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【屈強インタビュー】#24 ぱんぷあっぷぱぱ有竹 "家族の幸せが第一、その次が自分のトレーニング"

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掲載日:2022.01.22
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トレーニングは大事だが家族や仕事も疎かにはできない。いずれかに偏れば周りに多大な影響が出てしまう。制限のある中で家庭と自身のトレーニングの両立をしていくためにどうすべきか、2020年FWJ NorthJapanOpen フィジークノービス168以下級3位 "ぱんぷあっぷぱぱ"有竹氏に考え方と取り組みを伺った。

普段の生活や仕事に関して

自分は隔日勤務で、月ごとの勤務日数は10日くらいです。朝8時半から翌朝8時半までの丸一日勤務の代わりに休みは取りやすいと思います。
※諸々詳しく教えて頂きましたがご本人の意向により具体的な職業はナイショにさせて頂いております

10年くらいは身体を動かす仕事だったのですが、その後5年ほどは座り仕事になって動く習慣がなくなって不健康に太ってしまい、その時期からトレーニングに力を入れるようになりました。
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ファミリーフィジークに出ようと思ったきっかけ

ファミリーフィジークは唯一順位がつかないコンテストなんです。自分はあがり症だし自信もない。でも娘と一緒なら記念にもなるしこれだったら自分でも楽しくできるかなと、初心者でも出やすい敷居の低さも後押しして出場してみました。当時はNPCJ(現FWJ)がやっていて、現在はAPFという団体が開催しています。
当時、小1の娘が宿題で出された苦手な計算カードを泣きながらやるのを見守る中で、私自身が何かに挑戦し、変わる姿を見せることで娘を励ますことができたらいいなと思っていました。

家庭とトレーニングの両立

まず家族の幸せが一番にあって、次に自分の健康。トレーニングは余裕の範囲内でやる。この順序を見失わないように気を付けています。 時間がなければトレーニングは諦める。
トレーニングに行く時間がない中でも減量を進めたければ、その分食事制限を頑張る。朝早起きして、有酸素運動をする時間を作る。家族を犠牲にせずに何をどう工夫するか、そういった試行錯誤の中で自分自身を成長させられたと思います。
それでもコンテスト前は疲労から、娘から抱っこをせがまれても「またか」と顔や態度に出たりしてしまいます。娘が私を好きだからこそせがんでくれているにも関わらず、人間がまだまだ未熟だなと感じます。

トレーニングで蓄積された疲労により足首に石灰が溜まって突然歩けなくなった時がありました。その怪我を知らずにいつものように飛びついてきた長女を受け止められなかったときに、真っ赤な顔をクシャクシャにして泣いたあの姿は一生忘れないと思います。パパはいつだって娘を受け止められる強さがなければいけない。トレーニングで怪我は二度としないと決意したのを覚えています。
Fitness World創刊号の表紙にも掲載されている

Fitness World創刊号の表紙にも掲載されている

周囲に少なからず影響が出る

コンテストに出るにあたって、家庭にも職場にも迷惑をかけてしまっていると思います。それでも理解し、応援してくれている家族や職場に感謝をしたうえで、最後まで最善を尽くすのが大切だと思います。
コンテストに向けた優先度を高めることが許されるのも、食卓で私だけ別のご飯を食べる減量生活に家族が付き合えるのも一ヶ月が限度だと思います。そのため日常で節制をしながらゆっくりと減量を進め、残り一ヶ月でステージに上がれるように準備を進めるようにしています。

減量中は注意力が散漫になりやすく、気を抜くと自分でも理解に苦しむようなミスをします。当たり前のことを当たり前にできなくなった自分がミスを回避していつも通りに仕事をするためにルーティーン化を徹底しています。
仕事を同じように同じ順番で処理する、同じものを同じように同じ場所に置く、そういったことを意識的に丁寧に行うようにして、余裕のある時に仕事やトレーニングの荷物をあらかじめ準備しておくようにしています。
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トレーニング中や普段の生活における工夫

あえてメニューをガチガチに組まないようにしています。そのほうが柔軟にベストを選択してトレーニングを楽しむことができるからです。
私がトレーニングを始めたのは1回330円の市営ジムでした。1台のスミスマシンと10キロまでしかないダンベル、仕事明けの朝から次女のお迎えに行く昼過ぎまでの時間制限がある中でのトレーニングでした。それでも小さな自由が嬉しくて夢中でトレーニングをしました。不自由には慣れているので、時間や設備の制限がある中でやり込むのはうまい方だと思います。
よくSNSで、インターバル中にスマホを見ていてマシンやベンチが空かないと嘆く投稿を見かけます。私としては空いている種目をいつもよりたくさんやり込むいい機会だと考えてイレギュラーを楽しむようにしています。イライラは筋肉の成長によくありません。
その時できるベストを見つけて、それを全うする。ジムでは力を出し切って、ストレスを溜めないようにすることはすごく重要だと思います。

まず皆に許可を得ること、柔軟な対応をすること

今でもジムに行く前には子供と妻に許可を得てから行きます。 いいよ、となればチャンスだと思って長くやり込む時もありますし、子供が遊びたそうであればジムに行かずに子供と遊びます。筋肉よりも大切な、今でしかできないことがありますのでその時の状況に合わせた柔軟な対処が必要です。
2年前まではジムに行こうと車に乗って動き出した頃に泣きながら「いかないでー!」と追いかけてきた事も多々ありました。ジムに行った後に「パパがいなくて泣いている」と呼び戻された事も今ではいい思い出です。
今は24時間制のジムを利用しています。子育ても落ち着き、娘も成長し、トレーニングをするにもゆとりができてとても恵まれていると思います。
私が趣味を楽しむとき、娘の面倒や家事は妻がしてくれていて、娘は寂しさを我慢して応援してくれている。挑戦させてもらえていることへの感謝の気持ちはこれから先もずっと忘れないでいたいものです。

最近の発見

ダイエットにおける「休養」と「睡眠」の大切さを発見しました。意欲が高くて無理をしすぎてしまう人こそ「休養」と「睡眠」を全力で頑張るといいと思います。
減量中は普段より少ない食事で普段より運動を頑張る。当然疲れるわけです。体重が落ちず、深刻な気持ちになって休もうとしない。これがいけないと気付きました。
疲れると余裕がなくなり、そのストレスは食欲に繋がります。疲れていると思ったらまず寝て休む。実際に質のいい睡眠がとれると体重もしっかりと落ちます。
空腹が辛い時なども風呂に入ってしまえば空腹感も紛れ、疲労の回復もできてよく眠れるようにもなります。 風呂につかる、ストレッチをする、休む、寝る。これらは心と体をケアする努力です。心と体を休めてしっかり回復させる。それが継続の要だと思いました。
怪我の予防にもトレーニングパフォーマンスの向上にもつながるし、食事で10摂った栄養をちゃんと10吸収できる腸内環境も整えてくれます。頑張ることと同じように休むことも大切に継続しましょう。
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今後の方向性や目標

最終的な舵取りは家族と決めるのですが、これから先もよりよい自分の身体を目指して、本気の趣味としてコンテストには挑戦していきたいと考えています。久野圭一さんや加藤昌平さんみたいに家庭を持ちつつ選手をやって上位の成績を収めている人を見習っていきたいと思います。

2019年に競技者としてフィジークの大会に出たのですが、筋量も絞りも他の選手に比べても甘かったことをその時に初めて思い知りました。それでも「パパが一番カッコいい」と言ってくれた娘に本当にカッコいい自分を見せたくて再挑戦を決意し、次の年の挑戦で初めての入賞を果たしました。初めてのステージから3年目、娘には「結果を出すまで諦めないことの大切さ」を伝えることができました。これからも家族に支えられながら、家族と一緒に成長していきたいと思います。

自分はインタビューを受けている他の屈強の方々に比べて実績もないしトレーニングの特別な知識や技術があるわけでもありません。ジムでも街でも職場でも人目を惹くような存在ではない、どこにでもいる普通のパパです。
そんな人間のゆっくりとした歩みの挑戦にスポットライトをあてていただけて本当に光栄です。同じような境遇の、誰かの何かが変わるきっかけになれば嬉しいです。


取材・文 せきぐち