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モリブデンとリンの摂取

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掲載日:2020.11.05
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モリブデン

モリブデンは核酸の代謝においてプリン体を分解するときに働く酵素「キサンチンオキシダーゼ」の補因子となります。
プリン体はヒポキサンチンになり、ヒポキサンチンがキサンチンになり、キサンチンが尿酸になって排出されます。モリブデンはヒポキサンチンがキサンチンになる代謝と、キサンチンが尿酸になる代謝の両方で働きます。
またアルコール代謝で有名なアセトアルデヒドや亜硫酸の解毒にも関係します。
なおカンジダになりやすい人はアセトアルデヒドの解毒が上手くいっていない可能性がありますので、モリブデンを摂取すると良いかもしれません。アセトアルデヒドを酢酸に変え、排出するのを手伝ってくれます。
さらにモリブデンはNADPHオキシダーゼの構成物質でもあるため、ミトコンドリアにおけるエネルギー産生にも必要とされます。モリブデンの必要量は微量であり、食事から十分に摂取できるため、通常は不足することはありません。
ただし土壌や飲料水中にモリブデンが少ない地域では食道がんの発生が多いという報告や、完全静脈栄養などでモリブデンが不足した場合は尿酸の減少や神経症状が起こるとも言われています。
モリブデンは過剰に摂取してもすぐに排出されるため、副作用の心配は要りません。

リン

カルシウムの次に体内に多く存在するミネラルがリンです。リンのうち8割はマグネシウムやカルシウムと結合した「ヒドロキシアパタイト」として骨や歯に存在します。
残りの2割は核酸や細胞膜のリン脂質などとして存在しています。ATPは「アデノシン3リン酸」であり、これからリン酸が一つ外れてADP(アデノシン2リン酸)になることで、エネルギーが放出されます。

リンは「リン酸塩」とか「ポリリン酸」などとして食品添加物に含まれ、pHを調整したり酸味を加えたり、保存性を高めたり、水に溶けにくい物質を分散させたり、食肉を柔らかくしたりする働きを持っています。リンはカルシウムとのバランスが重要で、「カルシウム:リン」は1:1~2:1であることが求められます。そのため添加物からリンを大量に摂取するとカルシウムとのバランスが崩れ、腎機能の低下や副甲状腺機能の亢進、カルシウムの吸収抑制などが起こりかねません。
厚生労働省によるリンの一日の摂取目安量は1000mg前後で、国民健康・栄養調査による実際の摂取量もちょうどそれくらいです。しかし加工食品に添加されているリンの量は加算されていないため、実際のリン摂取はもっと多いものと思われます。
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


[ アスリートのための最新栄養学(上) ]