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【屈強インタビュー】#13 持田教利 "トレーニングを愛しているからこそすべてのカテゴリーで戦いたい"

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掲載日:2021.04.25
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2020年に開催されたマッスルゲート東京においてボディビルで2位、メンズフィジークとクラシックフィジークの2カテゴリーではオーバーオール優勝を成し遂げた持田教利氏。3カテゴリー制覇を狙い日々進化を続ける持田教利氏に、日頃のトレーニングに対する取り組みや競技に対する考え方を伺った。

普段の生活や仕事に関して

基本的に水曜以外は毎日パーソナルトレーニングの指導をしています。水曜にも予約が入る場合もありますが、ない場合はYouTubeの撮影をしています。
去年や一昨年は長時間働いていたのですが、30歳まではトレーニングに全力を注ぐようにして、朝から17時くらいまでに仕事を終えてそれ以降の時間はトレーニングに充てるようにしました。

YouTubeのおかげか、選手からの指導の依頼が増えてきましたがそれでもトレーニングの時間は確保できています。前の年までフィジークしか出ていなかったのですが、新たにクラシックフィジークとボディビルに挑戦するにあたりSNSやYouTube等を通じて脚の変化や身体の変化を見てもらったことが大きかったかと思います。

日頃のトレーニングメニュー

基本的には以下の6分割で行っています。

①胸
②背中
③ハムと尻
④肩
⑤腕
⑥大腿四頭筋


①胸
大会が終わってから少し変わったのですが、大会まではビッグ3をほとんどやっていませんでした。筋肉を意識してストレッチや収縮をさせやすい種目やマシンをメインにしていました。胸の感覚が悪いのでチェストプレスやペックフライ、ケーブルクロスオーバー等でないと胸を意識できなくて、稀にダンベルフライをやるくらいでダンベルやバーベルは苦手でした。

②背中 
自分の中では反応が良い部位で、何をやっても入る感覚があります。チンニングをメインにしているのですが、チンニングで全て効いてしまいます。しかしそれだけでは厚みがつかないので、プル系の種目は2~3種目で終わらせて、ダンベルロー、ケーブルロー、マシンローなどローイング系を多く入れるようにしていました。
一般的に背中のトレーニングは難しいと言われていますが、僕は元々が反り腰なこともあって、広背筋下部のクリスマスツリーの部分にも簡単に刺激が入ります。むしろその周辺にしか刺激が入らなくて、厚みがつかなかったりもしました。昔はスクワットも背中に刺激が入ってしまって、背中で上げている感覚になってしまっていました。

あと、背中を反ると反動が入りやすくなってしまって、80㎏くらいのアームカールをやると腕に力を入れなくても反動で上げられてしまうことがあって、腕に刺激を入れる感覚が掴めない時期もありました。
最近では背中の力を抜きながらやるように意識することでうまく腕に刺激が入るようになりました。
胸に刺激を入れる目的でのベンチプレスでも、昔はブリッジを組みすぎてすぐにお尻も上がってしまっていました。なんでも背面に頼ってしまう感じです。極端に背中に効かせやすい、効きやすいというのはメリットもありますしデメリットもあるのでうまく調整しながらやっています。

③ハムと尻 
ボディビルの大会に出ようと決めたとき、大会まであと半年くらいの期間でした。大会まで一年もない中でどうやってデカくしていこうかと考えたときに、大腿四頭筋とハムストリングスを一緒にやってしまうとボリュームが追いつかないと思って、それぞれを分割することにしました。

先にプローンレッグカールとシーテッドレッグカールをやって、膝が伸ばせないし曲げられないくらいになってからスミスマシンを使ってブルガリアンスクワットをやっていました。かなりの重量をつけて、レストポーズ法で休み休みやって、一回もできなくなってから最後にドロップセットをしていました。完全に根性論トレーニングになっていたので最近は大幅に変更しました。

④肩
迫力がなく、最もひどいと思う部位です。僧帽筋上部だけが強い代わりに厚みがないので首だけ太く見えてしまっていました。肩を鍛えて幅を出したかったのですが、肩が弱すぎて負荷をコントロールしきれず、ショルダープレスの感覚が掴めなかったので正確に刺激が入るレイズ系種目を多く取り入れ、プレス系はやっていませんでした。
言い訳的な要素もありますが、肩の前部は胸のプレス系種目で、肩の後部は背中のロー系種目で刺激が入っているだろうと思い、主に肩のサイドを狙うようにしていました。

⑤腕
フィジークはどちらかといえば手を腰に置いて力を抜いた状態で太く見せないといけないので、上腕二頭筋のピークというよりは上腕筋の厚みをつけることを意識してハンマーカールを多く取り入れていました。しかしボディビルに出るにあたっては特に上腕二頭筋を重要視しました。例えばダブルバイセプスのポージングのように、上腕二頭筋が盛り上がっていないと全く迫力が出ません。そのため上腕二頭筋をデカくするべく、コンセントレーションカール、プリ―チャーカール等の上腕二頭筋のピークを出すようにしました。
上腕三頭筋は感覚が良かったので、ケーブルプレスダウンやライイングダンベルエクステンションなどをやり込んで、上腕二頭筋に比べたら少ない種目数で発達しました。

⑥大腿四頭筋
フィジークに出ていた時にチキンレッグとバカにされていたこともあります。上半身なら感覚がわかるのですが、腿前に力を入れる感覚がわかりませんでした。もちろんカットも出せません。
なのでとりあえず一番わかりやすい種目をやろうと思って、レッグエクステンションを1セットで200回やるという種目を考案しました。一番下の重りから20回ずつ、10段階に分けて落としていくやり方です。どんなに下手でも絶対に刺激が入ります。
一番下の重りでまず20回。それから軽くして次のセットに行くところですがここが肝で、名残惜しいので2秒くらい休んですぐに始めるとさらに数回できる上にバチバチに入ります。レストポーズ法に近いことを繰り返してから、どんなにがんばっても上がらなくなったら重りを下げる。結局は合計250レップくらいやってしまっています。

1セットを終えるごとにレッグエクステンションから降りてワンレッグスクワットを20回ずつやります。これを4セットくらい繰り返して終わりです。一番辛くて痛い時にしゃがむことで効く感覚を覚えるという狙いもあります。レッグエクステンションでは脚は太くならないと言われることもありますが、僕の脚をつくってくれたのはレッグエクステンションです。

レッグエクステンションが終わった後に行うハックスクワットマシンでは20㎏プレートを左右4枚ずつくらいしかつけられないのですが、面白いことに最初にレッグエクステンションをやらなくても20㎏プレートを左右4枚ずつくらいしかつけられません。なので、2種目めに丁度いい。

ハックスクワットも効く感覚がわからなくて、ドロップセットで行います。プレートを左右4枚ずつから始めて次は左右3枚ずつ、左右2枚、1枚、0枚と続いて最後にシッシ―スクワット気味にして30回くらいやります。
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トップ選手に太刀打ちするためにどうすべきか

持論なのですが、脚の筋肥大に関しては対乳酸のトレーニングが一番いいのではないかと思っています。同じ自転車でも軽い負荷で長い距離走ると筋肥大には向きませんが、競輪選手の大腿部のように、ある程度の重さをのせて筋力を爆発的に発揮し続けることですごく太くなっている。
それに近い負荷をかけようとして、足のトレーニングの回数が曖昧になっています。

トップの選手にいきなり重量では勝てない。でもその中でどうやって太刀打ちするかを考えると回数で勝つしかないかと思って。
なので、ジムに置いてあるフィールサイクル用の自転車をガンガン漕いでHIIT(高強度インターバルトレーニング)をやってます。一瞬で負荷を重くできるので便利で、どの種目よりもバチバチに入ります。減量も促進されるし、心肺機能もあがるし関節にも優しい。

人間が全力を出せるのは7~8秒といわれてますが、その時間ですべて出し切るのは難しいと思って10~15秒くらいにしてます。インターバルも10秒くらいにしてすぐに漕ぐということを繰り返しています。最近は何セットやっているか数えなくなりました。筋肉が切れると感じるまでやります。

全体的にみると、左右の手足の感覚や実際の太さもかなり違います。利き手の方が3㎝くらい太いし脚も左右でだいぶ違うので、左右で同時に力を出す種目では左右差がさらに増えていってしまう感覚があります。
あと、チーティングだけは誰よりも上手いと思っていて、そんな自分が上がらなくなったらもう完全に追い込めていると思います。

自分にとって特に発達すると感じる種目、そうでない種目

大会が終わった時に、加藤直之さんや嶋田慶太さんなどトップの選手と並ぶ機会があったのですが、筋肉一個一個ももとよりフレームの違いがありすぎると感じました。ポーズを取らない状態でもサイズ感が全く違う。
加藤さんはビッグ3をメインで取り入れられていて、自分はまったくやっていなかったのでこれはぬかったなと。
ビッグ3をやってどんどん重量が伸びてくれば楽しくなってそのまま続くこともあると思いますが、僕はパワーがなくて、重量も伸びなくてすぐにやめてしまっていたので、大会が終わってからビッグ3をやるようになりました。
そうすると意外にも特にベンチプレスとスクワットの体感が良かったです。胸に関しては効き方に左右差があって、軽い重量でネチネチとやっていましたがすごく重い重量でやると自然と効かせられて、今までにない感覚と刺激が得られました。
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速さの観点からのアプローチ

今まで効かせることやコントロールすることにこだわりすぎて、動作はずっとゆっくりとしていました。速さを考えていなかった。
筋トレを解剖学だけでなく、それに加えて力学の観点からみたほうが発達しやすいと気付きました。筋肉がつきやすいのは瞬発的な動き。しかしそれにも関わらずネチネチやってしまうことが多い。海外のデカい人のトレーニングを見ると、かなり速くテンポよく動かしています。最初はそれを見て本当に効いてるのか?と思っていましたが、最近その意味が分かりました。

例えばジャンプするときも、ゆっくりとしゃがんだスクワットの状態からジャンプするよりも素早くしゃがんでからジャンプしたほうが高く力が出せます。自分のトレーニングも同じように速めにテンポをつけるようにしてからすごく反応が良くなりました。
こういった速度を入れた動きは後半にはできないので、しっかりと出し切れていると思います。ストレッチ種目や丁寧にやる種目は後でもいいなと。

あと、トップ選手のトレーニングを見ると多くの方が短い時間でサッとやって追い込んですぐに帰っています。トレーニングは前まで5~6時間やっていましたが、長すぎたと思いました。最近は長くても2時間、平均的にはだいたい90分くらいで終わらせています。

トレーニング中や普段の生活における工夫

生活全部がボディビルになるようにしています。去年から一人暮らしを始めて、ボディビルに必要なものしか家に置いていません。ハイパーボルトやポールでケアをしたりコンディションを整えたり、大きな鏡で体をチェックしたり。テレビも置いていません。あるとつい観てしまうので。

日頃の食事で意識していること

基本はタンパク質を体重の2倍(g)摂るようにして、増量期はとにかくオーバーカロリーを意識しています。おすすめは卵かけごはん。増量期は卵を一日30個食べていました。一日8000kcalを摂るようにしたら一ヶ月で25㎏体重が増えてしまった事もあります。筋肉量で増えたのではなく、ただ太ってしまいました。カントリーマアムとヌテラが好きで、食事の合間にチョコソースをなんにでもかけて食べていました。
減量は6~7か月ほどかけています。最初の1~2か月は3500~4000kcalくらいで、中期は3000~3500kcal、最後の方は絞り込みで2500~3000kcalというように段階的に落とすようにしています。

摂っているサプリ

サポートを頂いているMPNのサプリメントがメインです。スムージープロテインは本当に美味しいです。
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自分の体と向き合って気付きを得よ

大会で勝つために、実績のあるコーチをつける選手もいます。しかしコーチをつけることでプラスになることもありますがそうでないこともあります。自分で自分の変化に気付くことができずにコーチの言う事だけを聞いて、その結果うまくいかなかったらコーチのせい。これではいけません。

今後の方向性や目標

ボディビルやフィジーク、クラッシックフィジークのように、現在は皆どれか一つのカテゴリーに特化しているように思います。僕はどれか一つのカテゴリーではなくて、全てのカテゴリで優勝したい。絶対に誰もやったことがないことをやってみたいです。

複数のカテゴリーに出場していることで「競技に対して愛を感じない」と言われることもありますが、そうではない。トレーニングを愛しているからこそすべてのカテゴリーに出たいんです。

フィジークだと肩に特化するとか、ボディビルでは腕とか、クラシックだとバキュームとか。それぞれに合わせたポージングのポイントはあると思いますが基本的な方向性としては同じですし、各競技に出てみることでそれぞれの競技をを知ることもできます。一つのカテゴリしか出ないと他の競技のことをわかりません。やってみることで初めてわかるもの、気付くものもあると思います。
たとえばフィジークにおいて肩を強調したくて腕を鍛えなくていいとかいう人もいますが、肩だけでなく全部が発達している方がかっこいいというのを証明したいです。

ファンに伝えたいこと、ひとこと

大会で勝ちたい欲だったりトレーニングの義務感だったり。そういったものもあるかと思いますが、トレーニングを楽しむことを忘れないようにしてほしいです。ボディビル、フィジーク、クラシックフィジークの3カテゴリ優勝を目指して頑張りますので応援よろしくお願いします!


取材・文 せきぐち