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水分補給と筋発達

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掲載日:2016.09.07
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水は大切な栄養素

ボディビルダーのほとんどが、炭水化物、たんぱく質、そして脂肪のグラム数を中心に、栄養素の計算を行っていると思います。しかし僕の見たところ、多くのボディビルダーは体にとって最も大切な“水”を十分に取っていないようです。

水は体にとって最も大切な栄養素です。脳の75%は水でできていますし、血液の82%、筋肉の70%が水なのです。このように、水は筋細胞を含むすべての細胞中に存在します。そして、細胞が栄養素を受け取り、老廃物を輩出する媒体の役目を果たしているのです。

体内で起こるすべての化学反応には、水が関係しています。毎日、あなたの気が付かないうちに体内では何億という化学反応が起こっています。これにはたんぱく合成や、脂肪分解に必要な化学反応も含まれます。ですから、ずいぶんの欠乏は化学反応を遅らせ、スポーツパフォーマンスにネガティブな作用を及ぼします。逆に、水を十分に取っていれば、これらの化学反応が最も望ましいスピードで効率よく起こるのです。このように、十分に水を取っているビルダーは、慢性的にずいぶんが不足しているビルダーよりも、ハードにトレーニングすることができますし、発達も早いのです。

では、水が体にとっていかに大切か、という例を挙げてみましょう。

たとえ十分なカロリーが取れていなくとも、ハードにトレーニングすることは可能です。しかし、2日間水を飲まずにいたら、トレーニングするエネルギーは全くなくなってしまうでしょう。人間の体は、食物なしでも脂肪を使って数週間は生きられるようにできています。しかし、水を取れなかった場合、10日ももたないでしょう。
また、運動している者は、していない者よりずっと多くの水を必要とします。なぜなら汗をかくことによって、大量の水分とミネラルが失われるからです。ですから、運動している者が水を取らなければ、5日以内に死んでしまうかもしれません。

平均的な成人の場合、一日に最大2リットルの水を消費、排出します。しかし、ボディビルダーの場合は、これよりずっと多くの水が必要です。つまり、筋量が多ければ多いほど、それだけ多くの水が必要となるのです。

体重70kgでトレーニングを行っていない平均的な男性は、93kgあるボディビルダーの3分の1の量、140kgあるボディビルダーの半分の量しか水を必要としません。それに、ボディビルダーは座りがちな人よりたくさん汗をかくので、余計に水分が失われてしまいます。さらに、ウェイトトレーニングは、体内で何千という化学反応を引き起こします。このことだけでも、水分の必要量を爆発的に増やすのです。また、熱い場所でトレーニングしているビルダーは、さらに多くの水を失っていると思わなければなりません。

では一体、一日にどのくらい水を取ったらよいのでしょうか。最低限度の目安を示しておきましょう。
体重(kg)必要な水分量(リットル)
45~684
69~915
91以上6
多くの人にとって喉の渇きは、体が水を必要としているというシグナルです。こののどが渇くという感覚は、血中の塩分量によってコントロールされています。塩分量が多ければ脳に指令が送られ、それは喉の渇きとして体験されます。

血中の塩分はまた、口の渇きを起こし、これはもっと水を飲めという合図になります。しかし多くのボディビルダーは塩分の低い食事をしています。ですから、喉の渇きが常に信頼できるシグナルだとは限りません。喉や口が渇かなくても、細胞レベルで水分が不足していることがあるのです。

また、塩分を多めに取っているボディビルダーは、電解質バランスを保ち、塩分を体外へ排出するために、より多くの水を取らねばなりません。もし塩分の高い食事をしているのに、その塩分を体外へ排出するのに十分なだけの水を取らなかった場合、体はスムーズに見えてしまいます。

それに、以前にも述べたことがありますが、ボディビルダーには除脂肪体重1kgあたり少なくとも2gのたんぱく質が必要です。このように高タンパクを摂取する場合にも、十分な水を取ることが必要になります。これは、たんぱく質が代謝されるときに生じた老廃物を排出する役目を担う腎臓をサポートするためなのです。
喉が渇いていなくとも、細胞レベルで水分が不足していることがあります

喉が渇いていなくとも、細胞レベルで水分が不足していることがあります

水は取り過ぎるという事がありません。人間の体は、余分な水をサッと排出するようにできています。

細胞への水分補給と筋発達

スポーツ栄養学における最新の進歩の一つに、“セル・ボリューマイジング(cell volumizing)”があげられます。セル・ボリューマイジングとは、筋細胞中に含まれる水の量を表すのに使われる言葉です。細胞中の水のレベルが高い場合、筋発達が起こりますが、低い場合には筋発達が止まってしまうことがわかっています。

筋発達の為には、細胞を膨張させておくことです。細胞が膨らめば、たんぱく合成やグリコーゲン合成が促進され、筋グリコーゲンの分解が妨げられるからです。

筋細胞を膨張させておくもっとも簡単な方法は、毎日水をたっぷり取ることです。次に、あなたの食事が十分な炭水化物とたんぱく質を含み、なおかつこれらが毎回の食事にふたつ一緒に含まれているかどうか確認しましょう。炭水化物とたんぱく質の組み合わせは、インスリンの分泌を促進します。インスリンは、炭水化物を筋肉に運び、グリコーゲンを作ります。
グリコーゲンとは、炭水化物が蓄えられるときの形です。このグリコーゲンは大量の水を筋肉へ引き付けます。このことは、筋肉の分解を防ぎながら筋発達を促すことを意味します。

インスリンはまた、アミノ酸を筋肉へ運びます。アミノ酸、特にブランチド・チェーン・アミノ・アシッド(BCAA)は、筋肉を発達可能状態にするシグナルとなります。

ナトリウムは、一般に筋細胞の外に存在するミネラルですが、インスリンは炭水化物とタンパク質を筋肉へ運ぶときに、このナトリウムも引っ張り込みます。ナトリウムが筋細胞中に入れば、そのナトリウムを薄めるために、水が細胞中へ流れ込みます。(ナトリウムは細胞外にあるべきで、細胞中にあるべきではないため)これはさらなるセル・ボリューマイジングを引き起こします。

セル・ボリューマイジングを引き起こすためにできる事のラストは、サプリメントを使うことです。OKGはアミノ酸の一種であるグルタミンの前駆物質です。ブランチド・チェーン・アミノ・アシッドもまた、グルタミンのレベルを高く保つのに役立ちます。BCAAは、グルタミンを合成するために、筋肉中で使われます。BCAAやOKGを取ることによってグルタミンの合成が高まればより多くのBCAAが細胞中に運び込まれ、さらなる膨張を促します。また、グルタミンのレベルが高いと、理想的な発達が起こりますが、グルタミンのレベルが非常に低い場合、たとえカロリー、炭水化物、そしてたんぱく質が十分に取れていても筋肉をつけることは不可能です。

ボディビルダーの多くがより良いワークアウトを行うために、カフェインピル、コーラナッツ、コーヒー、エフェドリン、マオウ等を使っています。これらの製品は体から水を奪うので、必ずおぎなうようにしてください。最後に、食べ過ぎると、体が一定以上のグルタミンレベルを保つことができない状態になります。食べ過ぎはボディビルダーにとって望ましくありませんから、避けるよう努めましょう。

  • ■究極の筋肉を作り上げるためのボディビルハンドブック
    2013年6月20日第6版発行
    著者:クリス・アセート
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社

[ 究極の筋肉を作り上げるためのボディビルハンドブック ]