筋肉ドクターの健康道~ボディビル医学について 人にとって最適な食事とは!
小島 央(こじま・ひさし)誕生日:昭和45年12月28日(38歳)
職業:整形外科医 趣味:健康(筋トレ)
ボディビルディング初出場の2007年ミスター京都でベストルーキー賞受賞資格:医師、日本体育協会認定スポーツドクター 現在、外来診療の他にセミナー活動、腰痛・膝関節痛のある高齢者に運動指導、(オリジナルマシーン製作計画中)、等をしている。
ホームページアドレスhttp://ironclinic.com[ 月刊ボディビルディング 2009年4月号 ]
掲載日:2017.06.13
第三回 人にとって最適な食事とは!
またまた、こんにちは。前回は私が今までに感じてきたトレーニングについての考えをお話しました。今回は皆さんがトレーニング以上に情報の洪水に混乱しまくっている(?)食事についての話をしたいと思います。
どういう食事が良い食事か?と思うと、例に漏れず皆さん「科学的なもの」と考えますね。
栄養学的に栄養成分が何が入っていて、蛋白質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルがうんぬん…。結局、次々に新しいサプリは発売されるわ、新しい物質が紹介されるわで、何が良いのやら、寒天やら納豆やらバナナやら混乱しているダイエット好きの女性も多いと思います。また、統計学的にどういう食事を摂っている人が「こんな病気になりにくいからどうのこうの」とか考えたり。しかし、結構完璧な客観的統計ってのは難しいようです。
例えばコーヒーの効果を見ようと思っても、クリームや砂糖を入れている人のクリームや砂糖の効果を除いて統計処理されているかのとか、サラダにしても、ドレッシングの効果を除いているのかとか。完壁に突っ込みに耐えられる研究は難しいみたいです。
しかも、研究によっては正反対の結果が出ることも多々あり、研究にお金が掛かるから、お金を出したところが望む結果を出しているのではないか?ともいぶかしめるのです。
そんなことを考えてみると本当に信じられる客観性のある科学的データが出るまでは、良い食事とはいったい何なのか分からないのです。
しかし、よく考えてみると、栄養学も統計学も知らない野生動物たちは、肥満やメタボも知らずに元気よく生きているように見られます。
草食動物は蛋白質が足りているかとか、ネズミのビタミンC摂取量が足りているかとか、彼らはそんなことを何も考えていないはずなのに、バランスがとれているように見えます。
どういう食事が良い食事か?と思うと、例に漏れず皆さん「科学的なもの」と考えますね。
栄養学的に栄養成分が何が入っていて、蛋白質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルがうんぬん…。結局、次々に新しいサプリは発売されるわ、新しい物質が紹介されるわで、何が良いのやら、寒天やら納豆やらバナナやら混乱しているダイエット好きの女性も多いと思います。また、統計学的にどういう食事を摂っている人が「こんな病気になりにくいからどうのこうの」とか考えたり。しかし、結構完璧な客観的統計ってのは難しいようです。
例えばコーヒーの効果を見ようと思っても、クリームや砂糖を入れている人のクリームや砂糖の効果を除いて統計処理されているかのとか、サラダにしても、ドレッシングの効果を除いているのかとか。完壁に突っ込みに耐えられる研究は難しいみたいです。
しかも、研究によっては正反対の結果が出ることも多々あり、研究にお金が掛かるから、お金を出したところが望む結果を出しているのではないか?ともいぶかしめるのです。
そんなことを考えてみると本当に信じられる客観性のある科学的データが出るまでは、良い食事とはいったい何なのか分からないのです。
しかし、よく考えてみると、栄養学も統計学も知らない野生動物たちは、肥満やメタボも知らずに元気よく生きているように見られます。
草食動物は蛋白質が足りているかとか、ネズミのビタミンC摂取量が足りているかとか、彼らはそんなことを何も考えていないはずなのに、バランスがとれているように見えます。
では、人間は何を食べたら良いのでしょうか?そこで、KIS原則として、要素還元論や統計に頼らず、人間の歴史から最適な食物を考えてみましょう。
こういう風に歴史などから考えるというと、たいてい「科学的ではない」と批判を受けるのですが、そう、要素還元論や統計などに頼らないという意味で科学的ではありません。ただ、自然に単純に考えるだけです。
現在の人間の食べ物というのは外食や手料理が当てはまりますが、私の子供の頃と今を比較しても、全然違う食品が氾濫しています。私が子供の頃にはナタデココなんて珍しかったし、ティラミスやパンナコッタなんて食べたこと無かったし、マクドナルドやモスバーガー、吉野家や松屋などのファーストフードなんてそんなに無かったし、もちろん蒟蒻ゼリーも無かったしお菓子類も年々色々なものが発売されています。
その中で、何が最適な食事かと考えると、ずっと昔から同じようなものを食べている野生動物の方が太るようなものを食べているわけですから、健康的な食生活ではないかと思われます。
こういう風に歴史などから考えるというと、たいてい「科学的ではない」と批判を受けるのですが、そう、要素還元論や統計などに頼らないという意味で科学的ではありません。ただ、自然に単純に考えるだけです。
現在の人間の食べ物というのは外食や手料理が当てはまりますが、私の子供の頃と今を比較しても、全然違う食品が氾濫しています。私が子供の頃にはナタデココなんて珍しかったし、ティラミスやパンナコッタなんて食べたこと無かったし、マクドナルドやモスバーガー、吉野家や松屋などのファーストフードなんてそんなに無かったし、もちろん蒟蒻ゼリーも無かったしお菓子類も年々色々なものが発売されています。
その中で、何が最適な食事かと考えると、ずっと昔から同じようなものを食べている野生動物の方が太るようなものを食べているわけですから、健康的な食生活ではないかと思われます。
では、どうやって人間は進化してきたのでしょうか?
ここで、ダーウィンの進化論についてお話しましょう。私は進化論の専門家でも何でも無いですが、KIS原則的に感じるところを話させて頂きます。
まず、もともと思われていたキリスト教的(?)な世界観では、神が世界を作り、全ての生物種も一斉に神が造ったという考えがあったそうです。そして今でも、生物の起源は知的設計説という、神のようなものが創ったという考え方が完全に否定できないようです。そこに″進化論″なるものをラマルクさんか誰かが言い出しました。「ある一つの生物種からいろいろなものに分化進化してた」という話です。ラマルクさんは要不要説と言って、獲得形質…、要するに、よく勉強した親の子はよく勉強できるとか、筋トレしてムキムキの親の子はムキムキに生まれるとかいう話をしましたが、ダーウィンが「獲得形質は遺伝しない」というのを発表して、そちらに軍配が挙がったようです。しかしこの「獲得形質は遺伝しない」というのも今でも完全に否定はされていないようです。
ダーウィンの進化論ですが、私の浅い知識によりますと、突然変異、生存競争の中で自然淘汰(自然選択)を繰り返し、適者生存していくというものです。これに異論を投げかけたのが、今西錦司さんという方です。私は、今西さんの進化論を聞いて、これこそ進化論だと感じました。晩年、御自分で「自然学」という学問を作ろうとなさった今西さんの進化論はとても自然です。ダーウィンの進化論は一見自然に感じますが、私はそれを聞いて違和感を感じました。
今西さんは冒険家、探検家でもあり、自然を観察しているうちにダーウィンの進化論に違和感を抱いたそうです(ダーウィンもガラパゴス諸島で自然を観察したようですが)。
まず「突然変異が進化に影響するか」という話ですが、確かにダーウィン時代には遺伝子のことは解っていなかったのですが、遺伝子が変わる進化を起こそうと思うと、現在の知見では、メンデルの法則に基づき両親からの遺伝形質をもらい子供が生まれるという、それぞれの親の遺伝形質の範囲でしか変異しないわけですから、それが変わるとなると、突然変異くらいでしか説明できないような気がします。
しかし、突然変異で優性な種が生まれるという現象は現在観察されていないようで、ほとんどの遺伝子異常は遺伝子病ですし、突然変異は種の中の一個体に起こることで、種の進化に影響するかという疑間があります。
ということで、私の自然な考えも、突然変異が進化に影響しないという感覚を持ちました。
ここで、ダーウィンの進化論についてお話しましょう。私は進化論の専門家でも何でも無いですが、KIS原則的に感じるところを話させて頂きます。
まず、もともと思われていたキリスト教的(?)な世界観では、神が世界を作り、全ての生物種も一斉に神が造ったという考えがあったそうです。そして今でも、生物の起源は知的設計説という、神のようなものが創ったという考え方が完全に否定できないようです。そこに″進化論″なるものをラマルクさんか誰かが言い出しました。「ある一つの生物種からいろいろなものに分化進化してた」という話です。ラマルクさんは要不要説と言って、獲得形質…、要するに、よく勉強した親の子はよく勉強できるとか、筋トレしてムキムキの親の子はムキムキに生まれるとかいう話をしましたが、ダーウィンが「獲得形質は遺伝しない」というのを発表して、そちらに軍配が挙がったようです。しかしこの「獲得形質は遺伝しない」というのも今でも完全に否定はされていないようです。
ダーウィンの進化論ですが、私の浅い知識によりますと、突然変異、生存競争の中で自然淘汰(自然選択)を繰り返し、適者生存していくというものです。これに異論を投げかけたのが、今西錦司さんという方です。私は、今西さんの進化論を聞いて、これこそ進化論だと感じました。晩年、御自分で「自然学」という学問を作ろうとなさった今西さんの進化論はとても自然です。ダーウィンの進化論は一見自然に感じますが、私はそれを聞いて違和感を感じました。
今西さんは冒険家、探検家でもあり、自然を観察しているうちにダーウィンの進化論に違和感を抱いたそうです(ダーウィンもガラパゴス諸島で自然を観察したようですが)。
まず「突然変異が進化に影響するか」という話ですが、確かにダーウィン時代には遺伝子のことは解っていなかったのですが、遺伝子が変わる進化を起こそうと思うと、現在の知見では、メンデルの法則に基づき両親からの遺伝形質をもらい子供が生まれるという、それぞれの親の遺伝形質の範囲でしか変異しないわけですから、それが変わるとなると、突然変異くらいでしか説明できないような気がします。
しかし、突然変異で優性な種が生まれるという現象は現在観察されていないようで、ほとんどの遺伝子異常は遺伝子病ですし、突然変異は種の中の一個体に起こることで、種の進化に影響するかという疑間があります。
ということで、私の自然な考えも、突然変異が進化に影響しないという感覚を持ちました。
今西錦司(いまにしきんじ/1902~1992)
日本の霊長類学の創始者。生態学者。人類学者。京都大学教授
生物の社会は競争によって成り立っているとするダーウィンの論説に対して、今西錦司氏は「生物の社会(世界)は競争ではなく、種ごとに棲み分けをしており、それらの種はそれぞれの種ごとにあるとき劇的に変化する」という種ごとの棲み分けを基礎にすえてく’種社会’論>を展開した
では、どうやって遺伝子が変わるような進化が起こるの?という疑間に対し今西さんは「何百何千何万回と進化を繰り返してきた生物は、進化するべくして進化する機能がある」とおっしゃったようで、それで今西さんは非科学的だと排斥されたようです。でも、おっしゃることは最もだと私は思います。進化できるように出来てなかったら、進化する訳ないですよね。メカニズムが不明でも。
次に、「変異した種が生競争で生き残った適者が生存する」という考え方です。要するに、擬態などで見つかりにくくなった種が、捕食者に食べられずに生き残る、という考え方です。強いものが生き残るのではなく、適応したものが生き残る。自然選択(淘汰)という考え方ですね。
これは一見正しそうです。しかし、今西さんが言うには「生態系において被捕食者は捕食者より圧倒的に数が多いので、少々食べられようが、適応しなくても食べられない被捕食者が多く、捕食者に食べられるかどうかは運次第なところもある」のだそうです。草食動物がどれだけ足が速くても、肉食動物に食べられる場合がある、ということです。適応してどんどん足が速くなって食べられなくなっても、数が増えすぎて困りますし、逆に食べられすぎて被捕食者がいなくなったら捕食者も飢餓で絶滅しますからね…。
ということで、自然選択説は間違っているだろうと私は思います。
今茜錦司さんの進化論は「棲み分け理論」という考え方です。これは今西さんがカゲロウの研究をしていて、川の深さによってカゲロウの形態が異なっているのに注目し、別の環境に住んでいる同種が別々に棲み分けることにより主体性を持って別の種に進化していくという理論です。レオポンという動物がいますが、レオポンはライオンとヒョウの相の子で、もともと同種だったものがライオンとヒョウに棲み分かれて進化したけれど、まだ似たところがあるのでレオポンが生まれるのではないかと今西さんは考えています。しかも、こういう間の子は一代くらいで終わってしまうので、次の世代が生まれないそうです。種が微妙に違うからだと、今西さんは考えたようです。同様に自熊とヒグマも、 一代なら間の子が生まれるそうです。だから、もともと同種だと予想されています。このように、棲み分けることで進化が起こるというのが自然な考え方だと思うのです。
しかし、現在の進化論では、鳥が何故飛ぶようになったのかといった、大きな変化である大進化というものが説明できないそうです。飛ぶ前の鳥類や、首が長くも短くもないキリンも化石が見つからないそうで、大進化は説明不可能のようです。突然変異というダーウィン論を使った方が大進化の説明はしやすいのかもしれませんが、中間の種が見つからないので、大進化は謎だそうです。
「肉食動物がどうして肉を食べだしたか?」ということについても、今西さんは解説していました。なぜ牙が出来、歯がとがり、腸が短くなったのか?これも、大進化だそうです。
この今西進化論が正しいと考えると、人間が突然、加工食品を食べたり、家畜動物を食べだしたりしたというのには大進化が必要になります。
ダーウィンの進化論が正しいなら、「突然変異でそんなものを食べる種が出た」と簡単に説明できるかもしれませんが、今西さんの進化論で考える″ヒト″は消化器構造がチンパンジーとほぼ同じということですので、我々はまだチンパンジーから消化器構造は大進化していないと考えられます。
次に、「変異した種が生競争で生き残った適者が生存する」という考え方です。要するに、擬態などで見つかりにくくなった種が、捕食者に食べられずに生き残る、という考え方です。強いものが生き残るのではなく、適応したものが生き残る。自然選択(淘汰)という考え方ですね。
これは一見正しそうです。しかし、今西さんが言うには「生態系において被捕食者は捕食者より圧倒的に数が多いので、少々食べられようが、適応しなくても食べられない被捕食者が多く、捕食者に食べられるかどうかは運次第なところもある」のだそうです。草食動物がどれだけ足が速くても、肉食動物に食べられる場合がある、ということです。適応してどんどん足が速くなって食べられなくなっても、数が増えすぎて困りますし、逆に食べられすぎて被捕食者がいなくなったら捕食者も飢餓で絶滅しますからね…。
ということで、自然選択説は間違っているだろうと私は思います。
今茜錦司さんの進化論は「棲み分け理論」という考え方です。これは今西さんがカゲロウの研究をしていて、川の深さによってカゲロウの形態が異なっているのに注目し、別の環境に住んでいる同種が別々に棲み分けることにより主体性を持って別の種に進化していくという理論です。レオポンという動物がいますが、レオポンはライオンとヒョウの相の子で、もともと同種だったものがライオンとヒョウに棲み分かれて進化したけれど、まだ似たところがあるのでレオポンが生まれるのではないかと今西さんは考えています。しかも、こういう間の子は一代くらいで終わってしまうので、次の世代が生まれないそうです。種が微妙に違うからだと、今西さんは考えたようです。同様に自熊とヒグマも、 一代なら間の子が生まれるそうです。だから、もともと同種だと予想されています。このように、棲み分けることで進化が起こるというのが自然な考え方だと思うのです。
しかし、現在の進化論では、鳥が何故飛ぶようになったのかといった、大きな変化である大進化というものが説明できないそうです。飛ぶ前の鳥類や、首が長くも短くもないキリンも化石が見つからないそうで、大進化は説明不可能のようです。突然変異というダーウィン論を使った方が大進化の説明はしやすいのかもしれませんが、中間の種が見つからないので、大進化は謎だそうです。
「肉食動物がどうして肉を食べだしたか?」ということについても、今西さんは解説していました。なぜ牙が出来、歯がとがり、腸が短くなったのか?これも、大進化だそうです。
この今西進化論が正しいと考えると、人間が突然、加工食品を食べたり、家畜動物を食べだしたりしたというのには大進化が必要になります。
ダーウィンの進化論が正しいなら、「突然変異でそんなものを食べる種が出た」と簡単に説明できるかもしれませんが、今西さんの進化論で考える″ヒト″は消化器構造がチンパンジーとほぼ同じということですので、我々はまだチンパンジーから消化器構造は大進化していないと考えられます。
プロテインがどうのこうのとか、ビタミン、ミネラルがどうのこうのとか、どういう食事を摂っている人が健康的かなどと統計を取らなくても、そういうことが解りますよね。
つまり私たちは、チンパンジーの食事や、人間はチンパンジーからどう分化して現在の隆盛を誇る種になり得たか?ということを考えなくてはなりません。
蛋白質、プロテインをガンガン摂取しまくっている読者の方が多いと思いますが、そういうボディビルダー、ボディビルキッズの方々に、何!チンパンジーに近い食事が最適な栄養!!と衝撃を与えたところで食事の話。前編を終了します。次回も食事の話の続きということで。
つまり私たちは、チンパンジーの食事や、人間はチンパンジーからどう分化して現在の隆盛を誇る種になり得たか?ということを考えなくてはなりません。
蛋白質、プロテインをガンガン摂取しまくっている読者の方が多いと思いますが、そういうボディビルダー、ボディビルキッズの方々に、何!チンパンジーに近い食事が最適な栄養!!と衝撃を与えたところで食事の話。前編を終了します。次回も食事の話の続きということで。
- 小島 央(こじま・ひさし)誕生日:昭和45年12月28日(38歳)
職業:整形外科医 趣味:健康(筋トレ)
ボディビルディング初出場の2007年ミスター京都でベストルーキー賞受賞資格:医師、日本体育協会認定スポーツドクター 現在、外来診療の他にセミナー活動、腰痛・膝関節痛のある高齢者に運動指導、(オリジナルマシーン製作計画中)、等をしている。
ホームページアドレスhttp://ironclinic.com
- 小島 央(こじま・ひさし)誕生日:昭和45年12月28日(38歳)
[ 月刊ボディビルディング 2009年4月号 ]