第三十五回
新サプリメント・トピックス β-アラニン
[ 月刊ボディビルディング 2013年2月号 ]
掲載日:2017.07.27
β-アラニン
私がサプリメントの事業を立ち上げた頃に比べると、日本のサプリメントも随分と進んだと実感します。当時はクレアチンを知る人もあまりおらず、その多くが海外製品でした。またBCAAの効果や飲み方もあまり浸透しておらず、値段が高価なこともあってか、数グラムを慎重に飲んでいたことを思い出します。
一方で、OKGやDHEAなどの食品として認可を受けていない製品も普通に店頭に並んでいたりと、玉石混交といった感じだったように思います。
その後、COQ10、カルニチン、αリポ酸、シトルリン、HMβと、色々な素材が食品として使えることとなり、サプリメント市場も活性化してきました。
アメリカ市場の動向や原料メーカーからの情報など、常にアンテナをはりながら日々新たな素材を意識していますが、最近注目の素材としてβ-アラニンをよく耳にします。
では、β-アラニンとは? タンパク質を構成しているアミノ酸ではありませんが、筋肉内のカルノシンやアンセリンの成分として使われ、また様々な組織の補酵素やパントテン酸などの成分である、そんなアミノ酸の一種です。
では実際、どのような効果を期待する素材なのでしょうか?
それを知るためには、カルノシンという素材を理解する必要があります。
カルノシンとは、アンセリンと親戚、いや兄弟のような近しい関係にある素材で、どちらもβ-アラニンとL-ヒスチジンが結合して出来たペプチドです。カルノシンは肉のエキスから発見され、アンセリンはガチョウの筋肉から発見されたジペプチドです。どちらも随分と昔に発見されたもので、どちらにもヒスチジンという必須アミノ酸を含むので、ヒスチジン含有ジペプチド(HCDP)と呼ばれています。
ひとつ面白いのが、人間、牛、馬、豚、といった哺乳動物の筋肉内のHCDPはカルノシンが大勢を占めているのですが、ウサギ、羊などの動物になるとカルノシンとアンセリンが同率くらいになって、これが鶏になるとアンセリンの比率がカルノシンを何倍も上回ってきます。そしてついにマグロなどの大型回遊魚になるとアンセリンがHCDPの大半になります。
HCDPには体内のPhを維持したり、デトックスや抗酸化などの機能があるため、ハードなトレーニングの際の抗疲労作用を中心に効果の研究が進められています。つまり、β-アラニンはカルノシンを体内に作る際の材料のひとつということになります。
カルノシンに期待される様々な効果の中で、トレーニングに絡めて関心が高いのが、Ph緩衝です。つまりトレーニングを続けていくとエネルギーの代謝物として乳酸が溜まってしまいます。乳酸は再度エネルギーとして利用されますし、乳酸を合図に成長ホルモンが分泌されるわけですから、決して悪者ではないのですが、少なくとも筋肉内を酸性に傾けてパフォーマンスを阻害するという点においてはなんとかしたい物質でもあります。特にボディビルダー的なトレーニングをするような場合は、乳酸が溜まるのは宿命といっても過言ではありません。乳酸と上手に付き合うことによって(乳酸を上手に処理することによって)、さらに運動強度をあげてトレーニングを行うことが可能となります。ではカルノシンを摂取すればいいのではないか!という発想になるかと思いますが、カルノシンも一旦、β-アラニンとヒスチジンに分解されて、再度合成されるというプロセスをたどります。そして何よりも作り手の立場からするとジペプチドは値段がかなり高くなってしまいます。そうなると、β-アラニンとヒスチジンを摂取した方が効率的かつ安価ではないかという発想になるかと思います。
さらに、ヒスチジンは必須アミノ酸ではありますが、実際には通常の食生活で十分に摂れているアミノ酸であり、また単独で過剰に摂取した際に、利用されきれずに分解されるとヒスタミンを作り出すことになってしまうのです。ヒスタミンはジンマシンなどアレルギーの元になる化学物質で、普段から体内に存在するものの、怪我や薬など何かのきっかけで活性化して悪さを働き始める物質です。
結論としては、ヒスチジンを必要以上に摂取する必要はなく、結果としてβ-アラニンを摂ることでカルノシンが増えていくと思われます。続いてβ-アラニンやカルノシンと相性の良い素材は何かないかという点についてです。
直接、一緒に摂取することで何かプラスや相乗効果を求めるのはなかなか難しいかと思いますが、乳酸という点に焦点を当てるのであれば、クレアチンはお勧めではないでしょうか。
体内でクレアチンが利用されている間は乳酸が出てきません。したがって、クレアチン摂取がしっかりと出来ている場合は乳酸が作り出されるタイミングが遅れます。ここに先ほどのカルノシン(β-アラニン)が続くことで、よりPhコントロールがうまく継続できるのではないかと思います。
試合や競技の際には乳酸は招かれざる客でありますが、一方でトレーニングとは乳酸を溜めることが目的であったりします。加圧式トレーニングなどはその典型かもしれません。乳酸を溜めず、あるいは上手に除去することで運動強度を更に高めていくという考え方が正しいかもしれません。
食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋、そしてバルクアップの秋です。上手にph維持をして、運動強度をぐんっとあげて、バルクアップを目指してください。
ボディビルのジャンルはスポーツでありますが、同時に芸術でもありますから、まさに秋が旬かもしれませんね。
江崎グリコ株式会社スポーツフーズ営業部
桑原弘樹
一方で、OKGやDHEAなどの食品として認可を受けていない製品も普通に店頭に並んでいたりと、玉石混交といった感じだったように思います。
その後、COQ10、カルニチン、αリポ酸、シトルリン、HMβと、色々な素材が食品として使えることとなり、サプリメント市場も活性化してきました。
アメリカ市場の動向や原料メーカーからの情報など、常にアンテナをはりながら日々新たな素材を意識していますが、最近注目の素材としてβ-アラニンをよく耳にします。
では、β-アラニンとは? タンパク質を構成しているアミノ酸ではありませんが、筋肉内のカルノシンやアンセリンの成分として使われ、また様々な組織の補酵素やパントテン酸などの成分である、そんなアミノ酸の一種です。
では実際、どのような効果を期待する素材なのでしょうか?
それを知るためには、カルノシンという素材を理解する必要があります。
カルノシンとは、アンセリンと親戚、いや兄弟のような近しい関係にある素材で、どちらもβ-アラニンとL-ヒスチジンが結合して出来たペプチドです。カルノシンは肉のエキスから発見され、アンセリンはガチョウの筋肉から発見されたジペプチドです。どちらも随分と昔に発見されたもので、どちらにもヒスチジンという必須アミノ酸を含むので、ヒスチジン含有ジペプチド(HCDP)と呼ばれています。
ひとつ面白いのが、人間、牛、馬、豚、といった哺乳動物の筋肉内のHCDPはカルノシンが大勢を占めているのですが、ウサギ、羊などの動物になるとカルノシンとアンセリンが同率くらいになって、これが鶏になるとアンセリンの比率がカルノシンを何倍も上回ってきます。そしてついにマグロなどの大型回遊魚になるとアンセリンがHCDPの大半になります。
HCDPには体内のPhを維持したり、デトックスや抗酸化などの機能があるため、ハードなトレーニングの際の抗疲労作用を中心に効果の研究が進められています。つまり、β-アラニンはカルノシンを体内に作る際の材料のひとつということになります。
カルノシンに期待される様々な効果の中で、トレーニングに絡めて関心が高いのが、Ph緩衝です。つまりトレーニングを続けていくとエネルギーの代謝物として乳酸が溜まってしまいます。乳酸は再度エネルギーとして利用されますし、乳酸を合図に成長ホルモンが分泌されるわけですから、決して悪者ではないのですが、少なくとも筋肉内を酸性に傾けてパフォーマンスを阻害するという点においてはなんとかしたい物質でもあります。特にボディビルダー的なトレーニングをするような場合は、乳酸が溜まるのは宿命といっても過言ではありません。乳酸と上手に付き合うことによって(乳酸を上手に処理することによって)、さらに運動強度をあげてトレーニングを行うことが可能となります。ではカルノシンを摂取すればいいのではないか!という発想になるかと思いますが、カルノシンも一旦、β-アラニンとヒスチジンに分解されて、再度合成されるというプロセスをたどります。そして何よりも作り手の立場からするとジペプチドは値段がかなり高くなってしまいます。そうなると、β-アラニンとヒスチジンを摂取した方が効率的かつ安価ではないかという発想になるかと思います。
さらに、ヒスチジンは必須アミノ酸ではありますが、実際には通常の食生活で十分に摂れているアミノ酸であり、また単独で過剰に摂取した際に、利用されきれずに分解されるとヒスタミンを作り出すことになってしまうのです。ヒスタミンはジンマシンなどアレルギーの元になる化学物質で、普段から体内に存在するものの、怪我や薬など何かのきっかけで活性化して悪さを働き始める物質です。
結論としては、ヒスチジンを必要以上に摂取する必要はなく、結果としてβ-アラニンを摂ることでカルノシンが増えていくと思われます。続いてβ-アラニンやカルノシンと相性の良い素材は何かないかという点についてです。
直接、一緒に摂取することで何かプラスや相乗効果を求めるのはなかなか難しいかと思いますが、乳酸という点に焦点を当てるのであれば、クレアチンはお勧めではないでしょうか。
体内でクレアチンが利用されている間は乳酸が出てきません。したがって、クレアチン摂取がしっかりと出来ている場合は乳酸が作り出されるタイミングが遅れます。ここに先ほどのカルノシン(β-アラニン)が続くことで、よりPhコントロールがうまく継続できるのではないかと思います。
試合や競技の際には乳酸は招かれざる客でありますが、一方でトレーニングとは乳酸を溜めることが目的であったりします。加圧式トレーニングなどはその典型かもしれません。乳酸を溜めず、あるいは上手に除去することで運動強度を更に高めていくという考え方が正しいかもしれません。
食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋、そしてバルクアップの秋です。上手にph維持をして、運動強度をぐんっとあげて、バルクアップを目指してください。
ボディビルのジャンルはスポーツでありますが、同時に芸術でもありますから、まさに秋が旬かもしれませんね。
江崎グリコ株式会社スポーツフーズ営業部
桑原弘樹
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