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硫黄と塩素

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掲載日:2020.11.26
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硫黄

体内に存在する硫黄を含む物質としては、コンドロイチン硫酸や含硫アミノ酸(メチオニンやシステイン)、ビタミンB1などが有名です。硫黄原子は外側に多くの電子を持っているため、他の物質と反応しやすく、体内に存在する量は少ないのですが、非常に多くの反応で利用されています。特にシステインはグルタチオンの材料となって活性酸素を除去したり解毒作用を行ったりする他、ホルモンの生合成にも関わってきます。含硫アミノ酸の硫黄原子は代謝の途中で硫酸イオンになり、硫酸イオントランスポーターによって細胞内に取り込まれ、硫酸基転移反応によってステロイドホルモンやカテコールアミン、GAG(グリコサミノグリカン)などに変化していきます。(※97,※98)ただし硫酸イオンはそのままでは使うことができないため、これらの反応においては硫酸イオンを活性硫酸(PAPS;3’ホスホアデノシン-5’ホスホ硫酸)にする必要があり、このときにATPが2分子使われます。このことからも、いかに硫黄が重要であるかが推察されるかと思います。含硫アミノ酸を含む食品を食べていれば、硫黄が不足することはありません。卵や牛肉などを食べておけば十分です。なお拙著「タンパク質とアミノ酸 前編」や「タンパク質とアミノ酸 後編」でメチオニンやシステインなどについて詳しく解説しています。

塩素

ナトリウムの項で解説したとおり、「塩」はナトリウムと塩素が結合したものです。体内では塩化物イオンの形で存在し、胃酸の材料になります。塩素は殺菌作用が有名で、水道水やプールの殺菌に使われることは知っている人も多いでしょう。塩素が水に溶けると「次亜塩素酸」になり、これに殺菌作用があるのです。夏バテで食欲が減退するのは、水分の摂り過ぎで体内からナトリウムと塩素が喪われ、胃酸がスムーズに作られなくなることが関係しています。ナトリウムの項で書いた通り、汗を大量にかくような時期は、食塩をしっかり補給することが大事です。味噌汁を飲んだり、味付けを濃い目にしたりすることで、夏でも食欲を維持することが可能になります。塩素も極端な減塩をしたり、汗を大量にかいたりしなければ不足することはありません。



※97: Role of sulphate in development. Reproduction. 2013 Jul 29; 146( 3): R 81-9. doi: 10. 1530/ REP-13-0056. Print 2013 Sep.

※98: Sulfotransferases, sulfatases and formylglycine-generating enzymes: a sulfation fascination. Curr Opin Chem Biol. 2008 Oct; 12( 5): 573-81. doi: 10. 1016/ j. cbpa. 2008. 06. 018.