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第57回 全日本学生ボディビル選手権大会 観戦レポート

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掲載日:2023.10.07
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2023年9月30日、埼玉県深谷市民文化会館にて開催された 第57回 全日本学生ボディビル選手権大会の個人的な主観に基づく観戦レポートを掲載。
※大会の写真は大量にありますので後日別途で掲載致します。少々お待ちを…。

女子ビギナーズフィットネス

中央を境に左右の選手が入れ替わった際、隙間が空くのもまた趣である

中央を境に左右の選手が入れ替わった際、隙間が空くのもまた趣である

今大会最初のカテゴリーとなる女子ビギナーズフィットネス部門。
「カワイイー!!」「サイコー!!」
「可愛さ反則だよぉぉーッ!!」
「ずっと見ていたい!!」「う゛おおおお」
選手がステージに登場した直後からアイドルのライブ会場のような歓声と力強い声援が交錯した。ステージ上の選手だけでなく応援している側も相当鍛え込んでいるであろうことを感じさせる半端ではない声量と熱量だった。


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審査が終了し、選手が舞台袖に向かう際には
「あ˝ぁ───ッ!!」
「いかないで──!!」
などの別れを惜しむ声が各所から轟いた。

フィジーク

170㎝以下級

170㎝以下級

176㎝以下級

176㎝以下級

176㎝以上級

176㎝以上級

総じてどの階級も全体的にレベルが高く、こちらのカテゴリーでも怒涛の歓声が飛び交う。
「腹斜筋バリバリィ!!」
「背中デカすぎ──!!」
「バランスいいよ──!!」
「おじいちゃんがみてるぞ──!!」
「あ˝あ˝──!!イイ──!!」
「1日800kcal」
「ウエスト細すぎ──!!」
「イケメンイケメン」
「三頭ストってる!!」
「どーなっちゃうの──!?」


170cm以下級ポーズダウン

170cm以下級ポーズダウン

176cm以下級ポーズダウン

176cm以下級ポーズダウン

176cm超級ポーズダウン

176cm超級ポーズダウン

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フィジークのカテゴリーでは176cm以下級の㉚石山檀選手(日本体育大学・写真左)がオーバーオール優勝を果たした。
一方、個人的には同級二位の⑳小林京慎選手(東京医療学院大学・写真右)の細いウエストから広がる広背筋、全体のプロポーションとステージングが特筆して美しく感じた。優勝は逃したが、フィジークカテゴリーで求められる本来の理想的な体型を体現しているように思う。
惜しくも上位入賞を逃した選手も含めて、いずれの選手も良いコンディションと美しいプロポーションであった。

ボディビル

予選審査

予選審査

予選審査

予選審査

「デカすぎてみんなこわがってるぞ──!!」
「仕上がりの差をみせてやれ──!!」
「残すなー!出し尽くせー!」
「愛してる───!!」
「ハム出せハム!!」
「ケツケツケツケツケツ!!」
「脚脚脚脚脚脚脚脚脚脚!!」

ひときわの盛り上がりとなったボディビルカテゴリー。トレーニング歴の差こそあるかもしれないが、どの選手もポージングの要点を抑えており全体として非常に上手く、少なくともポージングで大きく損をしている選手はいないように感じた。
部活内の先輩や友人と情報を共有し互いに教え合い、日々の練習に励まれている事が伺える。
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JBBFやマッスルゲートなどでは規定7ポーズが用いられるが、学ボではモストマスキュラーポーズが規定ポーズに含まれている。
また、決勝進出をかけた上位争いにおいて尋常ではない回数と時間のポージングが続いた。選手によっては予選だけで10回近く呼ばれ、その度に盛大な声援が送られた。さぞ極度の疲労があったと推測されるが何度呼ばれても終始ポージングのクオリティが変わらなかった点はさすが全日本レベルである。
上位5名比較審査

上位5名比較審査

上位入賞者比較審査。写真中央、1位の刈川啓志郎選手(学習院大学3年)は長身でありながら圧倒的なバルクとポージングテクニックを持ち合わせ、一見して目を引く存在感を誇示した。
左から2番目、2位の依知川公平選手(国際武道大学4年)のコンディションは凄まじく、バルクはもとよりカットやストリエーションが深く出たバリバリの仕上がりだった。
右から2番目、3位の大島達也(日本体育大学3年)選手は全体的にバルキーでありながらもバランスの取れた素晴らしいプロポーションであった。仕上がりも凄まじく、声援に呼応するような気迫のあるステージングで胸&モストマスキュラーの部分賞を受賞した。

写真左、規定ポーズだけでなくフリーポーズにおいても美しいポージングを見せた4位の小原啓太選手(早稲田大学2年)。度重なる長時間のポージングにも精度を落とすことなく完遂し、腹の部門賞も受賞。
写真右、本多虎之介選手(大阪学院大学3年)は昨年度よりも全体的な筋量を大きく増やして臨むも全体的にむくみがあり、カットが出にくいコンディションとなった。(本人より後日談)
バックポーズ。特に依知川公平(国際武道大学)選手の尻とハムの深いカットとストリエーションは会場がどよめいた

バックポーズ。特に依知川公平(国際武道大学)選手の尻とハムの深いカットとストリエーションは会場がどよめいた

学ボ特有の賞である部分賞では規定ポーズを含みつつ各部位に合わせた特徴的な体勢が指示された。両腕を持ち上げるポーズや背面を向けてのシングルレッグカールなどの独自の審査風景からは「良く見せられるか」よりは「実際に良いか」が重視されているように思えた。
ハムのカットを見せる時には「ハムさわんじゃねえ隠すなー!」、背の審査では「ケツはもういい背中出せー!」など審査部位に合わせて特徴的な掛け声が飛んだ。

フリーポーズ

大島侃選手(日本体育大学2年)「愛を取り戻せ」に合わせ、ゆっくりとした動きで一つ一つが正確なお手本のようなポージング。

大島侃選手(日本体育大学2年)「愛を取り戻せ」に合わせ、ゆっくりとした動きで一つ一つが正確なお手本のようなポージング。

本多虎之介選手(大阪学院大学3年)曲に合わせた緩急があり、なめらかな動作と力強さが両立した芸術的なポージングを披露。

本多虎之介選手(大阪学院大学3年)曲に合わせた緩急があり、なめらかな動作と力強さが両立した芸術的なポージングを披露。

愛甲大介選手(阪南大学2年)全体的なバルクと自身の強みを存分に活かしたクラシカルなポージング。

愛甲大介選手(阪南大学2年)全体的なバルクと自身の強みを存分に活かしたクラシカルなポージング。

杉村雄大選手(東海大学4年)ポケモンの主題歌に合わせ、手に握るモンスターボールが見えるかのような迫真のパフォーマンス。ボディビルとポケモンの要素を見事に融合させた。

杉村雄大選手(東海大学4年)ポケモンの主題歌に合わせ、手に握るモンスターボールが見えるかのような迫真のパフォーマンス。ボディビルとポケモンの要素を見事に融合させた。

大島達也選手(日本体育大学3年)“インターネット、サ・イ・コー!!” インターネット・エンジェルがステージに光臨。承認欲求高めの配信者、超てんちゃんの新曲を携え極端に再現度の高いノリノリのダンスをキメて会場が沸いた。

大島達也選手(日本体育大学3年)“インターネット、サ・イ・コー!!” インターネット・エンジェルがステージに光臨。承認欲求高めの配信者、超てんちゃんの新曲を携え極端に再現度の高いノリノリのダンスをキメて会場が沸いた。

岡野陸選手(東京大学1年)開始場所から大きく動くことなく、フロントポーズを基調としたフリーポーズは一つ一つの正確で落ち着いたポージングを際立たせた。

岡野陸選手(東京大学1年)開始場所から大きく動くことなく、フロントポーズを基調としたフリーポーズは一つ一つの正確で落ち着いたポージングを際立たせた。

 門倉雅人選手(帝京大学3年)演技時間に対してポージングの数は少ないながらも、一つのポージングにおけるプレアクションの取り入れ方と見せ方が上手く特徴的であった。

門倉雅人選手(帝京大学3年)演技時間に対してポージングの数は少ないながらも、一つのポージングにおけるプレアクションの取り入れ方と見せ方が上手く特徴的であった。

中郷李生選手(早稲田大学3年)捻りの効いたサイドポーズと角度をつけたフロントポーズを多用し、ウエストの細さとは相対的な太い大腿部と上体の広がりが強調された美しいポージングを披露した。

中郷李生選手(早稲田大学3年)捻りの効いたサイドポーズと角度をつけたフロントポーズを多用し、ウエストの細さとは相対的な太い大腿部と上体の広がりが強調された美しいポージングを披露した。

依知川公平選手(国際武道大学4年)骨盤と両肩を結ぶラインを大きく傾け静止していながらも芸術的で動きのあるポージングと、ひときわのカットと凄まじいストリエーションが走る下半身の強さを十分に披露した。

依知川公平選手(国際武道大学4年)骨盤と両肩を結ぶラインを大きく傾け静止していながらも芸術的で動きのあるポージングと、ひときわのカットと凄まじいストリエーションが走る下半身の強さを十分に披露した。

瀧上蒼生選手(早稲田大学3年)壮大な曲調に合わせ、優雅でクラシカルな流れるようなポージングから一変して表情を崩し、舌を出してのマスキュラ―ポーズの連続に会場が沸いた。一つの曲内で動きと表情の大きな緩急があり幅広いポージングを表現した。

瀧上蒼生選手(早稲田大学3年)壮大な曲調に合わせ、優雅でクラシカルな流れるようなポージングから一変して表情を崩し、舌を出してのマスキュラ―ポーズの連続に会場が沸いた。一つの曲内で動きと表情の大きな緩急があり幅広いポージングを表現した。

田中春貴選手(日本体育大学4年)ゆっくりと落ち着いた動作の中に高い完成度の深いバキュームを取り入れた、美しく芸術的なポージングで会場を魅了した。

田中春貴選手(日本体育大学4年)ゆっくりと落ち着いた動作の中に高い完成度の深いバキュームを取り入れた、美しく芸術的なポージングで会場を魅了した。

小原啓太選手(早稲田大学2年)全くスキのない流れるようなポージングを披露。バック、フロントポーズの完成度はもちろんのこと、その中でも特にサイドポーズの表現力は抜群であった。

小原啓太選手(早稲田大学2年)全くスキのない流れるようなポージングを披露。バック、フロントポーズの完成度はもちろんのこと、その中でも特にサイドポーズの表現力は抜群であった。

重岡赳瑠選手(日本体育大学3年)3年間温め続けたというフリーポーズは比類のない美しさ。全体的に早いテンポの中で緩急の効いた静と動を使い分け、特にフィニッシュに向かう終盤にかけての表現力は圧巻。曲と動作も見事にリンクしていた。一つ一つのポージングもさることながら、その前後のつなぎの動作自体でも会場が沸いた。フリーポーズにおいて何を以て良しとするかは個々で大きく異なるにしても、個人的にはフリーポーズの一つの極致であると感じた。

重岡赳瑠選手(日本体育大学3年)3年間温め続けたというフリーポーズは比類のない美しさ。全体的に早いテンポの中で緩急の効いた静と動を使い分け、特にフィニッシュに向かう終盤にかけての表現力は圧巻。曲と動作も見事にリンクしていた。一つ一つのポージングもさることながら、その前後のつなぎの動作自体でも会場が沸いた。フリーポーズにおいて何を以て良しとするかは個々で大きく異なるにしても、個人的にはフリーポーズの一つの極致であると感じた。

設楽和永選手(日本体育大学2年)早い曲調でゆっくりとしたポージングの対比が美しい。フロントよりは比較的サイドとバックポーズを多く取り入れたポージング構成が印象的。

設楽和永選手(日本体育大学2年)早い曲調でゆっくりとしたポージングの対比が美しい。フロントよりは比較的サイドとバックポーズを多く取り入れたポージング構成が印象的。

刈川啓志郎選手(学習院大学3年)圧倒的なバルクを搭載しながらも一つ一つ正確かつ流れるような美しく力強いポージングは規定ポーズだけでは出し切れない高い芸術性を表現した。フリーポーズそのものではないが、暗闇の中で舞台袖から開始地点に歩いていくときの足音の重厚感も非常に良かった。

刈川啓志郎選手(学習院大学3年)圧倒的なバルクを搭載しながらも一つ一つ正確かつ流れるような美しく力強いポージングは規定ポーズだけでは出し切れない高い芸術性を表現した。フリーポーズそのものではないが、暗闇の中で舞台袖から開始地点に歩いていくときの足音の重厚感も非常に良かった。

若林恭佑選手(東京大学4年)その場から大きく動かず規定ポーズを基調にしたポージング。長身かつ全身バリバリに仕上がった身体からは独特の迫力が感じられた。

若林恭佑選手(東京大学4年)その場から大きく動かず規定ポーズを基調にしたポージング。長身かつ全身バリバリに仕上がった身体からは独特の迫力が感じられた。

大島康輔選手(白鴎大学4年)細いウェストから広がる広背筋と大腿部を活かした美しいポージングであり、特に指先まで高い表現力を持った特徴的なサイドバックが印象的。映画「007 スカイフォール」の主題歌の選曲とも非常にマッチしていた。

大島康輔選手(白鴎大学4年)細いウェストから広がる広背筋と大腿部を活かした美しいポージングであり、特に指先まで高い表現力を持った特徴的なサイドバックが印象的。映画「007 スカイフォール」の主題歌の選曲とも非常にマッチしていた。

小坂真司選手(東京大学4年)アイドル系の軽快な曲を用いてボディビルの競技性とエンタメ性を持ち合わせたポージングを披露。演技時間の半分ほどは誰とも被らないであろう独創的なポージングで構成されていた。

小坂真司選手(東京大学4年)アイドル系の軽快な曲を用いてボディビルの競技性とエンタメ性を持ち合わせたポージングを披露。演技時間の半分ほどは誰とも被らないであろう独創的なポージングで構成されていた。

大野凌平選手(東海大学4年)フリーポーズにおける代表的なポージングの中、指先までこだわった独創的なポージングを披露。構成にフロント、サイド、バックなどの角度がバランス良く取り入れられていた。

大野凌平選手(東海大学4年)フリーポーズにおける代表的なポージングの中、指先までこだわった独創的なポージングを披露。構成にフロント、サイド、バックなどの角度がバランス良く取り入れられていた。

菅谷康介選手(東北大学2年)情熱大陸のテーマに合わせた勢いのあるポージング。序盤の繊細なポージングから終盤にかけて激しさを増す構成と表現が印象的。

菅谷康介選手(東北大学2年)情熱大陸のテーマに合わせた勢いのあるポージング。序盤の繊細なポージングから終盤にかけて激しさを増す構成と表現が印象的。

総評

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審査委員長を務めた臼井オサム氏から選手へ激励の言葉が送られ、フィジークであれば腕を太くし過ぎないようにするなどカテゴリーに合った体作り戦略の重要性が説かれた。
また、学生ボディビルにおいて部門賞が設けてある目的は選手の良さや強みを引き出すためであるが、一方で全体のバランスも重要となる矛盾が生じることに関してこれを「バランスの中のアンバランス」と呼び、これこそが部門賞の正体であると提言した。

大会の締めとなる言葉は毎年一緒であるとした上で、全選手に「しっかり食べて胃袋を成仏させてください」と送り大会を終えた。

追伸:本大会への取材申請及び許可を迅速に取り繋いで頂いた重岡赳瑠(日本体育大学3年)選手に深く御礼申し上げます。

取材・文:せきぐち
撮影:塚本萌子