない人も見かけます。今後デカくなって注目を浴びた時に痛い目をみてしまうので、日頃のマナーや周りへの気遣いは怠らないようにしておくことをオススメします。

取材・文 せきぐち