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【屈強インタビュー】#7 "昆虫が理想、昆虫になりたい" ビートル榎本

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掲載日:2021.01.19
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2018年全日本ジュニアボディビル選手権2位、2019年東京クラス別選手権75kg超級1位等の実績を持ち、トレーニング界では先駆けとなる昆虫食にも造詣の深い榎本星矢氏。「2020年に最も成長した選手」とも評される同氏に成長の秘訣を伺った。

普段の生活や仕事に関して

今はエニタイム早稲田店で働いてます。そこで筋トレする時もありましたが、最近は再入会した行徳のゴールドジムでトレーニングしています。
自分はまだエニタイムでパーソナルトレーニングをする事ができないので通常業務のみ行い、パーソナルの指導は他のジムで行うことが多いです。

筋トレを始めたのは昆虫採集のため

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バーベルは高校のウェイトリフティング部に入ったときに初めて握りました。
自重の筋トレは中学3年生の頃からやっていましたが、筋トレが好きでトレーニングを行っていたというより元々は昆虫採集の目的でした。

昔から昆虫が好きでした。冬は昆虫が朽木の中に冬眠しているので朽木を斧で割ることで幼虫を採取するのですが、斧も重たいしすごく疲れるのでその体力をつけるために筋トレをはじめました。自重トレーニングの他、学校にあった古いタイヤを丈夫な太い木で昼休みに友人と叩いたりもしました。

そこから筋トレ方法を調べていくうちにボディビルダーの存在を知って、自分の理想に近い体だったので目指していくようになりました。黒くて大きくてバキバキでかっこいい。コーカサスオオカブトと共通する部分があります。コーカサスオオカブトが理想です。コーカサスオオカブトのような体を目指していますがまだ理想には届きません。
コーカサスオオカブト

コーカサスオオカブト

日頃のトレーニングメニュー

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自分の場合は固定のメニューがなく、一つの部位に対して週一で刺激できれば良いかと思っています。
以前は一つの部位に対して週2ほどで刺激を入れていたのですが、重量や強度が高くなったせいか同じ部位に週2回のトレーニングをやるとパフォーマンスが停滞する感じがあったので、最近は一つの部位に対して週1に変更しました。

しっかりと高重量を扱って高い力を出すためにも疲労が完全に抜けてからトレーニングを行うようにしています。筋肉の張りが落ちたからやらなければいけないということもありませんし、気分で部位を変えたりもします。特に義務感もなく、疲労が抜けたらトレーニングという感じです。
ただ、自分のやりたい部位だけ優先してしまうと弱点も出てきてしまうので、この部位をやると決めたらやるということもしています。

以前は、トレーニングをやらないといけないという義務感があって朝もトレーニングをしていましたが、最近は朝にトレーニングをしたい時や朝にトレーニングをしないと気が済まない時にはするという感じです。疲労や回復度合いに応じてやっています。

自分にとって特に効果の高い種目、そうでない種目

以前は軽い重量で高回数をやっていたときもありました。ステロイドを使っているような海外の選手が軽重量かつ高回数で行っていたのを参考にしましたが、自分はナチュラルということもあってかあまり成果は出ず、多少形は良くなったもののサイズとしての筋肥大は起きませんでした。そこからビッグ3を中心にトレーニングを行ったところ筋肥大が起きました。それ以降、筋肥大をしていく上で基本的には重量を増やしていく方針です。重量を扱える種目はだいたいやっています。

部位別ですと、脚はバーベルスクワットだけをやっていても太くなりましたし、重量も上がりました。中でも特にハイバースクワットの効果が高かったと思います。

背中はラットプルが効いたと思います。広背筋の外側の広がりを意識する際には軽く湾曲している通常のバーを使って、広背筋下部を狙う際には重量を軽めにしてナローグリップで行っています。自分は懸垂が得意ではなくてあまりやっていないこともあって、ラットプルダウンの方が意識しやすいです。

トレーニングを行っていて効果が出ない種目というのはあまりなく、正しい方向であればどんな種目でも効果があったと思います。強いて言えば上腕三頭筋を狙う種目のダンベルキックバックはやっていません。上腕三頭筋を狙うのであればキックバックではなくケーブルでのプレスダウンやスカルクラッシャーなど他の種目を取り入れます。

「自分はこうしている」等の工夫

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特にこれといって自分だけが特別に工夫しているようなことはないかと思います。
重さを筋肉に乗せるように意識しているくらいです。トレーニング中はいかに筋肉に負荷を載せるか、目の前のことに集中するようにしています。自分の成長のためにも割と周りを気にせずやります。

ベンチプレスも200㎏、ダンベルプレスも80㎏までいきましたがそれに伴って怪我も増えてしまうことがありました。重量を扱いたい気持ちはありますが、だからと言って重量だけが筋肥大ではないとも実感しています。

大胸筋上部が弱点なので、予備疲労法としてケーブルクロスで大胸筋上部を狙って20回くらいやってからメイン種目をやるようにしてみたところ、重量や回数としては下がってしまうのですが、そのほうが怪我も少なくパンプする感じがあります。

脚に関してはスクワットは自分のすべてだという感じがあります。特にハイバーでのフルスクワット。それによる怪我は特にありませんが、重量や回数が上がってきたことで疲労がすごく残るようになりました。
けっこう追い込むと一週間疲労が抜けなかったり、限界までやると足が張りすぎてしゃがむことができなくなってしまって3日くらい日常生活に支障が出ます。
以前ウェイトリフティングをやっていたのでそこだけはこだわりがあって、スクワットだけは他のトレーニングと違う心境でやっています。

トレーニング前後のケアに関しても特別なことはやっていません。 
トレーニング前に5分くらいトレッドミルで体全体を温める事と、上半身を鍛える時には肩甲骨周りの筋やローテーターカフを温めるようにしています。かなりの重量を扱うので怪我をしないように運動前後に最低限のストレッチを入れます。

食事の変化と成果

今は理想に近づくために筋肉量を増やす事に重点を置いていて、とにかく一日中栄養を摂り続けることを意識しています。

食事の変化をお話ししますと、2019年の東京クラス別75㎏級の優勝時は一日6食で3~4時間おきに30~40gのタンパク質等を摂るような感じでした。

コロナで自粛中だった期間の少し後、2020年の6月以降は少し食事量を増やしてみました。今までは鶏の胸肉を一日1~1.5㎏ほど摂取するのが中心だったのですが、それを2.5~3㎏ほどに増やしました。

自分は一度にまとまった食事を取りにくくて、小分けにしないと胃が持たないので一日8~10回くらいに食事回数を分けました。起きている間に胸肉2.5~3㎏を摂りきれなかった時は、夜中に目覚ましをかけて二回くらい起きて胸肉ととパスタを摂っていました。

そういった生活を3か月くらい続けたところ、それまでもかなりトレーニングをしていて重量もそこそこ扱っていた状態からさらにビッグ3の重量が30㎏近く急激に伸びました。

食べることや取り込むこと自体は少し辛いのですが、一度取り込んでしまえばそのあとは速やかに吸収される感じがあります。
それでもやはり朝は食事を多く摂りにくいので吐きそうになる事もありますが、口のほうまで戻ってきても一旦耐えて飲み込んでまた胃に戻していました。飲み会の後とかで吐いている人を見るとまだ甘いなと思うことがあります。

そういったハードな食事を続けたことで急激に成長したと思います。ジムで周りの方にも褒めて頂けることも多く、それくらい食事を増やすことが筋肥大に重要だと実感しました。

鶏肉で食中毒、卵で肝臓疲労

その後、2020年の8~9月頃に鶏胸肉でカンピロバクター(食中毒)になり筋量が7㎏ほど落ちてしまい絶望しました。 

そこから絶対に筋量を取り戻してやるという気持ちで、今度は卵の卵白部分をメインにして一日90個くらい摂りました。一ヶ月で筋量をかなり取り戻せたのですが、さらにその翌月にタンパク質を摂りすぎて肝臓疲労してしまいました。
肝臓は痛みを発しないですが、体のだるさがあったり疲労が抜けなかったり、湿疹やニキビのようなものができるような状態になってしまったのでタンパク質の量を減らしました。
急成長したいのであればタンパク質の量はすごく重要だと思いますが、摂り過ぎには注意する必要があると実感しました。

そういったことを経て体重は85㎏から90㎏くらいになりました。摂取カロリーを抑えていたので体脂肪率はあまり変わらない状態で増量ができました。

日頃の食事とバリエーション

最近はパスタ、ほうれん草、ブロッコリー、かぼちゃ、納豆などを中心に食べています。これだけを摂り続けると飽きるので味つけを変えています。
最初はミートソースで味つけをしていましたが、それも飽きてくると拒絶反応が起きて吐きそうになるのでカルボナーラやカレールーなどバリエーションをつけています。胸肉とパスタは茹でてまとめてジップロックに入れて、それを口に放り込んでからカレールーで流し込む感じです。

一番楽で効果のあることを続けることは得意なのですが、料理のレパートリーを増やしたり工夫することを面倒に感じてしまいます。
あまり時間をかけたくないし、例えまずくてもそれが楽で効果があれば食べる。
栄養素は変わらないですし食事は毎日行うことですので、なるべく時間や手間をかけずにおいしく食べられたら良いと思っています。

摂っているサプリ

ビーレジェンドのスポンサーを受けているのでいろいろなプロテインを飲んでいます。そんなバナナ風味と激ウマチョコ風味は特においしかったです。




あとはナルトの螺旋丸風味のプロテインがおいしいです。


螺旋丸風味はソーダ味で少し膨張します。最初それを読まずにシェイクしてしまって、シェーカーの蓋が飛んで気付きました。腹持ちが良くお腹も膨れるので、食事が摂れない場合や減量中にも活用できると思います。

あとは薬局で売られているDHCとかのビタミンB群、ビタミンC、亜鉛。




それらを飲むことでの体感や実感はありませんが、タンパク質はビタミンB群がないと代謝されにくいことを知ってからのルーティーンになっています。

以前は海外製のプレワークアウトサプリを試したりもしましたが、ビーレジェンドのプレワークアウトサプリは良かったです。エネルギー飲料系の味がします。 


色々なサプリがありますが、できる限り食事から栄養を摂れるのが一番だと思います。基本的にパンプのために重要なのは塩、水、糖質。これがあれば十分パンプします。一番手軽なものだとアクエリアス。最近は2Lのアクエリアスに塩を入れて飲んでます。

失敗した、うまくいかなかった経験

食事に関して言えば、菓子パンは発達しなかったです。
米、パスタ、パン、いも、玄米、白米、オートミール等から摂ったほうが明らかに成長が早いと思いました。

トレーニングに関しての失敗で言えば、重量を上げたいという気持ちはありますが闇雲に重量だけを求めるとどこか痛めたりすることも多かったです。
上級者になると限界までやらないで留めたり、事前疲労法も活用して行く方が良いと思います。個人的な見解ですが、ビッグ3で言えばスクワットは200㎏、デッドリフトは220㎏、ベンチプレスは140~150㎏くらいまで行ったらもう上級者じゃないかなと思います。それまではガムシャラにやっていいと思います。

細かいテクニックも重要ですがまずは高重量を扱うこと、高重量を扱えるようになることが大事。やはり高重量を扱ったほうが成長が早いです。ある程度の太いベースをつくるのが先で、細かい部分や形を整えるのは後で良いと思います。

トレーニングと昆虫食

昆虫食は海外ですと珍しくありません。
バッタ系は茹でて炒めると臭みが抜けて食感だけが残るので、色々な味に合います。自分は焼き鶏の缶詰と一緒に食べてました。セミも良かったです。

しかしカブトムシは食べるのが少し難しかったです。カブトムシ特有の香りがあって、それが凝縮されたのが胃の中に充満して7匹目くらいから吐きそうになります。

昆虫は毎日食べているわけではなくシーズンごとに分けています。昆虫が好きだから食べてみたいという気持ちは前々からありましたが、今まではその機会を逃していました。
高校の時はウェイトリフティングで国体に選ばれていて責任がありました。お腹を壊して大会に出られなくなってしまうと困るのでその時は我慢していました。学校を卒業してからの2018~2019年もボディビルの大会があったので控えていました。

昨今のコロナで大会がなくなり、自粛で時間もあったので丁度良い機会でした。昆虫はしっかりと調理して食べてみたらすごく美味しかったし、筋肥大に効果的だと実感しました。もちろんお腹も壊しませんでした。逆に市販の鶏肉でお腹を壊すくらいでした。

タイワンタガメを食べてみたいです。日本だとタガメは絶滅危惧種で食べられないし去年くらいから販売禁止にもなりました。
後日試食。味は昆虫とは思えない程フルーツ感があるとのこと。

後日試食。味は昆虫とは思えない程フルーツ感があるとのこと。

タイワンタガメ提供:バグズファーム
バグズファームでは虫粉末、虫スナック、虫酒など多くの形態で昆虫食品を取り扱っています。実はフィジークオンラインと運営会社が一緒。

バグズファームHP

今後の方向性や目標

コーカサスオオカブトを好きな気持ちや情熱をボディビルで表現したいと思います。もちろんコンテストで優勝できれば良いですが、それにこだわりすぎるよりもしっかりと情熱を表現したいです。コンテストで優勝すること以外にも情熱の表現方法はあるとも思います。
あとはコーカサスオオカブトを手に入れることも目標にしています。10~11㎝だと5000円くらいですが12㎝を超すと途端に希少になり、12㎝後半だと10~30万くらいします。

コロナでどうなるかわかりませんが、コンテストの目標としては世界ジュニアでの優勝や、全日本選手権に出れるようになりたいです。デカさとしてはそこそこ良いのではと思いますが絞りや仕上がりが課題です。

先に屈強インタビューを受けた泉風雅選手には2018年の全日本ジュニアボディビル選手権で2点差で負けてしまっているので、次は優勝を狙っていきます。

SNSのファンに伝えたいこと、ひとこと

ビートルTシャツをつくりました。非常に多くのご予約に感謝しています。一般販売もよろしくお願いします。
自分を応援してくれている方々に情熱をボディビルで表現することで応えようと思いますのでぜひ応援よろしくお願いします。

取材・文 せきぐち