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【屈強インタビュー】♯5 泉風雅 "枝ではなく幹を育てよ"

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掲載日:2020.12.29
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2017年関東学生ボディビル優勝/全日本学生ボディビル優勝、2018年JOC日本ジュニアボディビル選手権優勝/関東学生ボディビル準優勝/全日本学生ボディビル準優勝等多くの実績を持つ泉風雅氏に、日頃のトレーニングに対する取り組みや考え方を伺った。

普段の生活や仕事に関して

大学院試験で失敗して就職浪人のような形で、現在は新しくエニタイム西蒲田店でのパーソナルトレーニングの開始に伴ってトレーニング指導を勉強中です。最近はトレーニングについて考える時間が多く確保できています。

今は実家暮らしなので生活に困ることはありませんが、他にはトレーニング理論をnoteで発信して収入を得たり、オンラインでバーベルクラブのOBや先輩にトレーニングを教えてたりしています。特にnoteは思っていた以上に多きな反響があり驚きました。

今までは選手としてのみやっていましたが、トレーナーになるといろんな人を指導するので今までと少し方向性も変わって来ます。
選手でも一般のボディメイクでも、それぞれの目的に合わせて時間、効率など優先順位をつけてメニューを作って行かなくてはなりません。選手としての実績とトレーナーとしての能力は別物だと思いますが、ボディメイクコンテストで勝ちたいという方も多いと思いますので、そういった場合には特に選手としての経験が活かせるかと思います。

日頃のトレーニングメニュー

基本的には胸/腕、背中/肩、脚の三分割です。

胸 
・ベンチプレスorディップス 
・ダンベルプルオーバー
・インクラインプレス

今年の9月頃から弱点である胸を重点的に強化しています。
かなりのスピードでの成長を感じていますが、全体のバランスとしてはまだまだなので突き詰めていきたいです。
中でもダンベルプルオーバーはかなり重視している種目です。ベンチプレスは胸だけを狙うというよりはビッグ3の重量を伸ばすという点と全身を使うイメージでやりますが、感覚的にはディップスの方が良いです。


二頭筋はマシンのインクラインカールかプリ―チャーカールを日によって交互くらいに。三頭筋はケーブルプレスダウンかマシンでのトライセプスエクステンションをやっています。以前はバーを使ってのライイングエクステンションもやっていましたが、三頭筋はプルオーバーでけっこう使ってしまうので良いかなと。

背中
・デッドリフト
・ローイング系種目 
・ダンベルローイング
・プルダウン系 
・チンニングかラットプルダウン

背中に関してはノーチラスのミッドローというマシンが好きです。人によって好みもあると思いますが、このマシンは弧を描かずに真っすぐ引けるので肩甲骨を寄せやすくて引っ張りやすいです。最近、デッドリフトは股関節が痛くてできていない時もあります。


・サイドレイズ
・リアレイズ

最近は胸を最優先で強化中です。胸の種目で肩のフロントを使ってしまうので、肩のフロントだけを狙った種目はやっていません。同様の理由でショルダープレスも控えています。


・スクワット
・ランジ
・レッグエクステンション
・プローンレッグカール
・スティフドレッグデッドリフト

今は一種目につき大体6セットくらいでやっています。
先程とも重なりますが股関節が痛くてできていない種目もあります。三分割とは言っていますが胸を最優先にしているので、胸が回復したら背中と脚の間に差し込むこともあります。
2017年 第52回全日本学生ボディビル選手権より

2017年 第52回全日本学生ボディビル選手権より

効く効かないの前にまず身体を整えて準備せよ

効く効かないに関しては持論があって、効かないと種目を変えてしまう人もいますが、まずはしっかりと目的の部位に刺激を入れられるだけの体の機能を整えておいた方が良いと思っています。
効く、効かないを論じる前に効かせられるだけの体の準備(アライメント(姿勢)・機能面など)ができているかが重要です。前提となる機能的な身体がないと、動作を分離したりタイミングをずらして「効かせる」ということはできません。

まず最初の段階で、トレーニングをしっかりと行うためのトレーニング(レディネス:readiness)や体づくりが先に来るべきかなと。そこからようやくやりにくい種目が出てくるので、多くの場合で結論が早すぎるように思います。

理想はアライメントや機能面などが整った「効く身体」を作って、思い切り力を出せば「勝手に入る」という状態を作ること。その状態が作れたらわざわざ「効かせる」なんてことを意識せずとも、重量を伸ばしていくことだけに集中できる。

その中で骨格等によって得意な種目と不得意な種目が出てくることもあると思います。たとえば胸で、自分の場合はフラットのプレスが苦手なので角度をつけた種目やプルオーバーなどの種目を積極的に行うようにしています。

そういった考え方もあって、自分のトレーニング前のアップは動かしたい部位や動作によって優先順位をつけて変えています。もちろんアップは全身やっても良いのですが、時間効率を考えるとやはりある程度の優先順位をつけることも必要だと思います。

「効かせる」トレーニングだけで到達できるサイズに限界を感じた

先ほども言った通り、種目によって効く感じがする/しないというのはありますが「この種目が効かないのはなぜだろう?」ということを考え、根本的にアプローチすることが重要です。
種目をとっかえひっかえして「効く感じがするからこの種目をしている」というのは本質的な成長につながらない。また「効く感覚=収縮感」と感じている人も多くいるように思います。
たとえばフェイスプルは重量をずっと伸ばしていくことが難しい種目です。そういった意味で上級者はバーベルやダンベルを使って安定した体勢で行うベーシックな種目に落ち着いてきます。

自分も結局は重量を伸ばしていくという方向で落ち着いています。今JBBFの上のほうにいる人達がベーシックな種目で重量を伸ばすことを重要視していることにもすごく納得ができます。
まずは重量を伸ばしていけるベーシックな種目をキチンと行える身体を作ることが重要で、ウェイトトレーニングのための身体的素養づくりのようなものを重視すべきだと思います。

この考え方に至ったのは自分がこれまでに行っていた「効かせるトレーニング」だけで到達できるサイズに限界を感じたことが大きいです。もうこれ以上デカくなる感じがしませんでした。

「効かせる」トレーニングだけだとツケが来る

効かせるトレーニングは応用技みたいなもので、ウェイトトレーニングの基本は重さを扱うことが大前提。そこから足りない部分を補うという意味で「効かせる」トレーニングがやっと出てくるものだと思っています。
「効かせる」トレーニングはわざと弱い形をつくっているとも考えることもできます。
重量を伸ばしていけないし、元となるサイズも伸ばせないように思います。そう言った点からもやはり重量を伸ばすという点に帰結します。この考え方はバーベルクラブの先輩と話していて「やっぱりそうだよね」と落ち着き、全身を使うベーシックな種目に戻って来ました。

あとは、効かせるトレーニングばかりやっていると機能的な問題が出て来てツケが来ます。
例えばハムにばかり効かせるトレーニングを行うことで大殿筋が使いにくくなってきます。ハムが大臀筋に対して強くなりすぎることで股関節を作る大腿骨の動きが悪くなって、機能的な問題や痛みにつながります。そういったトレーニングを続けたことによる身体の機能性の足りなさも感じていて、いま現在ツケを払わされています。それらの改善も自分自身の重要な課題の一つです。
2018年関東学生ボディビル選手権

2018年関東学生ボディビル選手権

トレーニング中に意識している事

トレーニング中はとにかく力を出すことに集中しています。動作やフォームを意識しすぎると発揮できる力が落ちてしまうので、そのためのウォームアップや感覚のキャリブレーション(較正)は大切にしたいです。
フォームに関しても元々姿勢が良くない人がトレーニング中に良くしようとしても不自然になってしまうし、フォームを意識した状態では脳の仕事量を奪われることで高い力も出しにくくなってしまう。例えばピッチャーが毎回肘や肩の角度を考えて投げるということがないように、高いパフォーマンスを発揮するためには運動を自動化していくことが大事だと思います。

フォームや運動そのものについて考えていくとどんどん分からなくなっていくことも多くあります。「この部分は変えたほうが良いな」という修正点があった場合には介入することもありますが、それを自然に身につけて行える方法を探していくことが重要です。

トレーニング中は本番なわけです。トレーニング中に「こうしたほうがいいな」的な発見をするときもありますが、重量を持たずにチマチマと「これがいいかな、いやこっちがいいかな」という手探り状態になることは避けたほうが無難だと思います。
トレーニング歴が長くなるにつれて動きが自動化されてきたというのもあって、深く意識しなくても動作やフォームを確保できるようになってきたので、シンプルに高い力を出すということに注力しています。

全体のボリュームを確保せよ

トレーニングでは重量を扱うことはもちろん、ボリュームを確保することもすごく重要です。
もちろんやろうと思えば毎回全力全開のトレーニングを行うこともできますが、10レップをギリギリで終えた次のセットでもう一度10レップをこなすことは難しくて、6レップできるかできないかくらいになってしまいます。
最後のレップを粘りすぎると中枢からの抑制が働いて次セットのレップが落ちてしまって全体のトレーニングボリュームを損ねてしまい、量を確保することが難しくなってしまう。
これはRPEやRIR等という言い方をするみたいで、これもバーベルクラブの先輩から聞きました。こういった考え方をnoteにまとめたところ非常に大きな反響を頂きまして嬉しく思います。

日頃の食事で意識していること

かなり厳密に管理していたこともありましたが、今は割とゆるく1日5~6食程度です。パスタ等もカルボナーラソースで食べたりするし、精神面の充足感もある。
極端に張り詰めすぎてスポーツ選手のうつ病といわれることもあるオーバートレーニング症候群に陥ってしまって、3か月程度トレーニングを休止せざるを得ない状態になったことがあります。

完全に何のやる気も起きない。
大会のシーズン中から終盤にかけて特に精神状態が悪く、早く解放されたいと思っていました。
その3ヶ月間は一切トレーニングができない状態で、鬱に関する文献を読んだりひたすらアニメを観たり一人で旅行して過ごしていました。学生だったので何もしない期間を自由に取れた事に関しては良かったです。超えられて本当に良かったと思います。オーバートレーニング症候群を乗り越えて精神面やモチベーションのコントロールも非常に重要だと思うようになりました。

結局、思いつめるタイプが燃え尽きやすいんだと思います。オーバートレーニングには「視床下部-脳下垂体説」というのがあって、これは外からの刺激を受けて環境に適応する中枢部分の機能がうまくいかずにバグが起きてしまうというような説です。トップ選手の中にはオーバートレーニングに関して否定的な見解の方もいますが、自分は間違いなくあると思います。

そういった経緯があって、精神的に張り詰めすぎないように楽しめる範囲に留めるという事は常に考えるようになりました。だからといって「楽しむ」と「本気でやる」は別のことではないので、ちゃんとやることはやっていると強調しておきたいです。

最近はそこまで積極的に増量を意識していません。
先日、相澤隼人選手とも話したことなのですが、極端にたくさん食べすぎると気分や体調が悪くなることがあります。
もちろん気合を入れて増量を狙うこと自体は大事だと思いますがトレーニング歴が6年ほどになってきて、大増量をしたところでそれに見合うほど筋肉量が伸ばせるかというとそうでもない感じがあります。今は安定した体重の中で伸ばしていけていますし、精神的な安定感やモチベーションも保ちやすいので良いかなと。

ただ最近は“ビートル“榎本選手の体重が90kgと聞いて焦りました。本当に日本屈指になっているのではないでしょうか。同じ身長なのにこんなに差があっていいのかと増量に揺らいでいます。ジムにいても「この人自分よりデカいな」と思うことは多々あります。大会に出ていないだけで、自分よりデカい人はたくさんいます。

摂っているサプリ

大会に出る時に提出するドーピングチェックのシートに使用しているサプリを書く欄があるんですが、JADAの人に「こんなに飲んでる人は初めて見た」と言われるくらいにかなり多くの種類を飲んでいましたが、この2年間で物事をシンプルに考えるようになり種類は減りました。
現在はプロテイン、クレアチン、トレーニング中のBCAA、マルチビタミンミネラル、ビタミンDのみです。

プロテインに特にこだわりはなく、その時に安いものや気分に合わせて買っています。
美味しさに関して感想を言うならばビーレジェンドのプロテインはは何を飲んでも美味かったです。特に波動拳味が好きで、秋頃に季節限定で出る甘栗味も好きです。



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BCAAに関しては今まで使っていたブランドが二度目の混入事件を引き起こしてしまい信頼が揺らいだので、最近は手探り状態でBSNのアミノエックスを試している状態です。

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アニマルパックは粉末のマルチビタミン/ミネラルなのでビルダー飲みができて、インフォームドチョイスも取っています。

ビタミンDは実際にどれだけ効果があるかはわかりませんが、筋サテライト細胞の筋繊維への分化を促進すると言われているので試しているところです。
あとはコロナ対策です。ビタミンDが上気道感染のリスクを低減させたり重症化を防ぐという文献があったので家族共々飲んでいます。ビタミンDはトランプ大統領のコロナ治療中に投与されたことでニュースになりました。

極論で変な方向に走るな

以前に比べてかなり物事をシンプルに考えるようになりました。難しいことを考えなければいけないときもありますが、考えすぎて変な方向に走ったり、極論に偏らないことが重要だと感じます。
やはり基礎の徹底。基礎から外れ過ぎた応用は疑う。シンプルに考えるようになったことで自分がすべきこと、優先度の高いことに集中できるようになりました。

いろんな情報が出てくる中で、いろいろ試行錯誤することは良いと思います。ただ、それらの中で変な方向に走ってしまう人が多い気がします。僕もそういう時期がありましたが、結局は基礎の徹底が一番という結論に行きつきました。

木の枝よりも幹。細かい部分ばかりやりこむよりも、同じ熱量で幹の部分を育てたほうが成長が早い。先にやるべき部分がある。そこを見失わないほうが良いと思います。
効果があることに集中して、なるべくシンプルにした方が良い。成長することが目的なのに細かいことをやる自分やその過程に酔っていては本末転倒です。
2018年 第53回全日本学生ボディビル選手権大会

2018年 第53回全日本学生ボディビル選手権大会

並のマッチョではなく突き抜けたマッチョになるために

有識者の提唱する理論を盲目的に鵜呑みにしてボリュームやセット数を減らしていた時もありました。別に悪い結果にはならなかったですが、それでも長くトレーニングを行なって経験を積んでくると最終的にはボリュームがないといけないという結論に達しました。
初級者や初心者のようにやり始めて間もない頃は少ないセットでも良いと思いますが、ある程度しっかりトレーニングを行っていると伸びにくくなって頭打ちになってくる。

もちろん、これらは各々の目的次第だと思います。僕の目的は並のマッチョではなく、突き抜けたマッチョになること。それを考えたときに結論を急いでしまったなと。

サプリに関してもそうです。先ほど言った通り、多数のサプリをいろいろ試してみたりもしましたが、結果としてサプリにこだわりを持ち過ぎてしまった。もっと優先してお金をかけるべきところが他にもあったと思います。
その期間を経たおかげで多くのサプリを経験できましたし詳しく知ることができたと思うので無駄ではなかったとは思います。しかし、皆には同じような回り道をしてほしくないとも思います。

ちなみに、こういった時期が先述のオーバートレーニングでメンタルがやられていた時期とも重なります。今改めて思い起こすと正常ではなかった感じもあります。不安定な自分の中で軸や方向性を定めるように、なにかすがるものが欲しかったんだと思います。

最近のモチベーション

身長もよく似た年下の"ビートル"榎本君がデカイデカイという話を聞く事でモチベーションをもらってます。直接は会っていませんが、もうライバルとは言えないくらい本当に突き放されている感じがあります。ジュニア選手権で一度勝っていると思うと負けていられません。そういった高め合える選手がいるということはありがたいことです。カメが歩みを休めるわけにはいかないので、ゆっくりでも着実に成長していこうと思います。

今後の目標に関して、第一段階はミスター東京優勝。第二段階は日本選手権ファイナリスト。最終段階は日本選手権優勝でしょうか。その頃には「次は世界優勝!」と言っていると思います。

ファンに伝えたいこと、ひとこと

コロナ禍で苦労しましたがようやくジムにて指導を行える環境が整いましたので、足を運んでいる方がいたら全力でサポートしたいと考えております。バーベルクラブの部内で教えることはありましたが、オープンな環境でお金を頂いての指導は初めてです。

情報過多の時代ですが、シンプルに基本や基礎という軸を見失わずに情報を取捨選択してほしいと思います。また、自分のnote等においての発信がその一助になれば嬉しく思います。
トレーニングに関して気を詰めすぎず、皆さんが楽しくトレーニングを行えていることを願います。

取材・文 せきぐち
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