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亜鉛<ミネラル④>

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掲載日:2017.09.14
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ミネラル④ - 亜鉛

鉄は貧血の時にお話しましたので、今回は鉄とブラザーミネラルの亜鉛についてお話しましょう。

亜鉛が沢山含まれている食品といえば牡蠣。牡蠣はRの付く月に食べろと言われますが、秋から春にかけての寒い季節が食べごろですね。

現代人の食生活は亜鉛不足がひどいと言われます。亜鉛は味覚や嗅覚を活発にしてくれます。匂いに鈍感とか、味オンチとかいう症状がある方は、亜鉛不足を疑ってください。

しかし、匂いに敏感か鈍感か、味が分かりづらいかどうか等は目に見えません。周りの人とも比較するのが難しく、意外にひどくならないと気づかないものです。味覚の場合は、濃い味に嗜好が変わって来たら、かなり怪しいと言われています。

亜鉛は精子の元を作ります。不妊症の原因には、精子が元気じゃないとか、精子の数が少ない、など男性に原因がある場合もありますが、不妊治療には女性一人で婦人科を訪れる方も多く、男性の不妊症には気がつかない事があります。これも他の人と比較する事が難しいですね。不妊治療をされる時は、カップルで婦人科を訪れて欲しいものです。
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亜鉛がたくさん使われている組織
①酵素
亜鉛は、マグネシウムに続いて体内の様々な代謝を支える70種類以上もの酵素の活性部位となり、体内の種々の働きを円滑に行っています。

②ホルモン
亜鉛は、糖代謝に関係する酵素、インスリンの合成や分泌に関係します。また、成長ホルモン産生にも関係しています。また、女性は女性ホルモンの作用を高め、男性はテストステロン(男性ホルモン)の合成や精子の形成、活動に不可欠です。

③プロスタグランディン
プロスタグランディンとは、ホルモンに似た働きをする生理活性物質です。ホルモンは脳から命令され、ある臓器で作り、別の場所に運ばれて使われますが、プロスタグランディンはそんな遠い所で作られるのではなく、必要な細胞の細胞膜で(必要な時に)作られ、使われていらなくなったらその場で消えます。つまりとても即効性がある物質です。

亜鉛はこのプロスタグランディンの代謝に関与しています。

④細胞膜
亜鉛は細胞膜、特に赤血球の膜の安定化に関与しています。細胞膜には沢山の受容体があり、栄養が入ったり老廃物が出たりして、細胞は常に元気を保っています。亜鉛はこの細胞膜の受容体や酵素の機能調節にも関与しています。

⑤免疫
亜鉛は、免疫細胞の膜の安定化に関与していることから、感染症の予防にも効果を発揮します。

鉄と亜鉛はブラザーミネラルと言われています。それは常にお互いがバランスを保ちながら体内で働いているからです。鉄欠乏性貧血の方は、鉄と同時に亜鉛も不足しています。生理前に肌トラブルが起こり易い方は鉄だけでなく、亜鉛不足が考えられます。

カルシウムやマグネシウム、カリウムなどのミネラルがバランスを取っている事はお話しましたが、亜鉛は鉄だけでなく、銅ともバランスを取っています。ストレスがあると体内の銅/亜鉛バランスは、瞬間的に変わるそうです。減ってしまった亜鉛の分だけ、銅の量が急増します。
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亜鉛もストレスで?!
現代人は、健康面のみならず、仕事や家庭で様々なストレスを抱えています。激しい運動も肉体的なストレスといえます。また、ダイエットなどによる精神的ストレスがかかると、亜鉛の尿中排泄が増えます。体重制の競技や、美しさを競うスポーツでは、競技会が近づくと練習量の増加プラス減量という二重のストレスがあります。そのうえ、減量で栄養不足にもなりますから、二重どころか三重のストレスと言えるでしょう。

その他に亜鉛が欠乏する原因を上げてみましょう。

①摂取不足、吸収障害
加工食品や精製食品は亜鉛含有量が低いです。また、アルコール性肝臓疾患、膵臓疾患、消化器疾患の方は亜鉛の吸収が悪いです。

野菜などの食物繊維に含まれるフィチン酸によっても吸収が阻害されます。これは鉄も同様です。

②アルコールの過剰摂取(飲み過ぎ)
アルコールを分解する酵素であるアセトアルデヒド脱水素酵素の活性には亜鉛が欠かせません。お酒を沢山飲む人は、亜鉛をどんどん使ってしまいますので、慢性的な欠乏状態にあるといえます。

③薬物の服用
体内の不必要な物をくっつけてくれると言われているキレート剤ですが、実は必要な物もくっつけてしまいます。他に抗痙攣剤、利尿剤、ステロイド剤などの服用や塗布、人工透析などでも亜鉛が欠乏します。

忙しくて加工食品の摂取や外食が多い上、会社ではストレスが多く、仕事が終わってからはついつい飲酒、最近血圧が高いと降圧剤(利尿剤)を処方されています、なんて生活をしている方は、間違いなく亜鉛欠乏ですね。もし不妊に悩んでいるのなら、男女に関係なく原因はこのような生活習慣かも知れません。

さて、これからお話ししますミネラル類は、微量ミネラルの分類に入ります。1日の必要摂取量が100mg以上のものを主要ミネラルと呼びます。今迄お話ししたのは主要ミネラルです。これからお話しする、1日の必要摂取量が100mg未満のものを微量ミネラルと呼びます。これにつきましてはざっくりお話ししますが、決して必要でない訳ではありません。体内で行われている様々な代謝の調節には、多数の微量ミネラルが総合的に働いています。
  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)
    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901~1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ アスリートのための分子栄養学 ]

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