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第四十七回 新サプリメント・トピックス
抗酸化

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[ 月刊ボディビルディング 2013年12月号 ]
掲載日:2017.08.18
 今更という感があるかもしれませんが、今回はあえて抗酸化についてまとめておきたいと思います。何故ならば、トレーニングひいては筋肉をつけることは、非常に価値の高いことであってその機能的な側面のみならず、レベルによっては美をも意識してしまいます。

 ところが怪我という要因を除けば唯一といってもいいくらいの欠点があります。それが活性酸素を生み出してしまうということです。

 活性酸素とは、元々は体にとって必要な物質でありました。それは体内で細菌やウィルスを殺菌・消毒する役割があるからです。ところが必要分を超えた活性酸素はその後行き過ぎた効果を発揮してしまいます。

 私たちの体は約60, 兆個の細胞で構成されており、不飽和脂肪酸で細胞膜が作られています。この不飽和脂肪酸は活性酸素と結びつくことによって、いわゆる酸化という状態になり、過酸化物質を生み出すのです。この過酸化物質が正常な細胞に対して反応をすることで、様々な悪影響が起きてきます。一言で表現するならば細胞が錆びていくようなイメージであります。

 活性酸素が生み出される経緯ですが、もっとも多いのはエネルギーを生み出す際に使われる酸素からです。体内に取り込んだ酸素を使って、糖質や脂肪をエネルギーに変えていきますが、その際に約2%ほどの酸素が活性酸素になっていきます。従って、トレーニングをする際のように、より多くの酸素を使ってより多くのエネルギーを生み出すときには、当然より多くの活性酸素が生まれてしまうということになります。

 他にもストレスも大きな原因だといわれています。ストレスとは漠然とした概念でありますが、ある一定以上の負荷がかかった際に、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾルが生み出され、その際に活性酸素が生じてしまいます。

 加えてタバコ、紫外線、食品添加物も活性酸素の発生と因果関係が深いといわれています。特にタバコは1本で100兆個の活性酸素を生み出すそうです。ストレスとタバコはトレーニーは特に避けたいところです。

 その活性酸素が及ぼす悪影響ですが、まず肝機能への影響が懸念されます。肝臓は500以上の機能をもつ人体でもっとも重く高温の臓器ですが、その中でも代謝と解毒は二大機能といえます。実質24時間活動している臓器であり、活性酸素が発生しやすい臓器でもあります。トレーニーが筋肉を付けようと様々な努力をすればするほど肝臓も活躍しているわけです。プロテインを飲む行為も肝臓にとっては活動の要因となります。

 つぎにコレステロールによる血管の詰まりです。コレステロールも体内において必要な成分で、細胞膜や性ホルモンの材料でもあります。このコレステロールは血液を循環して各細胞までコレステロールを運んでくれるLDLと、血液や細胞内の余分なコレステロールを回収してくれるHDLがあります。一般的にLDLを悪玉、HDLを善玉などと呼んだりしています。このLDLが活性酸素と結びつくことで酸化LDLとなると、血管内に付着するようになり、ひいては動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞といった重大な弊害に結びついていきます。

 この活性酸素と呼ばれるものをもう少し細かく分類してみると4つほどに分けられます。
 まずエネルギーが作られそれが常時利用される段階で、スーパーオキシドアニオンという活性酸素が生まれます。しかしスーパーオキシドアニオンはスカベンジャーと呼ばれる、いわゆる除去酵素によって過酸化水素へ変換されます。過酸化水素はこの先、酸素と水に分解されるという流れが理想なのですが、実際は過酸化水素も活性酸素の一種であって、さらには体内の鉄などと結びついてより強力なヒドロシキラジカルへと変化していきます。

 そしてエネルギーを作り出す過程のおける活性酸素とは別に、紫外線などによって生まれてくる一重項酸素と呼ばれる活性酸素があります。

 では、活性酸素はどのように除去していけばいいのでしょうか。
 活性酸素は反応性が高く、常に他の細胞から電子を奪い取ろうとしています。電子が奪われた細胞は酸化されたことになり不安定な状態となり、今度は他の細胞から電子を奪い取ろうとし始めます。こうしてどんどんと酸化が進んでしまうのですが、体内には活性酸素を除去する酵素が備わっています。

 もっとも代表的なものはSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)ですが、基本的にはこの消去酵素の力によって酸化の連鎖は食い止められています。問題はそのSODが年齢と共に減少していくという点と、加えてトレーニングによってより多くの活性酸素を産出してしまうという点です。

 対応策はいくつか考えられますが、もっとも基本となるのは活性酸素を除去してくれる栄養素を摂取することです。体内の酵素のみに頼るのではなく、外から活性酸素を取り除いてくれる栄養素を取り入れるという考え方です。

 基本的なものは、ビタミンC、ビタミンE、βカロテン、ポリフェノールなどとなります。これらは自らが酸化されることで活性酸素に電子を与え無毒化してくれるのです。それぞれ効果を発揮する場所が異なり、例えばビタミンCは細胞と細胞の間の水溶性の箇所、βカロテンやビタミンEは細胞内の脂溶性の部分で効果を発揮します。また活性酸素の種類の中で、紫外線で発生する一重項酸素にはリコピンも効果的であります。

 ポリフェノールは植物の色素のことで何千種類も存在します。約90%がフラボノイド系と呼ばれているもので、大豆のイソフラボン、ブルーベリーのアントシアニン、お茶のカテキンなどです。色素以外で出来た部分をフェノール類と呼び、胡麻のセサミンやウコンで有名なクルクミンなどがこれに相当します。

 最近話題の水素水も、抗酸化という点においては効果がありそうです。理屈的にも水素が活性酸素と結びつくことで水へと還元されていくことは理解しやすいかと思います。

 但し、どの程度の水素が含まれた水なのか、また、生産してからも水素の濃度は変わらないのかなど、いくつか気にしておくべき点はありそうです。

 いずれにしても、サプリメントも含め日常の食生活の中に、抗酸化の効果をもつ栄養素を取り入れておくことは、健康に生きていく上での大前提を取り入れているくらいの大きな意味をもつと思われます。
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江崎グリコ株式会社
スポーツフーズ営業部
桑原弘樹
[ 月刊ボディビルディング 2013年12月号 ]

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