子どもの体力・運動能力に関する諸課題と向上に向けた試み#1 小林育斗 NSCAジャパン北関東・東北地域S&Cシンポジウム
掲載日:2019.01.11
2018年10月13日に作新学院大学にて行われた、特定非営利活動法人NSCAジャパン 北関東・東北地域S&Cシンポジウムにおける小林育斗氏(Ph.D.,作新学院大学経営学部スポーツマネジメント学科 准教授)の講演をレポート!
子どもの体力の低下は教育的・社会的問題である
今と昔の小学生の体力・体格を比較すると、男女ともに体重と身長が大きくなる一方で、各項目における運動能力が低下していることがわかります。
子どもの体力の低下は将来的に国民全体の体力低下につながり、結果的に生活習慣病の増加やストレスに対する抵抗力の低下などを引き起こすことが懸念され、この事は社会全体の活力の低下に繋がる恐れがあります。
全国調査による都道府県別の肥満傾向では、児童の肥満傾向上位は北関東以北の全10県が占めており、作新学院大学がある栃木県では大人も子供も肥満傾向という結果になっています。
これらを改善するには、家庭の食習慣や運動習慣の改善が必要であることが研究調査によって明らかにされています(宇都宮大・小宮氏)。
これらの肥満傾向や体力低下の要因としては、生活の利便化や生活様式、ライフスタイルの変化に伴って日常生活において身体を動かす機会が減少したことが考えられます。
大人を対象にして、「自分の子供の頃に比べて子どものスポーツや外遊びの環境がどう変化したように感じるか」という調査では、「どちらかといえば悪くなった」という意見が大半を占めています。
具体的には、場所、時間、友達が少ないように思うということで、これらの「遊ぶ時間、遊ぶ場所(空間)、遊ぶ相手(仲間)」という「3間」が少なくなっているように感じられます。
子どもの体力の低下は将来的に国民全体の体力低下につながり、結果的に生活習慣病の増加やストレスに対する抵抗力の低下などを引き起こすことが懸念され、この事は社会全体の活力の低下に繋がる恐れがあります。
全国調査による都道府県別の肥満傾向では、児童の肥満傾向上位は北関東以北の全10県が占めており、作新学院大学がある栃木県では大人も子供も肥満傾向という結果になっています。
これらを改善するには、家庭の食習慣や運動習慣の改善が必要であることが研究調査によって明らかにされています(宇都宮大・小宮氏)。
これらの肥満傾向や体力低下の要因としては、生活の利便化や生活様式、ライフスタイルの変化に伴って日常生活において身体を動かす機会が減少したことが考えられます。
大人を対象にして、「自分の子供の頃に比べて子どものスポーツや外遊びの環境がどう変化したように感じるか」という調査では、「どちらかといえば悪くなった」という意見が大半を占めています。
具体的には、場所、時間、友達が少ないように思うということで、これらの「遊ぶ時間、遊ぶ場所(空間)、遊ぶ相手(仲間)」という「3間」が少なくなっているように感じられます。
空間自体は減っていない
では実際はどうなのかということで調べてみると、公園の面積、要するに空間自体は減っておらず、むしろ年々増加傾向にあることがわかりました。
公園によっては「ボール投げ禁止」などのルールが定められているところもありますが、場所自体は決して減っていない。
では時間はどうかという点を見ると、40%の子供が小学校入学前から習い事をしているというデータがあります。これは驚くべきことです。
その後、小学校低学年~高学年にかけては80%以上が習い事を始めています。
公園によっては「ボール投げ禁止」などのルールが定められているところもありますが、場所自体は決して減っていない。
では時間はどうかという点を見ると、40%の子供が小学校入学前から習い事をしているというデータがあります。これは驚くべきことです。
その後、小学校低学年~高学年にかけては80%以上が習い事を始めています。
体力に対する価値観の問題
これらに関して、ライフスタイルの変化による影響だけではなく、体力が軽視されてしまうような価値観があるのではないかとも考えられます。
外遊びやスポーツの重要性が、国語、算数、理科、社会などの学力と比べて無意識に軽視されてしまう。
学力調査と体力調査の上位に名を連ねる秋田県と福井県を対象にした調査では学力と体力の間には強い関係性があり、学力が高いほど体力が高いという相関関係が見られたという報告もあります。
これについて、専門家は次のようにコメントしています。
「日常的に体を動かすことで早寝早起きといった生活習慣が身につきやすい。そういう子どもは体の調子が良く、学習にもつながる(東海大、現:静岡産業大・小澤氏)」
「運動は脳を活性化して意欲を高める。波及効果として学力が上がる(東京大、現:静岡産業大・小林氏)」
これらの事からも、子どもの理想的な健康像として定期的な運動習慣の定着と規則正しい生活習慣が重要であるといえます。
外遊びやスポーツの重要性が、国語、算数、理科、社会などの学力と比べて無意識に軽視されてしまう。
学力調査と体力調査の上位に名を連ねる秋田県と福井県を対象にした調査では学力と体力の間には強い関係性があり、学力が高いほど体力が高いという相関関係が見られたという報告もあります。
これについて、専門家は次のようにコメントしています。
「日常的に体を動かすことで早寝早起きといった生活習慣が身につきやすい。そういう子どもは体の調子が良く、学習にもつながる(東海大、現:静岡産業大・小澤氏)」
「運動は脳を活性化して意欲を高める。波及効果として学力が上がる(東京大、現:静岡産業大・小林氏)」
これらの事からも、子どもの理想的な健康像として定期的な運動習慣の定着と規則正しい生活習慣が重要であるといえます。
基礎的な運動能力としての投動作
昔の記録から比較していくと運動能力はどんどん低下していって、近年は低下が止まったというより底を尽いたという表現が近いかと思います。
また栃木の話で恐縮ですが、栃木県では中学二年の男子において、ボール投げで4年連続の全国最下位となっています。
しかし40~50年前の栃木県のボール投げのデータと全国平均を比べてみると、40~50年前は現在の全国一位よりも高かったことがわかりました。この時代の体力を目指したいところです。
体力的な部分だけでなく動きの部分も拙くなってきているので、動きの習熟度も上げていく必要があります。
また栃木の話で恐縮ですが、栃木県では中学二年の男子において、ボール投げで4年連続の全国最下位となっています。
しかし40~50年前の栃木県のボール投げのデータと全国平均を比べてみると、40~50年前は現在の全国一位よりも高かったことがわかりました。この時代の体力を目指したいところです。
体力的な部分だけでなく動きの部分も拙くなってきているので、動きの習熟度も上げていく必要があります。
幼児期(3.4.5歳)における動作発達得点の変化
7種類の基本動作(疾走・跳躍・投球・捕球・まりつき・前転・平均台歩行)を各5点として合計35点満点で評価するテストの結果を1985年と2007年で比較すると、現代の子どもは動きの発達が遅れていて、5才児では10点以上の差ができていることがわかります。これにより現代の子はパフォーマンスも低いし、動作も拙いといえます。
これらの結果に対し、「運動能力のバランスの取れた発達という観点からすると、とくに投能力を高めることが必要(尾縣ら 2001)」「家庭よりも学校など公共の場における身体活動が投動作の発達へと強く結びつく(海老原 1989)」という提言もあります。
運動指導は投動作に限らず、観察が主になります。
では、どうやって観察するか。
基本的には指導者側の理想とするイメージと照らし合わせて判断していくのですが、小学校においては必ずしも体育を専門とする先生ではなく、運動指導が必ずしも得意というわけでもない。
そこで、学習の目標とすべき動作をつくり出すために「複数の熟練者の動作を平均化した動作モデル(Ae et al.1999)」という方法を応用できないかと考えました。
もしそれができれば学校体育の中で理想的な形を示すことができるようになります。
学校教育の中で「学習指導要領」というものがあるのですが、これらは文字ベースなのでわかりにくく、動きが伝えにくいのです。
続きは近日公開!
これらの結果に対し、「運動能力のバランスの取れた発達という観点からすると、とくに投能力を高めることが必要(尾縣ら 2001)」「家庭よりも学校など公共の場における身体活動が投動作の発達へと強く結びつく(海老原 1989)」という提言もあります。
運動指導は投動作に限らず、観察が主になります。
では、どうやって観察するか。
基本的には指導者側の理想とするイメージと照らし合わせて判断していくのですが、小学校においては必ずしも体育を専門とする先生ではなく、運動指導が必ずしも得意というわけでもない。
そこで、学習の目標とすべき動作をつくり出すために「複数の熟練者の動作を平均化した動作モデル(Ae et al.1999)」という方法を応用できないかと考えました。
もしそれができれば学校体育の中で理想的な形を示すことができるようになります。
学校教育の中で「学習指導要領」というものがあるのですが、これらは文字ベースなのでわかりにくく、動きが伝えにくいのです。
続きは近日公開!